---------------------------
----S----076--------------
----c-----------------------------
----a-----------------------
----r-l-e-r-t--------------
-----------------------------------
-----------------------------------
---------------------------------------------------------------
♪~
♪~
♪~
直子は お葬式にも間に合いませんでした。
♪~
♪「涙が降れば きっと消えてしまう」
♪「揺らぐ残り火 どうかここにいて」
♪「私を創る 出会いもサヨナラも」
♪~
♪「日々 恋をして 胸を焦がしたい」
♪「いたずらな空にも悔やんでいられない」
♪「ほら 笑うのよ 赤い太陽のように」
♪「いつの日も雨に負けるもんか」
♪「今日の日も 涙に負けるもんか」
♪~
♪「やさしい風に吹かれて」
♪「炎は再び舞い上がる」
(喜美子)喪主引き受けてくれてありがとう。
(八郎)うん…。喪主の挨拶で…お父ちゃんのこと かっこええ男や言うてくれて ありがとう。
ほんで… 今の僕がいるのんはお義父さんのおかげや言うてくれて…。
それな…。うん。
前に お義父さんに言わされた。
そうなん…?
そこ座りぃ。
仲ようせえ言われたなお義父さんに…。
2人仲ようせえ…。
仲ようしてないように見えたんやろか。
最近 ゆっくり 話 してないもんな。
最近やないよ。そう?
武志が産まれてからや。
そんなことないやろ。
ほらな。何?
ずれがあるやんうちは そう思うてたよ。
しょうもない。 お父ちゃんいたらしょうもないこと言うないうて叱られるわ。
あんな…世の中の大概の男は アホや言うてたお義父さんが。
いや 具体的に言うてくれな僕もアホやから分からへんねん。
何に腹立てたりしてんのか。
例えばな?うん。
武志が寝てしもて 寝床運ぼうとするやん。うん。
うちがやる言うやん。うん。
ほしたら 八郎さん 僕がやる言うやん。うん。
うん? うん? それの何があかんの?
いっつもそうや 大概そうや。
うちがやろうとしたりやるつもりでいんのにええよ ええよ 僕がやる言う。えっ それの何があかん?
もうええわ もう ほんましょうもない。
今 自分で言うててもびっくりするぐらい しょうもなかった。
もうやめぇ!せやけど そういうことが積もり積もってんねやろ?
ええから座れや まだ終わってないで。
終わりはないで。こういう話に終わりはないで?
もう 一回言いだしたらどんどん出てくるわ。
うちな 仕事で忙しいさけ武志の洗たシャツなんかはもうパパッと適当に畳んで しまうねん。
それを八郎さん わざわざ取り出してきちんと丁寧に畳み直す 嫌みか!
優しいで? 優しければ優しいほどうちが責められてるような気持ちになんねん!
ほな どないせえっちゅうねん!分からへん!
分からへん!?分からへんから黙ってた。
♪~
ちゃう。えっ。
今は 何となく分かってんねん…。
仕事や。
うちが少し 仕事やめたらええねん。
茶わん 60個のところを30個にしたらええねん…。
それは… 僕も そう思うで?
お金やったら 僕かて少しは…。お金だけやないねん。
仕事は…。
仕事は うち やめたないねん…。うん。
うち 仕事が好きや。働くんが好きや。
喜美子。はい。
これからもな 忙しいで?
百合ちゃんのこともお義母さんのことも気にかけて。
東京から なかなか帰ってけぇへん直ちゃんのことも心配やしな。
武志かてこれから まだまだ手ぇかかる。
何やかんや 忙しいのは変わらんで。
ほんで… こうしていちいち向き合うてたらええけどなそんな暇ないで。
きっと また 積もり積もっていくで。
ほな どうしたらええのん。仕事が好きいうのは分かってるからな。
もう一つの方もいつも分かってたらええんちゃうか?
もう一つの方って?
喜美子のこと 好きやで。
好きや。
ありがとう。言えや 喜美子もぉ。
うちは…。
あんたしか おらん。
ほんまやで?
あんたおらんと生きていけん。
嫌われたくない…。
♪~
ええ子に育ったなあ…?ハッハッハッ…。
(笑い声)
「雪女は とても強く攻撃をしても 全く歯が立ちません。あっとうてきなこうげきにまるまる太郎たちは負けそうになってしまいました。それでも あきらめなかったまるまる太郎は『みんな ぼくのからだに くっつけ!』」。(2人)お~!
(百合子)お姉ちゃん!直姉ちゃんが帰ってきた。
♪~
うわっ! 誰…?
(鮫島)ああ どうも! 鮫島です。
兄貴ですか?はっ?陶芸家の先生の兄貴ぃ!
直姉ちゃんが連れてきやった。熨斗谷電機で一緒に働いてはるんやて…。
はい。 こちら 武志君? こんにちは。(武志)こんにちは。
上手にご挨拶 さすがですぅ!
あっ 先生も さすがですねえ。
先生のお作りになったお茶わんの数々ほんまに すばらしい作品や!それ 瀬戸物や。
(直子)あっ お姉ちゃん。
直子! あんた どないしたんや 急に。
大阪行くさけ ちょっと寄ることにしてん。
鮫島さん いわはりましたね。はい。
すいませんけどちょっと外で待っててもらえます?
へっ?内々で話したいんで。
(直子)電話が2回かかってきたお父ちゃんから。1回目は いつものお父ちゃんの声やった。
「喜美子が帰ってこい言うかもしれんけど帰ってこんでええ。お前は しっかり東京で働いとけ」。
いつ?う~ん… 夏の終わりや。
(マツ)加賀温泉から かけたんよ…。そうなん?
どっか電話してくる言うてた…あれが そうや思う。
2回目は 秋口や。 少し力がのうなったような気ぃしたけどしっかり言うてたで。「わざわざ帰ってこんでええ。帰ってくるな。お父ちゃんは 大丈夫やから」。
何で そんなこと…。強いお父ちゃんでいたかったんやろ。
最後まで 強いお父ちゃんの姿だけをうちの心に残したかったんや。
何 言うてんの…?お父ちゃんの意地と誇りや。
なにを悟ったようなこと言うてんの?
お父ちゃんが帰ってくんな言うたとしても帰ってくんのが 子どもちゃうの?何で会いに来んかったん?
会いたい思わんかったん?
そりゃ あんたとお父ちゃんは馬が合わんでケンカばっかりしてたけどな最期くらい…!会いたい思たに決まってるやん!
会いたかった。 会いたかったで。
ほやけど うちは お父ちゃんの言うこといっつも逆らっていっつも言うこと きかんかった。
最後くらい言うこときいてやろう思たんや!
わざわざ電話して言うてきたお父ちゃんの言うこと…きいてやろう思たんや…。
♪~
おいで。
(すすり泣き)
堪忍な… 堪忍や…。
堪忍やで…。
ほな… おかげで心ん中には元気なお父ちゃんしか おらんのやな。
ちゃぶ台ひっくり返したりふざけたことばっかり言う…。
そや。 うっとうしい 暑苦しい元気なお父ちゃんしか記憶にない。
ええなあ 元気なお父ちゃん。
♪~
(くしゃみ)