現代の重要な水先案内人、レベッカ・ソルニットのエッセイ集『それを、真(まこと)の名で呼ぶならば――危機の時代と言葉の力』を、渡辺由佳里さんの訳で、2020年1月に刊行します。(原題“Call Them by Their True Names: American Crises (and Essays)”2018年9月刊)
刊行に先立ち、本書収録のエッセイを毎月1本、2か月限定で公開します。トランプ政権の横暴、気候変動や自然災害、貧困や格差、先住民族への差別や人種差別、セクシャルハラスメントやミソジニー等、ソルニットが描くアメリカの暴力的で危機的な状況は、もちろん、対岸の火事ではありません。いま世界で起きていることであり、日本でも起きていることです。
言葉のすりかえやごまかし、冷笑が幅を利かせる世にあって、本書に収録されているソルニットのエッセイは、歴史に刻まれた人びとの記憶や行動を再発見し、過去と現在をつなぎ、正確な言葉によって現実を対象化することで対話と連帯の希望を見いだしたいという意志に貫かれています。昔話やファンタジーでは、しばしば、「真の名」を「呼ぶ」ことが、魔法を超越する力を持ちます。それはきっと、物語のなかだけではありません。どうぞ、ソルニットのエッセイを通して、ソルニットの呼び声に触れてください。
Rebecca Solnit, Call them by Their True Names: American Crisis (and Essays)
(Chicago: Haymarket Books, 2018)
Copyright©2018 by Rebecca Solnit
Reproduced by permission.
著者:レベッカ・ソルニット(Rebecca Solnit)
1961年生まれ。作家、歴史家、アクティヴィスト。カルフォルニアに育ち、環境問題や人権、反戦などの政治運動に参加、1988年より文筆活動を開始する。写真家のエドワード・マイブリッジ伝“River of Shadows”により、2004年、全米批評家協会賞を受賞。2008年にソルニットが発表したエッセイをきっかけに、「マンスプレイニング」(Mansplaining)という語が欧米で一気に普及し、そのエッセイをもとにした“Men Explain Things to Me”(『説教したがる男たち』)は世界的なベストセラーとなった。20冊以上の著書があり、近年、日本でも注目が高まっている。日本語版が刊行されている著書に、『暗闇のなかの希望』(井上利男訳、七つ森書館)、『災害ユートピア』(高月園子訳、亜紀書房)、『ウォークス』(東辻賢治郎訳、左右社)、『説教したがる男たち』(ハーン小路恭子訳、左右社)、『迷うことについて』(東辻賢治郎訳、左右社)がある。
訳者:渡辺由佳里(わたなべゆかり)
エッセイスト、洋書レビュアー、翻訳家、マーケティング・ストラテジー会社共同経営者。書評ブログサイト
『洋書ファンクラブ』主宰。兵庫県出身。職歴は助産師、日本語学校のコーディネーター、広告代理店アカウントマネージャー、外資系企業のプロダクトマネージャーなど。1993年にアメリカ人の夫の転勤で香港に移住し1995年よりアメリカのボストン近郊在住。2001年に小説『ノーティアーズ』(新潮社)で小説新潮長篇新人賞受賞。著書に『ジャンル別 洋書ベスト500』(コスモピア)、『どうせなら、楽しく生きよう』(飛鳥新社)、『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』(晶文社)等が、訳書に『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP社)、『毒味師イレーナ』(ハーパーコリンズ・ジャパン)等がある。
『ニューズウィーク日本版オフィシャルサイト』で洋書レビューエッセイとアメリカ大統領選レポートの連載を、
Cakesと
Findersで時評を連載。