トヨタの自動車サブスク「KINTO」大苦戦の真因

全国展開しても認知度2割、申込み1日平均6件

苦戦が続くトヨタの自動車サブスクリプションサービス「KINTO」(右)。「東京の直営販社が展開する独自のサブスク(左)の方が好調」と明かすトヨタ系販売会社幹部もいる(撮影:尾形文繁)

ネットフリックスやスポティファイ、アマゾンプライムといった動画や音楽の配信サービスは日本で急速に普及し、幅広い世代で認知度も高い。一方、トヨタ自動車が国内メーカーとして先陣を切って今年参入した自動車の定額利用(サブスクリプション)サービス、「KINTO(キント)」は苦戦を強いられている。

全国で4800店を超える販売店やウェブサイトで展開しているが、今年7月以降の申し込み件数は1日平均で約5.7件にとどまる。流行のサブスクも自動車となるとうまくいかないのはなぜか。

契約伸びず、収益化になお時間

キントは車両代のほかに登録時の諸費用、税金、任意保険料などを含む毎月定額の料金を払えば新車に3年間乗れるサービスだ。「プリウス」や「RAV4」「ヴォクシー」など15車種から1車種を選べる。最も安いのは2019年11月に発売されたばかりのコンパクトSUV「ライズ」で月額3万9820円(税込み)~。最も高いのは、高級車の「クラウン」で月額9万5700円(同)~。サービスは2019年3月から東京都内で試験的に始め、7月に全国展開を開始した。

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キントの運営会社、キント(社名も同名)は、12月16日に初めて契約件数を公表した。東京地区ではトライアル期間だった今年3~6月の4カ月間でわずかに83件。それでもサービスの全国展開に踏み切ったが、結果は7~11月の5カ月間で868件。1日平均で6件に満たない水準だ。

全国展開と合わせて大量にテレビCMも投入したが、全国での認知度は11月末時点で18.2%にとどまる。キントの小寺信也社長は「認知度が上がっていけば広告宣伝費が減って損益分岐点(ブレークイーブン)に到達するが、そこまでには数年かかる」と述べた。

こうした状況に手をこまぬいているわけではなく、テコ入れ策も打ち出した。来年1月以降に新たに16車種(トヨタブランド8車種、レクサスブランド8車種)を追加する。最も安い利用料金はパッソの月額3万2780円~となる。利用料金がさらに安い月額1万~2万円台で中古車版のキントも導入する方針だ。群馬県の販売店で実験的に始め、状況を見て全国展開したい考えだ。これまではキントの申込みは個人に限っていたが、法人の受付も来年1月から開始する。

小寺社長が「車を持つことに対する負担や手間を軽減して、1人でも多くの若い人に気軽に車に付き合ってほしい」と話す通り、一番のターゲットは車離れが指摘されている若者だ。特に20代前半で初めて車を持つ場合、高額な任意保険料がネックとなる。その点、キントは保険料が割安なフリート保険を組み込むことで「お得な利用料金」を実現したという。月額の利用料金は年齢による違いはない。

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  • 流されないロスジェネa12a7d05d99c
    トヨタがサブスクのメリットを理解していると思えない。
    映画1本1800円が、1ヶ月見放題で月額appleTV+が600円、amazonプライムが500円だから人気があるんだよ。
    最低でも料金設定を現状の半額以下にしないとメリットを感じない。
    up112
    down5
    2019/12/26 06:22
  • かず8534b1b475c6
    従来からのリースと何が違うのか?保険料を追加しただけか?
    期待するのは、リース費用だが、全く持って高い。半額にするにはどうすれば良いのか知恵を絞って欲しい。例えば、残価設定を50%にするとか。新車価格から販売店マージン20%を差し引くとかである。
    up70
    down4
    2019/12/26 06:29
  • 如月五月ブログ6407c324596e
    そもそも、

    私自身、日産で個人向けリースで車を購入(?)した
    経験があるが、このリースとKINTOの差が分からない。

    当時は完全な新設計のミニバンだったので、故障、修理
    事故など何が起きても「販売店」に持ち込めば、解決する
    というリースならではのメリットがあった。

    今回のKINTOでは
    >>「販売店として収益面でのメリットはほとんどない。
    >>われわれからお客さんに提案することはない」

    というディーラーの発言が「不調」のすべてを表現して
    いると思う。
    up59
    down10
    2019/12/26 07:14
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