刑務所を出所した人の更生を考える講演会「居場所と出番さえあれば人は更生できる」(龍谷大矯正・保護総合センター主催)がこのほど、京都市南区であった。2005年のJR下関駅放火事件で懲役10年の判決を受けて出所した88歳の男性が登壇し、出所してから3年以上たつ中、人と出会い、支援を受け穏やかに暮らす日々を語った。
出所者やホームレスの人たちを支える北九州市のNPO法人「抱樸(ほうぼく)」の奥田知志理事長=大津市出身=がまず講演。軽度の知的障害があり前科11犯で50年以上刑務所で過ごしてきた男性について、05年に別事件で満期出所したものの警察や福祉事務所で相手にされず、「刑務所に帰りたい」と駅に放火した経緯を説明した。事件でけが人は出なかった。
アパートを借りるにも保証人がおらず、現住所や前の住所を不動産業者に尋ねられても答えられない満期出所の人たち。繰り返し裁判では軽度知的障害だと認定されながら、福祉行政では認定されていない高齢元受刑者も多いと、奥田さん。
奥田さんは「放火はいけない、は100人がそう言う。ではこうすべきだったと誰が言えるでしょう。社会に選択肢はあったでしょうか」と会場に問いかけ、「問題を起こさせないための支援ではなく、つながることが大事。自立支援が孤独を生んではだめ」などと、伴走型支援を語った。
さらに「人はなぜ、家の掃除をするのでしょう。他者の存在があるからです。自立自立というけれども、それが孤立になってはいけない。支援は質より量。1本2本と糸が切れても、100本200本の糸があれば支えられる。失敗をごまかしながら、問題解決型ではない支援を」と呼び掛けた。
最後に登壇した男性は、今回の出所で奥田さんが迎えに来るまでは、出所しても助けてくれる人は「誰もいませんでした」と振り返り、抱樸でできた友人とトランプするのが楽しい、と話した。
人間にとって大事なことは?と問われると「友達が多い方がいい」と話し、拍手を浴びた。