にっぽんルポ
日本各地を記者が訪ね歩き、毎日を懸命に生きる人々や地域の魅力を伝えます
トップ > 社会 > 紙面から > 12月の記事一覧 > 記事
【社会】高江ヘリパッド内部文書 首相補佐官「反対は活動家だけ」
「本件は官邸で官房長官直轄で私が仕切っている」-。住民らの反対が続く沖縄県東村(ひがしそん)高江の米軍ヘリコプター離着陸帯(ヘリパッド)建設を巡り、菅義偉(すがよしひで)官房長官の側近とされる和泉洋人(いずみひろと)首相補佐官が、建設作業員の宿舎提供などを断った電源開発(Jパワー・本社東京)に、首相官邸にトップを呼んで翻意させていた。内部文書で「反対は活動家だけ」と地元の民意をないがしろにして協力を迫る様子に、住民らは強く反発している。 (望月衣塑子) 「Jパワーは運動会などの行事にも積極的に関わり、住民に溶け込む努力をしていたのに。ショックだ」。東村の村議伊佐真次(いさまさつぐ)氏(57)はこう憤る。 Jパワーは建設現場に隣接する同県国頭村(くにがみそん)の「沖縄やんばる海水揚水発電所」(二〇一六年七月廃止)や同県うるま市の「石川石炭火力発電所」の建設で地元の理解を得るために、施設内で潮干狩りのイベントを開催したり、収穫祭や運動会などで地元民に協力し理解を得てきた。このため、沖縄防衛局がヘリパッド建設に絡み、Jパワーの一部施設を利用することを当初は拒んだが、和泉氏の強い要請を受けて、方針変更を余儀なくされた。 伊佐氏は「和泉氏は『海外案件は何でも協力』などと甘い言葉でJパワーに言い寄り、彼らを協力せざるを得ない状態に追い込んだのだろう」と批判した。 政府がヘリパッド建設に着工したのは二〇一六年七月二十二日。ヘリパッドでは米軍の輸送機オスプレイが運用される計画があり、周辺住民は騒音被害や事故への不安などから反対運動を展開した。警察当局が県外から機動隊員約五百人を投入し、抗議する市民との衝突が連日のように続いていた。和泉氏とJパワーの北村雅良会長の首相官邸での会談が行われたのは、着工から約二カ月後だった。 会談の約一カ月後の十月から、海水揚水発電所の建物内に防衛局側が、建屋内の会議室の机を寄せてブルーシートを張り巡らせ休憩所をつくったり、建屋外にも簡易のシャワー室や休憩・宿泊所をつくった。 防衛省の沖縄担当者は「Jパワーが協力してくれたことで建設が一気に進んだわけではないが、作業員の要望には応えられるようになった」と明かす。 一方、この時期は、十月十八日に大阪府警の機動隊員が県民に「土人」と暴言を吐く差別事件が起きるなど、衝突が激化していた。 内部文書には「反対は活動家だけ。中立とか言うのは勘弁して」といった和泉氏の発言が記されていた。高江に住む自営業安次嶺雪音(あしみねゆきね)さん(48)は「和泉氏は住民を『活動家』呼ばわりしたようだが、高江に住む人は活動家ではない。普通に子供の命を守れる安全な暮らしがしたいだけ。許せない。官邸の意識が変わるのを期待するのは無理。政治を変えないと」と話した。 和泉氏は、第二次安倍政権発足後から首相補佐官を務め、菅官房長官の最側近。加計学園の獣医学部新設問題では、前川喜平元文部科学次官が「和泉氏に『総理が言えないから私が言うんだ』」と言われたと明らかにしたが、和泉氏は否定している。 PR情報
|
|