2019年12月24日

「国立国会図書館の図書館向けデジタル化資料送信サービスにおける海外対応」に関するまとめと考えたこと(2019年11月時点)


 この記事は、国立国会図書館の図書館向けデジタル化資料送信サービスにおける海外対応について、2019年11月時点で自分なりに調べたり整理したり考えたりしたことを、とりまとめたようなものです。
 (当時のメモから起こした記事なので、その後もし何か変更されていたら、ごめんなさい。)

 今回(2019年11月16日)は、下記のようなまとめを作成しました。
「国立国会図書館の図書館向けデジタル化資料送信サービスにおける海外対応(ノート)」

 そして参考文献が下記の通りです。

・「国会図書館の海外デジタル送信が絵に描いた餅になってしまう」(YamadaShoji.net)
https://yamadashoji.net/?p=836
・本棚の中のニッポンの会(Faxebookグループ・プライベート)
・JpnLibLiaisons(メーリングリスト・非公開)

 プライベートや非公開が多くてなんのこっちゃという感じですが、かいつまんで言うと。

 NDLの送信サービスの海外対応が決まり、参加館受付が始まった。
 でも、そのハードルがあまりに高く、参加の手が挙がらないし、とても挙げられないという声が多く聞こえる。
 どうしてこうなったと思っているところ、海外司書から「日本の図書館は本当にこんなハードルの高い条件で、難解な申請をやったのか」という疑問の声を聞いた。
 で、法律家でも中の人でもない自分にできることがないかと考えて、とりあえず文献に基づいて国内・海外の比較と考察、ということをやってみた。

 的な感じです。


(注)
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 そもそもの前提として「国立国会図書館図書館向けデジタル化資料送信サービス」とは何か?については、割愛します。とりあえず知ってる人向けの記事として。
 なお、過去の自分のブログの関連記事は以下の通り。
・「うちとこの「NDL図書館送信サービス」導入レポ (1)導入するまで編」
 http://egamiday3.seesaa.net/article/388711019.html
・「うちとこの「NDL図書館送信サービス」レポ (2)-導入した結果編」
 http://egamiday3.seesaa.net/article/389678377.html
・「「NDL図書館送信サービス、やってみたらこうだった、を語る」の再録 」
 http://egamiday3.seesaa.net/article/401024726.html

 また、その海外対応については、これも過去の自分のブログから関連記事をひとつ挙げておきます。
・「国会図書館送信サービスの海外対応について、日本の図書館こそがパブコメ(3/29〆切)を送るべきちょっとした理由。」
 http://egamiday3.seesaa.net/article/448497940.html
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 というわけで、以下、「国立国会図書館の図書館向けデジタル化資料送信サービスにおける海外対応(ノート)」を踏まえて、特にオチや盛り上がりもなく思いついたことを書きます。
 あえて要点を挙げれば、
 1.「必要だ」と「現実的に無理」は歩み寄れるのでは?
 2.「察してね」は届かない
 3.問題の多くは「あるある」「既出」なのにどうしてこうなった
 、の3本です。




 主な違いのひとつとして。
 諸々の要件について、内容が同じでも求められる/示される書類が国内館と海外館で異なるところがある。

 海外館向けには、「利用契約書」として図書館長の署名を求める、これはたぶん署名する側に重く受け止められる。
 同じ内容の要件について書いてある文書が、国内館向けには、①「チェックリスト」提出&②「利用条件」に同意&③「利用規則」を守るとする申請書に公印、の3種類と分散している。分散してるので、なんか国内側は(良い悪いは別にして)ふわっとしてますね。

 それから、海外館向けの独自の要求として、「Legality Checklist」を、政府当局か弁護士資格のある者が作成することを求める。「日本の著作権法や国際著作権条約で著作権切れになっていないものを、NDLから受信して閲覧検索することが、自国内で合法であるかどうか、示せ」。
 これを、自分が海外のサービス契約するときに示されたら、たぶんあきらめるか1-2年逡巡するかしそうなくらい、かなり怖いやつやなと思いました。
 確かに法律上それが必要だということに理屈ではなるんだと思うんですけど、「それが必要である」ということと、「現実的に困難である」ということとは必ずしも対立するだけじゃなく、歩み寄って解消できる話なんじゃないか、と。
 それが「国単位でリーガル・チェック」云々ということなのかな、と思います、USA1回チェック済み、で何十人かのコストがはけるかな、ていう。ここで日米の人的コストへの考え方の違いが出ちゃってるのかな、ていう。




 海外館向けの「利用契約書」をつぶさに読んでいくと、国内館向け書類には見当たらなかったものがいくつかあるので、抜粋してみます。

 契約書第6条2「送信先施設は、その所在地における本サービスの利用について、その適法性を含めてその一切の責任を負うものとし、NDLがいかなる責任をも負わないことを保証する」。
 こういうの国内館向け書類にもどこかにはありそうな話なんだけど、見つけられなかったので念のため挙げておきます。
 でもたぶん、海外館だけじゃなくて国内館だってはっきり「送信先機関が責任を負う」っていう条件出されたら、相当の二の足を踏むんじゃないかと思った。「(機関自身の行為じゃなく)将来何をするか分からないユーザの行為にまで、責任取ると署名できるか」ていうのはだいぶ難所では、ほんとに国内向け条件にこれ載ってなかったのかな、だんだん心配になってきた。
 ていうか、「送信先施設が責任を負う」じゃなくて「NDLに責任を負わせない」じゃダメなんかな、と思いました。

 海外館「利用契約書」にはあるが、国内館向け書類には見当たらなかったもののもうひとつの例が、契約書第17条2「東京地方裁判所の専属的裁判管轄権に服する」。
 え、マジか、と思いました。というのも、これが問題になって日本の電子資料を海外から契約できない、ということは、過去20年近くの「あるある」中の「あるある」であって、これまでも海外日本司書から文献で口頭でネットで何度も言われてきたことだし、それを乗り越えてきた例もいくつもあったと思うんですけど。それがいまになってまた火種化しますか、っていう。あまりに「あるある」「既出」過ぎて、まさか国会さんが二の轍を踏むなんてことないだろうパブコメも大々的だったし、と思ってたら、あったので、なんだろう、自分が法律に疎くて知らないだけで、相当根深い問題なのだなこれは、って思いました。




 ていうか、これは本件全体的に、あるある・既出問題が多いのではないか、という点がちょっと訝しく思いました。裁判所の問題や契約書の文言の問題だけじゃなく、弁護士・法務部署の問題、日本司書有無の問題、技術上の問題その他の多くが、過去20年近くの「あるある」であり「既出」であり、解決事例もあるだろうなのに、それがまたここで繰り返されてるのが何故なのかちょっと解せない。別に『本棚の中のニッポン』(https://ci.nii.ac.jp/ncid/BB0919843X)を引き合いに出さなくてもいいんだけど(ていうか出したけど)、そういうことを海外日本研究司書が切実に訴えてたような文章の記事が、日本の雑誌にもたくさん載ってるし、NDLさん自身も海外日本研究の特集記事出したり、海外司書会議に毎年出たり、海外司書招いて研修したりしてたわけなので、それでなお解決できないっていうのは、何か理由があるということかな。
 でもあれだけ大々的にパブコメやったわけだから、著作権法改正する前にある程度事前すりあわせというか、クリアされるという見込み・見積りがあって全体デザインしはったんじゃないのかなという気はするんですが、そこらへんの事情は外からではちょっとよくわからないです。




 その他、説明が増えているところ、減っているところがいくつかある。

 説明が増えているところはともかく、減っているところはなんだろう。具体的に何を答えてたら先方のお眼鏡にかなうのかわからない質問が飛んでくるのは、まあたぶん日本に限らず世界共通であることなんだろうけど、それに輪をかけて「察してください」という難しい質問には実際自分も手こずって何度か担当者とやりとりしたし、国境を跨げば「察してね質問」はさらに難しいだろうなので、説明は増やしてもらう方向がいいのではと思いました。

 例:閲覧室の写真図面を求めるところで、国内館向けには「閲覧室、閲覧席(全ての閲覧用端末、管理用端末を含む。)が掲載されている写真」「カウンター・出入口と閲覧席の配置がわかる図面」「上記の内容が確認できれば、利用案内・リーフレット等で代替可能です」まで書いてあるけど、海外館向けにはそういう説明がない。このページでは確認できない別紙があるとかならそれでもいいのですが。

 例:「活動状況」の「Describe how your library will check if patrons who apply for using the service are eligible」や「Explain how your library will comply with the terms of use for the service」も、具体的に何を求めているかが、このままでは意図をはかりかねて、自分がこれを質問されたら「何を書けば認めてもらえるんだろう、ていうか下手なこと書けないから怖い」と思ってしまいそうでたぶんお手上げなので、せめて「こういう感じのことを書いてほしいんだけど」的な例示があればまだ何とかなると思いました。

 あと、海外館向けの説明には「承認手続には、約1~2か月かかる」というのがないっぽい。事務コストの規模感は事前にわかるほうが助かりますよね。特に、国が違うと”事務の感覚”ってだいぶ違うじゃないですか。
 関連して、実際に国内館として自分がやったときも、何度もやりとりを往復してわからないところを聞き出したり、書類等の修正に応じたり、意図を確認し合ったりということがあったので、あとからそういうふうにお互いすりあわせていかなきゃいけないような手続きなんだ、ということであれば、そういうものだということが事前にわかるといいかなと思いました。わからないと、下手な書類出したらシャットアウトされるのでは、でもこの説明ではわからない、ってなっちゃいそうなので。




 以下、おまけです。
 最初の海外日本研究司書の人の「日本の図書館はホントにこれやったのか」という疑問に戻りますと、これだけの手続きって、海外にとってだけハードルが高いわけではなく、実は国内館にとっても相当しんどいということはすでにあちこちで聞こえているわけで、実際うちとこもサービス開始前からヘビーユーザ館確定的な見積もりはありながら、数ヶ月間の手続き&やりとりの繰り返しで、正直何度かキレてサジ投げそうにもなったわけなんですが、それでもやっぱり、うちとことしてはどうしても国会さんがにぎってはる蔵書を使わせてもらえないと、リアルにライフラインを絶たれる死活問題になっちゃうので、耐え難きを耐えて手配し申請にこぎつけた、という感じです。
 そのことを思い出すと、じゃあ海外図書館にとってそこまでのコストをかけて導入する価値のあるサービスなのか、いや日本司書・日本研究者にとってはもちろんその価値はあるにせよ、館全体・大学全体、図書館の上層部その他はそれで納得できるかはまた別の問題なのですが、さて、それも「あるある」「既出」だしな、うーん、という感じです。

 やはり随所で「あるある」「既出」が見える感じなので、このコミュニケーション不全は、海外側のアピールや問題可視化が不足していて届かないのか、日本側の目や耳が向いてなくてスルーしてしまってるのか、そのどちらともなのか、そして自分はどこにいてどうしたらいいのか、まだまだ自問自答し続けていかなきゃいけないんだなって、ゴム紐を締め直しました。(正直、ちょっと油断してた)
 これは、送信サービス一個の問題ではないので。




 あと、デジタル化された資料がILLできない問題、というのはどうなったのか、未確認。
 これが切実。


 雑駁ですが、以上です。
 また何か分かったり考えたりしたら追記します。


 あ、あと、↓この要点3つはむしろ自分とこのサービス全般を見直すべきところでもありますので、ちゃんとやります。
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 1.「必要だ」と「現実的に無理」は歩み寄れるのでは?
 2.「察してね」は届かない
 3.問題の多くは「あるある」「既出」なのにどうしてこうなった
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posted by egamiday3 at 22:04| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする