ラビリンスピストン式往復動圧縮機
【課題】本発明は、ラビリンスピストンの外周面に形成されたラビリンス溝の一部にマーカーを設け、このマーカーによりラビリンスピストンの摩耗量が摩耗基準値に達したか否かを目視等で判定できるようにすることを目的とする。
【解決手段】本発明によるラビリンスピストン式往復動圧縮機は、ラビリンスピストン(14)の外周面に設けられたラビリンス溝(22)の一部に、少なくとも1個所のマーカー(23)が設けられ、前記ラビリンスピストン(14)の摩耗状態を前記マーカーにより判定できる構成である。
【解決手段】本発明によるラビリンスピストン式往復動圧縮機は、ラビリンスピストン(14)の外周面に設けられたラビリンス溝(22)の一部に、少なくとも1個所のマーカー(23)が設けられ、前記ラビリンスピストン(14)の摩耗状態を前記マーカーにより判定できる構成である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラビリンスピストン式往復動圧縮機に関し、特に、ラビリンスピストンの外周面に形成されたラビリンス溝の一部にマーカーを設け、このマーカーにより、ラビリンスピストンの摩耗状態が摩耗基準値に達したか否かを目視等で判定できるようにするための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種のラビリンスピストン式往復動圧縮機においては、ラビリンスピストン自体には何らの加工等は施されておらず、保守の際に、ラビリンスピストンを圧縮機本体から取り外し、ラビリンスピストンの外径を測定し、摩耗量が基準値を越えた場合には、ラビリンスピストンの交換を行っていた。
【0003】
また、他の従来構成として、ラビリンスピストン以外の一般のピストンのシール材の摩耗量の測定装置としては、例えば、特許文献1に開示されたピストン用シール材の摩耗量測定装置においては、図示していないが、シール材が摩耗していない状態では、シリンダの軸縁とピストンの軸縁とが一致した状態でピストンが水平方向に往復移動し、その運転によってシール材の特に下部が摩耗し、これによってピストンが下方に変位する。これによってそのピストンのシリンダヘッド側の端面に固着されている被検出部材が下降し、そのために一方のグループの光ファイバ素線を介して光源から照射された光が、被検出部材の同心円状の突起と溝との組合せ、または第1および第2領域との組合せによって、反射して検出されて受光される反射光量が変化することになる。これによってシール材の摩耗量を測定することができるように構成されていた。
【0004】
【特許文献1】特公平06−010604号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、用いられていたこの種のラビリンスピストン式往復動圧縮機においては、ラビリンスピストンには何らの加工等は施されていないため、使用時間の経過によって発生する保守の際に、シリンダのシリンダ弁カバー及び吸入、吐出シリンダ弁を取り外し、ラビリンスピストンをシリンダから外に取り出し、外径測定及び摩耗状態の測定を行った後に、再び、シリンダ内に取付け、吸入、吐出シリンダ弁およびシリンダ弁カバーの装着を行うことになり、一連の作業は多大の労力とコストを必要としていた。
【0006】
また、前述の特許文献1のピストン用シール材の摩耗量測定装置においては、光ファイバを用いて反射光量の変化によりシール材の摩耗量を検出していたため、シリンダ周辺に光学的装置を装着しなければならず、シリンダ装置としては構造が複雑となり、コストの面だけでなく、信頼性および保守等の面で課題が存在していた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるラビリンスピストン式往復動圧縮機は、ラビリンスピストンをシリンダ内で往復動させることにより圧縮を行うようにしたラビリンスピストン式往復動圧縮機において、前記ラビリンスピストンの外周面に設けられたラビリンス溝の一部に、少なくとも1個所のマーカーが設けられ、前記ラビリンスピストンの摩耗状態を前記マーカーにより判定できる構成であり、また、前記マーカーは、前記ラビリンス溝内に所定の高さで形成され、前記高さは前記ラビリンスピストンの交換時期を示す高さとした構成であり、また、前記マーカーは、前記各ラビリンス溝内に少なくとも1個所設けられ、かつ、各マーカーは軸方向に沿って全長にわたり直線状に配置されている構成であり、また、前記各マーカーは、前記シリンダのシリンダ弁カバー及び前記シリンダ弁カバーの内側に位置する吸入シリンダ弁又は吐出シリンダ弁が除去された前記シリンダの吸入用又は吐出用シリンダ弁ポート部に臨んで露出している構成であり、また、前記各ラビリンス溝の断面形状は、底部に平面底又は円弧状底を有する一対のテーパ壁よりなる構成である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によるラビリンスピストン式往復動圧縮機は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、ラビリンスピストンをシリンダ内で往復動させることにより圧縮を行うようにしたラビリンスピストン式往復動圧縮機において、前記ラビリンスピストンの外周面に設けられたラビリンス溝の一部に、少なくとも1個所のマーカーが設けられ、前記ラビリンスピストンの摩耗状態を前記マーカーにより判定できる構成としたため、ラビリンスピストンを外すことなく簡単な構造で目視等により摩耗量が摩耗基準値に達したか否かを判定することができる。
また、前記マーカーは、前記ラビリンス溝内に所定の高さで形成され、前記高さは前記ラビリンスピストンの交換時期を示す高さであることにより、簡単に交換時期を判定することができる。
また、前記マーカーは、前記各ラビリンス溝内に少なくとも1個所設けられ、かつ、各マーカーは軸方向に沿って全長にわたり直線状に配置されていることにより、ラビリンスピストンの全長にわたり摩耗状態を判定することができる。
また、前記各マーカーは、前記シリンダのシリンダ弁カバー及び前記シリンダ弁カバーの内側に位置する吸入シリンダ弁又は吐出シリンダ弁が除去された前記シリンダの吸入用又は吐出用シリンダ弁ポート部に臨んで露出していることにより、シリンダ外部から摩耗状態を直接目視等ができる。
また、前記各ラビリンス溝の断面形状は、底部に平面底又は円弧状底を有する一対のテーパ壁よりなることにより、ラビリンスピストンのラビリンス溝においてマーカーを設けることが容易で、かつ、ラビリンスピストンの摩耗部分がマーカーから山状に突出し、摩耗状態の目視判定が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、ラビリンスピストンの外周面に形成されたラビリンス溝の一部にマーカーを設け、このマーカーによりラビリンスピストンの摩耗量が摩耗基準値に達したか否かを目視等で判定できるようにしたラビリンスピストン式往復動圧縮機を提供することを目的とする。
【実施例】
【0010】
以下、図面と共に本発明によるラビリンスピストン式往復動圧縮機の好適な実施の形態について説明する。
図1において符号1で示されるものは、全体形状がほぼ箱形をなすフレームであり、このフレーム1の下部位置にはクランク軸2が回転自在に設けられ、このクランク軸2にクランクピン軸受3を介して設けられた連続棒4は、クロスヘッドピン5を介してクロスヘッド6に接続されている。
【0011】
前記クロスヘッド6は前記フレーム1のクロスヘッド案内孔7内で上下動自在に設けられ、このクロスヘッド6の上部に接続されたピストン棒8は、前記フレーム1の上部に位置するピストン棒案内軸受9、油切りリング10、油止めリング11及びパッキン箱12aを介して、前記フレーム1の上部に設けられたシリンダ12のピストンロッドパッキン13に上下動自在に支持されている。
【0012】
前記シリンダ12内に延設された前記ピストン棒8の上部にはラビリンスピストン14が上下動自在(実線と点線で示すストローク)に設けられ、このシリンダ12の上部にはシリンダカバー15が設けられている。
前記シリンダ12の外周位置にはシリンダ弁カバー16が設けられ、これらの各シリンダ弁カバー16の内側には、上下一対の吸入シリンダ弁17及び吐出シリンダ弁18が着脱自在に設けられている。
【0013】
前記シリンダ12は、A−A断面図が図2で示されるように構成され、前記各吸入シリンダ弁17の内側には吸入用シリンダ弁ポート部20が形成されている。
さらに、前記各吐出シリンダ弁18の内側には吐出用シリンダ弁ポート部21が形成され、前記各吸入用シリンダ弁ポート部20から吸入された媒体は前記各吐出用シリンダ弁ポート部21を介してシリンダ12外へ吐出され、媒体の吸入/圧縮が行われるように構成されている。
【0014】
前述の図2で示す図1のA−A断面図は、前記各シリンダ弁カバー16、吸入シリンダ弁17及び吐出シリンダ弁18を除去した状態を示しており、前記ラビリンスピストン14の外周に形成された輪状のラビリンス溝22の一部には、少なくとも1個所もしくは複数個所のマーカー23が設けられていると共に、各マーカー23は、例えば、ラビリンス溝22と同一材料等からなり、前記除去状態において、前記各シリンダ弁ポート部20,21に臨んで露出するように構成されている。
【0015】
前記ラビリンスピストン14の外周には、その軸方向に沿って複数のラビリンス溝22が多段状に所定の間隔で形成されており、この各ラビリンス溝22は、後述のように、前記ラビリンスピストン14の軸方向Yに沿いかつこの軸方向Yの全長にわたり形成されている。
【0016】
図4は図3の各ラビリンス溝22とマーカー23の一部を示しており、前記各ラビリンス溝22内の各マーカー23は、前述のように、軸方向Yに沿ってこの軸方向Yの全長にわたり直線状に配置されている。
【0017】
図5は、図3及び図4の各ラビリンス溝22内に設けられた前記マーカー23を拡大して示す断面図であり、各ラビリンス溝22は、その底面に平面底又は円弧状底24を有する一対のテーパ壁25からなると共に、各ラビリンス溝22間に位置するラビリンスピストン14の輪状の突条部25A先端すなわち最も外側を形成する山状の摩耗部分26は半径方向に突出する摩耗量を示し、この摩耗部分26が摩耗してマーカー23のマーカー外周面23Aと同じ位置が摩耗基準値Tに設定されている。
すなわち、マーカー23は、図5のように、ラビリンス溝22内に摩耗基準値Tまでの所定の高さT1で構成され、この高さT1はラビリンスピストン14の交換時期を示す高さである。
【0018】
前記摩耗基準値Tは、前記マーカー23のマーカー外周面23Aと同一であり、前記マーカー外周面23Aは前記ラビリンスピストン14の外周面である前記摩耗外周面26Aよりも前記摩耗基準値Tだけ低く設定されている。
【0019】
次に、動作について説明する。前述の構成において、圧縮機の稼動により図4及び図5で示される新品のラビリンスピストン14の外周面である摩耗外周面26Aの摩耗(図6のドットで示す領域部分)が進行して、前記摩耗部分26の摩耗が拡大し、前記摩耗基準値Tに達すると、マーカー23のマーカー外周面23Aにも摩耗が広がり(図7の拡大したドットで示す領域部分)、摩耗がラビリンスピストン14とマーカー23の外周面に拡大したことが目視等(目視の他に、テレビ画面等)によって検出することができ、摩耗の判定をすることができ、この状態で前記ラビリンスピストン14の交換時期に達したことになる。
【0020】
前述のラビリンスピストン14の摩耗の目視等による判定は、図2に示されるように、各シリンダ弁カバー16、吸入シリンダ弁17及び吐出シリンダ弁18を除去すると、各マーカー23が各吸入用シリンダ弁ポート部20及び各吐出用シリンダ弁ポート部21に臨んで露出していることにより、容易に行うことができる。
【0021】
また、図8で示されるように、前記シリンダ12の外部から実際に目視できるマーカー23は、実線で示される上死点位置の前記ラビリンスピストン14の上端部C、及び、点線で示される下死点位置のラビリンスピストン14の下端部C’に限られるが、ラビリンスピストン14の上端部Cと下端部C’との間の中間部Eは、前述の状態では目視することはできず、この中間部Eをみるためには、従来と同様にラビリンスピストン14をシリンダ12から除去すれば目視できる。
尚、前記マーカー23は、図3及び図4で示されるように、各ラビリンス溝22内に少なくとも1個所(複数個所も可)設けられ、かつ、ラビリンスピストン14の軸方向Yに沿ってその全長にわたり直線状に配置されていることが好適である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明によるラビリンスピストン式往復動圧縮機を示す構成図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図2のラビリンスピストンのB−B断面の一部を示す断面図である。
【図4】図3のラビリンスピストンの外観を示す要部の拡大図である。
【図5】図3の要部の拡大断面図である。
【図6】図4のラビリンスピストンの摩耗前の一部の状態を示す拡大図である。
【図7】図6のマーカーの摩耗後を示す拡大図である。
【図8】本発明におけるシリンダにおける部品を除去し、シリンダの外部からラビリンスピストンのマーカーが目視できる状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 フレーム
2 クランク軸
3 クランクピン軸受
4 連接棒
5 クロスヘッドピン
6 クロスヘッド
7 クロスヘッド案内孔
8 ピストン棒
9 ピストン棒案内軸受
10 油切りリング
11 油止めリング
12 シリンダ
12a パッキン箱
13 ピストンロッドパッキン
14 ラビリンスピストン
15 シリンダカバー
16 シリンダ弁カバー
17 吸入シリンダ弁
18 吐出シリンダ弁
20 吸入用シリンダ弁ポート部
21 吐出用シリンダ弁ポート部
22 ラビリンス溝
23 マーカー
23A マーカー外周面
24 平面底
25 テーパ壁
25A 突条部
26 摩耗部分
26A 摩耗外周面
T 摩耗基準値
C 上端部
C’ 下端部
T1 高さ
Y 軸方向
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラビリンスピストン式往復動圧縮機に関し、特に、ラビリンスピストンの外周面に形成されたラビリンス溝の一部にマーカーを設け、このマーカーにより、ラビリンスピストンの摩耗状態が摩耗基準値に達したか否かを目視等で判定できるようにするための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種のラビリンスピストン式往復動圧縮機においては、ラビリンスピストン自体には何らの加工等は施されておらず、保守の際に、ラビリンスピストンを圧縮機本体から取り外し、ラビリンスピストンの外径を測定し、摩耗量が基準値を越えた場合には、ラビリンスピストンの交換を行っていた。
【0003】
また、他の従来構成として、ラビリンスピストン以外の一般のピストンのシール材の摩耗量の測定装置としては、例えば、特許文献1に開示されたピストン用シール材の摩耗量測定装置においては、図示していないが、シール材が摩耗していない状態では、シリンダの軸縁とピストンの軸縁とが一致した状態でピストンが水平方向に往復移動し、その運転によってシール材の特に下部が摩耗し、これによってピストンが下方に変位する。これによってそのピストンのシリンダヘッド側の端面に固着されている被検出部材が下降し、そのために一方のグループの光ファイバ素線を介して光源から照射された光が、被検出部材の同心円状の突起と溝との組合せ、または第1および第2領域との組合せによって、反射して検出されて受光される反射光量が変化することになる。これによってシール材の摩耗量を測定することができるように構成されていた。
【0004】
【特許文献1】特公平06−010604号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、用いられていたこの種のラビリンスピストン式往復動圧縮機においては、ラビリンスピストンには何らの加工等は施されていないため、使用時間の経過によって発生する保守の際に、シリンダのシリンダ弁カバー及び吸入、吐出シリンダ弁を取り外し、ラビリンスピストンをシリンダから外に取り出し、外径測定及び摩耗状態の測定を行った後に、再び、シリンダ内に取付け、吸入、吐出シリンダ弁およびシリンダ弁カバーの装着を行うことになり、一連の作業は多大の労力とコストを必要としていた。
【0006】
また、前述の特許文献1のピストン用シール材の摩耗量測定装置においては、光ファイバを用いて反射光量の変化によりシール材の摩耗量を検出していたため、シリンダ周辺に光学的装置を装着しなければならず、シリンダ装置としては構造が複雑となり、コストの面だけでなく、信頼性および保守等の面で課題が存在していた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるラビリンスピストン式往復動圧縮機は、ラビリンスピストンをシリンダ内で往復動させることにより圧縮を行うようにしたラビリンスピストン式往復動圧縮機において、前記ラビリンスピストンの外周面に設けられたラビリンス溝の一部に、少なくとも1個所のマーカーが設けられ、前記ラビリンスピストンの摩耗状態を前記マーカーにより判定できる構成であり、また、前記マーカーは、前記ラビリンス溝内に所定の高さで形成され、前記高さは前記ラビリンスピストンの交換時期を示す高さとした構成であり、また、前記マーカーは、前記各ラビリンス溝内に少なくとも1個所設けられ、かつ、各マーカーは軸方向に沿って全長にわたり直線状に配置されている構成であり、また、前記各マーカーは、前記シリンダのシリンダ弁カバー及び前記シリンダ弁カバーの内側に位置する吸入シリンダ弁又は吐出シリンダ弁が除去された前記シリンダの吸入用又は吐出用シリンダ弁ポート部に臨んで露出している構成であり、また、前記各ラビリンス溝の断面形状は、底部に平面底又は円弧状底を有する一対のテーパ壁よりなる構成である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によるラビリンスピストン式往復動圧縮機は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、ラビリンスピストンをシリンダ内で往復動させることにより圧縮を行うようにしたラビリンスピストン式往復動圧縮機において、前記ラビリンスピストンの外周面に設けられたラビリンス溝の一部に、少なくとも1個所のマーカーが設けられ、前記ラビリンスピストンの摩耗状態を前記マーカーにより判定できる構成としたため、ラビリンスピストンを外すことなく簡単な構造で目視等により摩耗量が摩耗基準値に達したか否かを判定することができる。
また、前記マーカーは、前記ラビリンス溝内に所定の高さで形成され、前記高さは前記ラビリンスピストンの交換時期を示す高さであることにより、簡単に交換時期を判定することができる。
また、前記マーカーは、前記各ラビリンス溝内に少なくとも1個所設けられ、かつ、各マーカーは軸方向に沿って全長にわたり直線状に配置されていることにより、ラビリンスピストンの全長にわたり摩耗状態を判定することができる。
また、前記各マーカーは、前記シリンダのシリンダ弁カバー及び前記シリンダ弁カバーの内側に位置する吸入シリンダ弁又は吐出シリンダ弁が除去された前記シリンダの吸入用又は吐出用シリンダ弁ポート部に臨んで露出していることにより、シリンダ外部から摩耗状態を直接目視等ができる。
また、前記各ラビリンス溝の断面形状は、底部に平面底又は円弧状底を有する一対のテーパ壁よりなることにより、ラビリンスピストンのラビリンス溝においてマーカーを設けることが容易で、かつ、ラビリンスピストンの摩耗部分がマーカーから山状に突出し、摩耗状態の目視判定が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、ラビリンスピストンの外周面に形成されたラビリンス溝の一部にマーカーを設け、このマーカーによりラビリンスピストンの摩耗量が摩耗基準値に達したか否かを目視等で判定できるようにしたラビリンスピストン式往復動圧縮機を提供することを目的とする。
【実施例】
【0010】
以下、図面と共に本発明によるラビリンスピストン式往復動圧縮機の好適な実施の形態について説明する。
図1において符号1で示されるものは、全体形状がほぼ箱形をなすフレームであり、このフレーム1の下部位置にはクランク軸2が回転自在に設けられ、このクランク軸2にクランクピン軸受3を介して設けられた連続棒4は、クロスヘッドピン5を介してクロスヘッド6に接続されている。
【0011】
前記クロスヘッド6は前記フレーム1のクロスヘッド案内孔7内で上下動自在に設けられ、このクロスヘッド6の上部に接続されたピストン棒8は、前記フレーム1の上部に位置するピストン棒案内軸受9、油切りリング10、油止めリング11及びパッキン箱12aを介して、前記フレーム1の上部に設けられたシリンダ12のピストンロッドパッキン13に上下動自在に支持されている。
【0012】
前記シリンダ12内に延設された前記ピストン棒8の上部にはラビリンスピストン14が上下動自在(実線と点線で示すストローク)に設けられ、このシリンダ12の上部にはシリンダカバー15が設けられている。
前記シリンダ12の外周位置にはシリンダ弁カバー16が設けられ、これらの各シリンダ弁カバー16の内側には、上下一対の吸入シリンダ弁17及び吐出シリンダ弁18が着脱自在に設けられている。
【0013】
前記シリンダ12は、A−A断面図が図2で示されるように構成され、前記各吸入シリンダ弁17の内側には吸入用シリンダ弁ポート部20が形成されている。
さらに、前記各吐出シリンダ弁18の内側には吐出用シリンダ弁ポート部21が形成され、前記各吸入用シリンダ弁ポート部20から吸入された媒体は前記各吐出用シリンダ弁ポート部21を介してシリンダ12外へ吐出され、媒体の吸入/圧縮が行われるように構成されている。
【0014】
前述の図2で示す図1のA−A断面図は、前記各シリンダ弁カバー16、吸入シリンダ弁17及び吐出シリンダ弁18を除去した状態を示しており、前記ラビリンスピストン14の外周に形成された輪状のラビリンス溝22の一部には、少なくとも1個所もしくは複数個所のマーカー23が設けられていると共に、各マーカー23は、例えば、ラビリンス溝22と同一材料等からなり、前記除去状態において、前記各シリンダ弁ポート部20,21に臨んで露出するように構成されている。
【0015】
前記ラビリンスピストン14の外周には、その軸方向に沿って複数のラビリンス溝22が多段状に所定の間隔で形成されており、この各ラビリンス溝22は、後述のように、前記ラビリンスピストン14の軸方向Yに沿いかつこの軸方向Yの全長にわたり形成されている。
【0016】
図4は図3の各ラビリンス溝22とマーカー23の一部を示しており、前記各ラビリンス溝22内の各マーカー23は、前述のように、軸方向Yに沿ってこの軸方向Yの全長にわたり直線状に配置されている。
【0017】
図5は、図3及び図4の各ラビリンス溝22内に設けられた前記マーカー23を拡大して示す断面図であり、各ラビリンス溝22は、その底面に平面底又は円弧状底24を有する一対のテーパ壁25からなると共に、各ラビリンス溝22間に位置するラビリンスピストン14の輪状の突条部25A先端すなわち最も外側を形成する山状の摩耗部分26は半径方向に突出する摩耗量を示し、この摩耗部分26が摩耗してマーカー23のマーカー外周面23Aと同じ位置が摩耗基準値Tに設定されている。
すなわち、マーカー23は、図5のように、ラビリンス溝22内に摩耗基準値Tまでの所定の高さT1で構成され、この高さT1はラビリンスピストン14の交換時期を示す高さである。
【0018】
前記摩耗基準値Tは、前記マーカー23のマーカー外周面23Aと同一であり、前記マーカー外周面23Aは前記ラビリンスピストン14の外周面である前記摩耗外周面26Aよりも前記摩耗基準値Tだけ低く設定されている。
【0019】
次に、動作について説明する。前述の構成において、圧縮機の稼動により図4及び図5で示される新品のラビリンスピストン14の外周面である摩耗外周面26Aの摩耗(図6のドットで示す領域部分)が進行して、前記摩耗部分26の摩耗が拡大し、前記摩耗基準値Tに達すると、マーカー23のマーカー外周面23Aにも摩耗が広がり(図7の拡大したドットで示す領域部分)、摩耗がラビリンスピストン14とマーカー23の外周面に拡大したことが目視等(目視の他に、テレビ画面等)によって検出することができ、摩耗の判定をすることができ、この状態で前記ラビリンスピストン14の交換時期に達したことになる。
【0020】
前述のラビリンスピストン14の摩耗の目視等による判定は、図2に示されるように、各シリンダ弁カバー16、吸入シリンダ弁17及び吐出シリンダ弁18を除去すると、各マーカー23が各吸入用シリンダ弁ポート部20及び各吐出用シリンダ弁ポート部21に臨んで露出していることにより、容易に行うことができる。
【0021】
また、図8で示されるように、前記シリンダ12の外部から実際に目視できるマーカー23は、実線で示される上死点位置の前記ラビリンスピストン14の上端部C、及び、点線で示される下死点位置のラビリンスピストン14の下端部C’に限られるが、ラビリンスピストン14の上端部Cと下端部C’との間の中間部Eは、前述の状態では目視することはできず、この中間部Eをみるためには、従来と同様にラビリンスピストン14をシリンダ12から除去すれば目視できる。
尚、前記マーカー23は、図3及び図4で示されるように、各ラビリンス溝22内に少なくとも1個所(複数個所も可)設けられ、かつ、ラビリンスピストン14の軸方向Yに沿ってその全長にわたり直線状に配置されていることが好適である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明によるラビリンスピストン式往復動圧縮機を示す構成図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図2のラビリンスピストンのB−B断面の一部を示す断面図である。
【図4】図3のラビリンスピストンの外観を示す要部の拡大図である。
【図5】図3の要部の拡大断面図である。
【図6】図4のラビリンスピストンの摩耗前の一部の状態を示す拡大図である。
【図7】図6のマーカーの摩耗後を示す拡大図である。
【図8】本発明におけるシリンダにおける部品を除去し、シリンダの外部からラビリンスピストンのマーカーが目視できる状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 フレーム
2 クランク軸
3 クランクピン軸受
4 連接棒
5 クロスヘッドピン
6 クロスヘッド
7 クロスヘッド案内孔
8 ピストン棒
9 ピストン棒案内軸受
10 油切りリング
11 油止めリング
12 シリンダ
12a パッキン箱
13 ピストンロッドパッキン
14 ラビリンスピストン
15 シリンダカバー
16 シリンダ弁カバー
17 吸入シリンダ弁
18 吐出シリンダ弁
20 吸入用シリンダ弁ポート部
21 吐出用シリンダ弁ポート部
22 ラビリンス溝
23 マーカー
23A マーカー外周面
24 平面底
25 テーパ壁
25A 突条部
26 摩耗部分
26A 摩耗外周面
T 摩耗基準値
C 上端部
C’ 下端部
T1 高さ
Y 軸方向
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラビリンスピストン(14)をシリンダ(12)内で往復動させることにより圧縮を行うようにしたラビリンスピストン式往復動圧縮機において、
前記ラビリンスピストン(14)の外周面に設けられたラビリンス溝(22)の一部に、少なくとも1個所のマーカー(23)が設けられ、前記ラビリンスピストン(14)の摩耗状態を前記マーカー(23)により判定できる構成としたことを特徴とするラビリンスピストン式往復動圧縮機。
【請求項2】
前記マーカー(23)は、前記ラビリンス溝(22)内に所定の高さ(T1)で形成され、前記高さ(T1)は前記ラビリンスピストン(14)の交換時期を示す高さであることを特徴とする請求項1記載のラビリンスピストン式往復動圧縮機。
【請求項3】
前記マーカー(23)は、前記各ラビリンス溝(22)内に少なくとも1個所設けられ、かつ、各マーカー(23)は軸方向(Y)に沿って全長にわたり直線状に配置されていることを特徴とする請求項2記載のラビリンスピストン式往復動圧縮機。
【請求項4】
前記各マーカー(23)は、前記シリンダ(12)のシリンダ弁カバー(16)及び前記シリンダ弁カバー(16)の内側に位置する吸入シリンダ弁(17)又は吐出シリンダ弁(18)が除去された前記シリンダ(12)の吸入用又は吐出用シリンダ弁ポート部(20,21)に臨んで露出していることを特徴とする請求項3記載のラビリンスピストン式往復動圧縮機。
【請求項5】
前記各ラビリンス溝(22)の断面形状は、底部に平面底又は円弧状底(24)を有する一対のテーパ壁(25)よりなることを特徴とする請求項1ないし4の何れかに記載のラビリンスピストン式往復動圧縮機。
【請求項1】
ラビリンスピストン(14)をシリンダ(12)内で往復動させることにより圧縮を行うようにしたラビリンスピストン式往復動圧縮機において、
前記ラビリンスピストン(14)の外周面に設けられたラビリンス溝(22)の一部に、少なくとも1個所のマーカー(23)が設けられ、前記ラビリンスピストン(14)の摩耗状態を前記マーカー(23)により判定できる構成としたことを特徴とするラビリンスピストン式往復動圧縮機。
【請求項2】
前記マーカー(23)は、前記ラビリンス溝(22)内に所定の高さ(T1)で形成され、前記高さ(T1)は前記ラビリンスピストン(14)の交換時期を示す高さであることを特徴とする請求項1記載のラビリンスピストン式往復動圧縮機。
【請求項3】
前記マーカー(23)は、前記各ラビリンス溝(22)内に少なくとも1個所設けられ、かつ、各マーカー(23)は軸方向(Y)に沿って全長にわたり直線状に配置されていることを特徴とする請求項2記載のラビリンスピストン式往復動圧縮機。
【請求項4】
前記各マーカー(23)は、前記シリンダ(12)のシリンダ弁カバー(16)及び前記シリンダ弁カバー(16)の内側に位置する吸入シリンダ弁(17)又は吐出シリンダ弁(18)が除去された前記シリンダ(12)の吸入用又は吐出用シリンダ弁ポート部(20,21)に臨んで露出していることを特徴とする請求項3記載のラビリンスピストン式往復動圧縮機。
【請求項5】
前記各ラビリンス溝(22)の断面形状は、底部に平面底又は円弧状底(24)を有する一対のテーパ壁(25)よりなることを特徴とする請求項1ないし4の何れかに記載のラビリンスピストン式往復動圧縮機。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2010−71174(P2010−71174A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−239338(P2008−239338)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−239338(P2008−239338)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】
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