かつてネットレーベルという文化があった。簡単に言うと、インターネットを拠点に活動する音楽レーベルのことだ。ここでは詳しい説明はしない。
ネットレーベルが最盛を迎えていた2009年、ひとつのレーベルが誕生した。
「(柊)つかさRecords」という名前のそれは、文字通りらき☆すたの柊つかさをサンプリングした、主にアンビエント・エレクトロニカを扱うレーベルだった。
アニメをサンプリングした音楽として、古くからナードコアというジャンルが存在する。しかし、つかさRecordsが掲げた「日常系xエレクトロニカ」という組み合わせは既存のナードコアの文脈には存在しないものだった。日常系エレクトロニカは新しい音楽の可能性であり、それはインターネットの端で静かに芽吹いていたのだった。
その後、いちごましまろモチーフの「のぶえレコーズ」、ひだまりスケッチの「ゆのっちレコーズ」の登場、そしてALTEMA Recordsからのけいおんコンピレーションアルバム「SCHOOL GIRL AKATHISIA」のドロップにより、日常系エレクトロニカはさらなる広がりを見せていく……はずだった。
しかし、現実はそうならなかった。
それからしばらくしてSoundCloud、BandCamp等の配信サービスが台頭し、音楽はレーベルからではなく個人でリリースする時代になった。ネットレーベルのブームは急速に縮小し、2013年頃には、「オワコン」扱いされるようになっていた。ゆのっちレコーズは閉鎖した。
アニメゆゆ式が放送開始したのは、奇しくもネットレーベルという文化が終りを迎えた年と同じ、2013年だった。
アニメにならなければ音は付かない。サンプリングできる音がなければ音楽は作れない。
ゆゆ式はネットレーベルにはならなかった。間に合わなかった。
これは来なかった近未来のゆゆ式Records、ゆゆ式の音楽に対する追憶と、いつか生まれるはずのゆゆ式Recordsに対する希望です。
ゆゆ式 Advent Calendar 2019 16日目の記事です。
元ネタ
a new song of mine called 'eigendynamik' - featured on the @BRAINFEEDER 'X' compilation, ...
祈り