カジノ汚職だ。統合型リゾート施設(IR)参入に絡み、自民党の秋元司衆院議員が収賄容疑で東京地検に逮捕された。成長戦略が利権にまみれていた証左だ。IRは立ち止まって再考すべきだ。
IRを所管する内閣府副大臣と観光施策を所管する国土交通副大臣を二〇一八年十月まで兼務した。さかのぼれば秋元容疑者は超党派の国際観光産業振興議員連盟にも加わり、IR整備推進法案の審議を取り仕切る衆院内閣委員会の委員長でもあった。
つまり安倍晋三政権が成長戦略として描いたカジノ法を作り上げた立役者なのだ。その人物が中国企業側から便宜を図ってほしいとの趣旨で計三百七十万円相当の利益供与を受けた。それが容疑だ。
東京地検による国会議員の逮捕は約十年ぶり。汚職事件では二〇〇二年の鈴木宗男衆院議員(現在は参院議員)以来となる。大阪地検の証拠改ざん事件などで信頼が崩れていた検察だけに、カジノ参入をめぐる闇を徹底的に解明してもらいたい。
首相自ら「新たなビジネスの起爆剤」「観光先進国へ引き上げる原動力」と位置付けている事業である。これまでに横浜市、大阪府・市、和歌山県、長崎県の四地域が誘致を表明しており、自治体側の準備が進んでいる最中だった。二十四日には運営事業者の公募手続きを開始したばかりだ。
さらに国の意向調査では東京都、千葉市、名古屋市なども前向きな回答をしており、さながら“カジノ列島”の熱気さえ感じる。だが、日本にはもともとノウハウがない分野で、結局は米国など海外資本の進出が見込まれる。
それだけに政・官との癒着が起きるのは中国企業ばかりではあるまい。東京地検は推進派の議員を含め、カジノ汚職の捜査の視野を広く持ってもらいたい。
何より誘致表明の自治体では住民の反対運動が起きている。もともとギャンブル依存症の比率が高い日本であるし、生活環境の悪化も懸念される。マネーロンダリング(資金洗浄)の場になる心配もある。そんな住民の不安が解消されたわけではない。
雇用創出などのプラス面ばかりを強調せず、この際、政府は住民の声に真摯(しんし)に耳を傾け、考え直すべきなのではないか。
日本では古くから、民間の賭博を禁じてきた歴史がある。この禁を破り、ギャンブルで経済成長しようという発想自体が、どこかおかしい。
この記事を印刷する