嵐のエンタメ
「嵐のエンタメ始めるぞ!」
12月24日。ARASHI Anniversary Tour 5×2の東京ドーム公演。4曲目の『言葉よりも大切なもの』を終えた時に松本潤が叫んだ。自分はその言葉に違和感を感じた。
すでに4曲歌い終えている。もうエンタメは始まっている。初めて嵐のライブを観た自分は1曲目から度肝を抜かれるエンタメを体感していた。
ステージ後方の超巨大スクリーンを使ったド派手な映像演出で始まり、ステージセットの天井と予想外な場所からメンバーが登場した。ステージでパフォーマンスを始めたら、ステージごと嵐が後方まで大移動。そしてステージが分裂し東京ドームの外周をステージごと回る。分裂し移動するステージの上で歌い踊るキラキラした嵐。ステージごと自分の目の前に嵐が近づいてくる。
これは開始から4曲目までの間の出来事。実際に観ていない人は何を言っているのかわからないと思う。何が起こっているか説明できないぐらいに、度肝を抜かれる演出が行われるのだ。最初からフルスロットルで。
「嵐のエンタメを始める」ではなく「嵐のエンタメは始まっている」の間違いだ。もうすでにエンタメを堪能してしまっている。
でも松本潤の言葉は、間違いではなかった。まだまだ序の口だった。この後のライブ展開と比べたら、序盤はウォーミングアップみたいなものだった。
ライブは3時間30分と長丁場。でも中だるみしない。飽きることもない。次々と新しい「嵐のエンタメ」を見せてくれたからだ。
東京ドームを広く感じなかった
東京ドームには5万5千人集まっていた。日本でコンサートができる屋内会場としては日本最大規模。
それなのに嵐を近くに感じる。どの席にいたとしても近くまで嵐が来てくれる。
花道はアリーナの真ん中あたりまで伸びている。客席を囲むような四角形の花道。その花道を何度も行ったり来たりして歌い踊る嵐。
トロッコに乗って移動したと思えば、客席のド真ん中へ突っ込んでいくトロッコ。何度も客席に突っ込むトロッコ。
花道やトロッコでも近くに行けない離れた客席にはステージごと移動していく。ステージが最後方まで移動する。さっきまで最後方席だったはずなのに最前列に生まれ変わる。そしてステージが分裂しスタンド席を回る。
しかもステージの高さが変化する。それによってスタンドの後方の位置が高い席でも嵐の表情が肉眼で確認できるぐらい近くで見ることができる。上の席でも自分の目線で嵐が歌ってくれる。
自分の近くにも来てくれた。二宮和也と目が合って手を振ってもらった。自分は男で目立ってたし、全力で手を振ってアピールしたから確実だと思う。マジで目が合った。本当に目が合った
もしかしたらそれは勘違いかもしれない。でも自分と同じようにメンバーと目が合ったように感じた人も沢山いたはずだ。そう感じるぐらい近い距離まで来るのだ。メンバーも客席全体を見回し、ファンに反応しながら歌っていたように見えた。
ライブの雰囲気を感じることはできても、嵐の表情まで肉眼で観ることはできないと開演前は思っていた。でも観ることができた。テレビに出ている姿と変わらない嵐がすぐ目の前で歌い踊っている。
それに感動した。キラキラしたオーラのスーパースターが近くに来ることで、身近な存在のように感じる不思議な気持ちになった。
「1人残らず幸せにするからな!」
ライブの序盤に煽るように叫んでいた言葉。この言葉は嘘ではなかった。できる限り全てのファンの近くに行って楽しませようとしていた。みんな笑顔になっていた。
心理的にも近くにくる嵐
「飛べ!」「声出せ!」
嵐が曲中にこのように煽るとは思わなかった。
ハイクオリティの演出によるエンタテイメントショーのような魅せるライブかと思いきや、観客参加型のライブ。メンバーが叫んで煽って盛り上げる。マイクを客席に向けたり、身振り手振りを使って挑発するように煽る。たまにメンバー同士でイチャつく。メンバーの中身はサンボマスターかと勘違いしそうになる盛り上げ方。
5万5千人がそれに応えるように盛り上がる。東京ドームがライブハウスになったかにょうに錯覚する。ファンもライブを一緒に創り上げているような感覚。その感覚があるので大きな会場でも近くにいるような気持ちになる。
17曲目が終わるまでほぼMCなしのぶっ通しで歌い踊っていた。そのパフォーマンスに圧倒され魅了された。これがトップアイドルかつエンタテイナーだと思った
中盤でようやく行われたMCでは、さらに客席と心の距離を詰めてくる。
MCではカッコつけずにリラックスした姿で話す。まるで友達の話を聞いている気分になる。松本潤はバナナをなぜか食べていた。演出につなげる伏線かと思ったら演出とは関係なく、お腹が空いたからとバナナを食べていた。コアなファンの話によると、松潤はバナナが好物でよく食べるらしい。
「松潤も自分と同じようにバナナを食べるんだな」と想い急激に近づく心の距離。バナナによって近づく心の距離。
音楽が素晴らしい
音楽を聴くコンサートとしても楽しめるライブでもあった。
バンドとオーケストラによる生演奏で楽曲が披露されていたからだ。その演奏はハイレベル。バンドやオーケストラの演奏をフィーチャーした曲もある。
櫻井翔がピアニストとして演奏にも参加していた『アオゾラペダル』ではダンスや映像以外に派手な演出はせず、バンドの演奏を引き立て音楽を聴かせることを重点に置いているように感じた。演奏に合わせた嵐の落ち着いた歌声も素晴らしかった。
『アオゾラペダル』の後半は「みなさんも一緒に歌ってください」と櫻井翔が話したことで、5万5千人の合唱が巻き起こった。ファンに音楽を聴かせるだけでなく、音楽に参加もさせていた。音楽を聴く楽しみだけでなく、音楽に参加する楽しみも伝えてくれた。
『COOL&SOUL』『マイガール』『One Love』の流れでは松本潤がバナナから指揮棒に持ち替え、指揮者に扮してオーケストラを主役のように引き立てる。音源以上にオーケストラの演奏が印象的な編曲。美しく素晴らしかった。
アイドルはルックス重要で音楽を真剣にやっていないという偏見を持っている人は少なくない。ファンは常に「キャーキャー」騒いでいるというイメージを持っている人もいるかもしれない。
しかしアイドルも真剣に音楽と向き合っている。大きな会場でも「音楽で」感動させている。ファンも真剣に音楽を聴きパフォーマンスを観ている。無駄に騒いでいるファンなんてライブにはいなかった。
むしろ東京ドームクラスでも音楽で勝負できる数少ないアーティストの1組が嵐だ。
どれだけエンタメとして派手な演出を行ったとしても、松潤がバナナを本番中に食べたとしても、嵐のライブの軸は「音楽」なのだと思った。音楽があるから多くの人を感動させているのだと思う。
5万5千人ではなく「一人ひとり」
当ブログで嵐のアルバムについて以前書いたことがきっかけで、ファンの方が好意でチケットを取ってくださったので自分は嵐のライブへ行くことができた。(このために自分もFC会員に入って購入方法などの面倒を見てもらいました)
嵐のライブは観てみたいとは思っていたが、 自分が嵐のライブを観てもいいのかと悩んでもいた。
自分の世代的に嵐は小学生の頃から今までずっとテレビで観てきたアイドル。思い入れがないわけではない。しかし自分はファンとして応援を続けていたわけではない。全てのCDを持っているわけでもないし、知らない曲だってある。
後楽園駅の前では「チケットを譲ってください」と書かれた紙やボードを持ったファンの人たちが沢山いた。
「台湾から来ました」「デビュー当初からのファンです」「病気で入院する前に嵐に会いたい」
それぞれの嵐への想いやメッセージを書いている人もいた。胸が痛んだ。きっと自分なんかよりも嵐のことがずっと好きな人たちで、嵐の存在や音楽にずっと救われてきた人だと思った。
嵐は来年活動休止する。1本1本が今まで以上に大切なライブなのだと思う。嵐にとっても、ファンにとっても。そんな大切なライブに自分が行っていいのだろうかと思った。
でも、嵐の言葉を聞いて、自分も嵐のライブを観ても良いのだと思った。
「いつも支えてくれているみなさん、ありがとう。今日初めて来た人もいますか?ようやく会えましたね。会いに来てくれてありがとう。嵐はあなたが来てくれることを、ずっと待っていました」
『5×20』という曲を歌う前の櫻井翔のMC。この言葉に救われた。
初めて来ていたお客さんは自分以外にもたくさんいたと思う。それでも自分に向けて言われているような気持ちになった。「1人残らず幸せにする」という序盤の話も嘘ではなかった。
いつも来ているファンも、初めて来たお客さんも全員幸せにしている。この日ライブを観ることができなかったファンのことも想っていて、今までのライブや音楽などの活動で幸せにしているのだと感じた。
「5万5千人、一人ひとりにありがとう!」
嵐はこのようにも話していた。東京ドームほどの大規模なライブをやれる日本の誰もが知っているスーパースターなのに、一人ひとりに向けて音楽を届けるようにライブ空間を創っている。
トロッコやステージの移動などの演出で、全ての席の近くにメンバーが来てくれた。一緒にライブを盛り上げるように参加することで嵐の存在を近く感じた。バラエティと変わらないノリのメンバーを身近に感じた。松潤がバナナを食べたことに親しみを感じた。
でも嵐の存在を近く感じた最も大きな理由は、メンバーが嵐に対しての想いとファンへの想いを持っていて、それを表現してくれるからなのだと思う。
やはり嵐はアイドルだった
本編は感動的な終わり方だった。メンバーが20年間の活動への感謝や想いを話し、活動休止も含めた来年への想いを話していた。その言葉は冗談を混ぜながらも、真摯でまっすぐな言葉だった。
その後に歌われた曲は『5×20』。メンバーが作詞を行い、嵐についての想いを感じるような内容。その歌声もまっすぐで、かっこよくて、心を鷲掴みされた。アンコールが必要ないぐらいに完璧な終わり方で、感動的な終わり方だった。
そんな感動的で少し切ない余韻を、アンコールで良い意味でブチ壊した。嵐はアイドルなのだと改めて思った。
最後は全員笑顔にして「楽しい」という余韻だけのライブにしたのだ。
『ファイトソング』や『エナジーソング ~絶好調超!!!!~』では客席を煽りまくって盛り上げる。またもやステージごと移動し、全てのお客さんの近くまでやってくる。この日一番の盛り上がりだった。みんな笑顔になっていた。
ラストの2曲は『Love so sweet』『Happiness』。ポップで明るいナンバー。東京ドームが多幸感であふれている。客席だけでなく嵐も笑顔になっている。嵐も心の底から楽しそう。この空間にいる全員が楽しそうにしている。
『Happiness』では今までのシングル曲のタイトルや様々な嵐の楽曲の歌詞がスクリーンに映されていた。
全ての曲を知らない自分でも知っている曲がたくさんある。好きな曲もたくさんある。嵐の曲のそれぞれに大切な思い入れがある人が5万5千人集まっているのだと思った。嵐の歴史を感じる映像演出であり、嵐のファンの歴史もつまった映像にも思えた。
全41曲を歌い終えた嵐に、この日1番の歓声と拍手が送られた。
嵐は笑顔だった。客席はもっと笑顔だったかもしれない。相葉雅紀は「みんなの笑顔が一番美しいよ」と行っていた。「松潤がバナナを食べる姿が一番美しかったぞ」と思ったけど、たしかにみんないい笑顔だった。自分も笑顔になっていた。
これほど多くの人を笑顔にする実力と想いがあるから、トップアイドルで居続けているのだと思った。今までも多くの人を笑顔にし続けてきたのだと思った。
嵐は「5万5千人、ひとり残らず幸せにする」という序盤のMCを有言実行した。嵐のライブは素晴らしかった。最高だった。その最も大きな理由は「ひとり残らず笑顔にした」からだ。
嵐は2020年で活動休止する。来年も国立競技場でライブを行ったりと、精力的に活動するようだ。しかし嵐は東京ドームでもなかなかチケットが取れない人気アイドル。来年も自分が嵐のライブを観れるとは限らない。たぶん、観たくても観れないと思う。
でもまたいつか嵐のライブを観ることができると信じている。相葉雅紀は「活動休止と書いてパワーアップと読みます。また会いましょう」と言っていた。きっと再開する未来があるはずだ。
この記事のタイトルを「初めて観た感想」とした理由は、自分がまた嵐のライブを観る機会があると信じているからだ。それがいつになるかわからないとしても。
その時までバナナでも食べながら待とうと思う。
2019年12月24日 ARASHI Anniversary Tour 5×20
▪️セットリスト
1.感謝カンゲキ雨嵐
2.Oh!yeah!
3.Step and Go
4.言葉より大切なもの
5.Find the Answer
6.I'll be there
7.迷宮ラブソング
8.La tormenta 2004
9.Breathless
10.Everything
11.果てない空
12.アオゾラペダル
13.復活LOVE
14.Believe
15.Lucky Man
16.夏疾風
17.Brave
18.COOL&SOUL
19.マイガール
20.One Love
21.Face Down
22.つなぐ
23.Crazy Moon ~キミ・ハ・ムテキ~
24.Sakura
25.truth
26.A・RA・SHI
27.a Day in Our Life
28.ハダシの未来
29.サクラ咲ケ
30.きっと大丈夫
31.Monster
32.Troublemaker
33.ワイルドアットハート
34.GUTS
35.君のうた
36.5×20
encore
37.ファイトソング
38.エナジーソング ~絶好調超!!!!~
39.PIKANCHI DOUBLE ピカンチダブル
40.Love so sweet
41.Happiness
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