年末年始の飲み会シーズン、男子大学生は人前で下半身を露出させる機会も増えていることでしょう。
かつての私もそうでした。我がサークルでも多分に漏れず、とりあえずチンコを出せばウケる。そんな友人の浅はかな考えで、ボロンと晒された下腹部に中位の笑いが起きた。だから戯れにフェラチオをしようとしたら、「やめろ、こいつ本気だ」って見破られて、チンポを隠された。
もうひと盛り上げしたくて、やろうとしたけど、冷静に考えたら、ウケるどころか場は冷え切って、取り返しのつかない空気になってたかも。
「やらない後悔よりやる後悔」だなんて嘘。やらなくて良かった。
でも人によっては絶対に越えてはいけない一線のはずなのに、何故あの時ちんちんを舐めてもいいなんて思っちゃったのか。
子どもの頃の一番身近な玩具といえば、おちんちんだ。湯船に浸かりながら、先端の皮を指でチロチロっていじって、固くなったあそこをお湯からひょっこり出す遊びは、男児の頃ならみんなやっていた。小学生の頃、一番仲の良かった友達は、この遊びに「東京タワー」と名付けた。その友達と他数人でキャンプをして、夜のテントで寝ずにふざけ合ってたとき、一番の友達が「誰が一番早く固くなるか競争しよう」と言い出した。今考えれば、オナニーの見せ合いっこだけど、当時は刺激すると大きくなる面白いやつくらいにしか思ってなかった。
その後もこの友達は「見て、チン毛生えた!」って自慢してきて、お互いのを見せ合ったりしたけど、中学に上がったあたりで友達の雰囲気が変わって、疎遠になった。
中二になってできた友達とは、包茎問題が話題の中心で、休み時間になる度、ジャージの袖を皮に、グーで握った拳を亀頭に見立てて、「どこまで剥けたか報告会」を教室の隅で開いていた(我々の間では大変ポピュラーな遊びだったが、その後できた友人らに聞いても、誰一人やってなかったからマイナー遊戯だったと思ってる。残念。とても有意義な時間なのに)。
一番早く最後まで剥ききった友人が、皮の最終ポイントがどうなっているか説明してくれたけど、教えてくれたその仕組みを信じることはできなかった。まだ見ぬそれは恐怖だった。でもあのヒリヒリ、チクチクとした痛みに耐えた彼をみんなで褒めたたえた。
それからお互いの股間を「やめろよー」とか言い合いながら、まさぐり合い、教室にあった先生が使う授業用巨大物差しで、膨張した陰部の長さを測り合った。一人、まさぐりのすごいテクニシャンの友達がいて、とても仲良くしてたけど、クラス替えであっさり交流がなくなってしまった。
高校に入って、共通の趣味から友人ができた。その友人はいわゆるイケメンで、女子に人気があった。
俺はと言えば、根暗な陰キャで、ハダカデバネズミに親しみを覚えるような顔だから、友人と一緒にいるところを女子に見られると居心地が悪かった。
こんな見てくれの悪さと陰陰滅滅とした雰囲気を漂わせる俺なんかとどうして陽キャの君が一緒にいるの?と疑問に思ったけど、そういう暗い部分が彼にもあって、そこが通じてからか、彼にはとても気に入られた。
彼はとにかくモテたけど、彼女はいなかった。「モテてもいいことない。好みじゃないのから言い寄られて、断っても、リストカットとかしてくるし、面倒」と言って、「男とばっか遊んでるからゲイなの?って言われたことあって、自分でもそうかもって思った時期もあった。けどやっぱ彼女ほしいなあ」なんて言う彼に、言えばすぐにできるだろうにって思ってた。
帰り道はいつも一緒だった。彼の家は、俺の家を通り過ぎてずっと先のところにあったけど、彼の「寂しい」「うちまで送って」の頼みを断れず、家までついて行った。彼がその手の女子を演じてたのはわかってたし、それに乗っかるっていうふざけ合いでもあったけど、それはそれとして、単純に一緒にいる時間が楽しかったから遠回りは苦じゃなかった。むしろ内心喜んでた。
友達グループ数人で歩いているときは、彼は俺の腕につかまり、みんなでカラオケに行けば、隣に座ってきて、肩に頭をもたれてきた。さすがに二人でいるときは、そういうふざけ合いはしなかったけど、触れてきたときは、彼がそうしたいならそれでいいと思ったし、断ったらふざけ合いがマジなものになっちゃう気がしたから、俺は彼にされるがままでいた。同性間なのに疑似恋愛っぽい接触だなって思ってたけど、お互い彼女はいないし、俺に関して言えばできる気配もなかったし、それに嫌な気分じゃなかったからこのまま流されようって思った。
けど大学進学で、彼は関東地方、俺は東海地方の学校へ進むことになった。さらに彼から電話がかかってきて、出てみると女の声で、彼からの電話だと思ってたからあっけにとられていると、今度は彼の声がして「今の誰だと思う?」ときた。答えに迷っていると「彼女だよ」と告げられた。
あれだけ女子に人気があるんだから当然だよな。今までいなかった方がおかしい。彼女がいない隙間の時期にたまたま一緒にいただけ。それに友人関係は今まで通り続くだろうし。今までのように毎日会うってことはできなくなるけど、遅かれ早かれいつかはそうなるものとわかってたことだ。何も失ってはいないのだと自分に言い聞かせた。
知ってる人なんて一人もいない土地で、大学では一からやり直す気持ちだった。でも何も始まらなかった。最初の一か月は話せる相手を探したけど、ほとんど仲良くなれず、次の日にはまた他人同士に戻った。それでホームシックになった。早くゴールデンウィークが来てほしかった。地元に帰って、友達に会いたかった。
だけど連休明け、教室で好きなバンドのTシャツを着ている人がいて、思い切って声をかけてみた。それが縁で仲良くなった。その友人から軽音サークルに誘われて、一緒にバンドを組んだり、一緒にライブを見に行って、帰りに友人の家に泊まったり。または大学を終えて、学校の近くにある俺のアパートに友人が泊まりにきたりして、よく遊んだ。二人でしょっちゅう宅飲みしてたけど、彼は飲むと脱ぐ癖があったから、俺もつられて脱いで、お互いの裸に唾を吐き合い、その白い唾液の溜まりを見て「ザーメンだ、ザーメンだ」と笑いあった。
彼の体臭は汗臭く、普段から結構匂ってたけど、裸になると、より匂った。臭かった。だけど友人として好きな相手だし、我慢できないこともない。いや、むしろそれがないと彼じゃない。体臭も含めて良い奴だった。
それからエロDVD屋で買った検査キットがあるってことで、それぞれトイレに籠り、射精。検査キットの拡大鏡ごしに精子が泳ぐ様を見せ合って、「お前のは元気だな」「俺のどこ?全然いない」なんて騒いだ。
その後、酒がなくなったので、コンビニまで買いに行くことになった。その途中、別のアパートの前で、同じ大学の体育学部の学生と思われるムキムキの男性が上半身裸で厚い胸板をペシペシ叩きながらこっちを見ていたので、見たら巻き込まれると思い、目をそらして、コンビニへ急いだりした。
それからまた部屋で飲んで、眠くなったら寝た。布団は俺の分しかなくて、狭かったけど、くっつけば一緒に寝れた。彼は俺に足をからませてきたり、体にしがみついてきたりしたけど、わざわざ払いのけるようなことはしなかった。
お互いにAVの好みを話したり好きなエロ漫画の貸し借りとかしているうちに、なんとなく相手の好きな性癖がわかった。それに好きな芸能人の話とかしてたから、サークル内ではあいつのことが好きなのかなとか予想がついた。けどお互い童貞で、「そこから先にいけねえよなあ」なんてことを言い合ったりしてた。
俺には好きな人がいなかったけど、高校の頃の友達から童貞捨てた話を次から次へと聞かされていたから焦った。サークルの先輩に童貞がバレて、(というか童貞面で挙動不審だから最初から知られてただろうけど)、「なに!?まだ童貞なの?」と笑われ、恥ずかしかったし、悔しかったけど、「じゃあ連れてってやるよ」の誘いには、怖気づきそうになりながらも勇気を出して乗った。俺を笑う先輩の誘いに乗ることは悔しかったけど、それでも童貞を捨てたかった。
感触は陰茎の根本に輪ゴムを何重も巻かれたようで、痛かった。鬱血する感じが気持ち悪かった。根元の皮ごとしごきあげられる動きは暴力的で、夢に見た快楽とは程遠かった。でも出さないと卒業にならないって恐怖から必死に動かした。早く終わりにしたい、帰りたいって気持ちのまま、こみあがったそれを堪えないで、(もしも堪えて波が収まったら終われない。波が戻ってこなくても終われない。)終わりにしたくて、吐き出した。ソープで捨てることだけはできたけど、なれると思った晴れ晴れとした気持ちにはなれなかった。
「どうだった?」とニヤつく先輩に「最ッ高でした!また来たいっす!」って言ったけど、もう二度と来たくなかった。初めての相手の股からした洗ってない頭皮のような臭いが鼻に残っていて、少しえずきながら帰った。体臭も含めて良くなかった。
サークルの飲み会では、ウケを狙って、男子部員とキスをしまくった。酔った席でのノリだから過剰なほどウケた。舌をからませ、舌をしゃぶり、乳首もいじって、吸い付いた。その流れの中でのフェラチオ未遂だった。セーフとアウトの境が見えなかった。
その後、大学は卒業したけど、就職しないで、パートで働きながら、資格取得のため通信制の専門学校へ入った。周りが先へ進んでいく中、一人取り残されている感覚だった。
それでもスクーリングで同じ目標に向かう人に会うと、資格取得のため頑張ろうって気持ちになった。幅広い年代の人が集まってたけど、近い年齢の人もいて、一緒に勉強会に参加したりして、お互いを励まし合ったりした。勉強以上に距離を縮めることをきっと相手は望んでいないだろうって思ってたから、距離感を感じながらの関係だった。
年の瀬、高校の頃の友達で集まって、飲んだ。友人らから語られる話は「何十人とやっただの」「どんなプレイをしただの」「海外でマリファナ吸ってキメセクしたら過去最高に出ただの」と経験の浅い俺には聞いていて居心地が悪くなる内容ばかりだった。惨めな気持ちになった。みんな気の良い童貞だってのに、女知った途端これかよって、高校の頃に仲良く過ごした時間が汚されたようだった。
それから俺は囃し立てられ、裸踊りをして、友人に尻の穴へ指を突っ込まれた。自分の指でトコロテンの経験はあったから入れてもらって全然構わなかったし、もっとかき回してもらっても良かったけど、そのときは一瞬突っ込むだけ十分笑いはとれたので、それで終わってしまった。
その後、夜も深まって、睡魔にやられて眠る友人がちらほら出てきた。そのとき女を知って変わってしまったあの彼が、俺の愚息を握り、しごき始めた。握りが強く、自分でするのと違って戸惑ったけど、彼はこの握力でやってるのかな、なんて思ったりした(それ以来、ちょっと強めに握ると彼のことを思い出す)。半分しか勃たなかったけど、彼の指の合図で何をするかはわかった。寝ている友人の口と俺の尿道の口をくつけて、写真を撮った。やりきった達成感に浸りながら、二人で爆笑した。それで起きた友人にはしらを切ったけど、鉄板ネタとして今もその画像は残してある。
翌朝、みんなでスーパー銭湯へ行った。近視で乱視の俺には、視界全体にモザイクがかかったような視界だから、そこが男湯なのか女湯なのかわからない状態だ。それに男も女も等しくおしりはあるからどっちにも見えてしまって、変な気分になってジョニーが起きては勘違いされるなんてことを思ったりした。
たくさん湯があるうち、にごり湯に入っていると、彼がやってきた。向かいに座って、「ちょっと足広げて」とニヤけながら言うからその通りにすると、彼の足が俺の真ん中の足を掴んだ。彼は足の親指と人差し指の間で俺の矢印の出っ張りをとらえ、上下に動かし始めた。避けようとする俺に「逃げんな」と彼は言い、さらに「ちょっと試してみたい」と、それを続けた。彼女にしてもらってることを自分も誰かに試したいってことだろうか。彼が誰かにしてもらってることだと思うと少し悔しくなった。彼の足の指は俺の良いところに触れていただけに、怖かったけど、結果、足コキは俺の趣味に合わなかった。
そして今月、大学の頃、仲の良かったあいつが、結婚するらしいとの知らせを別の友人から伝えられた。胸を強く殴られたようで、心臓ばくばくだったけど、(ガラケーでLINEはやってない相手なので)メールでおめでとうと伝えた。自分のことは大々的に発表するタイプではないのはわかってたけど、本人から直接教えてほしかった。祝いたい気持ちもあるけど、あいつが結婚してしまうと思うと、普通ではいられなかった。
平常心に戻りたくて、資格の勉強に打ち込もうとしたけど、将来の不安とか現在の停滞感とか周囲と差がついていることの焦りとか頭のモヤモヤが邪魔して全然進まなかった。
その数日後、高校の友達のグループラインで、高校時代仲の良かったあの彼が、彼女と婚約したとの報告がされた。返事もできず、勉強ノートに「なにもかも遅い」と書きなぐった。何ページにもわたって同じことを何度も書き続けた。書いてはめくり、書いてはめくり、最後のページまで書き終わったけど、何も解決してない。
とにかく頭の中を切り替えたくて、自慰をすることにした。ネットで動画が探した。アナニーを覚えて以来、男女ともに肛門を犯されてる様を見るのが好きになった。掘られる尻穴に感情移入できるからだ。けど女性より男性が受け身の方が自分には合っていた。俺が男性だからだと思う。恋愛対象は女性だから、女性がペニバンをつけて、男性を犯すタイプの動画をいつも探してきた。しかし、これまた俺が男性であることが関係して、棒を突っ込むのは男であった方が、その肉棒に感情移入できるわけで、ペニスもアヌスも男性のものである方がより興奮できた。
ただ自分がそそり立つ方へ向けて進んだだけなのに、より良くなるどころか、苦しい立場にいる。
恋愛対象は女性で、だけど女性といるとドギマギしてうまく喋れなくて、距離を縮められないけど、男だったら気兼ねなく話すこともできるし、人間としてよく見ることもできるから好感も持てる。喜んでもらえるならなんでもしたくなる。それらは友人として、人間として好きだからできること。だから特別に仲良くなったと思う友人の後ろ姿を見て、抱きしめてみたら……なんて想像をしたりして、だけど変に思われるのはわかってるし、俺も変なのはわかってる。彼女がいない代わりに、彼らが俺に触れてきたのと同じで、俺も彼女がいないからそうしたくなっただけだと思う。本当は彼女が欲しくて欲しくてしょうがないんだ。ただずっとできないでいるうちに、その気持ちをこじらせただけで、今日も男同士のセックス動画で手慰みしたのは、そのせい。興奮したのもこじらせたせい。本当は女性が好きだし、彼女をつくれば、元に戻るはず。
ホモは文豪