桜の国チェリンと七聖剣【九十九】
「あまり隠してもしょうがないから、はっきり言ってしまうと……。おそらく他の首脳陣と同じように、天子様とお父さんも血狐が怪しいと睨んでいるはずよ。ただそれを表立って口にすれば、アレンくんの不興を買ってしまい……最悪の場合、貴族派に取り込まれてしまうかもしれない。そうなったら皇族派は、もう完全にお手上げ状態ね」
赤裸々にそう語った会長は、小さく肩を竦めた。
「そんな最悪の展開を避けるため、天子様とお父さんは『リゼ=ドーラハインの判断』を一時保留にしたんでしょうね。その証拠に二人は、どうしてもあなたに聞いておきたいみたいよ。――『次の極秘会談で、血狐を容疑者に挙げていいかどうか』をね」
「……一応、事情は把握しました」
彼女の話を頭の中で整理し、ひとまずの結論を出す。
「俺のような一学生が、天子様とロディスさんの意見に口出しはできません。二人が情報漏洩の容疑者として、リゼさんを推すのであれば……それは仕方のないことです」
リーンガード皇国の頂点に立つ御方と長年その補佐を務めてきた国家の重鎮。
そんな二人に対し、俺は異議を唱えるような立場にはない。
「ただ――リゼさんが帝国へ情報を渡すなんて絶対にあり得ない。これだけは、はっきりと言っておきます」
いろいろと誤解されているようだが、彼女は本当に優しい人だ。
決して、裏切ったりするようなことはない。
「ふふっ、アレンくんらしい回答ね。それじゃそういう形で、お父さんに連絡しておくわ」