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Photo: Justin Sullivan / Getty Images

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BBC News(英国)ほか

BBC News(英国)ほか

Text by COURRiER Japon

クリスマスの「ご馳走」として、日本ではすっかり定番となったケンタッキー・フライド・チキン。

だが、海外からはこの習慣は謎の伝統だと思われている。
若者に人気の仏ウェブメディア「コンビニ」が展開するフード専門メディア「クラブ・サンドウィッチ」は、クリスマス・イブの12月24日に「なぜ日本人はクリスマスのお祝いにわざわざケンタッキーを食べるのか?」という記事を掲載し、この謎にせまった。

記事によれば、フランスでは予算が許せばクリスマスのお祝いには、牡蠣やフォワグラ、シャンパンなど普段より豪華な食事を楽しむもの。一方、ケンタッキーについては「鶏肉専門のアメリカのファストフード」といった程度の認識で、「特別な日のご馳走」というイメージがない。

そんなフランス人たちにとって、クリスマスとケンタッキーは結びつかないものだ。

マーケティングの勝利


だが、この伝統を不思議に思っているのは、実はフランス人だけではない。英メディア「BBC」も2016年に「なぜ日本人はケンタッキー・フライド・チキンでクリスマスを祝うのか」という記事を掲載している。

同紙はその中で、日本側の関係者への取材をおこない、伝統の起源を明らかにした。

ケンタッキーが日本で店舗をオープンしたのは1970年。その直後、同社の元社長・大河原毅氏は日本在住の外国人がクリスマスの七面鳥をなつかしんでいるのを耳にする。このことがきっかけで、彼は七面鳥の代わりにクリスマスにフライド・チキンを売り出してはどうかと思いついたという。

こうして、クリスマスのお祝いのための「パーティ・バレル」が発売された。さらに、1974年に「クリスマスにはケンタッキー」という広告キャンペーンが始まると、パーティ・バレルの人気は日本中に広まり、日本のクリスマスの伝統となっていった。

現在では、毎年クリスマスには360万家族の食卓に登り、日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社の売り上げは通常の10倍にもなるという(2016年の記事による)。

「BBC」の記事では、フランスのアンリヨン・ビジネス・スクールのマーケティング准教授ヨーナス・ロッカが、日本でのマーケティング戦略の成功について以下のように分析している。

「日本の人口に占めるキリスト教徒は1%程度で、クリスマスは祝日ではない。なので、一日中時間をかけてハムや七面鳥を焼いたりして、クリスマスの食事の準備をするというのは実際的ではなく、代わりにケンタッキーを持ち帰ったほう便利なのだ」

ロッカによれば、これはグローバリゼーションのひとつの表れである。ある習慣がほかの国に広がっていくときに、その習慣がさまざまに形を変えていくことはよくあることなのだ。