個人的な年末の恒例行事となりつつあるのが、韓国・ソウル競馬場で行われる「グランプリ」の観戦。香港国際競走と同じ12月8日に行われた。
今年のドバイワールドカップカーニバルで、リステッド競走を勝ったドルコンが直前にけがをして出走できなかったのは残念だったが、年に一度の2300メートルで、騎手たちの駆け引きを堪能した一戦だった。勝ったのは、今年9月のコリアカップの覇者、ムナクチーフ。向こう正面でまくっていき、早め先頭から押し切るレースぶりは、まさにコリアカップの再現。着実に力をつけた4歳馬で、アメリカンファラオの父として知られるパイオニアオブザナイル産駒という点でも、さらなる飛躍が期待される。そして、かつては欧州のトップ騎手として活躍し、現在は韓国で騎乗しているアラン・ムンロ騎手(52)のシャムロッカーが、内ぴったりを回るソツのないリードで2着に健闘した。
韓国の競馬はまだまだ成長途上ではある。しかし、JRAだけでなく、日本では南関東での短期免許で騎乗するなど、経験豊富なムンロ騎手も「これから確実に伸びてくる国」という。今年はドバイのドルコンに始まり、コリアスプリントを制したブルーチッパーが米国に渡り、ブリーダーズCダートマイルで3着に粘るなど、少しずつ世界で戦える馬も登場した。KRA(韓国馬事会)によれば、来年のドバイWCカーニバルにはブルーチッパー、トゥデイ、グレイトキング、ペンムンベクダプの4頭が遠征するという。実績を考えれば、ブルーチッパーとトゥデイへの期待度が高くなるが、海外挑戦は確実にレベルを上げる近道である。
日本馬が当たり前のように海外でビッグレースを勝つ時代になったが、ジャパンC創設前の海外遠征や、その後の数年の結果を考えれば、長い道のりだった。グローリーヴェイズとウインブライトは、日本が40年以上かけて育んだ母系であり、アドマイヤマーズはダイワメジャー産駒の海外G1初制覇とともに、友道調教師や関係者の涙に感動した。「現状維持は、衰退の始まり」と、先輩記者から頂戴した言葉がある。日本馬が海外への挑戦をし続けてきたことが、世界のトップクラスに位置するようになった要因と言えるだろう。
韓国調教馬のドバイやBC挑戦は、間違いなくコリアカップとコリアスプリントを創設したことが大きい。中距離以上で日本馬と互角に戦えるとはまだ思わないが、来年のコリアスプリントで日本馬を破るというシーンは、決して夢ではない。(競馬ライター)