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研究者やプログラマーといったプロフェッショナル向けに開発したキーボード「HHKB」。1996年の誕生以来、20年以上の長きにわたって多くのユーザーに支持いただいています。2019年、HHKBは「グッドデザイン・ロングライフデザイン賞」を受賞しました。
HHKBはなぜこれほどに支持され、愛されるのでしょうか?グッドデザイン・ロングライフデザイン賞の受賞に加え、2019年12月に都内で開催されたイベント「HHKB ユーザーミートアップ vol.3」の様子とあわせて紹介します。
グッドデザイン・ロングライフデザイン賞の受賞について
「長年にわたり作り手と使い手、社会との対話の中で醸成され、暮らしや社会の礎となり、未来においてもその役割を担い続けてほしいデザイン、時代と共に変化する価値観を超えて、スタンダードであり続ける力を持ったデザインを顕彰する賞」(グッドデザイン賞サイトより引用)
この賞は一目見ただけでどんな商品か分かるほど人々の生活のなかに馴染み、広く愛用されている商品やサービスであり、かつ審査される時点で10年以上も継続的に提供し、さらに今後も提供を想定されたものが基準です。2019年は審査対象数123件に対して受賞件数は15件。このなかに「HHKB」が入ることは大変な名誉です。
グッドデザイン・ロングライフデザイン賞はこれまで「万年筆」や「マヨネーズ」、2019年は「ジーンズ(リーバイス501)」等、人々の生活のなかに普遍的なものとして浸透したものが受賞しています。暮らしや社会の礎という視点から見ても、変化が非常に速いIT機器の受賞はとても珍しいことです。
HHKBが登場した1996年といえば、Windows 95の発売翌年。企業、家庭においてパソコンの普及率は今ほど高くない時代でした。Yahoo! JAPANのサービスが開始された年でもあり、当時パソコンのディスプレイはブラウン管タイプが主流で、インターネットが徐々に普及し始めるタイミングでもありました。
今やビジネスの場においてパソコンは「1人1台」の時代。ブラウン管ディスプレイは姿を消して薄型の液晶ディスプレイが主流になり、インターネットは有線接続から無線による常時接続が当たり前になりました。
約20年の間にITを取り巻く環境は劇的に変化しましたが、HHKBは基本的なコンセプトとレイアウトはそのままに、機能を進化させつつプロフェッショナル達の仕事を支え続けてきたのです。
時代に沿ったインターフェースや優れたインターフェースの製品を集めた提案型雑貨店「アシストオン」(東京 神保町)代表取締役社長 大杉信雄様からは、「HHKB ユーザーミートアップ vol.3」にて、次のように語っていただきました。
「グッドデザイン・ロングライフデザイン賞は、なかなか受賞することができません。製品が良いだけではなく【製品の文化的な意義や意味】が重要視されるからです。この製品自体が良いのはもちろんです。プロフェッショナルの人が使い続けていることがその証明であります。良い道具とは、人と人を繫ぐ道具であると思っています。美しい文書や美しい作品、美しいコードを生み出すHHKBは【人と人を繫いできた特別な道具】なのです」
HHKB(Happy Hacking Keyboard)の歩み
「HHKB ユーザーミートアップ vol.3」で登壇する和田英一氏
HHKBの歴史は東京大学名誉教授の和田英一氏が「マイキーボードを作りたい」と考えたことからはじまります。和田氏は計算機科学者で、日本のコンピューター研究のパイオニアといえる存在です。和田氏は「Alephキーボード」と名付けた自作のキーボードデザインを考案。全体の配列はシンプルで持ち歩けるほどコンパクトなものになりました。それがHHKBの原型です。
それまでの常識は「パソコンを換えるとキー配列も変わる」でした。しかし、それではプロにとっては無駄なキーが増え、使い勝手が悪いため、PFUと和田氏が共同で、エンジニアが使いやすいキーボードを開発したのです。
和田氏は出来上がったHHKBを前にこう語ります。
「アメリカ西部のカウボーイたちは、馬が死ぬと馬はそこに残していくが、どんなに砂漠を歩こうとも、鞍は自分で担いで往く。馬は消耗品であり、鞍は自分の体に馴染んだインタフェースだからだ。いまやパソコンは消耗品であり、キーボードは大切な、生涯使えるインタフェースであることを忘れてはいけない」
技術者にとってのキーボードの地位を再確認させた言葉であり、今も変わらずHHKBの骨子として息づいている言葉です。
それがHHKBのファーストモデル「KB01」です。初回ロットの500台はまたたく間に完売。「プロフェッショナルのためのキーボード」は予想以上に求められていたのです。
- 発売から6年後の2002年には世界で10万台の出荷を達成。
- 2003年、キースイッチに「静電容量無接点方式」を採用した最上位モデル「HHKB Professional」を発売。キートップに文字を印刷しない「無刻印モデル」も登場、大きな話題に。
- 2006年、フレームがアルミ削り出し、キーには漆塗りを施した「HHKB Professional HG JAPAN」を発売。
- 2011年、タイピングの速度と静かさを向上させた「HHKB Professional Type-S」を発売。
- 2016年、発売から20周年。Bluetooth Ver3.0に対応した「HHKB Professional BT」でワイヤレス化を実現。
HHKBは2019年12月で発売23周年を迎えます。極上のキータッチは進化させ続け、しかし不変を大切にするこのスタンスは変えず、これまで歩んできました。HHKBの歴史は、こちらのHHKB 20周年特別サイトをぜひご覧ください。
【HHKB 20周年特別サイト】https://www.pfu.fujitsu.com/hhkeyboard/20th/
熱きファンの集い「HHKB ユーザーミートアップ」
「HHKB ユーザーミートアップ」はHHKBユーザーに向けた情報発信の場であり、またユーザーの声を直接開発メンバーに届けられる場でもある、いわばユーザーと開発メンバーの双方向性のイベントです。世の中にはファンミーティング、ユーザー会と称するイベントは数あれど、熱い思いを持ったキーボードファンが一堂に会するイベントはそうありません。それほどHHKBは熱心なファンに支えられているということなのです。
最初のユーザーミートアップは、2017年にHHKB 20周年記念として「HHKB 20周年記念ユーザーミートアップ ~これまでと今後を語り尽くそう!~」というタイトルで開催されました。事前申込制でしたが、告知後すぐに定員100名分が満席。HHKBの歴史を振り返りながら今後の可能性を語り合うという内容でした。
好評につき2018年に第2回目を開催。HHKBの進捗情報やお知らせ、高級キーボードの世界事情を議論し最後はユーザー同士の交流会となり、HHKBについて思う存分語っていただきました。
そして2019年12月10日夜、新商品発表会が行われた会場で「HHKB ユーザーミートアップ vol.3」を開催しました。
HHKB ユーザーミートアップ vol.3について
第3回目となる今回も「HHKB」を長年ご愛用いただいた、多くの皆様にお越しいただき大盛況となりました。定員は150名でしたが、今回もすぐに満席となり、ユーザーの皆様の期待の高さを再確認しました。
ユーザーミートアップ vol.3は下記のような内容で行われました。
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開会挨拶 HHKBコンセプトの生みの親である東京大学名誉教授 和田英一氏によるご挨拶
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第1部:製品紹介 山口 篤(PFU)
PFUから新製品のお知らせ、第2回ミートアップでいただいた要望事項のアップデート状況など。
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和田 英一氏によるオープニングトーク
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第2部:トークセッション
HHKB関係者やキーボード愛好者の方々を交えた議論。
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第3部:懇親会&ライトニングトーク
立食パーティー形式にて開発者、参加者同士の交流の場、またキーボード愛好家による熱いプレゼン。
ユーザーの声で進化するHHKB
イベントの第1部では、新モデルの紹介を行いました。今回発表された新モデルは、基本のコンセプトはそのままに、下記の3点を進化・向上させました。
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インターフェースの拡張と進化(Bluetooth/USBハイブリッド化とUSB Type-Cコネクターのサポート)
Bluetooth接続/USB接続のハイブリッド化を実現。従来のBluetooth接続専用モデルに対して、USB接続が加わり、無線と有線を自由に使い分けられるため、利用スタイルや使用環境に応じてパソコンやスマホなどと最適な接続ができます。
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マルチペアリング機能の向上(Bluetooth接続先切り替えの操作性が向上)
Bluetooth接続のマルチペアリング(最大4台まで登録可)の切り替えを簡単なキー操作で可能とし、操作性が向上しました。
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キーカスタマイズ機能の進化
従来の制御キーのカスタマイズに加えて文字キー全般のカスタマイズを実現。制御キーの割り当てを変更できるDIPスイッチに加えて、キーマップ全般をカスタマイズできる「キーマップ変更機能」を装備しました。
※詳細はプレスリリースをご覧ください。
今回の新モデルで注目すべき点として、これまでのユーザーミートアップで要望の高かった下記の3点を実現したことが挙げられます。
① HHKB Professional BTのType-S化
② Bluetooth接続/USB接続のハイブリッド化とマルチペアリング
③ キーマップ変更機能の搭載
ユーザーミートアップは、ユーザー同士の交流を図るだけでなく、開発メンバーとしてはユーザーからの生の声を聞けて、HHKBの開発に活かせるという点で、非常に有意義なものであると考えています。
開発メンバーにとっても貴重な場
会場内にはこれまでの製品が並び、実際の開発担当者から新製品の説明を受けられます。
ユーザーミートアップは「ファン感謝イベント」というだけではなく、機能についての要望をユーザーから生の声で聞く場でもあります。
会場の皆様は説明を受けながら新製品に触れ、その感触を確かめます。
今回のユーザーミートアップでいただいたご意見も、次回の新製品に活かされていくことでしょう。
新たなユーザーとの接点づくり
PFUは、HHKBユーザーとの接点の持ち方において、ユニークな取り組みも行っています。
今後の販売をPFUダイレクト限定とすることに伴い、商品を直接触れられるタッチ&トライスポットができました。これは「SUPER CLASSIC」「アシストオン」「原価BAR」とのコラボレーションによるもので、東京・大阪・名古屋にあります。ユーザーミートアップで登壇されたこれらのお店の代表の皆様はHHKBのユーザーでもあります。
■ 高品質で洗練されたオリジナルブランドの雑貨を中心に展開する「SUPER CLASSIC」(東京 表参道店、大阪店、名古屋店)
■ 良いデザイン、優れたインターフェースの製品を集めた提案型雑貨店「アシストオン」(東京 神保町)
■ IT系スタートアップ企業が集う東京五反田のダイニングバー「原価BAR」(東京 五反田店)
こちらで実際にHHKBをお試しいただくことができます。
また、「原価BAR」ではHHKBオリジナルラベルの「HHK BEER」を提供するだけでなく、2006年に限定販売した10周年記念モデルの「漆塗りHHKB」も展示します。
進化し続けてきたからこそ、愛され続けてきた
HHKBはこれまで常に改良、常に進化の姿勢を持ち続けることで、最高品質の座を守り続けています。その姿勢があったからこそ、20年以上も支持され続けてきました。
開発に力を入れるだけではなく、ユーザーの声に耳を傾け、新たな接点作りを模索する、常にユーザーと共に発展・進化を遂げていくHHKB。終わることのない、あくなき挑戦は続きます。今後のHHKBにぜひご期待ください。
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