AIメディアの中の人が選ぶ、AI初心者が読んだら幸せになれそうな9冊

人工知能ブームにかこつけて(?)生み落とされたのか、世に大量に溢れるAI関連本。

ディープラーニングや機械学習などの技術をしっかり学ぶ開発者向けのものから、AI時代の子供の教育やAIが仕事を奪うといった脅威論まで、枚挙に暇がない。

玉石混交の情報の海に溺れず、わたしたちは自分の知りたい情報にたどり着けるのだろうか……。そんな迷えるAI初心者に朗報だ。

今回、Legde.aiを運営し、日々AI業界の動向に触れているレッジのメンバーに、「自分と同じ職種のAI初心者」にオススメしたい本を聞いた。なお、AI初心者は「AIと機械学習、ディープラーニングの違いが分からないレベルの人」と定義する。

Amazon本カテゴリ「AI」の検索結果画面。Amazonに「検索結果20,000以上」と言われたら何を選べばいいか見当がつかない。「人工知能」でも3,000件以上ヒットしている

ではさっそく見ていこう。推薦者の愛あふれるレビューにもぜひ目を通してほしい。

あの数式はこう使うのか!『人工知能プログラミングのための数学がわかる本』

著者石川 聡彦
発売日2018年02月24日
出版社KADOKAWA
ISBN9784046021960
価格2,750円(本体2,500円+税)

出典:https://www.kadokawa.co.jp/product/321708000339/

AIプログラミングや機械学習の専門書の多くは、高校数学は理解している、という前提のもとで解説が進んでいく。ページ数の制約上、数学の解説にスペースを割けないという事情もありそうだが、結果として万人がAIそのものを知ることが難しくなっている。

そうした数学知識の「差分」を埋めるのが本書だ。中学〜高校基礎の入門レベルにはじまり、微分や線形代数、確率と統計といった、ディープラーニングや機械学習で使われる数学を学ぶ。もちろん、機械学習でいかに使われるのかの解説も欠かさない。

後半は実践編として、データからの推定、自然言語処理、画像認識に挑戦できる。

現在、AI初学者向けのビジネススクールの講師も担当していますが。AIについて具体的に理解しようと思うと数学の知識が欠かせないため、この書籍に沿って講義をしています。学生時代はなんのために数学を勉強しないといけないのかわからなかったと思うのですが、これを読めば、当時学んだことがどのように活用されているのかもイメージしやすい一冊となっています。
JDLAの推薦書籍にもなっています。
(Data Marketing div. データサイエンティスト)

人工知能の父の生涯を知る『エニグマ アラン・チューリング伝』

著者アンドルー・ホッジス(著)、土屋 俊、土屋 希和子(訳)
発売日2015年2月
出版社勁草書房
ISBN978-4-326-75053-5
価格本体2,700円+税

出典:http://www.keisoshobo.co.jp/book/b190613.html

第二次世界大戦のナチス・ドイツ政権下で生まれた暗号機「エニグマ」を解析し、イギリスを救った天才数学者、アラン・チューリングの伝記。

AI界隈では「チューリングテスト」でもよく知られているこの人物、「ノイマン型コンピュータ」に先駆けて「チューリングマシン」を考案し、コンピュータの原理を作ったとも言われている。

そんな「人工知能の父」チューリングの功績だけでなく、行動・心情といった人となりもありありと伝わってきて味わい深い。本書をもとに映画化した『イミテーション・ゲーム』とあわせてどうぞ。

『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』という映画にもなっている、その原作である。2018年、多くの人工知能(AI)の基礎になっているニューラルネットワークの研究で世界をリードしてきた、グーグルのジェフリー・ヒントンが受賞した「チューリング賞」でも彼の名前は見たことがあるだろう。

他にも、イギリスの新しい50ポンド紙幣の肖像にも採用されることが2019/7/15に明らかになった。

AIについて多くを知りたいと思った時、AI分野を作った人の歴史から入っても良いかもしれない。
(Data Marketing div. アカウントプランナー)

公式本ならではの安定感『深層学習教科書 ディープラーニング G検定(ジェネラリスト) 公式テキスト』

著者浅川伸一ほか(著)、 一般社団法人日本ディープラーニング協会(監修)
発売日2018年10月22日
出版社翔泳社
ISBN9784798157559
価格本体2,800円+税

出典:https://www.shoeisha.co.jp/book/detail/9784798157559

一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA)による、ディープラーニングG検定(ジェネラリスト)の公式テキスト。人工知能(AI)とは何かから始まり、ディープラーニングを支える技術や産業での応用事例まで幅広くさらえる。

シンギュラリティやチューリングテスト、フレーム問題など、人工知能研究で議論されている問題も取り上げており、本書でアウトラインをおさえつつ、興味を引いたトピックをさらに深堀りしていくという楽しみ方もできるのでは。

薄く広くではあるけれど、包括的にディープラーニングのことが書いてあるので、非常に初歩の勉強としてはいい本だと思う。
『人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの』の大事なエッセンス部分だけ入っているのもすごくわかりやすい。
(Media div. メディア統括)

AIといえば”おなじみ”の名著『人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの』

著者松尾 豊
発売日2015年03月09日
出版社KADOKAWA
ISBN9784040800202
価格1,540円(本体1,400円+税)

出典:https://www.kadokawa.co.jp/product/321410000316/

すでに手にとった人も多いであろう、人工知能の過去・現在・将来を紐解く一冊。人工知能研究の歴史やディープラーニングが人工知能研究に与えたインパクトなどが優しい語り口でつづられている。

初版は2015年発行だが、人工知能(ディープラーニング)の本質を突いているため、今もなおその内容は色褪せていない。

一般社団法人 日本ディープラーニング協会の推薦図書として挙げられている本。人工知能研究者による、人工知能の過去から未来までの変遷を紹介している。そもそも人工知能とは一体何なのか、人工知能はどこまでできるのか、人工知能によって未来はどう変わっていくのかということが網羅的に知ることができる。
著者が人工知能研究の第一人者でもあるため、未来について触れている場面では抽象的でありつつ説得力があり、ワクワクする反面こんなこともできるようになるのか、と少し恐怖を覚える。一方で、苦手なこともきちんと触れているので、下手な記事を読むくらいならば本書を読んだ方が正しい知識を得られるだろう。
(Data Marketing div. データサイエンティスト)

ざっくりAIを知るならここから?『マンガでわかる!人工知能 AIは人間に何をもたらすのか』

著者松尾 豊(監修)かんようこ(イラスト)
発売日2018年05月22日
出版社SBクリエイティブ
ISBN978-4-7973-9254-8
価格1,300円(税別)

出典:https://www.sbcr.jp/product/4797392548/

近未来都市「人工知能都市」を舞台とし、AIの歴史や未来を分かりやすく解説するマンガ。今後はどのようにAIが活用されていく?というトピックもあり、SF好きな人も楽しめるかもしれない。とにかく気軽に、AIがどんなものかを知りたいという人にマッチしそう。

監修を務めているのは『人工知能は人間を超えるか』の著者、松尾豊氏だ。

マンガでわかりやすく知識を教えてくれる入門書的位置付け。とても丁寧でわかりやすく書かれているため、全く知識が無い人や、AIの意味・できることが不透明な人におすすめできる。
特に現代の第三次AIブームに至るまでの歴史や主要なイベントを解説してくれているので、AIのキホンはこの本を読めば理解できると思う。しかし、最新の技術や各技術の深掘りはされていないので、あくまでもAIについて知りたい人向け。
(Media div. インターン)

需要予測の本質に迫る『確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力』

著者森岡 毅、今西 聖貴
発売日2016年06月02日
出版社KADOKAWA
ISBN9784041041420
価格3,520円(本体3,200円+税)

出典:https://www.kadokawa.co.jp/product/321512000337/

「マーケッター必読の書」としても呼び声高い本書。USJのV字回復に寄与したマーケター・森岡毅氏と、彼の盟友で需要予測の専門家・今西聖貴氏による共著となっている。

機械学習やディープラーニングによる予測を活かすには、という視点で本書を見ると、需要予測の基本的な考え方や実例が紹介された「需要予測の理論と実際」や「消費者データの危険性」パートから多くの学びが得られるのではなかろうか。

マーケター、データサイエンティスト両方にオススメな本です。前半は思考的な部分が書かれており、後半は数学的な話が書かれているので、数学が苦手な人は少し苦労するかもしれません。
(Data Marketing div. データサイエンティスト)

24世紀の未来人に捧ぐ『なめらかな社会とその敵』

著者鈴木健
発売日2013年1月
出版社勁草書房
ISBN978-4-326-60247-6
価格本体3,200円+税

出典:http://www.keisoshobo.co.jp/book/b105891.html

AIというと、裏側を支える技術の解説だとか、私達の実際の生活がどうなるか、といった実務的な部分に目が行きがちだ。どこか抽象的で複雑な技術や概念を単純化して、自分の中に落とし込みたい、という気持ちになる。

対して、「複雑な社会を複雑なまま生きられるか?」と問いかける本書。想定読者は300年後の未来人、目次には「伝播投資貨幣」「法と軍事」といった文言が並び、いったい何の本なのか……?と思わせられるが、着地点を知ることができるのは読破した人だけだ。

「複雑な社会を複雑なまま生きることが可能なのか。」という問いに対して、AIやブロックチェーンなど最近の技術や理論に触れながら、伝播投資貨幣PICSY、分人民主主義Divicracy、構成的社会契約論といった具体的な手法を提唱していく書籍です。技術進歩による未来の生活の捉え方に大きな示唆を与えてくれます。
(Data Marketing div. マーケティング、新規事業)

何のためのデータ分析かを考える『会社を変える分析の力』

著者河本 薫
発売日2013年07月18日
出版社講談社
ISBN978-4-06-288218-7
価格本体860円(税別)

出典:http://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000210704

データ分析とは、ビジネスの意思決定や経営課題の解決に繋がるものであるべき、という一貫した主張に支えられている一冊。分析の手法やテクニック解説というより、データ分析に関わる人の「心構え」に重きを置いている。

Kaggleなどのデータサイエンスコンペを活用し、「解く」ことを外注する企業も増える昨今。データを紐解くことやそれ以上に、分析結果を活用し実務に活かす能力が重要だという事実を認識させられるだろう。

現滋賀大学教授で、当時大阪ガスの河本さんの著書。ビジネスライクにデータ分析を始めたい人にオススメです。2013年に出版された本ですが、今でも時々読み返します。ビジネスにおけるデータ分析に重要なのは、見つける力、解く力、使わせる力というのが実体験に基づいており、共感できる。
(Data Marketing div. データサイエンティスト)

AI時代をサバイブする力って何?『人工知能時代を生き抜く子どもの育て方』

著者神野元基
発売日2017年4月20日
出版社ディスカヴァー・トゥエンティワン
ISBN978-4-7993-2061-7
価格1500円 (税抜)

出典:https://d21.co.jp/book/detail/978-4-7993-2061-7

2045年に到来するといわれているシンギュラリティ(技術的特異点)。人間を超えるとも言われる中、子どもたちはどんな能力を身につければ良いのだろうか――こうしたAI×教育がテーマの本が増えている。

本書ではYouTubeやドローン、タブレットを活用した事例も取り上げられており、STEM教育、アダプティブラーニング、といった教育関連のトピックに興味ある人はもちろん、AIや人工知能という言葉になじみがなくても、読み進めたくなるはず。

著者の神野元基氏は、AI型タブレット教材「Qubena(キュビナ)」を提供するCOMPASSのCEOを務める。

最近じゃなくてすみません&友達が書いた本ってことで推薦しちゃいました。読みどころというよりは、AIに興味ない人でも(教育とか子育て観点で)読めるというところが良い点かと思う。AIに関してゴリゴリ書いてあるというよりは、これからのテクノロジー社会に適応力がある人間を育てるためのSTEM教育(現在のSTEAM教育)メインの内容かな。
(Corporate planning div. 経営企画)

おわりに:AIの世界を覗く切り口はさまざま

Udacityをはじめ、AIを学べるオンラインコンテンツも充実しているが、体系的かつ多くの人にシェアしやすい形で知が編纂されているのが書籍の強みだと思う。この記事が、「AIについて知りたい」というあなたにとって、AIの世界を泳ぐ道標になるなら幸いだ。

私自身初めて知ったタイトルも多かった。技術進歩と社会や伝記という切り口があると気づき、学べることはまだまだ多いと実感。来年も「AIについてもっと知りたい」人にとって役立つ・学びある記事をお届けできるよう、筆者も自己研鑽に励みたい。

レシート買取アプリ「ONE」が保険料控除証明書も買取、その利用目的とは?

12月27日、株式会社hokanは、WED株式会社(旧:ワンファイナンシャル株式会社)の提供する「ONE」のアプリ内にて保険料控除証明書の買取を実施したことを発表。2019年11月にONE内で保険料控除証明書を買い取ったところ、1万枚ぶんの画像を収集したそうだ。

hokanは2018年7月に、WED(当時:ワンファイナンシャル)と提携した。当時、わずか30分で1250枚の保険証券の画像を収集している。また、WEDではレシート以外の画像を収集した最初の事例となっている。

今回収集した控除証明書の画像1万枚ぶんは、年末調整の自動化・効率化ツール開発に必要なデータセットとして利用予定とのことだ。保険会社にも多く寄せられる年末調整への課題に対し、AIの活用を目指す。もちろん、収集した情報については、アプリ内で本人から同意を得ていない目的で利用することはないという。

>>プレスリリース(PR TIMES)


レシートの画像認識はグルメ情報でもAIが利活用

ONEはレシートを“買う”というある意味でお手軽な体験だったため、大きな話題を巻き起こした。我々の生活で手にすることの多いレシートは、さまざまな情報が盛り込まれている。そして、レシートの情報を活用しようとする企業は今となっては少なくない。

2019年5月には、LINE株式会社とLINE CONOMI株式会社がスマートフォン向けグルメレビューアプリ「LINE CONOMI」のサービスを開始した。このアプリの特徴は、画像認識などのAI技術により、レシートなどからグルメ記録を投稿できることだ。

レシートを読み取ると、店舗情報と食べたメニューがテキスト化され表示。あとはお店の雰囲気やメニューへの口コミを書いて投稿するという流れだ。

レシートだけに関して触れるならば、筆者個人としては電子レシートがいち早く普及することを切に……切に願う。財布のなかが気が付くとパンパンになっていることが多い。いや、多いというか常にだ。電子レシートが普及すれば、ONEやLINE CONOMIのようなレシート情報の提供もスムーズになるだろうし、家計簿アプリと連動することも簡単になるはず。

AI(人工知能)は仕事を奪うのか生み出すのか|なくなる仕事・新たな仕事【事例あり】

巷では、シンギュラリティ2045年問題などが取り上げられ、AI(人工知能)がもたらす未来を不安視する声も上がっています。その中には、将来の仕事の存在そのものが危ぶまれていると言われることも多々あります。事実、現在でもさまざまなビジネス現場でAIが導入されていて、省力化や人件費削減などの人の労働を代替するような動きも見られてきています。

結論から言うと、AIやロボティクスによって既存の仕事は必ず変化します。すでに単純な事務作業などは機械が自動的に行えるレベルまで到達しています。この流れは今後ますます加速していくでしょう。本稿ではAIによって私たちの仕事がどのように変化していくのかを見ていきます。

AIが仕事を奪うとは?なくなる仕事、なくならない仕事

Photo by mohamed mahmoud hassan on Pixabay

AIが将来、人間の仕事を奪うのか」という命題において、オックスフォード大学の論文と野村総合研究所のレポートから具体的に紐解いていきます。どのような仕事がなくなる、残ると言われているのでしょうか。

オックスフォード大学の論文

オックスフォード大学の論文「THE FUTURE OF EMPLOYMENT: HOW SUSCEPTIBLE ARE JOBS TO COMPUTERISATION?(外部リンク)」では、将来90%以上の確率で消える職業が紹介されています。

将来なくなる確率が高い職業・なくなる確率が低い職業とは、一体どのような仕事なのでしょうか?論文からいくつかピックアップしました。

なくなる可能性が高い職業 なくなる確率
電話勧誘販売 99%
保険の査定担当者 99%
数理技術者 99%
証券会社員 98%
弁護士の秘書 98%
不動産ブローカー 97%
レジ担当者 97%
料理人 96%
事務員 96%

参考:https://www.oxfordmartin.ox.ac.uk/downloads/academic/The_Future_of_Employment.pdf

傾向を見ると、主にAIの方が正確かつ素早く処理できる職業が消える可能性が高いとされています。現在でもレジの自動化や調理のロボット化などの機械化の兆候がみえるようになっており、一部の業務においては人間に代わる存在になりつつあります。

なくなる可能性が低い職業 なくなる確率
リクレーション療法士 0.28%
聴覚訓練士 0.33%
社会福祉士 0.35%
歯医者 0.44%
精神カウンセラー 0.48%
人事マネジャー 0.55%
コンピュータアナリスト 0.65%
教職者 0.95%
エンジニア 1.40%

参考:https://www.oxfordmartin.ox.ac.uk/downloads/academic/The_Future_of_Employment.pdf

一方、対話でのコミュニケーションが必要とされているカウンセラーや社会福祉士、専門性の高いコンピュータアナリストやエンジニアなどの職業は、仕事として残る可能性が高いと論じられています。AI化やロボティクス化が進む中、今後一層需要が高まっていくのかもしれません。

野村総合研究所のレポート

また、野村総合研究所のレポート(外部リンク)でも10〜20年後に日本の労働人口のおよそ49%が就いている職業において、人工知能やロボット等で代替可能との結果が出ています。

代替可能性が高い職業には、主に受付係や医療事務、スーパーの店員などの事務作業が多い一方で、代替可能性が低い職業にはバーテンダーや俳優、アートディレクターなど創造性の高いものが挙げられています。次の表は、代替可能性が高い職業と低い職業を対比したものです。

代替可能性が高い職種:全職種の49% 代替可能性が低い職種:全職種の51%
事務員(一般・医療・経理など)・受付係・駅員・機械木工業・管理人(マンション・寮・駐車場)・金属加工業・建設作業員・自動車工(組み立て・塗装)・警備員・新聞配達員・測量士・タクシー運転手・電車運転士・路線バス運転士・配達員(宅配便・郵便・バイク便)・データ入力係・ホテル客室係・メッキ職人・レジ係

…etc

アートディレクター・グラフィックデザイナー・編集者・フリーライター・漫画家・シナリオライター・演奏家・ミュージシャン・料理研究家・フードコーディネーター・アナウンサー・放送ディレクター・報道カメラマン・セラピスト・作業療法士・理学療法士・犬訓練士・映画監督・舞台演出家・舞台美術家・俳優・テレビタレント・音楽教室講師・学芸員・ケアマネージャー・経営コンサルタント・医師・教員・保育士・幼稚園教諭・ネイリスト・美容師・デザイナー・学者・ツアーコンダクター・旅行会社のカウンター係

…etc

参考:https://www.nri.com/-/media/Corporate/jp/Files/PDF/news/newsrelease/cc/2015/151202_1.pdf

人間が担うべき仕事の特徴

Photo by mohamed mahmoud hassan on Public Domain Pictures.net

では、AIやロボットの発展によって、将来的にどのようになっていくと言われるのでしょうか。『人工知能は人間を超えるか-ディープラーニングの先にあるもの』で著者の松尾豊氏は3つの時間軸で切り分けて述べています。

短期的(5年以内)

短期的にはそれほど急激な変化は起きないだろう。ただし、会計や法律といった業務の中にビッグデータや人工知能が急速に入り込むかもしれない。また、ビッグデータや人工知能はマーケティングにも活用されるだろう。さまざまな事業でビッグデータの分析と人工知能の活用が進んでいくので、データ分析のスキルや人工知能に関する知識は重要になるだろう。広告や画像診断、防犯・監視といった一部の領域では急速に人工知能の適用が進んでいくはずだ。

出典:『人工知能は人間を超えるか-ディープラーニングの先にあるもの』 p.230より(松尾豊著、KADOKAWA/中経出版)

5年以内の短期的な時間軸だと、人間の仕事に対してそのすべてを担うほどのAIが参入してくることはまだないと考えられています。ただ、一部の事務作業や会計作業等にはAIが入り込む余地はあり、現在のAIのビジネスへの浸透具合をみると現実的な予測です。

中期的(5〜15年)

生産管理やデザインといった部分で、人間の仕事はだいぶ変わってくるはずだ。(中略)

異常検知というタスクは、高次の特徴量を生成できる特徴表現学習の得意とするところであり、「何かおかしい」ことを検知できる人工知能の能力が急速に上がってくる。たとえば、監視員や警備員といった仕事だ。明示的に監視するという仕事でなくとも、店舗の店員や飲食店の従業員でも、「何かおかしいことに気づいて対応する」という業務が仕事の中に織り込まれていることが多い。

こうした仕事は、基本的にセンサー+人工知能代替することができる。例外処理は例外処理で別につくればよくなるので、ルーティンワークの多くの部分は人工知能に任せることができるようになる。

出典:『人工知能は人間を超えるか-ディープラーニングの先にあるもの』 p.231より(松尾豊著、KADOKAWA/中経出版)

5~15年の短期的な時間軸では、まだルーティンでない仕事、つまりクリエイティブな仕事は人間の仕事として重要だと考えられています。クリエイティビティは人間の特有のものとして生き続ける可能性が高いです。

長期的(15年以上先)

15年以上先の長期的な時間軸では、人間の仕事として重要なものは大きく2つに分かれると、松尾氏は同書の中で述べています。

1つは、「非常に大局的でサンプル数の少ない、難しい判断を伴う業務」で、経営者や事業の責任者のような仕事である。(中略)いろいろな情報を加味した上での「経営判断」は、人間に最後まで残る仕事だろう。

一方、「人間に接するインターフェースは人間の方がいい」という理由で残る仕事もある。(中略)最後は人間が対応してくれた方がうれしい、人間に説得される方が聞いてしまうなどの理由で、人間の相手は人間がするということ自体は変わらないだろう。むしろ人間が相手をしてくれるというほうが「高価なサービス」になるかもしれない。

出典:『人工知能は人間を超えるか-ディープラーニングの先にあるもの』 p.232より(松尾豊著、KADOKAWA/中経出版)

AIにとってはサンプル数、つまりデータ量が多ければ多いほど良い精度が出るという特徴があります。それゆえに、人間の経験値がものをいうような経営判断などではAIの入り込む余地は小さいと言えそうです。

また、サービス業などの「人間味」が重要視されるような仕事は依然として残るはずですが、相手が人間であるべき仕事とそうでない良い仕事の住み分けも起こるとも考えられています。

AIの発展は新たな仕事を創出する

Photo by mohamed mahmoud hassan on Needpix.com

これまでは既存の仕事について話してきましたが、仕事はなくなるばかりではありません。AIやロボットが仕事に浸透してくることにより、新たに生まれる仕事があるはずです。

最近では、時代の変化とともにYouTuberやプロゲーマーなど、今までにない職種が生まれています。技術の進化とともに新たに仕事が生まれ、そして消えていく。一層入れ替わりの激しい社会になっていくのかもしれません。

デジタル、テクノロジー、コンサルティング、運用サービスなどのITサービスを提供するアメリカの多国籍企業アメリカのコグニザントがまとめた報告書、「21 JOBS OF THE FUTURE(外部リンク)」を見てみると、これからの時代に生まれうる職業が提唱されています。

Data Detective(データ調査官)

データ調査官はあらゆるデータを専門的に扱います。AIやIoT技術が発展することで、収集するデータは大幅に増え、大量のデータを解析し、クライアント企業に納品することを生業とします。これから、あらゆるもののデータを収集していく中で、データを適切に解析できる能力の需要が今後は高まっていくようです。

Augmented Reality Journey Builder(AR体験クリエイター)

AR(拡張現実)は昨今私たちの生活に浸透しつつあります。現在ではPokémon GOを始めとしたエンタメから、製造現場やスポーツの教育現場へのARデバイスの導入まで、これからの発展が約束されている領域です。

ARの発展とともに、AR体験をプロデュースする職業が生まれるかもしれません。彼らはAR世界での体験の脚本やデザインまでを手がけ、拡張現実体験を全体的にプロデュースします。

Artificial Intelligence Business Development Manager(AIビジネス開発マネジャー)

AIビジネス開発マネージャーは、AIビジネスを推進する役割を担っています。セールスやマーケティング担当者と連携しながら、顧客の要望・課題に対してAIを導入していきます。また、チームビルディングやプロダクトマネジメントなども彼らの仕事に含まれています。

AIはさまざまなことができますが、AIが自らを売り込むことはできません。AIに精通したスペシャリストが導入を支援しないことには、AIは浸透しないのです。

Walker/Talker(一緒に歩く相手/喋る相手)

AIやロボットが発達して多くの仕事を代替し、医療技術が発展することによって、人々はより健康に長生きすることができます。こうして平均寿命が伸び、健康な高齢者が増えた時、話し相手や一緒に歩いてくれる相手が必要となるでしょう。時間を共有しながら、他愛もない話をしてくれる“人”の存在はさらに価値を持つことになるでしょう。

人と関わったり話を聞いたりするのが好きであれば、そんな人の天職になりうるのかもしれません。

事例から紐解く、現在のAIの導入段階

ここからは私たちの身の回りでどの程度AIが活躍しているのか、その一部を紹介します。

職人の勘や経験をAIが守る。養蚕業での初めてのAI導入を成功させた話


2〜3世紀に大陸から伝わってきたとされる養蚕業。1930年頃ピークだった生糸を支える蚕が存続の危機に瀕しています。蚕を育てて繭を作る養蚕業は、化学繊維の登場などにより需要が減少していきました。1930年の生産量は40万トンでしたが、2018年の生産量は110トンと非常に少なくなっています。

農家の高齢化や後継者問題によりノウハウの継承が困難になっているのも現状です。蚕の孵化卵の見分け作業は10名が1日中取り組んでも数日間を要する作業でした。しかし、AIによって、作業時間を6時間未満に短縮することに成功。1人で作業することも容易になりました。

この作業では、ソニーが提供するAI開発ソフトウェア「Neural Network Console」が使われました。Neural Network Consoleは、初心者でも簡単に操作でき、AIのハードルを下げることにも繋がっています。

「病気を治す」から「幸せになる」医療へ。人間を超え始めた医療AIの現在地

医療現場におけるAI技術の活用は、1970年代頃から模索されていました。現在では画像認識による効率性の改善と診断、検出精度が向上してきています。特に医療の現場でAI導入が進んでいるのが放射線科の領域です。CT画像から脳出血を検出するAIの認識精度はAUC(認識精度を表す指標)0.948。これは人間がじっくりと見て判断するレベルに相当します。この検出AIによって医師の診察時間を80%削減することが可能です。

現在の患者は、医療ケアを求める傾向にあります。医療ケアとは、「痛みをとってほしい」「病気の不安を解消してほしい」といったような悩みを解消し、生活を高めることを指します。しかし、AIの開発者は病気の発見や治療にフォーカスを当てて開発していることが多く、今後は個人に合わせた治療の提供ができるかが課題となっています。

300店のベーカリーに導入された画像認識AIレジの秘密に迫る

ベーカリーではパンを袋詰めするのと同時に、レジ作業を進めなければいけません。ピーク時は、大変混雑することもあり、お客様を待たせてしまうこともあったそうです。

株式会社ブレインのAIレジ「ベイカリースキャン」はお客様のトレイ上のパンを、画像認識技術を用いて自動でスキャン。識別されたパンは購入者側の画面に表示され、購入金額が表示され会計ができます。パンは3~4つ用意し、様々な角度から撮影し学習させることで、2~3分で登録ができるという導入のハードルの低さも特徴です。

導入後、レジの処理速度アップで売上が5~10%ほどアップしました。 店員2人 × レジ3台 = 6人の人員が必要だったものも、1人 × 3台 = 3人で人件費大幅削減。また、スタッフトレーニングではパンの種類/名前/値段/レジ打ちを覚えながらやることで、研修期間を1ヶ月から1週間に短縮しています。くわえて、レジ入力時間を1回あたり15秒 → 8秒に短縮できました。

AIの導入は進み続け、今の仕事は絶えず変化する

Photo by mohamed mahmoud hassan on Pixabay

レイ・カーツワイル博士が提唱した2045年問題は、AIなどの技術が、自ら人間より賢い知能を生み出すことが可能になるシンギュラリティが2045年に起こると予測し、提唱されたものです。つまり、これからおよそ20~30年ほどでAIはめまぐるしい発展を遂げているということです。

現在の新卒社員でも20~30年後は現役で働いている年齢です。定年の年齢も今後さらに上がっていくとも言われています。そのため、今を生きる私たちは仕事の未来を意識せざるを得ません。

本稿で紹介したAIと仕事の関係はあくまで予測の範囲は超えず、不確実な未来に関する情報ですが、私たちの仕事のあり方に変化がもたらされるのは揺るぎようのない事実です。絶えず変化する社会に順応して、自らを柔軟に変化させていくことが、これから求められるスキルなのかもしれません。

“学習済みモデル搭載のエッジ端末”で手軽にAIの恩恵を。オプティムのAIカメラサービスに迫る

  • Collaborator:

ある分野で作成した学習済みモデルを他の分野にも汎用的に使えないものかーー。AIを活用する現場で最近、こんな声が聞かれます。

特定の課題に特化した学習によってAIが大きな力を発揮する一方で、個別のケースに基づいた学習済みモデルの利用は、その専門性や独自性の高さから「課題ごとに個別開発しなければならない」「同じような処理を重複して開発しがち」など、効率的が思うように進んでいないのが現状です。

そんな中、AIを活用とした産業向けソリューションを提供するテック企業・オプティムは、現場の機器レベルで高速な推論処理を実現するエッジAI技術を駆使し、さまざまな分野で共通してニーズのある学習済みモデルを汎用化させた「OPTiM AI Camera(外部リンク)」を開発。煩雑な学習や開発作業なしにAIを課題解決に利用できるパッケージを開発しました。

OPTiM AI Cameraは具体的にどんな機能を持つのか、そこにエッジAI技術はどう活かされているのかーー。株式会社オプティム 経営企画本部ディレクターの山本大祐氏に聞きました。

人体検知モデルを学習済み。11業種の課題に「すぐ使える」パッケージサービス「OPTiM AI Camera」

――山本
「OPTiM AI Cameraは店鋪や施設など業界別・利用目的別に設置されたカメラからデータを収集し、学習済みモデルを活用して画像解析を行うことでマーケティング、セキュリティー、業務効率などの領域を支援するパッケージサービスです。

さまざまな業種の課題やニーズにあわせて収集したデータをもとに生成した学習済みモデルを備えており、学習やカスタマイズをすることなく、すぐに導入できます」

OPTiM AI Cameraで提供されている学習済みモデルが対応する業種は現在11業種。

店舗向けに入店者数やその属性を自動検出したり、交通機関向けには「ホームでのふらつき」など事故につながる乗客の行動を自動検出するなど、これまで導入前に大量の学習プロセスを必要としてきた推論処理が、製品の導入とともにそのまま利用できるといいます。

このような画像認識処理を導入するためには、事前の学習プロセスや課題に応じたカスタマイズ作業に大きな時間を取られ、導入の障壁となってきました。

OPTiM AI Cameraではそれぞれのケースにおける学習済みモデルを共通化。エッジAIの技術を駆使してこれらをエッジ端末側にあらかじめ組み込むことによって、手軽に「人体検知学習済みのカメラ機能」を現場に導入できるといいます。

――山本
「経済において利益を生むのは、小売や事務作業といった人間が関わる分野、いわゆる『第二次産業』以降の産業が大多数です。これらの分野では共通して『人の動きを検出する』学習済みモデルが重宝されることがわかっていました。

学習済みモデルを共通化して配布すれば、課題にあわせて『パーツを選ぶ』ような感覚でAIの恩恵をすぐに受けられ、ビジネスの大幅なスケールが期待できます」

「クラウド処理を待っていられない」OPTiM AI CameraにエッジAIが必要だった理由

OPTiM AI Cameraは、その判別処理の迅速さが大きな特徴。これを実現するためにはカメラから送られる大量かつ大容量の画像データを瞬時に解析し、推論処理へリアルタイムに反映させる必要があります。

この技術的なニーズを達成するためには、エッジAIの導入が必須であったといいます。

――山本
「人体検知を始めとする画像認識処理においては、詳細なデータを取得するため、現場に多数の端末を設置し、それぞれにおいて高精細な画像データを生成します。

すべての端末から上がってくる膨大なデータをクラウドで処理しようとすると多大なネットワーク負荷がかかり、回線が逼迫してしまいます。このため、データ生成地点(=エッジ)で処理を完了できる仕組みがどうしても必要だったのです

エッジ、すなわちこれまでで言うローカル環境側の端末のみで解析処理を完了できるのはエッジAIの大きなメリットのひとつ。処理済みの比較的軽いデータをクラウドへ上げるようにすれば、ネットワーク負荷を大幅に減らすことができます。

エッジAIの導入は、「処理の高速化という面でも必要だった」と山本氏は話します。

――山本
「カメラで捉える状況は逐一変化するため、それを監視する端末には軽快な動作が求められます。都度都度処理をクラウドに任せて、その結果を待っていては間に合いません。

ローカル側で迅速に判定処理を行う必要性からも、エッジAIの導入は必要でした」

クラウド側で生成した推論をふたたびローカル側に戻し、エッジ端末のなかで完結させることができれば、処理の度にサーバーへ問い合わせをすることなく、処理時間を大幅に短縮することができます。

もっとも、このためにはエッジ端末側にも一定以上のハードウェアが必要。その選定は、システム全体のパフォーマンスを決定づける重要な要素になります。

オプティムではGPUを内蔵したHPのワークステーションをエッジ端末として採用していますが、その理由もハードウェア上のニーズが大きく影響していました。

――山本
「HPのワークステーションはスペックや動作の安定性で多くの実績があり、今回のようなタフさを求められる現場での使用にはぴったりでした。

OPTiM AI Cameraにおいては、接続するカメラの台数に応じてHP Z2 Mini G4 WorkstationやHP Z4 G4 Workstation、HP Z6 G4 Workstationと、それぞれの条件に見合った処理スペックのワークステーションを切り替えて使用しています」

OPTiM AI Cameraで使用されているワークステーション群。出典:オプティム提供資料

「ユーザーはベンダーを気にしない。だからこそ柔軟なカスタマイズを」

もうひとつ山本氏が採用の決め手として挙げたのが、「カスタマイズの柔軟さ」という要素。エッジAIにおいてはGPUの性能=処理性能と考えがちですが、開発を進めるにつれ、実はCPUなどのスペックも少なからず影響を及ぼすことがわかったといいます。

――山本
「このような状況では、たとえば『CPUのスペックだけを上げたい』というように極めてピンポイントなスペック変更が必要なケースがよく出てきます。

HPではパーツ単位で柔軟に組み替えて製品を出荷してくれるし、不具合時にも全国の代理店を経由してサポートが受けられる。こうした点も採用の決め手となりました」

AI開発の現場において、ハードウェア部分のチューニングは大きな手間のひとつ。ハードウェア面を信頼できるベンダーに任せ、開発者側はロジックの改良にリソースを集中させるという方針をオプティムでは取っていることがわかります。

ネットワーク負荷や通信速度、またハードウェア的なボトルネックといったあらゆる要素に対してPoCレベルで直接的なチューニングを行いやすいという環境は、開発スピードを担保する面でも非常に大きな意味を持つと言えそうです。

――山本
「カメラのメーカーからすれば、いかに自社の製品を売り上げるかが目的となるわけで、売上げアップのためにAIを搭載するという向きもあるでしょう。

しかしエンドユーザーにとって、OPTiM AI Cameraにどこのメーカーのカメラが使われているかは関係ありません。さらに言えば、課題を解決できればどこの会社のAIを搭載していても構わないはずです。

我々のソリューションは、あらゆるデバイスやAIエンジンを接続していけるような存在にならなければいけないと考えています」

オプティムが考えるのは、あくまでユーザーファーストな課題解決。搭載する学習済みモデルも自社開発にこだわらず、誰でも手軽にAI技術を利用できる総合的なプラットフォームの構築を通じて、AIそのものの裾野を広げていくという姿勢が印象的でした。

かつてパソコンは、黎明期はさまざまなベンダーで個別にOSやハードを開発していた状況から規格化を経て「日用品化」していきました。AIもまた、背後の細かな構成を気にすることなく、純粋な課題解決の道具として気軽に使える時代へと進化していく過程にあるのかもしれません。

>>すぐにAIを活用できる画像解析サービス「OPTiM AI Camera」
>>エッジAI・データサイエンスに最適なHPワークステーション

(取材・執筆・天谷窓大、編集・高島圭介)

スマートスピーカーとは |仕組み・機能・選び方【14機種の徹底比較】

昨今、飛躍的に市場シェアを拡大させていているスマートスピーカー。GoogleやAmazonを筆頭に、LINEやSONYなども、各社さまざまな製品を発表しています。

2019年スマートスピーカーの世界販売台数は2億790万台に成長するといわれ、2018年の1億1400万台から、成長率は82.4%と大きく成長する見込みです。
参考:https://www.canalys.com/newsroom/canalys-global-smart-speaker-installed-base-to-top-200-million-by-end-of-2019

これらのスマートスピーカーの発展には、音声解析技術はもちろん、「Hey, Siri」や「OK, Google」などのウェイクワードに代表される音声認識の技術が大きく貢献しています。

今回は、スマートスピーカーの基本的な機能や使い方、おすすめの14機種を紹介していきます。

スマートスピーカーとは

Photo by yangjiepsy01 on Pixabay

スマートスピーカーとは、話し手の命令を音声認識により抽出して、自然言語処理によって指示を理解し実行する機能を有するスピーカーのことです。

Amazon AlexaやGoogleアシスタントなどに代表される音声アシスタント機能は、クラウドサービスとして構築されています。そのため、インターネットを経由してクラウドサービスに接続されているので、リアルタイムでユーザーの対応が可能です。つまり、スマートスピーカーはAIが話し手の命令を音声で認識し、クラウドサービスに接続してさまざまな情報やサービスを引き出せる製品のことを指します。

スマートスピーカーに使われている技術

スマートスピーカーが私たちの声に応対するのに、音声認識自然言語処理のふたつの技術が使われています。

まず、音声認識によって、音声データがテキストデータに変換されます。

次に、テキストデータに自然言語処理をすることで、その言葉が持つ意味を解析します。このことによって音声アシスタントは、私たちが発する音声の意味を理解し、天気を調べて教えてくれる、などの応対ができるのです。

–音声認識とは
音声認識とは、コンピュータにより音声データをテキストデータに変換する技術です。人間が言葉をそのまま理解するのに対し、コンピュータは、音響モデルや言語モデルを用いて音声を解析し、認識します
–自然言語処理とは
自然言語処理(Natural Language Processing)とは、人間の言語(自然言語)を機械で処理することです。具体的には、言葉や文章といったコミュニケーションで使う「話し言葉」から、論文のような「書き言葉」までの自然言語を対象として、それらの言葉が持つ意味を解析する処理技術を指します

スマートスピーカーが注目される理由

スマートスピーカーが注目される理由のひとつに、スマートスピーカーがVUIを搭載したデバイスであることが挙げることができます。

— VUI(Voice User Interface)とは
「VUI」とは、「Voice User Interface(ボイスユーザーインターフェース)」の略です。
声によるインターフェース、つまり、声によってあらゆる情報をやり取りすることを指します。

音声のみでデバイスとやりとりができるため、スマートフォンのフリックや、パソコンのキーボードといった入力方法の代わりになる点で注目されています。

VUIがなぜ今注目されているのか

VUIが注目される理由として「声というものが、私たち人間にとってもっとも自然なコミュニケーション方法である」ことが挙げられます。

たとえばキッチンタイマーを考えてみてください。スマートスピーカーに「タイマーを10分に設定して」と話し掛けるだけでタイマーをセットできます。電子レンジのほんのわずかなボタン操作ですら不便に思う日が来るとは、一体誰が想像したでしょうか。

また、VUIが注目されるようになった要因として、スマートフォンやスマートスピーカーが普及したことで、VUIが活躍する場、つまり音声だけであらゆるものとやりとりを行える場が広がったことが挙げられます。

スマートスピーカーの主な機能と使用法

Photo by Clker-Free-Vector-Images on Pixabay

スマートスピーカーには基本的にすべて音声で命令します。その際に必要になるのがAIを呼び出すためのキーワードである「ウェイクワード」です。Google Homeであれば「OK Google(オーケー、グーグル)」、Amazon Echoであれば「Alexa(アレクサ)」がウェイクワードです。

その後、端末に話しかけることで最新ニュースなどの情報を聞いたり、連携した家電製品などを操作したりすることが可能です。たとえば、聞きたい音楽をタイトルや歌手名などから音声検索すれば、AIが対応しているネットサービスの中から希望の楽曲を選択し、再生してくれます。

また、スマートスピーカーの中でもAmazonが販売している「Amazon Echo」やGoogleの販売している「Google Home」の場合は、音声操作でショッピングすることも可能です。

スマートスピーカーの選び方

スマートスピーカーにはたくさんの種類があるため、自分にあったスマートスピーカーを選ぶためには、それぞれの特徴を知っておく必要があります。
Photo by Arek Socha on Pixabay

おすすめなのは、自分が使いたい機能からスマートスピーカーを選ぶことです。Amazon Echoの場合、「Prime Music」などの音楽視聴のほかにも、「Kindle」や「Audible」といったサービスに対応していて、書籍を朗読してくれます。

Googleアシスタントは、GoogleマップやGoogleカレンダーとの連携が便利です。毎日のタスク管理だけでなく音声で新しく予定を追加したり、目的の場所までのアクセス方法を確認したりすることも可能です。

LINE Clovaは何といってもLINEアプリと連携できる点が最大の強みです。メッセージの読み上げや送受信はもちろんのこと、スピーカーを経由してLINE通話もできます。

外観から選ぶことも良いでしょう。最新のAmazon Echoにはディスプレイを搭載した「Echo Show」も登場し、YouTubeを再生するなど、さらに多くのことができるようになりました。また、LINE ClovaはおなじみのLINEキャラクターをモチーフにしたものが人気ですし、Googleアシスタントを搭載したSONYのスマートスピーカーは高音質でシックなデザインです。

スマートスピーカーの種類14機種紹介

Photo by Republica on Pixabay

ここでは代表的なスマートスピーカーを14機種をご紹介します。

Google Home | Google

  • Google Home
  • 出典:https://store.google.com/jp/product/google_home

    世界的な検索エンジンGoogleが誇るスマートスピーカーです。世界中から集められたビッグデータを元に、高い認識機能を誇ります。とくに2019年10月に発表された自然言語処理能力は高く評価されていて、話し言葉の持つ微妙なニュアンスにもしっかりと対応してくれているようです。スピーカーの性能が良いため高音質であることが特徴です。


  • Google Home Mini
  • 出典:https://store.google.com/jp/product/google_home_mini

    「Google Home Mini」の特徴は「サイズがコンパクトで値段が安くカラーバリエーションも選べる」ということです。「Google Home」の定価が1万5400円であることに対し「Google Home Mini」の定価は6600円です。色はチョーク、チャコール、コーラル、アクアの4色から選べます。直径9.8cm、高さ4.2cmと、コンパクトです。


  • Google Nest Hub
  • 出典:https://store.google.com/jp/product/google_nest_hub

    「Google Home」のディスイプレイ付製品。タッチパネルの搭載により、ディスプレイでの各種設定やコンテンツの選択といった音声以外の操作が可能になり、操作性や使い勝手の点で、スマートスピーカー初心者にも優しい仕様となっています。音声操作でレシピを見たり、音楽をかけたり、動画を視聴できます。

    Amazon Echo | Amazon

  • Amazon Echo
  • 出典:https://www.amazon.co.jp/dp/B071ZF5KCM

    巨大ECサイトAmazonが提供するスマートスピーカーです。早くからスマートスピーカーというジャンルに注力しており、使用目的などに応じて豊富なラインナップが登場しています。ECサイトの強みを活かし、音声のみで買い物ができる点が便利です。


  • Amazon Echo Dot
  • 出典:https://www.amazon.co.jp/dp/B07PFFMQ64/

    Echoシリーズの中では比較的お手頃価格。サイズも高さ43mm、横幅99mmとコンパクトでさまざまな場所に設置可能です。音楽の再生、ニュースの確認、家族や友だちとの通話、対応スマート家電の操作ができることに加え、最新モデルではLEDディスプレイを搭載し、時刻や外気温、タイマーの表示が可能になりました。


  • Amazon Echo Show 5
  • 出典:https://www.amazon.co.jp/dp/B07KD87NCM/

    Amazonのスマートディスプレイ製品。5.5インチのスマートフォンサイズのディスプレイが搭載されたことで、音楽だけでなくYouTubeなど映像も楽しむことができます。

    LINE Clova | LINE

  • Clova Friends
  • 出典:https://clova.line.me/clova-friends-series/clova-friends/

    国内アクティブユーザー数8100万人以上(2019年6月時点)を誇るモンスターSNS「LINE」。そのLINEの人気キャラクターであるブラウンとサニーがモチーフとなっているのが「Clova Friends」シリーズです。現在、好評過ぎて品切れ状態が続いているミニオンズのボブとケヴィンをモチーフにした商品なども展開されています。


  • Clova WAVE
  • 出典:https://clova.line.me/wave/

    • 価格:1万4260円(税込)
    • https://clova.line.me/wave/
    • 音声アシスタント:Clova
    • ウェイクワード:「ねぇClova(クローバ)」

    まるでルームランプのようなおしゃれな外観をしたスマートスピーカーです。最大の特徴はバッテリーを搭載している点で、電源に接続していない状態でも使用が可能です。また、豊かな低音と広がりのあるサウンドを楽しめます。


  • Clova Desk
  • 出典:https://clova.line.me/desk/

    • 価格:2万8050円(税込)
    • https://clova.line.me/desk/
    • 音声アシスタント:Clova
    • ウェイクワード:「ねぇClova(クローバ)」

    LINE Clovaのディスプレイ付きモデル。7インチのディスプレイで天気や料理レシピ、歌詞などを見ることができます。また、IRと赤外線リモコンを搭載していて、リモコンを探すことなく、テレビやエアコンを操作することができます。

    その他のデバイス

  • LF-S50G |SONY
  • 出典:https://www.sony.jp/smart-speaker/products/LF-S50G/

    SONYが発売中のスマートスピーカーです。ホワイト、ブルー、ブラックの3色展開で、リビングにも寝室にもマッチするデザインが特徴となっています。フルレンジ48mm、サブウーファー53mmのスピーカーを採用し、クリアな高音迫力のある重低音を再現しています。


  • G3 |ONKYO
  • 出典:https://www.jp.onkyo.com/audiovisual/smartspeaker/g3/

    オンキヨーのスマートスピーカーです。あくまでスピーカーとしての機能を優先させているため、多くのスマートスピーカーが360°を意識した円筒形の機種が多い中、360°型ではなく、前方向に集中したデザインになっています。最大の特徴は、オンキヨー以外にもパイオニアブランドのワイヤレススピーカーとの連動が可能な点です。G3に命令することで連動したスピーカーを操作することも可能です。


  • BOSE Home speaker 500 |BOSE
  • 出典:https://www.bose.co.jp/ja_jp/products/speakers/smart_home/smart_speakers.html

    世界的な音響メーカーのBOSEが販売するスマートスピーカーです。音声アシスタントはGoogleアシスタントとAmazon Alexaに対応。初期セットアップの際にどちらかをアクティベートさせて使う仕様ですが、後で変えることもできます。スマートスピーカーでよく見かける円筒形のデザイン以外に、サウンドバータイプもラインナップされています。インテリアとサウンドを両立させたい方に人気のアイテムです


  • ONE|Sonos
  • 出典:https://www.sonos.com/ja-jp/shop/one.html

    • 価格:2万3800円(税込)
    • https://www.sonos.com/ja-jp/shop/one.html
    • 音声アシスタント:Googleアシスタント、Alexa
    • ウェイクワード:「OK Google(オーケー、グーグル)」「Alexa(アレクサ)」

    音質に定評があるといわれているSonos。最大の特徴はAirPlayに対応している点。iPod/iPad/iPhoneそしてパソコンのiTunesから、Wi-Fi経由で使用可能です。さらに、複数のスピーカーをネットワーク上で結んで同時再生ができ、ステレオスピーカーとして使用することも可能です。


  • JBL LINK | JBL
  • 出典:https://jp.jbl.com/JBL+LINK+20.html?dwvar_JBL%20LINK%2020_color=White-Japan-Current&cgid=smart-speakers#start=1

    JBLが発売しているスマートスピーカーです。最大の特徴は、表面に使用されている防水生地素材と6,000mAhのリチウムイオン電池。最大10時間の連続再生が可能なので、キャンプなどのアウトドアでも活躍できます。

    音声アシスタントの今後の可能性

    Photo by StockSnap on Pixabay

    音声アシスタントの用途は広がりを見せています。今後、音声アシスタントはどのように発展するのでしょうか。

    iProspect Japan COOの渡辺大吾氏は、音声アシスタントについて「今後はユーザーが自発的に使おうとしなくてもさまざまなデバイスに搭載され、より身近な存在になる」と語っています。

    ――渡辺
    「音声は年齢、属性、業界関係なく、ほとんどの人がアクセス可能なコミュニケーションツールです。今後はスマートフォン、スマートスピーカーだけでなく、家電などにも急速に搭載されていくでしょう」

    加えて、音声アシスタントは災害対策としても活用の可能性があると渡辺氏はいいます。

    ――渡辺
    「声はコミュニケーションの中で一番物理的に伝達が速い方法です。緊急時には最も有効な手段となるはずです。災害の際にも、事前に予測してアラート発報はもちろん、避難経路や避難場所などに声でアクセスできるのが理想ですよね」

    音声アシスタントの用途が広がりを見せ、今後私たちの生活に溶け込むことで、スマートスピーカーの活躍のフィールドは一層拡大していくでしょう。

    トイレに入った“ねこ”の健康状態自動判定AIを開発、ハチたまが2億円超の資金調達

    スマートねこトイレ「toletta(トレッタ)」を手掛ける株式会社ハチたまは、合計2億円超の第三者割当増資をプレシリーズAラウンドにて実施したことを発表した。引受先は、マネックスベンチャーズ株式会社、羽立化工株式会社、横浜キャピタル株式会社、山口キャピタル株式会社、ひびしんキャピタル株式会社、株式会社シグマクシス、大手商社など。

    写真下中央にあるのがスマートねこトイレ「toletta(トレッタ)」だ

    このラウンドによって調達累計額は4億円を突破した。今後はAIを活用した「ねこの健康状態自動判定アルゴリズムの開発」および「獣医師との連携システム」の開発を強化するそうだ。

    スマートねこトイレtolettaは、ねこがトイレに入るだけで、自動でねこの健康データを取得し、スマートフォン上のアプリに通知するヘルスケアサービス。ねこの利用頭数は2000頭、健康データの件数は100万件を突破した。

    画像は過去のプレスリリースより。「体重」「尿量」「排尿回数」「入室回数」「滞在時間」「経過時間」といった指標データを取得する

    今回の増資による資金使途は、先述のとおりtolettaの健康データを活用したAIによるねこの健康状態自動判定アルゴリズムの開発、また、獣医師との連携システムの開発だ。飼い主が愛猫の体調変化により早く気づき、すぐに獣医師とつながることで早期ケアを実現させる。

    プレスリリースで投資家からは次のようにコメントされている。

    和田誠一郎氏
    マネックスベンチャーズ株式会社 代表取締役

    家族の健康を気遣い、いつまでも共に元気に過ごしてほしいと思う気持ちは、世界中の人々が共通して抱く思いです。家族の形、その在り方が、時代の流れとともに変化する中で、多くの現代人にとって、日々の時間を共にするペットは大切な家族の一員となりました。 堀さん率いるハチたま社の開発する「toletta」は、大切な家族の一員である猫の健康状態を、テクノロジーが翻訳者となって飼い主に伝える、素晴らしいプロダクトです。言語を問わず、世界中の愛猫家にとって必要不可欠なプロダクトになる可能性を秘めた「toletta」によって、家族の一員である猫の健康が維持され、1日でも長く、そしてたくさんの家族の思い出を創る一助となることを願います。その実現に向けてハチたま社と共に邁進します。

    中村哲也氏
    羽立化工株式会社 代表取締役

    ハチたまさんからtoletta開発のお話をいただいた時、これは次代のIoT製品だととても興味深く感じ、開発に協力することになりました。開発を進める中で、ハチたまさんと世界に発信する夢を共有したいと思うようになり、製造を担当するだけでなくパートナーとして出資させていただくことになりました。

    ※ともに原文ママ

    現在、tolettaの販売は日本国内のみだが、今後は海外展開を本格化させていくという。そのため、海外展開に向けたシリーズAの調達を実施予定とのこと。このシリーズでは、国内だけでなく海外投資家からの資金調達も予定している。

    >>プレスリリース(PR TIMES)


    人間向けの「AIトイレ」をLIXILが展示

    今年10月に開催された「CEATEC 2019」で、LIXILがAIトイレを展示した。便座につけられた画像センサーから便の画像を分析し、その形状や大きさを記録できる。プロトタイプの段階から多くのメディアで取り上げられ、大きな話題をつくったトイレだ。

    教師データの作成に携わったという青山敬成氏は、「画像認識AIを作るにあたって、医師の協力を得つつ、社内モニターの3000枚もの便画像を私自身が分類して学習させました」という。

    主に高齢者施設向けのプロダクトで、医療機関のほか、健康を気にする個人など、さまざまな層に展開していきたいそうだ。

    AIトイレ以外にも、CEATEC 2019では、映像解析AIエッジロボット、AI病理診断などAIに関するさまざまな展示が目立っていた。詳しくはLedge.aiに掲載されているイベントレポート記事をご覧いただきたい。

    診断画像をクラウド化、がん細胞認識AIで更なるデジタル化を目指す|長崎発ベンチャーN Lab

    N Lab代表

    少子高齢化による労働人口の減少、労働力不足を解消するための手段としてデジタル化・AI導入が叫ばれて久しい。現在も各業界で多くの変革が試され、AI人材の育成にも注目が集まっている。

    2020年から全国の小学校でプログラミング教育が必修化され、約10年後には新時代のITネイティブ世代が活躍し始めるであろう。その一方で、10年後に従事者の平均年齢が定年を迎える業界がある。日本の病理医業界だ。

    高齢化をはじめ、病理医業界の課題解決に向けて立ち上がったのが、自身が肺がんを専門とする医師でもあるという、N Labの北村由香氏だ。「治療に役立つ病理検査」を追求するN Labでは、バーチャルスライドの作成とクラウド管理、病理画像AIの研究を通して病理医不足解消を目指す。

    今回は、病理検査における課題やN Labの取り組み、今後の展望について北村氏に詳しく聞いた。

    日本の病院の約半数に病理医がおらず、全国平均年齢も約55歳と高齢

    病理医業界が抱える課題のうち、最も深刻なのが、冒頭でも述べた病理医の高齢化だ。

    日本の病理専門医は2019年8月7日時点で全国に2539名いる※。しかし、超高齢化社会を迎えた今、年を重ねるごとに患者数、再検査増加に伴う検体数は増加し続ける。

    ――北村
    「2018年の年報では、病理学会認定・登録施設(856施設)のうち、一人病理医病院は43.6%、病理医不在病院は19.0%でした。病理医がいない病院では、病理診断をする方法がないので、専門の検査会社か、病理医のいる関連病院に検査を依頼しています。

    『一人病理医』病院の課題は、癌と良性腫瘍の区別といった難しい判断を、限られた時間の中1人で下すしかないところです。

    患者さんにとって癌か良性かは大事な問題であり、悠長に待ってはいられません。早急な診断を求められる中、ほとんどの病理医は一人、一日中検体を見続けることもあり、万が一ケアレスミスをしても見落としにすら気づけない恐れもあります」

    一人病理医:その病院に病理医が1人しかいない状態のこと。
    日本病理学会(外部リンク)

    ではなぜ、若い病理医の数が増えないのだろうか。北村氏はその原因を、病理医のイメージと病院側の環境にあるとみている。

    医師を目指すという人は、実際に患者さんに話を聞いたり手術をしたりする内科・外科医を想像していることが多い。そのため表に出づらい病理医は、臨床医ではなく「検査をする人」に近い認識があることが挙げられるという。

    ――北村
    「ただ、イメージを修正できても、病理医が増えるまでには時間がかかります。

    そのため、今は病理医同士をつないで診断の効率化を進めるしかありません。スライドガラスをデジタル画像化すれば、インターネット経由で他の病理医でも遠隔で迅速に診断できます。これにより診断精度も向上し、患者に結果を返すまでの時間も短縮できます。

    さらに画像をクラウドに保存することで、QRコード化も可能になり他の病理医へのコンサルトが可能になるのです」

    N Labでは、依頼元から送られてきた作成済みのガラススライドを専用スキャナーでスキャンし、データをクラウド上に保存する、メディイメージバンクというサービスを運営している。

    検体が入ったガラススライドをデジタル画像にすることで、モニターに映しながら細かくチェックができるほか、物理的な保管場所の削減ができる。通常は5年ほどで観察できなくなるガラススライドだが、経年劣化も起こらない。

    また、クラウド保存したデータを患者がQRコードで携帯できるようになれば、別の病院で再検査をすることになってもデータを共有できる。病理医業界では1度行った検査を別の病院でまた行うというような無駄な検査が4割ほどあると言われており、デジタル化が進めば削減することは大いに可能であるという。

    長崎大学と共同でがん細胞認識AIを開発、診断結果の正確性向上と時間短縮に貢献

    病理医をサポートするAIの開発も進めている。NLabが長崎大学と共同研究している「病理画像AI」は、癌などの疾患にかかっていると診断された患者の病理画像から、癌細胞を示してくれるAI診断ソフトだ。夜にソフトを動かすと、翌朝には、画像に占める癌細胞の割合が出る。

    AIで検出されたガン細胞実際の病理診断AI画像:青い点が細胞核のある部位を示している。細胞の核を認識することで、カウントしている。

    このAIを用いて出した結果に加え、最終的に人間の目でもダブルチェックして診断結果を出すという。

    ――北村
    「癌細胞を確認するのは難しい。とある論文では、数十人で同じ組織を見て、癌細胞が何%含まれているか診断する実験をした結果、回答がみなバラバラだったというほどです。癌細胞は増殖して大きくなっているので、普通の細胞よりたくさんいるように見えてしまう。目の錯覚で、一致しないんです」

    こうした人間ならではのミスをなくすためにも、AIと力を合わせることがより精度の高い診断に繋がる。

    今後もN Labは長崎大学との共同研究で、癌細胞数カウントの効率化を進めていくという。

    研究内容の詳細ページ(外部リンク)

    デジタル化を妨げる原因

    北村氏は「今の病理医業界にはデジタル化を妨げる原因がある」と指摘する。

    数千万円単位の医療設備導入コスト

    そのうちのひとつが医療設備の導入費だ。設備投資を行っても、投資額に見合ったメリットがなければ赤字になるのは必然。デジタル化を進めるための医療設備導入費用が、病院の大きな障壁になっているという。

    ――北村
    「大きな大学病院などはいいが、医療機器は1つ導入するしないでも何千万単位でコストが変動します。

    自身の病院に設備を導入し、デジタル化を進めて他の病院と連携、遠隔で検査をするのも費用がかかるばかりで、デジタル加算などの医療点数がないため、検査会社に低コストで解析してもらった方がいいという判断になりがちです」

    巨額の投資になるからこそ、経営側も慎重に判断せざるを得ない――このような現状により、病理医が活躍できるところも限られ、過疎化も進んでしまっているようだ。

    実際に、病理医数の地域差は著しい。各都道府県の病理医人口を調べた結果、最多は東京都で453人、最少は福井県でたったの11人だ。

    ※2019年11月25日時点、日本病理学会認定病理専門医一覧(外部リンク)より

    AIベンダーと医療現場とのすれ違い

    デジタル化が進まないゆえに、今も紙媒体で運営している病院や、ゲーム世代が学ぶ医大でも顕微鏡主体の教育をしているのが現状である。デジタル化普及に向けて、最新ソフトウェアの開発や学会での論文発表なども多くあるが、日本ではまだまだ水面下で動いている状態だという。

    だが、最新技術を詰め込んだソフトウェアが必ず現場で活かせるとも限らない。

    ――北村
    「最新のソフトウェアが発表されても、実際に現場で活かせるかどうかは別問題になります。

    昨今AIの導入が各業界でブームですが、良いAIを作るためには、精度の高いデータを与えることが重要です。しかし、ソフトウェア会社が作ったAIが実臨床で全く使えないということが起こり得ます。

    私たちは医者であってプログラマーやエンジニアではない分、『良いデータを提供するので、協働でいいAIを作りましょう』ということを今やっています。良い診断を出すためにも、コンサルテーションがすぐにできる環境も創っていきたいと考えています」

    目標は長崎から全国への「AI医療センター作り」

    N Lab

    数多くの課題を抱える中、北村氏が始めに目指すのは日本医療業界のデジタル化を促進することだ。100%デジタル化を実現しているオランダのほか、他国の前例に学びながら、日本全国での効率的な情報共有を模索していく。

    より多くの患者に良い診療が行き渡る社会を実現するためにも、デジタル化に伴うクラウド管理の強化や、AIの開発も今から進めていかなければならないという。

    ――北村
    「病理医向けのAIは1つでは足りません。全身を見るので、癌細胞を発見するAIで1つ、その他の分野で各1つずつ作っていく必要があります。

    弊社はAIを育てることに注力し、デジタル化が進んだ時に、『うちが持っているAIを用途ごとに提供しますよ』といえるようになるのが目標です。デジタル化が進めば進むほど、病理医不足は解消されると思います。長崎から全国へ向けて、病理AIを作っていきたいですね」

    (取材・大久保裕次郎、執筆・小林雅輝、編集・菊田千春)

    有馬記念|競馬AIで万馬券!?各アプリ徹底調査

    競馬AI

    本記事の掲載内容に関しては細心の注意を払っていますが、必ずしも正確な内容にならない場合もあります。
    また、本記事は特定の賭博・賭博サポートアプリを推奨するものではありません。
    本記事の掲載内容をもとにして賭博を行い、損失を出した場合も、編集者および弊社はその責任を負いません。賭博は自分の判断をもとに行って下さい。

    競馬×AIの意味・仕組み・課題

    競馬×AIとは

    競馬は騎手の乗った馬により競われる競争競技であり、着順を予想する賭博(ギャンブル)の一種です。着順の予想は人によってさまざまであり、サイン派・パドック派・直感派・データ予想派などがあります。

    そこに近年AI(人工知能)を用いた予想が最近加わりつつあります。
    この記事では競馬AIの仕組み、実際に活用できるアプリやその内容について解説していきます。

    競馬AIの予想方法

    AIは機械学習やディープラーニングなどの技術を用いて、人間並の知的能力をコンピューター上で実現させる技術のことをいいます。AIは人の指示で動くロボットと違い、自分で考えながら自主的に学習します。そんな最先端の技術を使って競馬を予想するのが競馬AIです。

    実際の競馬AIの予想方法は以下のとおり。

    • 過去のレースデータなどを集計する
    • パターンを計算する
    • データを比較する
    • 予想する

    過去のレースデータとは、JRA-VANが出しているデータなどです。ここから収集したビッグデータをプログラムに入れてパターンを計算していきます。

    プログラムに入れた後、AIは以下の3つのことを分析しています。

    • どのデータを重要な特徴要素とみなすか?
    • 掛け合わせのパターンをどう出していくのか?
    • 出したパターンの重要度の付け方(重み付)はどうするか?

    AIは自らどのデータを採用し、レースを予想するのか判断します。中には、アナログで馬券を買っている競馬ファンの注目ポイントを判断材料に入れながら予想するAIもあります。

    過去の電脳賞でのニコちゃんAIの通算回収率は「181.9%」と高い確率を打ち出しました。競馬AIは、人が処理しきれない過去の情報まで処理することが可能で、さらには学習しながら処理していくので、次世代の競馬予想のツールとして期待されているのです。

    AIによる競馬予想は難しい

    競馬は完全情報ゲームではありません。

    完全情報ゲームとは、囲碁や将棋などのようにルールに基づいた情報が出そろっているゲームのことをいい、計算が強みであるAIにとって予想が立てやすい傾向にあります。

    一方、競馬は完全情報ゲームとは違って完璧な予想を立てるのがとても難しいです。なぜなら、競馬は自然環境に左右されるコースを人間と馬が協力して走るゲームのためです。人や馬の体調、コースのコンディション、ほかの馬が走るルート、さまざまな外的要因が影響するため、予想外のことも起こり得ます。

    たとえば、過去には馬の脱糞中にレースが始まってしまい、2番人気の馬が12着になってしまったり、逆にレースの入場時に騎手を振り落として放馬した7番人気の馬が圧勝してしまったりなど、そんなレースもありました。

    各社アプリ紹介|特徴や利用料金など

    Photo by USA-Reiseblogger on Pixabay

    ここからは各社の競馬AIを紹介していきます。

    スポニチAI競馬予想(SIVA)

    出典:https://siva-ai.com/

    競馬における勝ち馬をAIで予想し、圧倒的な的中率を目指して日々数万件のレースデータから必要な情報をピックアップするアプリです。スポニチとCYMESが共同で開発しています。

    特徴としては、AIを用いて予想することはもちろんのこと、レース情報の配信やニュース配信を受けられること、SIVAとチャットをしながら予測ができるといった点が挙げられます。

    利用料金:30日使い放題3,000円(税込)|1レース限定であれば100円から利用可能

    Ringo ver.β

    出典:http://ringo-ai.com/

    Ringo ver.βは3種のAIによるハイブリッドな予想を実現させたアプリです。印・指数・買い目(β版)を提供しています。このアプリは東大工学部を卒業した方が開発しているそうです。推奨レースでは、なんと通算回収率100%超を達成しています。

    順位の予想だけでなく、独自の競走馬の相対的な強さを表したRingo指数もこのアプリの特徴です。公式Twitterもあるので、情報の共有は迅速に行われます。メインレースは無料公開しているので、的中率を測りたいときはメインレースを見てみるといいでしょう。

    利用料金:月額910円(税抜)|JRA・NARが見放題

    VUMA

    出典:https://vuma.ai/

    VUMAは中央競馬が配信するAI予想サービスです。実力より過小評価されている“妙味馬”を探し出し、推奨の買い目とともにレース30分前に公開しています。出走10分前にも予想を公開していて、10月30日〜11月29日の1ヶ月の回収率は89%と高い数値を出しています。

    利用料金:月額980円(税抜)

    極ウマ

    出典:https://p.nikkansports.com/goku-uma/guide/ai/

    極ウマは、今秋のGIにおいて7戦6勝しているAI予想アプリです。極ウマの特徴としてはハイブリッド予想を取り入れているところ。これは、固いレースを的確に仕留める「的中モデル」と波乱のレースを狙う「配当モデル」の2種類から得られるデータを用いて予想しているものです。

    極ウマは、日刊スポーツが株式会社GAUSSと共同で開発した完全オリジナルのAI予想です。日刊スポーツがこれまでに蓄積したデータをAIに学習させています。数百件のデータをもとに予想し、そのなかの最適な買い目を公開しています。スマートフォンだけでなく、パソコンからもアクセスが可能。場所を気にせずにどこからでも予想できます。

    利用料金:月額800円(税抜)

    実際に勝負してみた

    Photo by Chris Kendall on Unsplashon

    百聞は一見にしかずといいますし、今回は2019年12月22日に開催された「第64回有馬記念」で実際に勝負しました。ただアプリを使うだけでは面白みがないので、実際に競馬を嗜んでいる人と比べてみました。

    企画概要
    2019年12月22日日曜日の有馬記念でどちらがより多く勝てるのか競う

    • エントリーNo.1:競馬新聞一筋約40年、編集部ライターKの父親
      • 赤ペンと競馬新聞と長年の経験と勘を使う
    • エントリーNo.2:今回が初めての競馬、編集部ライターK
      • 有馬記念の予想を無料で見られたSIVA, Ringo ver.βを使う

    父予想

    単勝:10
    ワイド:2-3, 2-9, 7-9, 2-14
    3連複:2-3-9, 9-10-14

    SIVA

    ©SIVA
    単勝:9
    馬連:9-5
    3連単:9-10-5

    Ringo ver.β

    ©Ringo ver.β
    単勝:10
    ワイド:10-9
    3連複:10-9-2

    経験値に賭けるアナログ派か文明の利器に頼るデジタル派か。
    運命やいかに……

    レース結果
    出典:有馬記念JRA

    単勝:6
    ワイド:6-10, 6-7, 7-10
    3連複:6-7-10
    3連単:6-10-7

    1着は馬番6リスグラシュー。1番人気だった馬番9アーモンドアイは9着という結果でした。
    そう簡単に儲かったらみんなお金持ちになってますもんね。JRAだって倒産してしまいます。

    ――父
    「見事に外れたので逆に気分がいいです」

    有馬記念は3者とも残念な結果になった一方で、SIVA, Ringo ver.βともに的中しているレースもあります。
    それが同日開催の第8レース、特別競走グッドラックハンディキャップです。

    SIVA

    ©︎SIVA

    馬単:12

    Ringo ver.β

    ©︎Ringo ver.β 

    ワイド:11-12

    レース結果
    出典:有馬記念JRA

    単勝:12
    ワイド:11-12, 9-12, 9-11

    こちらのレースでは見事的中、1着2着をしっかり押さえてますね。

    その他の有馬記念予想は?

    今回の編集部で行なった勝負では実際に使ってはいないものの、他のアプリの予想結果も調べてみました。

    VUMA

    VUMA

    ワイド:6-7

    極ウマ

    極ウマ

    ワイド:6-10

    こちらも見事的中しています。
    珍妙馬を選出するVUMAや、日刊スポーツ紙ならではの視点でAI開発を進める極ウマの強みが出た結果と言えるでしょう。

    このほかにも、東大の学生が自作したAIが見事的中、約118万円を儲けたといいます。

    結果を踏まえると、競馬AIはレース、人気度、コンディションなど、何を重要な要素として組み込むかで結果が随時変わるので、やっぱりまだまだ探求して行きたくなります。

    競馬×AIの今までとこれから

    Photo by annca on Pixabay

    今回は競馬AIについて、実際の検証をふまえてご紹介しました。

    現状の競馬AIは、過去のビッグデータを利用して予想をしています。これからは、その予想精度をどのように向上させていくかが課題といえるでしょう。

    競馬AIによる的中率は、馬の生態観察との組み合わせや天候、環境における過去のレース情報などをAIに組み込むことによってさらに上昇する可能性が大いにあります。完璧な予想が難しいものだからこそ、それを実現しようとする人間の興味がそこに集まるのかもしれません。

    もちろん、競馬はあくまでもギャンブルであり、必ず当たる競馬AIは存在しません。くれぐれも自己責任で楽しんでみてください。

    AI営業マンついに登場、問い合わせを自動送信してアポイントを獲得

    12月20日、株式会社QuickWorkが運営する企業データベース「ApoKakuDB」に、AI・RPA技術を活用した問い合わせ自動送信ロボ「Daniel」のα版がリリースしたと発表。

    ApoKakuは、BtoB顧客ターゲッティングを強みとしていて、売り上げや資本金、拠点数、従業員数などに加え、400種類以上の業界や、9000種類以上の事業シナリオでのデータベース検索が可能だ。多量なデータベースを保有しているため、プレスリリースでは「“人力で作成するより精度の高いターゲティングリスト”をたった10秒で作成することができます」とうたっている。

    今回発表された問い合わせ自動送信ロボ「Daniel」は、同社の別サービスで使われていたRPAの基盤システムを活用したことで、問い合わせ自動送信機能を実装しアポイント獲得を自動化する。

    また、プレスリリースによれば、問い合わせの送信設定はわずか1分程度。ダッシュボード上で「当月サマリ」「契約内容」「問い合わせ送信結果」を確認できる仕様になっていて、進捗把握が手軽にできるUX/UIが特徴とのこと。

    ApoKakuのターゲティング機能により、サービスニーズの高い顧客を特定し、その対象にのみアプローチすることができるので高いアポイント獲得率、成約率が見込めるようだ。

    >>プレスリリース(PR TIMES)


    営業担当者の行動を分析しサポートするAIも登場

    株式会社QuickWorkのApoKakuは、営業の代替になろうとするAIだ。ついにAIが営業する時が来たのかと思うが、実は「営業活動」に関するAIは以前からも登場している。

    Ledge.ai編集部では今年8月に、AIで営業が残した商談メモなどの顧客接点データを解析するサービス「Asales」を発表したストックマーク株式会社にインタビューを実施した。

    Asalesは、誰の営業では売れて、誰の営業では売れなかったかを可視化、スコアリングするサービス。これによって、優秀な営業マンのセールストークなど、ノウハウを横展開することが可能になる。さらに、顧客接点データを解析することで、リードの潜在ニーズを抽出できる。これにより、成約率を高められたり、同じようなニーズのある別業界の潜在顧客が把握できたりするそうだ。

    Asalesの使用画面

    ある意味で営業活動に近しいのかもしれないが、筆者的には“良い感じの企業”に対して自動で取材申し込みをして、スケジューリングしてくれるAIがあるとうれしい限りだ。取材(営業)自体は従来どおり人が担当するというようにできれば、実営業活動の準備などに時間を割くことができ、仕事をより効率化できそうだと思った。

    「HEROZ Kishin」を徹底解剖。将棋AIを作った会社が建設・金融・エンタメからAI革命を推進する理由

    2017年、プロ棋士の佐藤天彦氏に、AIを搭載したコンピューター将棋ソフト「Ponanza(ポナンザ)」が完勝して大きな話題となった。この将棋AIを開発したのがHEROZ株式会社のエンジニアだ。

    HEROZは、Ponanzaの開発を通してさまざまな手法や技術を蓄積している。将棋アプリ「将棋ウォーズ」は500万ダウンロードを突破。将棋AIの開発ノウハウを活かして、さまざまなゲームへAI開発提供を積極的に行っている。

    しかし、こうしたノウハウが活かされているのはゲームの世界だけではない。HEROZのAIサービス「HEROZ Kishin(外部リンク)」は今、金融、建設、インフラ、物流など、「リアル」な世界に向けてBtoBサービスとして展開している。

    今回は、HEROZの代表取締役の高橋知裕氏と開発部長の井口圭一氏に、将棋AIの開発を通じて蓄積したディープラーニングを含む機械学習によるAI関連手法やノウハウが活かされたHEROZ Kishinについて解説してもらった。

    将棋AIの開発ノウハウを活用した「HEROZ Kishin」

    まず、HEROZ Kishinとはどのようなものなのだろうか。

    コンピュータ将棋ソフトとディープラーニングの出会い

    まず、HEROZ Kishinの大元となるコンピューター将棋ソフトについて振り返ってみると、コンピューター将棋に機械学習が導入されたのは2004年にまでさかのぼる。

    その後、機械学習技術は急速に発展し、約10年後の2013年にはプロ棋士に“平手”、つまりハンデなしで勝利。2017年にプロ棋士の佐藤天彦名人(当時。現在は九段)がHEROZのPonanzaと対戦し敗北を喫したのは記憶に新しい。

    コンピュータ将棋ソフトの強さの変遷イメージ図。出典:HEROZ Kishin公式サイトより

    機械学習の導入以前は、プログラマーは将棋をあくまでも将棋ゲームとして捉え、手作業で人間の思考を言語化しプログラミングするしかなかった。

    しかし、機械学習技術の発展の恩恵を受けたのは将棋ソフトも例外ではなかった。将棋の盤面を「図」として捉えることにより、将棋の知識がなくとも、ビックデータから機械学習で判断・意思決定を行う評価関数を生成できるようになった。

    過去の実戦データベース、一局あたりの局面数、盤面の位置関係から、判断・意思決定を行う評価関数f(x)を機械が学習して生成。出典:HEROZ Kishin公式サイトより

    複数のエンジンを組み合わせて複雑な課題に対応する

    HEROZは、これらの技術を応用し、他分野への応用が可能な機械学習/ディープラーニングの手法を蓄積。ブランド名「HEROZ Kishin」として各産業に提供している。開発部長の井口氏はこう語る。

    ――井口
    「将棋AIを開発してきた経験から、パラメータチューニングをする際の勘所など、さまざまな問題へ対処するノウハウを蓄積できました。そのノウハウを活かして各種AIを作成しています」

    具体的に、HEROZ Kishinが有するエンジンは以下の通りだ。

    頭脳ゲームエンジン 将棋、囲碁、麻雀などの頭脳ゲームをはじめ、いろいろなゲームに適応可能なエンジン
    分類エンジン データの特徴を学び適切なカテゴリに分類する
    経路最適化エンジン 複数の制約条件から目標までの最適な経路を探索し、状況に合わせた最適な経路を発見する
    文章生成エンジン 自然言語を学習し、カスタマーサポートなどで活用できる
    ゲーム開発エンジン ゲームルール生成、コンピュータープレイヤーの創出、自動テストに対応できるゲーム用のエンジン
    予測エンジン 過去のデータから未来を予測する
    異常検知エンジン センサーや数値データから異常範囲を特定し、一定値を超えた時にアラートを出す
    配置最適化エンジン 複数の制約条件から目標までの最適な経路を探索し、状況に合わせた最適な配置を行う
    最適解探索エンジン 過去のユーザー行動をもとに趣味・思考を判別し、最適なコンテンツ予測や最適ユーザー探索をする
    画像認識エンジン 画像などのピクセルデータから、顔や物体の特徴、年齢などの複雑な要素を認識する

    これらのエンジンを適切に組み合わせることで、BtoBにおける複雑な課題やニーズにも対応できる。将棋AIにおける、盤面評価や手の探索といった技術も複数のエンジンを組み合わせて作られているという。

    また、これら複数のエンジンを活用した、各種AIツールも展開している。予測エンジンと異常検知エンジンを組み合わせた自動監視ツール「HEROZ Kishin Monitor(外部リンク)」や、新規に構築したWebサイトのテストを自動化できる「HEROZ Kishin Testing」などがそうだ。

    強みは「最適化」と課題の「目利き」

    HEROZ Kishinだけでも、市場において相当な競争力になるだろうが、HEROZ自身が考えている自らの強みについても井口氏にたずねてみた。

    ――井口
    「数値最適化が得意なため、たとえば建設においては、建物の強度を保ちつつ、コストカットが可能となる『最適な柱の太さ』を見つける、といった問題をうまく解くことができます。

    また、組み合わせ最適化問題も得意です。どの順番でタスクを回すのがもっとも早いか? といった、タスク管理や経路最適化の問題にも強いと思っています」

    もちろん、同社のエンジニアにそれぞれに得意分野はあるが、全体として特に自信を持つのは上記の2つだという。数値最適化に関しては建設業界での構造設計の最適化など、組み合わせ最適化に関しては物流業界の配送ルート最適化などに活かされている。

    建設業界へのAI適用例。出典:HEROZ提供資料

    そのほか、課題に対して「目利き」ができるのも同社の強みだと、井口氏は話す。

    ――井口
    「技術を数多く知っているため、さまざまな課題に対して目利きが可能です。問題に合わせてツールを紹介するだけでなく、問題が解決できるように技術を適用し、独自のアルゴリズムをつくることができます。

    たとえば、ニューラルネットワークでは解けない問題があった場合も、ほかの最適な技術を選んだり、要素技術を組み合わせたアルゴリズムで対応したり。ゲームAIなど、実務でさまざまなことを試した経験があるからこその強みです」

    「HEROZのエンジニアはアルゴリズムを楽しんで作る」と井口氏は言う。さまざまな技術を知っていて、柔軟な対応ができるからこそ「解き方を固定された問題解決は苦手で、SIer的な仕事はしない」と語っていたのが印象的だった。

    建設・金融・エンタメなどの“インフラ”を支え、「ヒーロー」を生む

    HEROZの特徴として、決算説明資料などでも重点領域として挙げられているのが、建設・金融・エンタメ業界の3つだ。

    実はLegde.aiでも以前、AIによる株式ポートフォリオの提案サービスや、AI搭載のカードゲームアプリについてHEROZに取材を行っている。

    関連記事:
    AIが株式ポートフォリオを提案する新サービスは「老後2000万円問題」の解決策になるか?
    バンダイと将棋AIのHEROZがタッグを組み、AI搭載カードゲームを開発したわけ

    HEROZ代表の高橋氏になぜその3業界なのか聞くと、興味深い答えが帰ってきた。

    ――高橋
    「金融に関しては、その道に詳しい社員がいたことがきっかけです。コミュニケーションコストが低いという利点を活かせるのでは、と。

    建設は社会を支えるインフラですが、IT化が進んでおらず、マンパワーに依存している状況がありました。社会貢献性があり、かつ市場規模が大きい。AI活用による改善可能性が高いと考えているため、力を入れています。

    最後にエンタメですが、僕らはエンタメをすべての産業に関わる、ある種の『インフラ』と考えています。今後AIによる自動化が進めば、生活に時間の余裕が生まれ、その時間で人はエンタメをより楽しめるようになり、経済を活性化させるでしょう」

    「人間の原動力になる」という意味で、エンタメはすべての産業に関わる「インフラ」だと語る高橋氏。たしかに、人間の活力を生み出し、生活を支えるという意味ではインフラという見方は正しいかもしれない。

    そんな高橋氏は、今後の人とAIの関わりをどう見るのか。

    ――高橋
    「今インターネットが当たり前になっているように、AIもいずれ当たり前になります。AIが進化して、そこから人が学んで進化して、またAIを進化させるというように、AIと人が互いに進化させて成長する循環が生まれると思います。

    YouTuberなど、昔は存在しなかったヒーローが技術の発展で生まれたように、AIの普及で新たな価値を生み出すヒーローが生まれるのではないでしょうか。社会構造やライフスタイルも変わってくるでしょう。

    日本は今、AIの導入が遅れているという課題を抱えています。だからこそ、HEROZではAI活用の『成果』をしっかりと出していきたい。利用者・社会への価値ある『実戦』的なAIを提供することを第一にしているので、最初にビジネス問題設計を十分に行ってプロジェクトを進めるようにしています。世にリリースし、実際の結果・データのフィードバックを得て、より価値あるAIになるようブラッシュアップしていきます。

    同時に、企業として利益も重視しますが、社会を再定義し、新たな未来を創っていくような面白みがあることに注力してAI革命を推進していきたいです。バリューに“驚きを心に、何事も楽しむ”を掲げているように、社員が人の原動力である『エンタメ』を感じながら活躍してヒーローになれる、そんな会社を目指しています」

    (取材・佐々木亨、執筆・大村愛花、編集・高島圭介)

    AIでインフルエンザの流行を予報、日立と損保ジャパン日本興亜が実証開始:今週のAI最新ニュースまとめ

    日々、目まぐるしく進化、発展を遂げるAI(人工知能)業界。さまざまな企業が新しいサービスを開始したり、実験に取り組んだりしている。

    そこで本稿ではLedge.aiで取り上げた、これだけは知っておくべきAIに関する最新ニュースをお届けする。AIの活用事例はもちろん、新たな実証実験にまつわる話など、本稿を読んでおけばAIの動向が見えてくるはずだ。

    AIを活用したインフルエンザ予報サービスがさいたま市で実証開始

    12月4日、株式会社日立製作所と損害保険ジャパン日本興亜株式会社は、さいたま市でAIを活用してインフルエンザの流行状況を予測、情報配信するサービスの実証を開始すると発表。

    予報期間は4週間後まで。流行の度合いを4段階で表示する。

    関連記事レッジが日立製作所のインフルエンザ予報サービスのアルゴリズム開発・Web構築を担当しました

    自動運転のスクールバスが搭乗、埼玉工業大学と最寄り駅間を走行

    12月12日、埼玉工業大学は、スクールバスの自動運転の導入に向けて12月23日から公道による実証実験を開始すると発表。このバスは、埼玉工業大学と最寄り駅であるJR高崎線・岡部駅間を走る。

    ハンドルとアクセル・ブレーキは自動制御レベル3。緊急時のみドライバーが対応し、通常時は交通状況を自動で認知して走行する。安全確保のため、バスにはプロのバスドライバーが搭乗する。

    関連記事自動運転によるスクールバスの実証実験を開始、埼玉工業大学のキャンパスと最寄り駅間の公道を走行

    英語学習にAIロボットを使用、同志社中学校で実験を開始

    12月17日、AKA株式会社と株式会社三省堂は、英語学習AIロボット「Musio(ミュージオ)」で利用できる英語学習コンテンツの共同開発に向け、同志社中学校で実証実験を実施したことを発表。

    Musioは自然な英会話ができたり、レベルや目的に合わせた英語学習ができたりするモードを搭載している。

    関連記事英語学習AIロボット、同志社中学校で実証実験「日本の英語教育に貢献したい」

    「JDLA認定プログラム」認定にかかる費用を無償化もしくは減額できる精度を開始

    日本ディープラーニング協会は、高等学校、高等専門学校、大学(短大、大学院を含む)を対象として、「JDLA認定プログラム」への認定にかかる費用を無償化および減額する制度を開始する。JDLA認定プログラムとは、JDLAが実施するエンジニア資格(JDLA Deep Learning for ENGINEER、E資格)の受験資格を得るために受講が必須となる教育プログラムだ。

    今回の認定費用無償化制度の適用により、シラバスを満たす講義をしている教育機関の認定推奨が増えることで、ディープラーニングの理論を理解し、適切な手法を選択して実装する能力を持つ、エンジニア人材の育成拡大を目指すという。

    関連記事「JDLA認定プログラム」認定費用無償化制度スタート。制度活用第一号は中部大学

    竜巻の発生を自動で検出、PFNと気象庁気象研究所が開発開始

    12月17日、株式会社Preferred Networks(PFN)は、気象庁気象研究所が実施する「AIを用いた竜巻等突風・局地的大雨の自動予測・情報提供システムの開発」の契約先として、その中核技術となる夏季の竜巻探知技術の開発を開始したと発表。

    竜巻検出システムは、鉄道をはじめとするさまざまな高速交通、さらには突風の影響を受けやすい分野に情報を提供することで、安全性向上につながると期待されている。

    関連記事深層学習で「竜巻」の発生場所を自動検出するシステム開発を開始――PFN、気象庁気象研究所

    キヤノンが開発した群衆人数カウント技術、約6000人を数秒で数えきる

    12月19日、キヤノンは、ディープラーニング(深層学習)を用いて、ネットワークカメラで撮影した映像から、数千人規模の群衆人数をリアルタイムにカウントする映像解析技術を開発したと発表。

    約6000人規模をカウントするのに、数秒で数えきったそうだ。なお、人手で確認した人数と比較しても誤差5%以内に収まったとのこと。

    関連記事AIで数千人を瞬時にカウントできる技術をキヤノンが開発、計測誤差は5%以内を実現

    【AI×スポーツ】オリンピック間近、2020年に向けて。スポーツへのAI最新導入事例

    画像出典:SPORTS TECHNOLOGY LAB

    2020年に開催される東京オリンピックへの盛り上がりが加熱する裏側で、スポーツ業界へのAI活用が注目されています。

    スポーツ業界では、今まで注目されていなかったアナログの分野でもAIが導入され始めています。本稿では、スポーツ分野におけるAI導入事例についてお届けします。

    スポーツ競技へのAI導入事例

    AIが大量のデータを分析した結果は、試合戦略立案、対戦チームの研究といったさまざまなシーンに使われ始めています。

    具体的な事例を見ていきましょう。

    試合のハイライト動画を一瞬で作成。「IBM Watson」がウィンブルドンで活躍

    出典:Pixabay

    毎年50万人近くが訪れ、期間中に800試合以上がおこなわれるウィンブルドン選手権。毎年何百時間もの映像が記録として残されています。2017年には、約480万ポイント分のラリー(約800試合分に相当)が映像として記録されました。

    テレビ中継などで放映される試合のハイライトは、人が試合の動画をフルで見て、面白い部分を切り取り、それをつなぎ合わせて制作します。しかし、ウィンブルドンの試合動画全てを見て、面白い部分だけを人の手で抜き取るのは極めて重労働といえるでしょう。

    そこでファンの歓声、選手の動き、試合のデータをもとに、総合的な観客の興奮度を「IBM Watson」が分析。ハイライト動画の作成に活用されました。

    Watsonのハイライト作成が導入されたことで、以下の成果が得られました。

    • ウィンブルドンのホームページのPVが500万増加
    • 1440万本の動画をIBM Watsonによってのみ制作
    • 動画1本につき30分の作成時間短縮

    この事例のように、歓声や動作を読み取って状況を判断できるようになれば、ほかのスポーツでも応用が効きそうです。

    微妙なラインの口論がなくなる。AI審判デバイス「In/Out」

    プロテニスの試合において、ボールの落下点を機械で判断する「ホークアイ」はおなじみですが、アマチュアでもそれを体感できるデバイスが「In/Out」です。

    ネットの端に取り付けるだけで、ボールのイン/アウトを判定できるデバイスで、2017年に発売されています。

    ネットに装着後、スイッチを押すとコートをスキャンし、判定を始めます。搭載しているAIでボールの落下点を識別し、アウトであればデバイスのライトが赤く、入っていた場合は青く光ります。

    また、試合の記録やスタッツ(アンフォーストエラーやサーブの確率など、統計的な数字)も分析可能。落下点が際どい場合でも、この機械を使えば判定してくれるので、プレイヤー同士で揉めることもなくなるでしょう。

    AIがバスケコーチに。選手・ボールの動きを分析し戦術作成まで

    出典:Pixabay

    AIはチームスポーツでも活用されています。

    富士通の女子バスケチーム「レッドウェーブ」が練習する体育館には、8台のカメラが天井に設置されています。カメラと人工知能(AI)は試合中の選手全員を追いかけ、フォーメーションやシュートを認識して記録します。

    映像はパソコンに送られ、画面にシュートの成功・失敗が分布図で表示されます。成功・失敗のそれぞれのポイントをクリックするとシュート場面の映像を再生します。選手ごとのシュート成功率や失敗率の高い位置なども分析可能です。

    現在はチーム内での運用に留まりますが、今度は精度を高めた後に外部へ販売する見込みです。
    このようなサービスが発展すれば、自分のチームはもちろん、対戦選手1人1人を分析し、戦術を練ることも可能です。

    参考:www.nikkei.com/article/DGXMZO19831000Z00C17A8000000/(外部リンク)

    サッカーに特化した戦術・分析支援アナリティクスツール「Pitch Brain(β版)」


    出典:https://www.sportstechnologylab.com/#products

    博報堂DYグループの「AIビジネス・クリエイション・センター」は、スポーツアナリティクス事業の実行可能性調査(フィジビリティスタディ)を行う、Sports Technology Labを設立しました。

    機械学習、深層学習技術における日本のユニコーンPreferred Networksと包括的共同開発契約を締結し、新たなソリューションを開発しています。そのひとつが、サッカーに特化した戦術・分析支援アナリティクスツール「PitchBrain(ピッチ・ブレイン)」。

    出典:https://www.sportstechnologylab.com/#products

    Pitch Brainは次のことを可能にしたといいます。

    • サッカーで選手がボールを持っていない瞬間、すなわちオフ・ザ・ボールの動きを捉えられるようになったことで、90分を通じたチームの特徴を可視化すること
    • 膨大なサッカー映像を学習させることで、サッカーに特化した姿勢推定アルゴリズムに基づくパスコース判定

    スポーツアナリティクスを充実させることで、勝敗の予測と、試合の作戦戦略に幅を持たせることが可能になります。

    参考:https://www.sportstechnologylab.com/#products(外部リンク)

    スポーツ観戦が変わる。スポーツ観戦へのAI導入事例

    スポーツへのAI導入によって、スポーツ観戦の仕方が変わりつつあります。AIが選手の動きなどを分析することで試合展開や結果の予測が可能になり、観客は今までになかった新しい視点での試合観戦の楽しみ方ができるようになってきています。スポーツ観戦へのAI導入事例をご紹介します。

    サッカーの試合展開を完全予測?!「WARP」

    WARP」は選手の動きを含めた試合展開と試合結果を予測します。

    Jリーグの

  • 各選手データ
  • スタッツデータ
  • トラッキングデータ
  • を反映した22体のAIを使い、最も確率の高い試合展開を予想します。

    対戦予定のカードをAIが実際に100回対戦させることで、試合の流れ、得点数など、試合結果を予測可能です。また、ユーザーによる予測・コメント機能も搭載されていて、サポーター同士で戦況の予測をシェアできます。

    野球解説者もAIに。AIスポーツ解説システム「ZUNOさん(ズノさん)」

    プロ野球の解説にもAIが導入され始めています。電通の制作チーム「Dentsu Lab Tokyo」(電通ラボ東京)は、「AIスポーツ解説プロジェクト」の展開を開始しました。その中で、2017年4月、NHKとDentsu Lab TokyoはAIスポーツ解説システム「ZUNOさん(ズノさん)」を共同開発し、注目を集めています。

    AIスポーツ解説システム「ZUNOさん」にできること

    • 2004年から記録されている300万球を超える打席データを学習することで、配球順位を独自に予測
    • データマイニングを応用することで、これまで人間の解説者では見つけることのできなかった選手の傾向試合状況に応じた投球の解析

    さらに、「ZUNOさん」を用いてAI(人工知能)と視聴者が対決するという新たな取り組みも行われました。

    AIと視聴者が直接対決!?「プロ野球投球予測バトル」

    2017年10月29日に開催されたプロ野球日本シリーズ第2戦で、テレビとネットを連動した視聴者参加型企画「NHKプロ野球! 投球予測バトル」が実施されました。

    参加者は、スマホやタブレット、PCなどを手にテレビ中継を見ながら、次の一球の「球種」と「コース」を予測し、ZUNOさんと対決します。

    出典:http://dentsulab.tokyo/rad/?p=328(外部リンク)

    結果、「球種」「コース」ともに「ZUNOさん」の正答率を上回った参加者は4484人中4人だったそうです。

    参考:http://dentsulab.tokyo/rad/?p=328(外部リンク)

    チケット価格もAIが決める。価格変動制「ダイナミックプライシング」

    試合観戦チケットの価格決定にもAIが導入され始めています。

    横浜F・マリノスは、2018年7月以降に開催されるホームゲームの日産スタジアム一部エリア「ニッパツ三ツ沢球技場全指定席エリア」で、Jリーグ初となる価格変動制「ダイナミックプライシング」によるチケット販売を開始しました。

    ダイナミックプライシングとは
    需要、市況、天候、個人の嗜好などに関するビッグデータをクラウド上のプラットフォームで迅速に分析。需要の予測を基に価格の上げ下げを自動的に行なうことで、ファンの皆様のニーズに即応する仕組みです。チケットを購入するタイミングにより、価格が変動する可能性があります。
    引用:https://www.jleague.jp/fxsc/2019/special_lp/dynamicpricing_qa.pdf

    ダイナミックプライシングの導入により、需要に応じた「適正価格」でのチケット販売が可能になり、収益アップ観客数増員不当な高額転売の防止が見込めます。

    2018年9月から10月にかけてのニッパツ三ツ沢競技場でのチケット価格の変動を示した図。
    出典:https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00099/00003/

    上の図によれば、標準価格で販売した9月24日から、一時は定価より4000円以上価格が上昇したチケットもありました。

    ダイナミックプライシングそのものの効果とは判断できませんが、横浜F・マリノスは、全試合、全席種でダイナミックプライシングを導入した2019年シーズンの売上、入場者数は2018年シーズンを上回っているそうです。

    ダイナミックプライシングはJリーグだけでなく、ほかのスポーツやコンサート、食品スーパーなど様々な場面で導入され始めています。福岡ソフトバンクホークスは2020年シーズン、福岡PayPayドームで開催するホークス主催オープン戦、公式戦全試合のチケットをダイナミックプライシングで販売すると発表しました。

    AIを活用することで、需要と供給が一致する適正価格をより正確に設定することが可能になり、今後「定価」というものがなくなっていくかもしれません。

    参考:https://real-sports.jp/page/articles/306704824622122065(外部リンク)

    パーソナルトレーニングを進化させるAI機器

    AIの進化によりパーソナルトレーニングも変わりつつあります。ウェアラブルデバイスから得たデータを分析したり、トレーニングや食事内容を提案したりするのにAIが活用されてきています。

    心拍数や心拍変異度などをもとにコンディション状態を可視化するアプリ「WHOOP」


    WHOOPは、心拍数や心拍変異度などをもとにコンディション状態を可視化し、疲労回復と怪我防止が可能にするアプリです。心拍数などのデータは、手首に巻けるウェアラブルデバイス「WHOOP STRAP」で計測できます。

    WHOOPアプリは、1日の運動量を計測し、疲労度と回復度を0〜21の範囲で記録します。

    出典:https://www.whoop.com/

    出典:https://www.whoop.com/

    トレーニングデータが可視化されることで、最適なトレーニングができているか、それとも負荷が掛かり過ぎたトレーニングをしているのか、ユーザー自身が簡単にチェックできます。

    WHOOPを使うことによって無理ないトレーニングができ、トレーニング中の怪我を負う確率が60%減ったという結果が出ています。

    睡眠をサポートする機能では、身体の疲労度と回復度を記録したデータが使われます。最大限のパフォーマンスレベルに達するために、どれだけ睡眠が必要かを可視化できるのです。

    メンタルサポートによって運動のモチベーションを上げてくれる「Vi」


    Viは、基本機能として、以下の6種類の値をバイオセンサーやGPSなどから計測してくれます。室内でも屋外でも計測可能です。

  • 心拍数
  • 道の勾配
  • ペースの変化
  • 移動速度
  • 移動時間
  • 移動距離
  • Viは、計測した値の結果を蓄積、分析するだけでなく、運動中に聞きたいことを質問すれば、それを音声で答えてくれます。

    また、専用アプリにはチャットボットが搭載されています。ボットからの質問に答えることで、睡眠時間や体調、生活習慣を記録。データドリブンなメンタルサポートによって運動のモチベーションを上げてくれます

    Viには、運動の種類に応じたオリジナルプレイリストを作成してくれる機能もあります。その他豊富なサポートにより、自分1人で運動するよりも高いパフォーマンスを引き出します。

    利用方法はアプリをインストールするというもので、AndroidにもiOSにも対応しています。

    参考:https://vitrainer.com/pages/vi-trainer-c(外部リンク)

    あなたの目標に応じたトレーニング、献立を提案「RocketBody」

    出典:https://gorocketbody.com/index.html

    RocketBodyは、目的に合ったトレーニングを紹介してくれるアプリです。選択肢には

  • 脂肪燃焼
  • 筋肉増量
  • 体型維持
  • などがあります。また、チャット機能と通知機能によって、目標達成を確実なものにしてくれます。

    注目すべきは、ユーザーの好みに合った献立を提案してくれる機能です。好みの食べ物を入力すると、AIがカロリーを計算し、目標に合わせた複数の献立を提案してくれます。

    参考:https://gorocketbody.com/index.html(外部リンク)

    AI搭載食事トレーニングアプリ「food coach」

    出典:http://foodcoach.jp/

    food coachは、最強レスリングチームを育んだ至学館大学が開発した、国内初のAI搭載食事トレーニングアプリです。IBMのAI「Watson」を使ったビジネスモデルコンテスト「IBM Watson Build Challnge2017」において、日本部門で準優勝しています。

    1)国際大会、プロ、事業団向け
    2)国内大会、市民ランナー向け
    3)フィットネスクラブ向け

    の3段階から自分に合ったレベルを選べます。

    food coachは、家庭料理からコンビニ、ファミレスなど、10万件の食事データを収録しています。食べた料理を一覧から選ぶと簡単に栄養価が計算できます。
    また、

  • 体重
  • 体脂肪
  • 筋肉量
  • 競技種目
  • ポジション
  • などの細かいデータをAIが分析し、栄養素の過不足をグラフ化や点数化をしてくれます。

    ほかにも、

  • おやつを「捕食」と捉え、足りない栄養素を補う軽食を提案する
  • 試合前に適した食事と、試合後の疲労から回復するための食事を提案する
  • など、従来のヘルスケアアプリには無かった機能が詰め込まれています。

    出典:http://foodcoach.jp/

    「AI×スポーツ」の今後の可能性・未来予想

    AIのスポーツへの導入は拡大しています。AIが一つ一つのプレーや試合結果予測を行なうことで、必要のない動きや戦術が削ぎ落とされるなど、競技そのものを変化させていくかもしれません。

    また、AIの活用の仕方によっては、選手の動きや戦術の予測情報を片手に観戦するなど新たなスポーツの楽しみ方が生まれ、視聴者が多様な視点でスポーツ観戦を楽しめるようになっていくかもしれません。

    それだけでなく、チケット価格の決定へのAI導入事例のように、ビジネスへの応用も見られ、今後新たなスポーツビジネスの広がりが見られるのではないでしょうか。

    いずれにしても、すでにAIはスポーツに密接に関わってきています。

    AIで数千人を瞬時にカウントできる技術をキヤノンが開発、計測誤差は5%以内を実現

    12月19日、キヤノンは、ディープラーニング(深層学習)を用いて、ネットワークカメラで撮影した映像から、数千人規模の群衆人数をリアルタイムにカウントする映像解析技術を開発したと発表。あわせて、この技術を搭載した映像解析ソフトウェア「People Counter Pro」を12月下旬から発売する。(外部サイト

    キヤノンに価格を問い合わせたところ、システム構成によって大きく変わる可能性があるものの、XProtect版の場合はおおよそ100万円~(サーバー、カメラ、ライセンス含む)だそうだ。

    キヤノンによれば、

    「2018年に開催されたラグビーの国際試合での実証実験では、キヤノンの群衆人数カウントの技術によって約6千人を数秒でカウントできました。実証実験後の画像を人手で確認した人数と、ソフトウェアによるカウント人数の差は5%以内に収まり、ほぼリアルタイムで、群衆人数を正確に把握することに成功しました」

    とのことだ。

    これまでの動体や人物の顔を検出する映像解析技術は、人が密集する混雑状況下では正確に数えることが難しいという課題があった。なぜなら、体の重なりや顔の向きなどの影響を受けるからだ。

    キヤノンが開発した技術なら、映像から人の頭部を検出することで、人が密集している状況でも人数をカウントできる。また、指定した領域の中にいる人数の表示や、推移のグラフ表示も可能だ。そのため、混雑状況の把握や分析に活用できるとされる。

    また、対応できる画角が広いため、カメラ設置場所の自由度が高いそうだ。さらに、GPUを搭載していないPCでも動作可能なため、設置や運用コストを抑制できる。

    キヤノンの広報によると、サーバーの構成や映像の解像度によるものの理論値としては、2000万画素のAXIS Q1659使用時は8万人以上の検出に対応。フルHDの場合においても、9000人以上の検出に対応しているとのこと。

    混雑状況の把握が容易になることで、都市や公共施設、スタジアムなどの監視においてデータを活用した警備計画の立案、警備員の効率的な配置に役立つと期待されている。そのほか、イベント会場や店舗での集客状況の把握、広告効果の検証などでも使われそうだ。

    Ledge.ai編集部では、今年8月にキヤノン株式会社に対し本件に関するインタビューを実施している。混雑緩和や警備強化、さらにはマーケティングに活かせる技術についてなど、映像に付加価値を与えようとしているキヤノンの取り組みを聞いた。

    インタビュー記事キヤノンの群衆人数カウント、6,000人もの人数を瞬時に推定。AI技術をマーケティングやセキュリティに

    >>プレスリリース


    映像解析技術はテレビ局の番組制作でも使われている

    カメラに映し出された内容を解析する技術は、人に代わる“目を持つ存在”として多くの利用シーンが生まれつつある。

    まず、キヤノンが開発した解析技術のように、監視カメラとしても使えるケース。

    今年11月から、神戸市ではフューチャースタンダードと協働で、放置自転車の監視に関する実証実験を開始している。放置の多い歩道や駐輪場付近にカメラを設置。収集した動画や画像をAIで解析することで、放置自転車の台数をカウントする。放置されている現状把握にまずは役立てるそうだ。

    関連記事放置自転車をAIで監視、実証実験を神戸市でスタート

    また、人や物体数のカウントではなく、映像に出た人の顔を認識・判別する技術も実用化されている。

    日本テレビでは、今年7月に放送した「NNN参院選特番 ZERO選挙2019」「日テレNEWS24×参議院選挙2019」において、AIの顔認識技術を使った実験を実施していた。映像内の人物と名前の間違いによる誤報を防止することが目的。結果として、AIが認識すれば一度の間違いもなかったようだ。

    関連記事オンエア素材の人物チェックに顔認識。日テレ参院選報道の現場はAIでこう変わった

    今回キヤノンが開発した技術は、すぐさま解析結果を出せるのも特徴のひとつ。この技術が普及すれば、イベントなどでよくある「参加者〇〇万人!」みたいな発表も、入り口で“数取器”をカチカチして数える必要もなくなるかもしれない。

    ヤフーとの経営統合を合意したLINEのAI、その「核」に迫る

    11月18日、LINEとヤフー(Zホールディングス)が経営統合関する基本合意書を締結した。すでに大きく報道されている通り、両社の提携は、メディア、コマース、フィンテックなど、さまざまな事業でシナジーを生むだろう。

    しかし、BtoCのイメージが強いLINEに、AIをBtoBで提供するサービスがあるのを知っているだろうか。それが「LINE BRAIN(外部リンク)」だ。Ledge.ai編集部は、このLINE BRAINを統括するトップ3にインタビューする機会を得た。

    今このタイミングだからこそ、改めてLINEがAIで何をしているのか、何を目指しているのかを知っておくことは大きな意味があるだろう。独占インタビューをお届けする。

    (左)砂金信一郎氏 LINE株式会社 AIカンパニー LINE BRAIN室 室長 Developer Relations Team マネージャー プラットフォームエバンジェリスト
    (中央)佐々木励氏 LINE株式会社 AIカンパニー LINE BRAIN室 副室長
    (右)飯塚純也氏 LINE株式会社 AIカンパニー LINE BRAIN室 事業企画チームマネージャー

    「舛田さんのあんな表情は初めて」他ベンダーと比べても十分に勝てる外販事業

    LINE BRAINとは、端的に言えばLINEがBtoBでAI技術を外販する事業の総称だ。今年6月のLINE CONFERENCEで大々的に発表され話題を呼んだ。

    関連記事:「LINE BRAIN」でAIのBtoB事業参入──#LINECONF AI系発表まとめ

    LINE CONFERENCEでは、LINEの取締役CSMOである舛田淳氏による、電話でレストランなどの予約を完結させる「Project DUET」のデモを見た人も多いはず。これもLINE BRAINが提供するAI技術のひとつだ。

    LINE BRAIN室室長の砂金信一郎氏は、発表当時を振り返りこう語る。

    ――砂金
    「あそこまでテンパった舛田さんの表情を見るのは初めてでしたね。6月の発表会に間に合わせるために、社内調整を重ねに重ねて、なんとかデモを出せた突貫工事だったんです」

    LINE CONFERENCEでのお披露目後、半年弱で正式リリースにこぎ着けた。Project DUETはサービス名称を「LINE AiCall」として、すでに「俺のGrill&Bakery 大手町」での実証実験を開始している。

    俺のGrill&Bakary 大手町での、LINE AiCall実証実験の仕組み出典:LINEプレスリリースより

    ――砂金
    「6月の時点でLINE BRAINは、本当にロゴくらいしか決まっていない“生煮え”の状態でした。発表からの半年弱でプロダクトを磨き上げ、他ベンダーと比べても十分に勝てるサービスになったと自負しています

    リサーチの段階で「世界一」を目指す

    記事を書いている現在、LINE BRAINが展開するサービスは以下の7つ。

    • CHATBOT(チャットボット)
    • TEXT ANALYTICS(言語解析)
    • SPEECH TO TEXT(音声認識)
    • TEXT TO SPEECH(音声合成)
    • OCR(文字認識)
    • VISION(画像認識)
    • VIDEO ANALYTICS(画像・動画解析)

    どのサービスにも競合がわんさかおり、すでに「レッドオーシャン」と呼んでも過言ではないサービスばかりだ。

    それでも、砂金氏が「他ベンダーと比べても十分に勝てるサービスになった」と自負する理由は何か。その理由をLINE BRAIN室 副室長である佐々木励氏はこう語る。

    ――佐々木
    「LINE BRAINでは、要素技術におけるリサーチの段階で、グローバルジャイアントに勝とう、No.1になろうというミッションを持っています。そんな意識でリサーチを始めたのが、OCRでの文字認識ですね」

    LINEはOCRでの文字認識で、ICDAR(International Conference on Document Analysis and Recognition)という、文字認識の技術を競う国際的な大会で、ほかの参加チームを大きく上回る成績を残した。機械学習で学習データを自動的に生成する手法を用いて、これを達成したという。

    関連記事:LINEのAI・機械学習の取り組みを一挙紹介〜顔認識入場や電話予約対応AI、不審ユーザ認知など実現

    このOCR技術を用いてサービス化されたのが、LINEのトーク画面上で画像からテキストを抜き出せるOCR機能だ。もしLINEアプリが自分のスマホにインストールされていれば、ぜひ試してほしい。かなりの精度で文字を抜き出すことができ、もちろんコピー&ペーストも可能だ。


    LINEアプリのOCR機能。(編集部撮影)

    実際、LINEアプリひとつとっても、AIが使われている機能は無数にある。上記のOCR機能以外にも、チャットでの音声入力機能、免許証と自撮りした画像をアップするだけで本人確認ができる機能(LINE Payほか)などがある。

    キャラクターを召喚して会話を楽しめる装置「Gatebox(外部リンク)」で召喚できるキャラクターである「逢妻ヒカリ」の音声には、LINEBRAINで開発・保有する音声合成技術が採用されている。LINE BRAINの音声合成技術は、Googleが発表している、音声生成が可能なニューラルネットワークの一種「WaveNet」に精度で優っているという研究結果(外部リンク)も出ている。

    ユーザー体験へこだわると「世界一」目指すのは必然

    なぜ、「世界一」にここまでこだわるのか。その理由を、佐々木氏は「LINEの徹底したユーザー目線のカルチャー」が挙げられるという。

    ――佐々木
    「プロダクト開発の際、デモを社内で徹底してこき下ろされるんです。『本当にユーザーに使われるのか?』『ユーザーから見てこの機能は便利なのか?』など、本当にさまざまな角度から指摘がある。AIに関しても、ユーザー体験に徹底してこだわると、おのずと一流レベルのAI技術が求められるため、世界一にこだわっています

    あくまでAIの精度が一流なのは前提として、その先のユーザー体験に徹底してこだわる文化があるという。

    そして社内からの「攻撃」を乗り越えた先には、LINEの膨大なプロダクトの一部で試験運用する。自らのプロダクトで十分な運用ができた場合にのみ、LINE BRAINで外販するサービスとして展開するという。

    LINE BRAIN室 事業企画チームマネージャーの飯塚純也氏はこう話す。

    ――飯塚
    「たとえば、LINEのカスタマーサービスにはすべてLINE BRAINが開発したチャットボット技術を使って運用しています。社内ですでに一定の成果を出しているので、自信を持って外に出せる。

    実際、R&Dフェーズから技術をプロダクトへ落とすのは簡単ではありません。技術はあるけど、そこで脱落していくスタートアップも多い。LINEはそれをやる企業体力、投資能力があるから可能なのです」

    「世界一」への道を支える技術者たち

    そんな「世界一」への道を支えるLINEの技術力は、どのように支えられているのか。

    ――砂金
    「LINE BRAINは、実は韓国NAVERとの共同事業なんです。なので、同社のエンジニアやリサーチャーが日本に来て、LINE BRAINのプロジェクトを一緒に進めることもあります」

    LINEの親会社である韓国NAVER(厳密には2020年10月以降、LINEはNAVERが50%出資するZホールディングスの傘下となる)は、韓国のテック企業で圧倒的ナンバーワンの地位を占める。

    検索エンジンのGoogleでさえ、韓国ではNAVER検索に勝てず撤退した過去がある。当然、NAVERはAIにも潤沢な投資を行っており、世界的にも名のあるリサーチャー・エンジニアが在籍しているという。

    NAVERの人材との「共同戦線」以外の観点でも、LINE BRAINの組織体制は強力だ。LINEのアドプラットフォームを構築したり、社内のデータ分析に携わったりする「データラボ」の、OCRや言語処理を行うメンバーがLINE BRAINを兼任することもあれば、AIアシスタント「Clova」の音声認識・合成を担当するチームがLINE BRAINに携わることもある。

    ほかにも驚きなのが、「LINEのプロダクトにまったく寄与しなくてもよい」AI技術の研究チームがあるということだ。

    ――砂金
    「弊社のリサーチラボという組織は、いわゆる研究員としての立ち位置です。LINEのプロダクト開発への貢献は求めていません。論文を書いて学会に貢献し、技術的なブランディングを行うのがリサーチラボの役割ですね」

    これらの優秀な人材が、LINEの技術「世界一」を後押ししているというわけだ。

    GAFAからこぼれ落ちたニーズを拾っていく

    ヤフーとLINE統合記者会見の際、両社は「AIテックカンパニー」になるとぶち上げた。しかし、今の世界の状況を見ると、AI分野ではアメリカではGAFA、中国ではBATHと呼ばれる企業群が圧倒的だ。LINEは今後どのような戦略を描いているのだろうか。

    ――砂金
    「GAFAなど、外資系ベンダーによるジャパンパッシングがありますよね。海外のカンファレンスで新サービスが発表されても、日本に来るのは2,3年先とか。

    しかし、日本企業の課題解決のカギはGAFAによるサービスのローカライズではありません。LINEは、GAFAが投資対効果が合わずに撤退した、たとえばマイナー言語などのニーズに集中します

    実際に、海外で新サービスが発表されても、日本語に対応するのは数年先ということが少なくない。その間に、GAFAなど巨大テック企業は英語のデータを蓄積し、さらに技術革新を加速させていく。

    前述のGateboxでも、日本では「キャラクターと雑談を楽しみたい」というニーズが多いという。たしかに、Amazon EchoやGoogle Homeが、「萌えキャラ」の声に対応するかは怪しい。これらの「GAFAからこぼれ落ちたニーズ」を、LINEは積極的に汲み取っていくという。

    「人に優しいAI」の真意

    また、LINEはLINE BRAIN発表時に、「人に優しいAI」を提供していくとした。この真意は何なのだろうか。

    ――砂金
    「LINE BRAINは、人々の生活に根ざした課題解決のために、LINEの技術を外部にライセンシングしていくサービスだと考えています。

    『人に優しいAI』とは、人の仕事を奪うのではなく、本来の業務(たとえば飲食店内での接客や調理といったお客様へのサービスなど)に集中できるような社会を実現するためのAI、という意図でそう呼んでいます。人々の生活に密着し、知らないうちに後ろから手を差し伸べるようなAIです。

    本当はすごい技術を使っているんだけど、自然に生活に溶け込んでいるような。そんなAIを目指しています」

    現代の主なコミュニケーション手段は会話とスマートフォンだが、インターフェースとして、今後もスマートフォンが主要な地位を示すかは分からない。

    LINEはこれまで、スマートフォンを起点としたサービスを提供してきた。しかし、ユーザーの求めるものが多様化してきたことから、「スマートフォンの外の世界も取り込む必要が出てきた」と佐々木氏は言う。

    ――佐々木
    「たとえばLINEの家計簿アプリには、レシートをOCRで読み取って自動で家計簿を付けるサービスがあります。これはつまり、現実世界の、まだデータ化されていない情報をデータ化して取り込んでいるということ。ネットの世界を現実世界に拡張するのが、LINE BRAINの役割でもあります
    ――飯塚
    「LINEのすべてのサービスの軸は“コミュニケーション”にあります。だからこそ、今は自然言語処理のサービスを中心にフォーカスしていて、そこから横展開していく。スマホから拡張し、音声・サイネージなどにLINEの技術をアンビエントにさまざまな場所に入り込ませていく。それが『優しいAI』と呼んでいる所以です」

    今後、どんなにコミュニケーション方法が進化しても、人類が会話しなくなることはないだろう。

    スマートフォンがなくなったとしても、コミュニケーションが介在するところに「LINEあり」の世界。そんな世界をLINE BRAINは実現しようとしているのかもしれない。

    深層学習で「竜巻」の発生場所を自動検出するシステム開発を開始――PFN、気象庁気象研究所

    12月17日、株式会社Preferred Networks(PFN)は、気象庁気象研究所が実施する「AIを用いた竜巻等突風・局地的大雨の自動予測・情報提供システムの開発」の契約先として、その中核技術となる夏季の竜巻探知技術の開発を開始したと発表。

    気象研究所が提供した竜巻検知技術のイメージ。気象レーダーで観測したドップラー速度パターンから、深層学習を用いて、竜巻をもたらす可能性のある渦パターンを高精度に自動検出する(プレスリリースより)

    近年、日本では竜巻発生確認数が毎年20件を超えている。自然災害リスクを減らすためにも、竜巻を素早く的確にとらえ、危険を回避するための気象予測情報は非常に重要だとされていた。しかし、ごく小さなエリアで局地的に発生する竜巻渦だけを正確に自動検出することはこれまで困難だった。なぜなら夏季の竜巻は、活発な対流を起こす積乱雲にともなって発生するため、風向きが複雑かつ多様なパターンがあったからだ。

    今回PFNは、気象研究所から全国各地に設置する気象レーダーで観測した“ドップラー速度データ”の提供を受け、深層学習を用いて、どこで竜巻が発生しているかを正確かつ自動的に検出する新たな手法の開発を開始した。ドップラー速度データとは、ドップラーレーダーによって、上空の降水粒子からの反射波を用いて上空の風を観察したものだ。

    竜巻検出システムは、鉄道をはじめとするさまざまな高速交通、さらには突風の影響を受けやすい分野に情報を提供することで、安全性向上につながると期待されている。

    >>プレスリリース


    気象とAIを掛け合わせることでさまざまなサービスが展開

    PFNの竜巻発生を検出するシステムでAIが使われるが、「気象」という分野においてはさまざまな面でAIが利活用されている。

    当然、防災での活用は多くの企業が取り組んでいる。今年3月には、損害保険ジャパン日本興亜が防災・減災システムを熊本市で実証を開始したと発表した。これは、米国シリコンバレーの防災スタートアップ企業のOne Concern社とウェザーニューズと共同開発したものだ。

    関連記事:熊本市でAIを活用した防災、減災システムの実証実験開始

    防災だけでなく、「需要予測」という面でも活用できるのが気象データだ。2018年にはエクサウィザーズと日本気象協会が、気象データとAIをかけあわせた需要予測サービスの開発に着手した。気象は人間の行動原理に関係するため、メーカー、卸、小売り、農業、アミューズメントパークなどさまざまな業種の企業運営に影響すると考えられているためだ。

    関連記事:気象データを活用しAIで需要予測 ── エクサウィザーズと日本気象協会

    個人的には、気象データをもとに、クローゼットにある服と体感温度などを加味した最適な服装をレコメンドしてくれるようなパーソナルアシスタント的なものがあるとうれしい。あったら教えてください、使うので。

    「YouTuberのようなイケてるCSが登場する」AIチャットボットがもたらす、未来のカスタマーサポート

    IBMの人工知能Watson(ワトソン)に端を発し、今やあらゆるサービスやWebサイトで利用されているチャットボット。市場規模も2019年に51億円、2022年には132億円(予測値)と、伸び盛りの市場だ。

    対話型AIシステム市場に関する調査を実施(2018年) | ニュース・トピックス | 市場調査とマーケティングの矢野経済研究所(外部リンク)

    10年足らずで100近いチャットボットサービスが誕生した現在、サービスごとの違いが見えにくく、レッドオーシャン市場になりつつあるのでは?と感じるのは筆者だけだろうか。

    関連記事:ボット、RPA、AI技術が集結。AI・人工知能EXPOレポート【1日目】

    質問応答システムを提供するために、約100サービスは何を競い合っているのだろう?将来問い合わせ窓口がAIによって自動化されたら、現在問い合わせ対応をしているカスタマーサポート(以下CS)職の人々は、仕事を「奪われる」のか?

    こうした「チャットボットの今、CS職の未来」に対する問いを、「正答率95%保証」を掲げるAIチャットボットサービスKARAKURI chatbot(カラクリ チャットボット)を提供する、カラクリの小田志門CEOに投げかけてみた。

    カオスなチャットボット業界

    一見、複雑怪奇に見えるチャットボット業界。小田氏によると、チャットボットは①提供手法②利用形態③プロダクトそのものの強みという軸から見ると区別しやすくなるという。

    ①提供形態

    チャットボットの提供形態は、オーダーメイドでボットを開発するエンタープライズ向けか、エンタープライズ向けより導入ハードルが低いSaaSタイプに二分できる。

    システムをゼロから構築するエンタープライズ向けは自社の要望に合わせたボットが作れる一方、コストが高額になる傾向がある。対してSaaSは、あらかじめ決まった形のツールが用意される事が多く、ユーザー側がある程度「合わせる」必要がある。しかし導入コストを抑えやすく、多くのユーザの要望をもとにボットがバージョンアップされる、といった恩恵が受けられる。

    ②利用用途

    チャットボットの用途はふたつ。顧客への問い合わせ(カスタマーサービス)、もしくはマーケティング活用だ。うち、カスタマーサービスにおけるチャットボットの用途は以下の通り。

    • BtoC、BtoBの顧客対応
    • 社内(従業員)の問い合わせ対応

    BtoC顧客対応はECやネット証券など、インターネット上に流通チャネルを持っている企業での導入が多く、BtoB顧客対応はネット決済や、メーカーとマッチングさせるプラットフォームでの導入が増えてきているという。

    ③プロダクトの強み

    プロダクトの強みは多種多様だ。導入費用もしくはランニングコストの安さを売りにしているサービスもあれば、操作性の良さ、キャラクター(バーチャルアシスタント)の存在やAIの性能を差別化ポイントとして推しているサービスもある。

    しかし、日本で提供されているチャットボットサービスの過半数は、「人件費の削減」を主眼としたボットなのだとか。

    ――小田
    「CS部門をコストセンターと捉え、人員削減しつつ、できる限り運用コストを抑えたいという企業は少なくありません。

    数年前からAIやRPA導入がブームとなっているので、『AI導入をする』というだけで株価が上がった会社もありました。手っ取り早く導入実績を作って投資家にアピールしたい上場企業にとっては、『月数千円でAI(のボット)が導入できる』というコピーは魅力的に映るかもしれませんね」

    カラクリが「カスタマーサポート全体」の支援に力を注ぐわけ

    一方、カラクリはSaaS型、CS特化・高性能AIという軸で勝負している。

    同社のサポートは手厚い。「なぜボットを導入するのか」を確認するキックオフミーティングに始まり、チャットボットの成果を測る指標「ボットKPI」や「ボットROI」の設定、ボット運用方法、ひいてはカスタマーサポート業務の全体像を顧客とともに作り上げる。

    ボット導入時には、ボットの性能を高めていく「初期馬力」が必要になってくる。ボットに分かりやすい会話カードの作成や、会話データ(教師データ)を重複なく設定し、テストをやりきって精度を高めるといった多くの企業が挫折しやすい部分も同社がサポートする。

    状況にもよるが、最初の2カ月で運用方法までレクチャーし、導入3カ月目に効果が出始めるイメージで進めているとのこと/提供:カラクリ株式会社

    高性能なAIも、同社の売りだ。社内のAIエンジニアが独自のアルゴリズムを作成し、正解率を高めるキモになるデータの作成や、回答速度の向上に心血を注いで「正答率95%」を実現している。

    そんなAI技術を持つ企業が、なぜCS業界に参入したのか。そこにはCS職に対する小田氏の問題意識があった。

    カラクリの創業は、3年前の2016年に遡る。前職でCS導入支援を手掛けていた小田氏は、クライアントのLINECS導入経験を通じてチャットボットに興味を持ち始める。

    ――小田
    「ひと昔前、2010年ころの自動応答は『全然答えられてない』という印象でしたが、LINEの顧客対応が流行りだした2016年頃には、自動応答の精度が上がっていた。自然な回答がテクノロジーで実現できそうだと思ったのです」

    しかしそんな小田氏に立ちふさがったのが、CS担当者の離職問題だ。

    CS導入支援の仕事を手掛けている中で、あるプロジェクトではオペレーターの4分の3が離職。この例に限らず、CS担当者の離職率は低くない。人手不足になりがちな原因を、小田氏は「CS職のキャリアの行き詰まり」にみている。

    ――小田
    「CS職のキャリアパスが、行き詰まりを感じやすいというのはあると思います。いちオペレーターから出世してリーダーやセンター長になるといっても、ポジションが多いわけではないので、狭き門になります。キャリアビジョンが見えず、厳しい環境下で毎日マニュアルに縛られ、毎日同じような質問へ回答するという単純作業が繰り返されるとモチベーションを維持するのが難しい。

    だから人とテクノロジーが融合したカスタマーサポート・顧客対応が当たり前な世界をつくり、CS職の価値を高めていかないといけない

    人材不足をいかに解決すべきか。業界の課題を解決するため、テクノロジーが進化したタイミングを見てKARAKURI chatbotをリリースしたという。

    出典:KARAKURI (カラクリ) | カスタマーサポート特化型AI搭載チャットボット

    チャットボットで人間へのバトンタッチを最適化する

    今ではメルカリやWOWOWなどの大手企業に導入されるプロダクトに成長したが、現在は「チャットボットのカラクリ」から、「CS Automation &Optimizationのカラクリ」に進化を遂げようとしている。

    チャットボットが得意とするのは、FAQ(よくある質問)ページに掲載されているような基本的な質問への回答だ。しかし、カスタマーセンターに来るのは単純な問い合わせだけではない。「ECで注文した商品の配送状況を知りたい」といった複数のデータベースにある情報を照らし合わせて回答したり、人間が判断し対応せざるを得ない問い合わせもある。

    チャットボットが解決できる質問は業種にもよるが、7割ほどだとされている/提供:カラクリ株式会社

    そのためチャットボットだけではなく、ボット以外のカスタマーサポート業務、顧客対応などの最適化に力を入れていくという。

    ――小田
    「総合的な顧客対応を分析するツールを作り込むことで、ボットの自動対応から人間へのバトンタッチを最適化しようと考えています。すでにCS担当者向けのツールも開発し、一部のお客さまに使い始めていただいてるところです」

    今月、AIでFAQサイトを自動生成・管理できる「KARAKURI smartFAQ」をリリース。KARAKURI chatbotのデータをもとにノンプログラミングで作成できる/出典:“学習するFAQサイト”がつくれるAI搭載「KARAKURI smartFAQ」正式版の提供開始! | カラクリ株式会社

    CS職における、AIで代替不能な「人ならでは」の価値とは

    CS業務の効率化を推し進めるカラクリ。しかしKARAKURI chatbotのようなツールを導入することで、CS担当者はAIに職を奪われてしまうのではないか?

    「顧客体験をいかに良くするか」に目を向けられるようになる

    小田氏は、CS担当者の仕事がなくなることはない、と主張する。実際にKARAKURI chatbotを導入した企業のCS担当者は、顧客対応だけに留まらない新しいミッションが増えているという。

    • チャットボットの運用・改善(教師データの作成など)
    • 一部CS業務の自動化
    • ボットKPIを達成し、より良い顧客対応をするための施策づくり

    また重要な顧客の対応や、難易度の高い問い合わせはAIに代替されず、人間が対応していくだろうと語る。

    ――小田
    「3000人分の顔と名前を覚えて、VIP顧客の対応をしているという伝説的なドアマンがいますが、一瞬で顔を認識したり過去の宿泊履歴を辿ったりするのはテクノロジーでもできます。人経由でAIの情報を伝えることで、はじめて顧客満足度が上がる。AIは自動化だけでなく、人間のパフォーマンスを高めるのにも使えるんです。

    でも一連の接客をAIがやっても、お客さんの心には響かない。Amazonに購入履歴からのおすすめを出されるより、人間の店員さんに『あなた1年前にこれを買っていましたね』と言われる方がぐっときますよね」

    現状の課題:AIに対する恐怖感の払拭と、コストセンターからの脱却

    だが、AIチャットボット導入に抵抗感がある現場スタッフも少なくない。「自分たちの仕事が奪われる」「AIといってもよく分からなくて怖い」といった担当者に対して、ある秘策を用意している。

    どこかほっとする愛らしい見た目。小田氏いわく「チャットボットを一人の新人社員としてお世話してほしい」とのこと/出典:カラクリ導入事例

    目に見える存在としてぬいぐるみをフロアに置き、敵ではない、と示すことで、メンバーに受け入れてもらいやすくするという。

    ――小田
    「管理者がチャットボット導入は意義あることだ、と思っていても、現場で働いている数百人というスタッフの中には、AIやチャットボットがどんなものか分からないから怖い、という方もいるものです。そうした”恐怖感”を払拭するのは、私たちの課題です」

    CS担当者が生み出す価値や、事業への貢献度合いを見える化

    先に触れたが、CSはコストセンターとして認識されることが多い。マーケティングの手法としてCSを位置づけている企業も増えてきているものの、未だ工数削減に目を向けられがちだ。

    カラクリはこれも課題と認識し、CSの事業貢献価値を見える化するツールの開発を急いでいるという。

    ――小田
    「CSの顧客対応によって、ツールを使えない人がアクティブになったり、解約を防いだり、ということで顧客担当単価が上がるなら、CS担当者は事業貢献した(稼いだ)と言えるでしょう。

    成約後の顧客ケアなど、後工程で生み出した価値を金額換算することで、CSの対応が生み出したインパクトを可視化していけば、経営側も投資しようと考えるはずです」

    YouTuberやライバーのような、イケてるCS担当者が登場する未来

    取材の最後に、5年後のCS職はどうなっていくか?とたずねてみたところ、小田氏は「CSはとてもレベルの高い職業になっていく」と答えてくれた。

    ――小田
    「どの担当者でも同じ回答を返さないといけない、という部分はチャットボットなどで機械化されます。だから提案者の自由度が格段に広がった状態になっていくでしょう。

    今後人対人の部分は、顔が見られるようなメッセージングが主流になると思います。顧客から『Aさんに問い合わせたい』と指名が入るように、人間ならではの独自性、不確実性が価値に変わっていくのではないでしょうか」

    こうした新時代のCSに欠かせないのが、チャットボットなど機械と人とが連携する仕組みや、顧客情報のデータベース化と活用だ。「人ならではの価値」を最大限に引き出すための機械化が急がれている。

    ――小田
    「日本ですぐに普及するのは難しいでしょうが、中国ではすでに半自動化し、CS担当者個人にファンがつくという状態になっています。給料はうなぎのぼりになり、独立している人もいるほどです。YouTuberやライブ配信者(ライバー)のように、CSに紐付いて会社の製品を買ったり、サポートを請け負ったりする未来が来るかもしれません」

    「JDLA認定プログラム」認定費用無償化制度スタート。制度活用第一号は中部大学

    日本ディープラーニング協会(以下JDLA)は、高等学校、高等専門学校、大学(短大、大学院を含む)を対象として、「JDLA認定プログラム(外部サイト)」への認定にかかる費用を無償化および減額する制度を開始する。

    制度対象教育機関に向けた、同制度に関する説明会が12月17日に開催された。

    JDLA認定プログラムとは

    JDLA認定プログラムとは、JDLAが実施するエンジニア資格(JDLA Deep Learning for ENGINEER、以下E資格)の受験資格を得るために受講が必須となる教育プログラムだ。

    プログラム認定を目指す教育事業者からの申請に基づき、その教育プログラムがJDLAが定める最新のシラバスの内容を網羅しているか等を審査し、認定・推奨する。

    詳しくは下記の記事を参照してほしい。

    関連記事:【ディープラーニング講座8選】E資格とは?受験のために必要なJDLA認定プログラムを解説

    シラバスを満たす講義を行う教育機関の認定を無償化

    今回の認定費用無償化制度の適用により、シラバスを満たす講義を行っている教育機関の認定推奨が増えることで、ディープラーニングの理論を理解し、適切な手法を選択して実装する能力を持つ、エンジニア人材の育成拡大を目指すという。

    対象の教育機関と、本制度で免除される費用は下記の通り。

    • 対象となる教育機関:学校教育法第一条が定める「学校」※主に高等学校、高等専門学校、大学(短大、大学院を含む)
    • 無償となる費用:審査費用275,000円(税込)と認定料110,000円(税込)

    教育機関が受託事業者となる場合は、通常の受託審査費用110,000円(税込)が減額され、55,000円(税込)となる。また、修了証は認定申請をした教育機関の「正規課程に在籍する学生」にのみ付与され、聴講生は除く。

    認定フローは、教育機関がJDLAの定めた最新のシラバスに従ってカリキュラムを作成。その後書類や実際のプログラム審査を通過したのち、認定料を入金し(本制度対象となる教育機関は無料)、晴れて認定となる。

    現在、認定プログラムとして認められている講座を提供するのは11社。それらに続き、今回の制度活用第一号として、中部大学の大学院工学研究科が承認された。

    リリース文記載の、中部大学 工学部情報工学科 山下隆義准教授のコメントは以下。

    ――山下
    「ディープラーニングは今後の産業において、必要不可欠な技術であり、身につけていることが社会での研究開発で最低条件になることも考えられます。

    特に、高等教育において、データサイエンス、人工知能、機械学習に関する教育の充実が受験生・在学生だけでなく、産業界からも強く求められています。特に東海地区ではハード・ソフト両面でのものづくりが盛んであり、大学として実産業に活用できる知識を身につけた人材の育成を心がけています。ディープラーニングは今後の産業に不可欠な技術であり、即戦力となる学生を育成し資格取得できる環境を整えたいと考え、申請に至りました。

    本校では、情報工学を中心に、データサイエンス、機械学習、ディープラーニングを身に付ける教育を行なっていますが、実践的な力を身につけていることを示す資格として、E資格は中心的な役割かと思います。大学内の講義を受講し単位取得することで受験資格を得られることで、学生の時間的・金銭的負担を軽減でき、就職でも有利に働くと考えます。

    自らの知識や能力を示すために、目に見える形である資格を取得することは大事なことですが、能力を発揮できるようにたくさんの経験を積んでいくことを学生に期待します」

    JDLA資格試験の現状

    JDLAの資格試験を振り返ってみると、現在までにG検定は受験者21,275名に対して14,523名が合格、E資格については受験者1,420名に対して951名が合格している。2つの資格試験で、受験者、合格者ともに大きく差が開いている状態だ。

    JDLA事務局長の岡田隆太郎氏は、資格試験に合格した人材を「えこひいきしたい」と語る。

    ――岡田
    「ディープラーニングの産業活用において、一番重要なのは人材です。悪貨が良貨を駆逐するといいますが、良貨にはきちんとラベリングしないといけない。JDLA資格試験の合格者はまさに良貨といえるので、企業でも優遇される傾向にあります」

    例として、ヤマトホールディングスではE資格を取得していれば一気に最終面接まで到達できるなど、企業への合格者の実力の認知は進みつつある。本制度がE資格合格者増加の鍵となるのか。

    AI(人工知能)搭載アプリはどこまでできる?|現状や種類をリサーチしてみた

    AIアプリ

    時は第三次AIブームの真っ只中。探求・推論から始まり、機械学習とディープラーニングによって、AIは飛躍的な進歩を遂げています。主に軍需や企業で活用されてきたAI技術も、今やさまざまな形で私たちの暮らしへ浸透してきています。

    自動運転、siriの音声認識やカメラの画像認識などの技術が有名ですが、なかでも「スマートフォンアプリ」は、AIを身近に感じることのできるものの1つではないでしょうか。

    今回は、AIとの会話が楽しめるアプリや、AIが画像加工を手助けしてくれるアプリなど、アプリを通じてAIが私たちの生活をどれほど豊かにしてくれるのかをご紹介します。

    AI(人工知能)搭載アプリとは?|増え続ける数と活用技術

    application出典:Photo by Pixelkult on Pixabay

    AI搭載アプリの数は100種類以上

    総務省が発表したデータによると、2019年における世界のモバイル向けアプリダウンロード数は311億以上と予想されています。これはゲームを除いた数で、最近ではAIを搭載したアプリも増えてきています。

    実際、Google PlayやApp Storeで「AI」、「人工知能」というキーワードでヒットするアプリの総数は数100種類にものぼります。単純な制御プログラムをAIと謳っているものもあれば、本格的なディープラーニングを組み込んである人工知能もあり、いろんな形で我々の暮らしにも活用され始めていることがうかがえます。

    AI搭載アプリに使われている技術

    音声認識
    コンピュータにより音声データをテキストデータに変換する技術です。スマートスピーカーなどのCMで「OK Google、テレビをつけて」といったシーンをご覧になった方も多いのではないでしょうか。それも音声をテキストデータに変換した後、いつも検索するときのようにシステムが入力内容に基づいた結果を出力します。

    自然言語処理
    人間の言語(自然言語)を機械で処理する技術です。音声認識と組み合わせることで、音声→テキスト→認識という流れで情報が処理され、人工知能による判断が行えるようになります。

    画像認識
    画像の特徴をコンピューターが読み取り、対象を識別する技術です。古くは1940年代に発明されたバーコードも画像認識にあたりますが、機械学習とディープラーニングの登場により近年は人間以上の精度で対象を識別することも可能になりました。

    AI搭載アプリの種類

    application出典:Photo by Peggy und Marco Lachmann-Anke on Pixabay

    AI搭載アプリはいくつかの種類に分類されます。主に会話やテキストメッセージなどの音声やコミュニケーションに関わるもの、検索や加工などの画像に関わるものなどさまざまな活用方法が見い出されています。

    話し相手系

    話し相手系のアプリには、音声認識・自然言語処理などの技術が応用されています。

    感情日記AI「emol-AI」
    Emol出典:App Store

    emol株式会社が提供するAIアプリ「emol-AI」。「ロク」とよばれるAIに対しチャットで会話をします。特徴はユーザーの感情を記録すること。ユーザーの発言を分析し、「うれしい」「かなしい」といった9つの感情に対してAIが返事をします。アプリではそのときの感情を毎日記録してくれるので、日記のように自分の過去の感情を振り返ることができます。

    AI育成アプリ「人工無脳と会話するアプリ」
    人工無脳と会話するアプリ出典:App Store

    最初はつたない日本語ですが、会話をするごとに言葉を覚えていくAIアプリです。最大の特徴は同時に複数のAIを育てられること。「ひろば」というチャットルームでチャットをすると人工無能同士でも会話が発生します。「人工無脳」というと少し聞き慣れない方も多いと思いますが「チャットボット(ChatBot)」という言葉であればご存じの方も多いのではないでしょうか?

    キャラクター会話アプリ「SELF」
    SELF出典:App Store

    SELF Inc.が提供するAIアプリです。美少女やイケメンといったキャラが登場し、会話をすることで返答の精度が上がっていきます。このアプリにおける最大の特徴は課金システム。アプリ内登場キャラの「小瀬あい」は、3日で記憶がリセットされる仕様になっており、記憶を維持してもらうには、週180円の課金が必要になります。好きなキャラクターの記憶をとどめるため、実際に多くのユーザーを課金に導いたという面白いビジネスモデルが話題になりました。

    女子高生AI「りんな(LINE)」
    りんな出典:https://www.rinna.jp/platform/line

    コミュニケーションアプリ「LINE」の会話ボットとして2015年に登場したりんなは、女子高生という設定の人工知能キャラクターです。マイクロソフトが2014年に中国で開発していたXiaoiceという女性型会話ボットの第二弾として日本で生まれました。ディープラーニング・機械学習・音声認識・自然言語処理など多くの技術が応用されており、まじめなsiriやcortanaに比べてたまに変な返事をするところが、面白い友達というイメージにつながり若者の間で人気です。しかし、多くの会話データを学習した現在は、「Rinna Character Platform」として外販が開始され、最近では「pepper for Home」に搭載されpepper君との長い会話が楽しめるようになっています。また、リアルすぎると話題になった3D女子高生「saya」に搭載され、実際に女子校で授業を行ったりもしています。

    画像検索・認識・加工系

    画像検索・認識・加工系のアプリには、画像認識・機械学習などの技術が応用されています。

    写真加工アプリ「SNOW」
    SNOW出典:SNOW

    韓国のインターネット企業NAVERの子会社が提供するアプリ「SNOW」。自撮り写真を美白化したり目の大きさを変えたりする、画像加工系アプリです。このアプリでAI技術が使われているとは意外に思われるかもしれませんが、動画上にある人間の顔を瞬時に認識し、その動きに合わせて犬や猫といったキャラクターと合成する技術は紛れもなく画像認識を用いたAI技術によるものです。

    機能の1つに「そっくり診断」というものがあり、自分の顔と似ている芸能人を診断してくれます。ネット上にある芸能人写真を取り込み、ユーザーの顔と照合し似てる確率を計算してそっくりな人を診断します。TV番組「おしゃれイズム」では、俳優の藤木直人さんがそっくり診断で本人と判定されたのが話題になりました。

    検索先生「Google Lens」
    Google Lens出典:Google Play

    ディープエフェクト機能とAI技術を使い、写真や動画に映っている登場人物の顔を自分の顔に取り替えることが可能。非常に高い精度を持つアプリで瞬く間に無料アプリのトップにのぼり詰めましたが、ユーザーが使用した顔写真のライセンスが「永続的に開発元に移行し、さらには取消不可、譲渡可能、再ライセンスもあり」といったとんでもないプライバシーポリシーが発覚したことで非常に大きな問題となりました。2019年12月現在プライバシーポリシーは改善されています。

    メーター点検AI「hakaru.ai」
    hakaruai出典:https://iot.gmocloud.com/hakaru-ai/

    ガスや水道のメーターをスマホで撮影するだけで、読み取り・集計・台帳記入の流れを自動化できるというすぐれもの有料アプリです。点検業務は今まで人手で行われていたため、ミスや時間コストがかかっていましたが、スマホで撮るだけで作業が終わるので大幅な効率化が行えます。

    ドラレコAIアプリ「スマートくん」
    スマートくん出典:https://smartkun.neuralpocket.com/

    スマートフォンにインストールするだけで、AIの画像認識機能搭載のドライブレコーダーとして使えるアプリ。常時録画・車間距離計測など従来のドラレコ機能はもちろん、AIによる動作感知・車両周辺の物体検知がすべて無料で利用可能。
    2019年現在はiOSのみ、2020年にAndroid対応予定。

    勉強サポート系

    勉強サポート系のアプリには、自然言語処理・機械学習などの技術が応用されています。

    AI×TOEIC「SANTA TOEIC」
    Santa TOEIC出典:https://santatoeic.jp/intro

    アジアを中心に人気が高い、有料TOEIC学習アプリです。1億問以上の回答データを学習した独自開発AIが、問題を解いていくと学習者の理解度・弱点・TOEICスコアを正確に分析し、学習者に最適なカリキュラムを構築してくれます。

    英語学習「cooori」
    cooori
    出典:https://www.cooori.com/

    株式会社コーリジャパンが提供する英語学習システムがcoooriです。coooriに搭載されている独自開発AI「3O(スリーオー)」が収集した英語学習者データは通算で7万時間以上で、およそ8年分にも及びます。駅前留学から始まった英会話の勉強手段もついには第7世代といわれ、AIがユーザーのレベルを把握し、適切な問題や効率的な勉強方法を提供する専属トレーナーの時代に入っています。その筆頭がcoooriです。

    AIアプリはこれからどうなる?

    AIアプリの未来出典:Photo by Brendan Church on Unsplash

    人気アプリの傾向から見えたのは、話し相手やちょっと気になったことを検索したりするなど、人々はAIに万能さを求めているのではなく、感情や生活のちょっとした隙間を埋めてくれることを望んでいるようにも見えます。

    さらなるサービス向上のためにも、人々の生活データは欠かせません。しかし、現代はプライバシーポリシーに見られるように、個人情報の機密性に焦点が当てられています。その一方で、先日都内のIT企業が月20万円の報酬の代わりに、私生活のすべてをビデオカメラで記録するというプロジェクトの募集を行ったところ、1,300人を超える申し込みがありました、「たとえ浴室以外に死角がなくても」です。この結果を踏まえると、今後は価値ある商品として、個人が自分の個人情報を売るようになる時代がくるかもしれません。

    このような個人情報を自主的に提供できるユーザーの増加に伴い、AI市場も発展を加速させるでしょう。集められた生活情報からAIがよりユーザーを知ることで、ひとりひとりにパーソナライズされた総合AIアプリが台頭してくる未来も、そう遠くない気がします。

    自動運転によるスクールバスの実証実験を開始、埼玉工業大学のキャンパスと最寄り駅間の公道を走行

    12月12日、埼玉工業大学は、スクールバスの自動運転の導入に向けて12月23日から公道による実証実験を開始すると発表。

    実証実験が行なわれるのは、埼玉工業大学のキャンパスと最寄り駅であるJR高崎線・岡部駅間。スクールバスとして公道約1.6kmを走行する。私立大学のスクールバスとして、学生や教職員の送迎用に自動運転バスが走行するのは全国で初の試みとなる。

    ハンドルとアクセル・ブレーキは自動制御レベル3。緊急時のみドライバーが対応し、通常時は交通状況を自動で認知して走行する。安全確保のため、バスにはプロのバスドライバーが搭乗する。

    自動運転に使われる車両は、マイクロバス「リエッセ II」をベースに「自動運転AI(AIPilot / Autoware)」を実装している。また、バスの車内にはディスプレーが設置されている。ライダーやカメラによる画像データをディープラーニングによりリアルタイムで解析した結果、AIによる自動制御の仕組みがわかる各種情報などが表示される。そのため、学生は通学時にAIを体験的に学習できる。

    当面は、既存のスクールバスに加えて、臨時便として不定期に走行する予定。来年度以降の本格運用に向けての課題を探るという。

    >>プレスリリース(PR TIMES)


    完全自動運転が実現すると、自動運転による“渋滞”が起きるかもしれない

    埼玉工業大学での実証実験のように、自動運転の普及を目指した活動が徐々に広まりつつある。

    Ledge.ai編集部は以前、もともとUberで自動運転を研究し、現在はLionbridgeでAI開発に必要な学習データの収集やアノテーションを効率化するプロダクトのグロースに携わるチャーリー・ワルター氏を取材した。

    ワルター氏に編集部が「完全自動運転が実現するとどうなるか」と聞くとこう答えた。

    「自動運転車による渋滞が発生するかもしれない。目的地まで自動で運んでくれるなら、電車などの公共交通機関の利用に面倒くささを感じ、だれも公共交通機関を使わなくなる。そのため、自動運転車になだれこみが起きる。そして渋滞につながる。」

    自動運転車が普及することで、運転に関わることが最適化される。しかも、エンジンなどの効率も配慮されるため、環境にもやさしくなるとされる。しかし、便利になりすぎるあまり、全員が全員、自動運転車を利用すると道路や駐車場などのキャパシティーを超える危険性があり、結果的に渋滞につながる可能性がある、ということだろう。

    記事ではほかにも、

    • 現在の自動運転技術が抱える課題
    • どの企業が業界内トップを走っているのか
    • 自動運転が事故を起こしたときの責任
    • 外部から車をハックされないか
    • 自動運転の普及に必要なこと

    などを聞いている。

    今後さらに注目度が上がると思われる自動運転の話。ぜひとも下記から記事を読んでチェックしてほしい。

    関連記事:元UberのPMが語る、自動運転の現実と未来

    レッジが日立製作所のインフルエンザ予報サービスのアルゴリズム開発・Web構築を担当しました

    レッジは、株式会社日立製作所とさいたま市、損害保険ジャパン日本興亜株式会社(損保ジャパン)による、インフルエンザの流行予測を可視化できるWebサイト「インフルエンザ予報」のプロジェクトにおいて、内部の予測アルゴリズム開発及びWebサイト構築に携わりました。本サービスは12月6日より公開されています。

    日立製作所リリース:日立と損保ジャパン日本興亜、全国初、さいたま市でAIを活用したインフルエンザ予報サービスの実証を開始

    「インフルエンザ予報」とは?

    インフルエンザ予報は、全国各地のインフルエンザの流行度合いを予測し、可視化できるサービスです。流行する期間を地域ごとに今週〜4週間後までを予測できるほか、流行度合いもレベル0〜3に分けて把握できるため、インフルエンザの予防に役立てることができます。

    具体的には、流行レベルを以下のように表示しています。

    • レベル0:1医療機関あたりの新規患者数 0
    • レベル1:1医療機関あたりの新規患者数 1以下
    • レベル2:1医療機関あたりの新規患者数 2以下
    • レベル3:1医療機関あたりの新規患者数 2超
    • 情報なし:ORCAサーベイランス参加医療機関数 0

    教師データとして、日本医師会ORCA管理機構株式会社が運営するORCAサーベイランスのデータからインフルエンザ新規患者数を集計したものを使用し、機械学習(ディープラーニング)を用いたさいたま市のインフルエンザ罹患者数の予測アルゴリズムを開発しました。

    ▲Webサイト表示イメージ

    サイバーエージェント、ABEJA、ALBERT登壇 AI導入無料セミナー、実際の効果・活用方法から導入まで紹介

    Photo by tommy pixel on Pixabay ※写真はイメージです

    12月18日(水)16時から、AI SHIFTとABEJAの共催セミナー「事例からわかる、企業のAI導入を成功に導くポイント」を開催。場所は株式会社サイバーエージェント セミナールームC(東京都渋谷区渋谷2丁目24番12号 渋谷スクランブルスクエア21階)。参加費は無料だが、事前の参加申し込みが必要だ。申し込み期限は12月17日(火)まで。
    >>セミナー参加申し込みはこちら(外部サイト)

    AI導入成功のポイントについて、サイバーエージェント、ABEJA、ALBERTにおけるAI活用の成功・失敗事例をとおして、実際の効果や活用方法から導入までのプロセスを紹介する。

    登壇するのは、株式会社AI Shift AI Shift事業部 事業責任者・網谷 龍太朗氏、株式会社ABEJA 取締役CPO・菊池 佑太氏、株式会社ALBERT マーケティング本部 分析営業部 マネージャー・日比生 恵氏。

    株式会社AI Shift AI Shift事業部 事業責任者・網谷 龍太朗氏(写真左)、株式会社ABEJA 取締役CPO・菊池 佑太氏(写真中央)、株式会社ALBERT マーケティング本部 分析営業部 マネージャー・日比生 恵氏(写真右)

    プレスリリースによれば、本セミナーは以下のような方にオススメ、とされている。

    • AI・画像認識に興味があり、詳しく内容を聞きたい
    • AIを活用して業務負荷や業務の発展をさせたいが、AIで何ができるか分からない
    • AIの現状・効果について興味がある
    • 自社でAIの活用・データ分析を試みたが、上手くいかなかった

    なお、本セミナーはエンジニア向けのプログラミングや技術系のセミナーではないので注意してほしい。

    >>プレスリリース(PR TIMES)


    ディープラーニングはコスパが悪い?

    AIに関するセミナーや勉強会は盛んに開催されている。11月には日本ディープラーニング協会が会員企業向けに内部勉強会を実施した。そこで出た問いが「ディープラーニングの弱点は何か?」だ。

    この質問に対し、勉強会に登壇したAI開発者はこう答えた。
    「たとえば『分析精度を10%高めるのに、メンテナンスコストが10倍以上に増える』こともある。」

    この勉強会でも、AI導入プロジェクト成功の秘訣が語られている。Ledge.ai編集部ではこの勉強会を取材し、記事化しているので興味がある方は下記関連記事からチェックしてほしい。