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「僕らは『eスポーツ』という言葉を勘違いしてはいない」 ~かずのこ選手の過去・現在・未来~【後編】
前編では、地元のゲームセンターで攻略おじさんに見いだされてから(?)プロゲーマーになるまでのルーツを語ってくれたBurning Core所属のかずのこ選手。後編では天才マルチゲーマーの意外な悩みが判明……!?

かずのこ:ずっとやっていましたね。やっぱり面白くて。海外大会とかも『ストリートファイター』と『ギルティギア』の2種目で出たりしていましたし。少しだけ『ブレイブルー』もやっていましたが、やっぱり“にわか”では勝ちきれませんでしたね。
――そうですね、かずのこさんといえば、いろいろなゲームで結果を出すマルチゲーマーというイメージがあります。
かずのこ:でもやっぱり難しいですよ。昔は、『ストリートファイターII』から格闘ゲームの歴史が始まっているので、“『ストリートファイター』シリーズが上手いやつがゲームが上手いやつ”みたいな空気を感じていたんですけど、自分でいろいろなゲームをやってみた感覚としては、どのゲームのプレイヤーもレベルが高くて尊敬できるなと思いました。現在の競技シーンで、いろいろなゲームで結果を出すというのは本当に難しいなと思っています。
――とは言え、かずのこさんは様々なゲームの大会でトップに食い込んでいますよね。今回のインタビュー中に絶対に聞こうと思っていたんですが、かずのこ選手がいろんなゲームで勝てている理由というか、強みになっているところはどこなんでしょう?
かずのこ:相手に合わせることですかね。流れを読む、相手に合わせる。人より得意な部分があるとしたら、その能力だけじゃないですかね。
――相手に合わせると言っても、無敵技のジャンケンとかそういうレベルでは無いですよね。
かずのこ:極端な部分で言えばそれもあるんですけど、対戦中の動きを見ていて「相手はこうしたいんだろうな」というのを読んで、そこを突くという感じですかね。
自分がこういう動きを見せたら、やっぱりそういう反応するよね? という部分。さっき(前編で)話したように、それはどの格闘ゲームにも共通する基本ではあるんですけど、そこが人より少し得意なのかな? とは思います。だから新しいゲームが出てすぐの頃に結果を出せることが多いですね。出たばかりのゲームはまだ「この局面ではこれが正解」というような攻略が完全には煮詰まっていなくて、人対人の駆け引きで勝負する部分が多いので。
――なるほど。とは言え『ウルトラストリートファイターIV』で「カプコンカップ」を制しているので、ご謙遜もあるとは思いますが(笑)。
かずのこ:でも最近本当に思いますよ。リリース直後の『ドラゴンボール ファイターズ』や『SAMURAI SPIRITS』ではけっこう良い成績を収めることができたんですけど、4年目に入った『ストV』では勝てていないですからね。
――たしかに、前シーズンまでのほうが上位入賞の回数は多かったですね。
かずのこ:『ストV』というゲームを競技として取り組もうとした場合、ものすごく硬派なプレイを要求されるんですよ。不利になったときに安直な回避策が無い。「この状況になったらこれが最適解、それを選択して来るなら相手はこう対応するべき」という感じで、攻めも守りもものすごい精度が求められるんです。『ストV』一本に絞って競っているトッププレイヤーたちはそこを超高精度でこなしたうえで、その状況にならないために安直な仕掛けをせずに、ちゃんと追い詰めて、ちゃんと崩しているんです。突き詰めようと思ったらめちゃくちゃ硬派なゲーム性なんですよ。
――たしかに『ストV』のトッププレイヤーの試合は、壁を押し合っているかのようです。安直なジャンプ攻撃は落とされるし、そう簡単に左右を入れ換えることもできない。
かずのこ:自分は相手に合わせる戦い方なので、自分の駆け引きに相手を乗せてしまえば精度なんていらないんですけど、『ストV』のトッププレイヤーはプレイの精度が高すぎて崩せないんです。彼らのレベルを崩すなら自分も『ストV』一本に絞って、同じくらいの精度で立ち向かわないといけない。
もちろん、ゲームなのでジャンケンに勝てば勝てることもあるんですけど、「カプコンプロツアー」の公式大会で上位に食い込むのはいつもだいたい同じメンバーですよね。彼らが最後のギリギリで負けないのは、そういった真面目な取り組みをしているからだと思います。
――『ストV』も4年目になり、セオリーをものすごい精度で実行できないと駆け引きに持ち込めない感じですかね。
かずのこ:他のゲームでも時間が経つほどに精度は上がっていくんですけど、『ストV』はシンプルなゲーム性も相まって、特に専門でやったほうがギリギリの部分で強いのかなって思います。
少し専門的な話にはなりますが、同じシンプルなゲームでも『SAMURAI SPIRITS』はバックステップがすごく強かったりジャンプが1フレームだったりと、強力な逃げ道があるんです。そういう部分があると自分も逃げやすかったり、逆に相手がそうやって逃げるだろうと一点読みして、大きい攻撃を当てるとか。駆け引き、人読み、みたいな部分で勝つ方法があるんですね。
さっきも話しましたが、『ストV』プレイヤーだけが極端にレベルが高いとは思っていないんです。それでいて今の自分では全然勝てないのは、やっぱりこういったゲームの性質の違いがあるんじゃないかなって思いますね。

かずのこ:たぶん他のプロゲーマーもそうだと思うんですけど、オフラインでできる対戦会がある時とかはできる限り行って練習していますね。オフ対戦がない時は、家でネット対戦で練習しています。
――昼夜逆転とかはしませんか?
かずのこ:最近は夜中にゲーム配信をしていることが大半なので、昼夜はかなり逆転しています。それでいてオフ対戦会が無い日はがっつり寝たりできるんで、ラクなものかもしれません。
――でも大変なこともありますよね?
かずのこ:海外大会が続く時とかは体もキツいし、精神的にもかなりストレスは溜まっていますね。海外と言っても、いつも決まった国に出張に行くわけじゃないので、マジで命に関わるんじゃないかって怖い思いしたりとか、慣れていない空路で飛行機が動かなくて空港に閉じ込められたままになるとか。でも最近は普段がラクなぶん、そこで帳尻があっているのかなって思うようにして乗り切ってます。
一時期、けっこう精神的にヤバかったんですよ、普通の会社勤めをしている人たちが朝から満員電車にゆられているのに、夜中にゲームして朝に寝て、それで海外に行って成績がふるわなかったときとか。ウチの奥さんが朝仕事に行くのを見てもなんか悪いな……って、精神的にけっこうキてた時期はあります(苦笑)。
――そんな経験もされていたのですね。でも現在はご結婚もされて、今の仕事で家族を養っていくことになるわけですが、今後の展望はいかがでしょうか。それこそ『ストV』がいつ続編になるかもわからないですし、『ドラゴンボール ファイターズ』もいつまであるかわからない。次に出るゲームが自分に合っているかもわからないですよね。
かずのこ:自分に合ったゲームがメインストリームから外れるっていうのは確かに怖いですけど、やっぱり自分は楽しくゲームをしたいし、そういう部分を見せて行きたいって思っています。
マルチゲーマーとか言われますけど、いろいろなゲームをやっているのも、楽しいからなんですよ。各々のゲームで知り合った人たちも含めて。
本当に賞金を狙って食っていこうと思ったら、賞金が一番大きくて、配信でも反響の大きい人気タイトルをずっとやり込むのが正解だと思うんです。でも自分はいろんなゲームをやらないとモチベが下がってしまうので、むしろ新しいゲームをやることには抵抗はないんですよ。
――1本に絞ってやっていくと、しんどくなってしまうんですね。
かずのこ:そうですね。配信もいろいろなゲームをやっちゃってますし。それがプロゲーマーとして正解かはわからないんですけど。
シリアスな練習をしてアスリート的な面を見せるのは、もちろんプロとして大事だと思うんですけど、自分は「ゲームは楽しいよ!」というのを伝えるのもプロゲーマーの仕事だろうと思っているんです。負けてイライラしてるところを見せるとか、結果が出ていないからこのゲーム以外はやっちゃダメとか、このゲームは配信で数字が出ないからやっちゃダメとか、そういう姿を見てプロゲーマーになりたいとは思えないじゃないですか。
格ゲー以外のジャンルを見ても、やっぱり楽しそうに配信している人がシーンを牽引していますよね。強いのも大事ですけど、“楽しんで強い”という理想が自分の中にあります。
――すごくいろいろなゲームの配信をされていますよね。
かずのこ:今のチームはすごく自由にやらせてくれるので、いろいろなことを試しています。それこそ、ただ練習になっちゃってしんどい配信になってきてたら、いったんやめて別のゲームに移行したり。つまらなそうに練習しているだけの映像を人に見せたらゲームにも失礼だし、見てる人にも失礼じゃないですか。だから単なる練習になる時は配信でやらないようにしてます。
――ああ、なるほど。ただの練習は配信してないんですね。
かずのこ:練習も、楽しめているときは配信していいと思うんですよ。でも「今ちょっと行き詰まってるな、ちょっとシビアに考えないといけないな」みたいな時は配信じゃないところで練習するようにしています。それで楽しくなってきたらまた配信すればいい。やっぱり「これは仕事です!」という感じでやっているのを見せるのはマイナスだと思っているんです。
「もう『ストV』やっていないの?」とかよく聞かれるんですけど、今は思う通りのプレイができなかったりして楽しそうにやる自信がないから配信してないだけで、配信外では練習していますよ。
――かずのこさんのそういうスタンスって、あまり聞いたことが無かったので意外でした。
かずのこ:言ってもしかたがないっていうか……。楽しそうにゲームをやっているのが一番ですね。
でもやっぱり大会は真剣にやってるところを見せたいですし。いつも真面目に練習して、サポートしてくれる人もたくさんいて初めて、その場に立てているので。もちろん配信で真剣なところを見せるのも、楽しそうにやっていればいいと思うんですよ。プロゲーマーになったから、このチームに所属したから、楽しく真剣にやれています、というふうに。でも「このチームに所属したことで、無理やりやらされています」みたいに見えちゃうと最悪じゃないですか。

かずのこ:配信するのが面白くなりすぎているのも、プロゲーマーとしてどうなんだろうと思う部分もあるんですけどね(笑)。『ストV』のプロゲーマーとか、アスリート気質の人が多いじゃないですか。eスポーツアスリートとして、メディアとかに出る以上、こうあるべき、みたいな認識があるんだと思うんですけど、自分にはできないかなと思います。
――やらないのではなくて、できないんですか?
かずのこ:自分がやると「やらされてる感」が出てしまうと思いますね。プロゲーマーは息苦しいな、と見えてしまいそうで。これ言っちゃうとズルいんですが、自分はちょっとそういう方面は向いていないなと思っています。
――でも、そういったファン目線を意識し続けていられるのは“強み”ですよね。エンターテイナーとしてすごく正しいと思います。
かずのこ:なんというか、ゲームの上手さ、強さを見せて大会でも活躍して、という「プロゲーマー」のイメージがある一方で、ゲームの楽しさ、面白さを見せる「プロストリーマー」みたいな人たちがいるわけじゃないですか。自分はプロゲーマーなのに、プロストリーマーの考え方をしちゃってるのかなっていうのが悩みですね。「もしかして俺セコくないか?」と。
――セコい、というのは?
かずのこ:例えば今年の「EVO」で言うと、『ストV』は少ししか勝てなかったけど『ドラゴンボール ファイターズ』がベスト8で、『SAMURAI SPIRITS』が2位で、ってプロストリーマーを名乗っているんだったら十分な成績だと思うんですけど、僕の肩書は「プロゲーマー」なので「『SAMURAI SPIRITS』1本に絞ってやっていたら優勝できたんじゃないの?」って言われてしまうわけですよ。
――マルチゲーマーがネックになってしまうと、と。
かずのこ:他のゲームに出場すること自体が逃げなんじゃないかと思ってしまうんですよね。『ストV』一本でやっている人が、17位とかあと一歩くらいの成績で終わって落ち込んでいる横で、「俺はいろいろやっているけど君と同じ順位」みたいな感じになるのはセコすぎるな、と思ってしまうんです。その人に合わせる顔がないというか……。こっちは保険があるからプレッシャーも違うし、向こうは「他のゲームもやっているかずのこと一緒かよ」と思うだろうし。
だから、一本でやっている人に対して後ろめたい部分があるんです。
――片手間でやっている人と同じかよ、みたいなイメージになっちゃうと。
かずのこ:その時点でセコいんですよね。1タイトルに集中している人からしたら「こいつ鬱陶しいな」って思われているんだろうな、と。大会でも俺と当たりたくないと思うんですよ。だからもう『ストV』の大会には出ないほうがいいんじゃないかと思ったこともあります。
――練習会とかでも、他のプレイヤーからそういうことを感じたりしますか?
かずのこ:練習会で一緒にやっている人は、昔から一緒にやっているんで、わかってもらえています。とくにウメハラさんとかときどさんとか、あの辺はめちゃくちゃ実力主義の人なんで。
例えば、若手のプロゲーマーとかは大会で当たりたくないですねえ。勝ってもごめんねって思っちゃうし。若手にどう思われてるとか気になってしまって(苦笑)。
――さすがにもうベテランなので、もう若手を育てていく立場ですもんね。
かずのこ:それもマルチゲーマーの悩みなんですけど、1タイトルに集中してやっているときどさんとかが若手に物申したりするのは、多少厳しくてもすごい説得力があるじゃないですか。でもなんだかフラフラしてる自分が言うのはちょっと……。
――今の若手プレイヤーは、競技シーンがある状態で育っているからストイックですよね。
かずのこ:本当にそうなんですよ。例えばジョニィ君とか、練習会でも集中するためにずっとイヤホンを付けていて、対戦の合間にワイワイおしゃべりしながら、とかそんなんじゃなくて、対戦が終わった後も一人で考えごとをしているみたいな。あのストイックさはプロゲーマーだなって思いますね。
その横で、俺がフラフラ~っと来てナウマンに「お前、ここんとこ寒い配信してんな~」みたいな話をしてるわけじゃないですか。プロストリーマーなのにプロゲーマーを名乗って、ある意味詐欺なのではないかとさえ……。
――いやいやいや、そんなことは無いです! ……結構ネガティブなんですね。
かずのこ:元々ゲーセンでゲームしてるだけの小僧ですから。そりゃ陰キャですよ(笑)。
――eスポーツの時代になっても、ゲーセン小僧のマインドまでは変わらない?(笑)。
かずのこ:それは変わらないですよ。でも「eスポーツ」っていう言葉にはすごく助かってます。この言葉のおかげでメディアにも出させてもらっていますし、ゲームを専門にプレイするプロゲーマーがいて、業界がそれを盛り立てるという、海外にあったスタンスを持ち込んでくれたので。
この言葉が正しいとか正しくないとか、答えの無い話はひとまず置いておくとして、「eスポーツ」という単語がなかったら何も変わっていなかっただろうなと思います。
――間違いなく、時代というか、ゲームを取り巻く環境は変わったと思います。
かずのこ:ただ、この言葉が出てきたからと言って、僕たちがやっていることが変わったわけではないということは言っておきたいですね。
「eスポーツ」という言葉は外向きの言葉なんですよ。昔からゲームが好きでプレイしている人たちは、「eスポーツ」なんて言葉を使うまでもなく、ゲームは極めたらすごく感動できるものだってことは知っているので。

かずのこ:少なくとも、僕らみたいにeスポーツだなんだと言われるようになる前からプレイしているゲーマーは、eスポーツを高尚なものだとか勘違いはしていません。
別にアスリートを気取りたいから「eスポーツ」と言っているわけではなく、ゲームを盛り上げたいからその言葉に乗っかっているだけですよね。
僕らはみんなと同じ、ゲーム好きなだけの人ですよ。ゲームが得意だから、極めた先にこういう感動があるんだよ、ということを見せたいだけなんですよ。
――プレイヤー以外の人が観戦するようになったことで、それを見せる側が肯定されたというか。
かずのこ:『ストリートファイターII』とか『バーチャファイター』をゲーセンでやっていた人たちの中にも、今のプロゲーマーと遜色ないくらいゲームと向き合っていた人たちもいたと思うんですよ。ただ、自分たちのタイミングで「eスポーツ」っていう聞こえのいい言葉とともにゲームの感動が認知されて、たまたまプロゲーマーになっているだけなんです。
――向き合っても許される世の中になったわけですね。
かずのこ:それこそプロゲーマー第一世代のウメハラさんとかが、意図的にカッコつけてくれて、地道に文化を作ってくれた先に今があります。かと思えば、『ストリートファイターII』のプレイヤーを紹介したり「獣道」という企画をやったり、古いゲーマーに向けて今のシーンとの橋渡しをするような活動までしていますしね。
――「獣道」はすごく面白かったですね。「カプコンプロツアー」とは別の、対人戦の素晴らしさが凝縮されていました。
かずのこ:あれこそ、eスポーツという言葉に違和感を持っている人にとっては最高のイベントでした。あれを継続するのはすごく大変だと思います。たまにネットとかで「ウメハラは最近何もしていない」みたいな声も聞こえてきて。「ウメハラさんのやっていることがどんだけ大変か、わかるか?」と言いたくなることもありますね。
――かずのこ選手の口からここまでウメハラさんリスペクトが出てくるって、なんだか少し意外でした。
かずのこ:そりゃリスペクトしますよ。無い文化を作ってここまでにしてくれたわけですし。先人たちには恩返しをしたいと思っていますが、今できるのはまず僕らの世代が今の流れを悪いほうに持っていかないことですよね。
かずのこ:プロゲーマーとは何か? ストリーマーとは何か? みたいな根本的な部分から正直、悩んでいるところはあります。今所属しているチーム「Burning Core」(以下BC)が自分に対して本当に優しいので、好きなことを試させてもらっているところです。
――確かにBCに入ってからは、より自由になった感じはします。
かずのこ:GODSの時も自由だったんですけど、あの時はなんとか僕が周りを引っ張っていかないといけない、みたいな気持ちが強かったんですよね。自分が優勝して、配信も盛り上げて、GODSの他のプレイヤーもプロを目指してもらったり、そういったことを自分がある程度考えなくてはいけないのかな、という思いがあったんです。
今のチームに入ってからはむしろ、チームが僕をどんどんバックアップしてくれて、おかげさまでホントに自由にやらせてもらっているんですよね。
――さらに自由度が増したんですね。
かずのこ:今は本当にやりたい放題やらせてもらっています。配信だったりも、「かずのこさんのやりたいことならそれが一番いい」とやらせてくれるんですよ。
それに、今のチームには『リーグ・オブ・レジェンド』とか他のジャンルのメンバーもいますし、格ゲーでは立川も頑張っているんで、僕ひとりがコケたところでチームが止まるわけでもないですし。チーム力を使わせてもらいつつ、いろいろやらせてもらっていきますよ。
BCはすごく理解のあるチームなので、僕が自由にゲームをやっているのが好きで応援してくれている人には、僕に好きなようにやらせてくれているチームも好きになってほしいです。
――今後もかずのこさんなりのやり方で活躍していってほしいと思います。今日はありがとうございました。

あらゆるゲームを制する魔王か、ゲームの楽しさを魅せる伝道師か。
外野から見るとまるで当たり前のように好成績を連発、順風満帆のキャリアを積んでいるように見える彼から、こんなにも苦悩の言葉が出て来るとは思ってもいなかった。
普段のどこか素っ気ない話しぶりからは想像がつかなかったが、日本のゲーセン文化が育んだマルチゲーマーは、eスポーツという新しい流れの中で自分の立ち位置を模索し、周囲の協力的な環境の中、新たな試みを続けている。
2020年以降もきっと、彼の活躍を目にするたびに、我々は実感することになるのだろう。
「やっぱ、“かじゅ”なんだよなぁ……!」
■関連リンク
かずのこ選手 Twitter
https://twitter.com/kazunoko0215
Kazunoko Channel
https://www.youtube.com/channel/UCQ78z42ZYZHLlCiDrUiZoiw
Burning Core
https://burning-core.com/
マルチゲーマーの秘訣と、ぶち当たった壁
――『ウルトラストリートファイターIV』で行われた「カプコンカップ2015」で優勝して、翌年の『ストリートファイターV』(以下『ストV』)シーズン1に行くわけですが、一方で『ギルティギア』シリーズも続けていましたよね。かずのこ:ずっとやっていましたね。やっぱり面白くて。海外大会とかも『ストリートファイター』と『ギルティギア』の2種目で出たりしていましたし。少しだけ『ブレイブルー』もやっていましたが、やっぱり“にわか”では勝ちきれませんでしたね。
――そうですね、かずのこさんといえば、いろいろなゲームで結果を出すマルチゲーマーというイメージがあります。
かずのこ:でもやっぱり難しいですよ。昔は、『ストリートファイターII』から格闘ゲームの歴史が始まっているので、“『ストリートファイター』シリーズが上手いやつがゲームが上手いやつ”みたいな空気を感じていたんですけど、自分でいろいろなゲームをやってみた感覚としては、どのゲームのプレイヤーもレベルが高くて尊敬できるなと思いました。現在の競技シーンで、いろいろなゲームで結果を出すというのは本当に難しいなと思っています。
――とは言え、かずのこさんは様々なゲームの大会でトップに食い込んでいますよね。今回のインタビュー中に絶対に聞こうと思っていたんですが、かずのこ選手がいろんなゲームで勝てている理由というか、強みになっているところはどこなんでしょう?
かずのこ:相手に合わせることですかね。流れを読む、相手に合わせる。人より得意な部分があるとしたら、その能力だけじゃないですかね。
――相手に合わせると言っても、無敵技のジャンケンとかそういうレベルでは無いですよね。
かずのこ:極端な部分で言えばそれもあるんですけど、対戦中の動きを見ていて「相手はこうしたいんだろうな」というのを読んで、そこを突くという感じですかね。
自分がこういう動きを見せたら、やっぱりそういう反応するよね? という部分。さっき(前編で)話したように、それはどの格闘ゲームにも共通する基本ではあるんですけど、そこが人より少し得意なのかな? とは思います。だから新しいゲームが出てすぐの頃に結果を出せることが多いですね。出たばかりのゲームはまだ「この局面ではこれが正解」というような攻略が完全には煮詰まっていなくて、人対人の駆け引きで勝負する部分が多いので。
――なるほど。とは言え『ウルトラストリートファイターIV』で「カプコンカップ」を制しているので、ご謙遜もあるとは思いますが(笑)。
かずのこ:でも最近本当に思いますよ。リリース直後の『ドラゴンボール ファイターズ』や『SAMURAI SPIRITS』ではけっこう良い成績を収めることができたんですけど、4年目に入った『ストV』では勝てていないですからね。
――たしかに、前シーズンまでのほうが上位入賞の回数は多かったですね。
かずのこ:『ストV』というゲームを競技として取り組もうとした場合、ものすごく硬派なプレイを要求されるんですよ。不利になったときに安直な回避策が無い。「この状況になったらこれが最適解、それを選択して来るなら相手はこう対応するべき」という感じで、攻めも守りもものすごい精度が求められるんです。『ストV』一本に絞って競っているトッププレイヤーたちはそこを超高精度でこなしたうえで、その状況にならないために安直な仕掛けをせずに、ちゃんと追い詰めて、ちゃんと崩しているんです。突き詰めようと思ったらめちゃくちゃ硬派なゲーム性なんですよ。
――たしかに『ストV』のトッププレイヤーの試合は、壁を押し合っているかのようです。安直なジャンプ攻撃は落とされるし、そう簡単に左右を入れ換えることもできない。
かずのこ:自分は相手に合わせる戦い方なので、自分の駆け引きに相手を乗せてしまえば精度なんていらないんですけど、『ストV』のトッププレイヤーはプレイの精度が高すぎて崩せないんです。彼らのレベルを崩すなら自分も『ストV』一本に絞って、同じくらいの精度で立ち向かわないといけない。
もちろん、ゲームなのでジャンケンに勝てば勝てることもあるんですけど、「カプコンプロツアー」の公式大会で上位に食い込むのはいつもだいたい同じメンバーですよね。彼らが最後のギリギリで負けないのは、そういった真面目な取り組みをしているからだと思います。
――『ストV』も4年目になり、セオリーをものすごい精度で実行できないと駆け引きに持ち込めない感じですかね。
かずのこ:他のゲームでも時間が経つほどに精度は上がっていくんですけど、『ストV』はシンプルなゲーム性も相まって、特に専門でやったほうがギリギリの部分で強いのかなって思います。
少し専門的な話にはなりますが、同じシンプルなゲームでも『SAMURAI SPIRITS』はバックステップがすごく強かったりジャンプが1フレームだったりと、強力な逃げ道があるんです。そういう部分があると自分も逃げやすかったり、逆に相手がそうやって逃げるだろうと一点読みして、大きい攻撃を当てるとか。駆け引き、人読み、みたいな部分で勝つ方法があるんですね。
さっきも話しましたが、『ストV』プレイヤーだけが極端にレベルが高いとは思っていないんです。それでいて今の自分では全然勝てないのは、やっぱりこういったゲームの性質の違いがあるんじゃないかなって思いますね。
プロゲーマーの日常はラク!?
――現在の生活ペースはどのような感じなのでしょうか?かずのこ:たぶん他のプロゲーマーもそうだと思うんですけど、オフラインでできる対戦会がある時とかはできる限り行って練習していますね。オフ対戦がない時は、家でネット対戦で練習しています。
――昼夜逆転とかはしませんか?
かずのこ:最近は夜中にゲーム配信をしていることが大半なので、昼夜はかなり逆転しています。それでいてオフ対戦会が無い日はがっつり寝たりできるんで、ラクなものかもしれません。
――でも大変なこともありますよね?
かずのこ:海外大会が続く時とかは体もキツいし、精神的にもかなりストレスは溜まっていますね。海外と言っても、いつも決まった国に出張に行くわけじゃないので、マジで命に関わるんじゃないかって怖い思いしたりとか、慣れていない空路で飛行機が動かなくて空港に閉じ込められたままになるとか。でも最近は普段がラクなぶん、そこで帳尻があっているのかなって思うようにして乗り切ってます。
一時期、けっこう精神的にヤバかったんですよ、普通の会社勤めをしている人たちが朝から満員電車にゆられているのに、夜中にゲームして朝に寝て、それで海外に行って成績がふるわなかったときとか。ウチの奥さんが朝仕事に行くのを見てもなんか悪いな……って、精神的にけっこうキてた時期はあります(苦笑)。
――そんな経験もされていたのですね。でも現在はご結婚もされて、今の仕事で家族を養っていくことになるわけですが、今後の展望はいかがでしょうか。それこそ『ストV』がいつ続編になるかもわからないですし、『ドラゴンボール ファイターズ』もいつまであるかわからない。次に出るゲームが自分に合っているかもわからないですよね。
かずのこ:自分に合ったゲームがメインストリームから外れるっていうのは確かに怖いですけど、やっぱり自分は楽しくゲームをしたいし、そういう部分を見せて行きたいって思っています。
マルチゲーマーとか言われますけど、いろいろなゲームをやっているのも、楽しいからなんですよ。各々のゲームで知り合った人たちも含めて。
本当に賞金を狙って食っていこうと思ったら、賞金が一番大きくて、配信でも反響の大きい人気タイトルをずっとやり込むのが正解だと思うんです。でも自分はいろんなゲームをやらないとモチベが下がってしまうので、むしろ新しいゲームをやることには抵抗はないんですよ。
▲YouTubeチャンネル「かずのこチャンネル」。本当に多様なタイトルを配信している
――1本に絞ってやっていくと、しんどくなってしまうんですね。
かずのこ:そうですね。配信もいろいろなゲームをやっちゃってますし。それがプロゲーマーとして正解かはわからないんですけど。
シリアスな練習をしてアスリート的な面を見せるのは、もちろんプロとして大事だと思うんですけど、自分は「ゲームは楽しいよ!」というのを伝えるのもプロゲーマーの仕事だろうと思っているんです。負けてイライラしてるところを見せるとか、結果が出ていないからこのゲーム以外はやっちゃダメとか、このゲームは配信で数字が出ないからやっちゃダメとか、そういう姿を見てプロゲーマーになりたいとは思えないじゃないですか。
格ゲー以外のジャンルを見ても、やっぱり楽しそうに配信している人がシーンを牽引していますよね。強いのも大事ですけど、“楽しんで強い”という理想が自分の中にあります。
――すごくいろいろなゲームの配信をされていますよね。
かずのこ:今のチームはすごく自由にやらせてくれるので、いろいろなことを試しています。それこそ、ただ練習になっちゃってしんどい配信になってきてたら、いったんやめて別のゲームに移行したり。つまらなそうに練習しているだけの映像を人に見せたらゲームにも失礼だし、見てる人にも失礼じゃないですか。だから単なる練習になる時は配信でやらないようにしてます。
――ああ、なるほど。ただの練習は配信してないんですね。
かずのこ:練習も、楽しめているときは配信していいと思うんですよ。でも「今ちょっと行き詰まってるな、ちょっとシビアに考えないといけないな」みたいな時は配信じゃないところで練習するようにしています。それで楽しくなってきたらまた配信すればいい。やっぱり「これは仕事です!」という感じでやっているのを見せるのはマイナスだと思っているんです。
「もう『ストV』やっていないの?」とかよく聞かれるんですけど、今は思う通りのプレイができなかったりして楽しそうにやる自信がないから配信してないだけで、配信外では練習していますよ。
――かずのこさんのそういうスタンスって、あまり聞いたことが無かったので意外でした。
かずのこ:言ってもしかたがないっていうか……。楽しそうにゲームをやっているのが一番ですね。
でもやっぱり大会は真剣にやってるところを見せたいですし。いつも真面目に練習して、サポートしてくれる人もたくさんいて初めて、その場に立てているので。もちろん配信で真剣なところを見せるのも、楽しそうにやっていればいいと思うんですよ。プロゲーマーになったから、このチームに所属したから、楽しく真剣にやれています、というふうに。でも「このチームに所属したことで、無理やりやらされています」みたいに見えちゃうと最悪じゃないですか。
自分はプロゲーマーじゃないのでは……!?
――たしかに、最近のかずのこさんの配信はすごく楽しそうで面白いです。かずのこ:配信するのが面白くなりすぎているのも、プロゲーマーとしてどうなんだろうと思う部分もあるんですけどね(笑)。『ストV』のプロゲーマーとか、アスリート気質の人が多いじゃないですか。eスポーツアスリートとして、メディアとかに出る以上、こうあるべき、みたいな認識があるんだと思うんですけど、自分にはできないかなと思います。
――やらないのではなくて、できないんですか?
かずのこ:自分がやると「やらされてる感」が出てしまうと思いますね。プロゲーマーは息苦しいな、と見えてしまいそうで。これ言っちゃうとズルいんですが、自分はちょっとそういう方面は向いていないなと思っています。
――でも、そういったファン目線を意識し続けていられるのは“強み”ですよね。エンターテイナーとしてすごく正しいと思います。
かずのこ:なんというか、ゲームの上手さ、強さを見せて大会でも活躍して、という「プロゲーマー」のイメージがある一方で、ゲームの楽しさ、面白さを見せる「プロストリーマー」みたいな人たちがいるわけじゃないですか。自分はプロゲーマーなのに、プロストリーマーの考え方をしちゃってるのかなっていうのが悩みですね。「もしかして俺セコくないか?」と。
――セコい、というのは?
かずのこ:例えば今年の「EVO」で言うと、『ストV』は少ししか勝てなかったけど『ドラゴンボール ファイターズ』がベスト8で、『SAMURAI SPIRITS』が2位で、ってプロストリーマーを名乗っているんだったら十分な成績だと思うんですけど、僕の肩書は「プロゲーマー」なので「『SAMURAI SPIRITS』1本に絞ってやっていたら優勝できたんじゃないの?」って言われてしまうわけですよ。
――マルチゲーマーがネックになってしまうと、と。
かずのこ:他のゲームに出場すること自体が逃げなんじゃないかと思ってしまうんですよね。『ストV』一本でやっている人が、17位とかあと一歩くらいの成績で終わって落ち込んでいる横で、「俺はいろいろやっているけど君と同じ順位」みたいな感じになるのはセコすぎるな、と思ってしまうんです。その人に合わせる顔がないというか……。こっちは保険があるからプレッシャーも違うし、向こうは「他のゲームもやっているかずのこと一緒かよ」と思うだろうし。
だから、一本でやっている人に対して後ろめたい部分があるんです。
――片手間でやっている人と同じかよ、みたいなイメージになっちゃうと。
かずのこ:その時点でセコいんですよね。1タイトルに集中している人からしたら「こいつ鬱陶しいな」って思われているんだろうな、と。大会でも俺と当たりたくないと思うんですよ。だからもう『ストV』の大会には出ないほうがいいんじゃないかと思ったこともあります。
――練習会とかでも、他のプレイヤーからそういうことを感じたりしますか?
かずのこ:練習会で一緒にやっている人は、昔から一緒にやっているんで、わかってもらえています。とくにウメハラさんとかときどさんとか、あの辺はめちゃくちゃ実力主義の人なんで。
例えば、若手のプロゲーマーとかは大会で当たりたくないですねえ。勝ってもごめんねって思っちゃうし。若手にどう思われてるとか気になってしまって(苦笑)。
――さすがにもうベテランなので、もう若手を育てていく立場ですもんね。
かずのこ:それもマルチゲーマーの悩みなんですけど、1タイトルに集中してやっているときどさんとかが若手に物申したりするのは、多少厳しくてもすごい説得力があるじゃないですか。でもなんだかフラフラしてる自分が言うのはちょっと……。
――今の若手プレイヤーは、競技シーンがある状態で育っているからストイックですよね。
かずのこ:本当にそうなんですよ。例えばジョニィ君とか、練習会でも集中するためにずっとイヤホンを付けていて、対戦の合間にワイワイおしゃべりしながら、とかそんなんじゃなくて、対戦が終わった後も一人で考えごとをしているみたいな。あのストイックさはプロゲーマーだなって思いますね。
その横で、俺がフラフラ~っと来てナウマンに「お前、ここんとこ寒い配信してんな~」みたいな話をしてるわけじゃないですか。プロストリーマーなのにプロゲーマーを名乗って、ある意味詐欺なのではないかとさえ……。
――いやいやいや、そんなことは無いです! ……結構ネガティブなんですね。
かずのこ:元々ゲーセンでゲームしてるだけの小僧ですから。そりゃ陰キャですよ(笑)。
――eスポーツの時代になっても、ゲーセン小僧のマインドまでは変わらない?(笑)。
かずのこ:それは変わらないですよ。でも「eスポーツ」っていう言葉にはすごく助かってます。この言葉のおかげでメディアにも出させてもらっていますし、ゲームを専門にプレイするプロゲーマーがいて、業界がそれを盛り立てるという、海外にあったスタンスを持ち込んでくれたので。
この言葉が正しいとか正しくないとか、答えの無い話はひとまず置いておくとして、「eスポーツ」という単語がなかったら何も変わっていなかっただろうなと思います。
――間違いなく、時代というか、ゲームを取り巻く環境は変わったと思います。
かずのこ:ただ、この言葉が出てきたからと言って、僕たちがやっていることが変わったわけではないということは言っておきたいですね。
「eスポーツ」という言葉は外向きの言葉なんですよ。昔からゲームが好きでプレイしている人たちは、「eスポーツ」なんて言葉を使うまでもなく、ゲームは極めたらすごく感動できるものだってことは知っているので。
僕らはみんなと同じ、ゲームが好きなだけの人
――古いゲーマーからすると、eスポーツという言葉にはどこかこそばゆい感じはありましたね。かずのこ:少なくとも、僕らみたいにeスポーツだなんだと言われるようになる前からプレイしているゲーマーは、eスポーツを高尚なものだとか勘違いはしていません。
別にアスリートを気取りたいから「eスポーツ」と言っているわけではなく、ゲームを盛り上げたいからその言葉に乗っかっているだけですよね。
僕らはみんなと同じ、ゲーム好きなだけの人ですよ。ゲームが得意だから、極めた先にこういう感動があるんだよ、ということを見せたいだけなんですよ。
――プレイヤー以外の人が観戦するようになったことで、それを見せる側が肯定されたというか。
かずのこ:『ストリートファイターII』とか『バーチャファイター』をゲーセンでやっていた人たちの中にも、今のプロゲーマーと遜色ないくらいゲームと向き合っていた人たちもいたと思うんですよ。ただ、自分たちのタイミングで「eスポーツ」っていう聞こえのいい言葉とともにゲームの感動が認知されて、たまたまプロゲーマーになっているだけなんです。
――向き合っても許される世の中になったわけですね。
かずのこ:それこそプロゲーマー第一世代のウメハラさんとかが、意図的にカッコつけてくれて、地道に文化を作ってくれた先に今があります。かと思えば、『ストリートファイターII』のプレイヤーを紹介したり「獣道」という企画をやったり、古いゲーマーに向けて今のシーンとの橋渡しをするような活動までしていますしね。
――「獣道」はすごく面白かったですね。「カプコンプロツアー」とは別の、対人戦の素晴らしさが凝縮されていました。
かずのこ:あれこそ、eスポーツという言葉に違和感を持っている人にとっては最高のイベントでした。あれを継続するのはすごく大変だと思います。たまにネットとかで「ウメハラは最近何もしていない」みたいな声も聞こえてきて。「ウメハラさんのやっていることがどんだけ大変か、わかるか?」と言いたくなることもありますね。
――かずのこ選手の口からここまでウメハラさんリスペクトが出てくるって、なんだか少し意外でした。
かずのこ:そりゃリスペクトしますよ。無い文化を作ってここまでにしてくれたわけですし。先人たちには恩返しをしたいと思っていますが、今できるのはまず僕らの世代が今の流れを悪いほうに持っていかないことですよね。
今のチームで、より自分らしく、自由に
――今はいろいろなゲームの配信などをやっていますが、これから力を入れていこうと思ってることはなんですか?かずのこ:プロゲーマーとは何か? ストリーマーとは何か? みたいな根本的な部分から正直、悩んでいるところはあります。今所属しているチーム「Burning Core」(以下BC)が自分に対して本当に優しいので、好きなことを試させてもらっているところです。
――確かにBCに入ってからは、より自由になった感じはします。
かずのこ:GODSの時も自由だったんですけど、あの時はなんとか僕が周りを引っ張っていかないといけない、みたいな気持ちが強かったんですよね。自分が優勝して、配信も盛り上げて、GODSの他のプレイヤーもプロを目指してもらったり、そういったことを自分がある程度考えなくてはいけないのかな、という思いがあったんです。
今のチームに入ってからはむしろ、チームが僕をどんどんバックアップしてくれて、おかげさまでホントに自由にやらせてもらっているんですよね。
――さらに自由度が増したんですね。
かずのこ:今は本当にやりたい放題やらせてもらっています。配信だったりも、「かずのこさんのやりたいことならそれが一番いい」とやらせてくれるんですよ。
それに、今のチームには『リーグ・オブ・レジェンド』とか他のジャンルのメンバーもいますし、格ゲーでは立川も頑張っているんで、僕ひとりがコケたところでチームが止まるわけでもないですし。チーム力を使わせてもらいつつ、いろいろやらせてもらっていきますよ。
BCはすごく理解のあるチームなので、僕が自由にゲームをやっているのが好きで応援してくれている人には、僕に好きなようにやらせてくれているチームも好きになってほしいです。
――今後もかずのこさんなりのやり方で活躍していってほしいと思います。今日はありがとうございました。
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あらゆるゲームを制する魔王か、ゲームの楽しさを魅せる伝道師か。
外野から見るとまるで当たり前のように好成績を連発、順風満帆のキャリアを積んでいるように見える彼から、こんなにも苦悩の言葉が出て来るとは思ってもいなかった。
普段のどこか素っ気ない話しぶりからは想像がつかなかったが、日本のゲーセン文化が育んだマルチゲーマーは、eスポーツという新しい流れの中で自分の立ち位置を模索し、周囲の協力的な環境の中、新たな試みを続けている。
2020年以降もきっと、彼の活躍を目にするたびに、我々は実感することになるのだろう。
「やっぱ、“かじゅ”なんだよなぁ……!」
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