政府は20日、外国人材の受け入れや共生を話し合う関係閣僚会議を開き、総合対応策を改定した。4月に創設した外国人就労を広げる新在留資格「特定技能」での在留外国人数が11月末時点で1019人にとどまり、政府が初年度に想定していた最大4万人程度には遠い。対策は日本で受ける試験の受験機会の拡大や取得者を企業に仲介する制度拡充を打ち出した。
総合対応策は特定技能の制度開始などを踏まえて、2018年12月に定めた。菅義偉官房長官は20日の会議で「外国人が国を選ぶ時代だ。住んでみたい国、働いてみたい国を目指し、関係省庁が緊密に連携して取り組んでほしい」と語った。
特定技能は人手不足が深刻な飲食や介護など14分野を対象に、外国人の単純労働を事実上認める在留資格だ。実質的な受け皿となっていた技能実習生は多くが3年で帰国する。特定技能は最長5年で追加試験もない。
政府は制度開始から5年間で最大約34万5千人、初年度で最大4万人程度を見込んだ。出入国在留管理庁(入管庁)が11月末時点の速報値として発表した特定技能での在留外国人数は1019人だ。最も多いのが飲食料品製造業で303人、農業が169人、産業機械製造業151人と続く。
入管庁が課題にあげるのは特定技能の試験を受ける機会と周知だ。改定した対策では、初めて来日した3カ月以内の短期滞在者でも試験を受けられるようにする。20年1月から適用し、観光やビジネスで訪れた外国人も受験が可能になる。いまは原則、中長期滞在者などに限っている。さらに技能試験、日本語試験の最新情報を多言語で周知する。少数言語に対応できていないという。
資格取得者が働きたい企業をみつけにくいことも伸びない理由とみている。対策では取得者と企業をつなぐ「マッチング支援」を柱に据えた。介護分野で仲介に取り組む地方自治体への財政支援、建設分野で法人を通じた求人求職のあっせんなどを本格化する。来年度から地方自治体とハローワークの連携を進める。東京・大阪以外の地方企業とのマッチングを進め、大都市偏在を防ぐ。
特定技能制度に詳しいセンチュリー法律事務所(東京・千代田)の杉田昌平弁護士は「多くの国では人材の送り出し制度を整えている段階だ。相手国の法令整備を含む手続きがまだできていないので、多くの人数での送り出しが始まるまでには時間を要する」と語る。
企業は特定技能が深刻な人手不足の解消につながるとみて制度改善への期待は大きい。日本フードサービス協会(東京・港)の高岡慎一郎会長は「ビザが通るまでの仕組みをわかりやすくしてほしい。基準をはっきり明示してほしい」と話す。
特定技能の届け出業務などを担う登録支援機関、プラウド商事(相模原市)は、外食企業向けに留学生らのビザ発給の支援をしている。鈴木竜二社長は「ようやくビザ発給や、就職に至るケースが出てきた」と語る。ただ企業と外国人の双方で多くの種類の証明書類が必要で、企業には特定技能で働く外国人への支援費用も発生するという。