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情熱でご飯を食べている「情熱家」として、見る人を笑顔にさせてくれるアート作品の制作や、地域住民と楽しくできる地域振興活動に力を注ぐ博多和宏さんにお話を伺いしました。
現在は、活動の拠点となっている吹上の吹上浜でゴミ拾いをして、拾ったものを使ってドレスやアクセサリーを制作しています。「環境アート」がテーマの企画展に「ゴミでドレスを作る」ことが採用されたことがきっかけで、吹上浜のゴミの魅力を追求したいと思うようになりました。もともとは環境美化を目的としておらず、「素材として面白いから拾う」という理由が大きかったです。浜辺に落ちているボトルキャップやトレーを服の素材として使ったこともあるのですが、洋服の素材にしようとすると、通常なら材料を加工する際に発生する「バリ」という突起を削らないといけません。しかし、浜辺で拾ったものはすでにバリが取れているので、そのまま洗えば使えるというものが多く、その点も面白いと感じます。
見ていただく方に楽しんでもらうということを大切にしています。アートは内面を表現することを重視される方もいらっしゃると思うのですが、僕はそれよりも見ていただいた方に楽しんでもらうということがやりたいことだと考えているので、鑑賞者の視点を大切にしています。昔は自分の想いが相手に伝わっているか不安に思うこともありましたが、伝わらなくても自分がその想いを強く持っていればいいと思っています。作るのは僕ですが、僕の解釈が自分の作品の正解ではないと思うので、鑑賞者の感受性を受け入れることにしています。
僕が嬉しいと感じることは、作品を見て鑑賞者が笑顔になることです。僕の作品を見て大爆笑してくださる人もいます。昔はショーのワンコーナーとして、自分がデザインした服をテレビの通販番組のように紹介したりして、作品を見せていたこともありました。
ちなみに、僕が制作する服は穴の空いたデザインの服がほとんどなのですが、作り始めたきっかけは「どうして穴が空いているのですか?」と聞いてもらうためでした。僕は人とコミュニケーションを取るのが苦手でしたが、変わった格好をしていると人から声を掛けられることがあります。そして、最初は単に穴を開けているだけだったのですが、時間が経つにつれて穴に意味ができてきました。母親が自分につけてくれた名前の「和」は、「和を広げてほしい」という想いが込められていて、コミュニケーションをより広く取っていくという意味もあります。些細なきっかけからショーやプロジェクトを通してさまざまな人と関わっていく中で、「輪」「和」というのが大切なんだということに気付かされました。
全国のアーティストに吹上町に来てもらって、「アーティストインレジデンス」を開催しました。各地のアーティストに1ヶ月間吹上町に滞在してもらい、地域の方々と関わる中で創作活動をしてもらいました。そのようなことに取り組んでいくことで、結果的にアートと地域や企業、住民、行政といったさまざまなものをつないできました。そのほかにも吹上町の地図を用いたガイドブックも制作していて、昨年10冊目を刊行しました。これを記念して「吹上10(テン)」とし、吹上町のありとあらゆるものを五十音順に紹介している「町の百科事典」を出版しました。制作にはとても時間がかかりましたが、地域の方々に喜んでいただけるものになりました。
これからはもっと吹上町と世界をつないでいきたいという想いもあります。この土地がとても好きで、心地よく生きられているという実感から湧き出てくる想いです。アーティストってよく分からない存在と思われがちで、距離を置かれることがあると思います。しかし、吹上町の住民の方々に名前を呼んでもらえたり一緒にイベントを開催したりと、心地良い距離感で付き合ってもらえることがすごく居心地がいいです。
地域の方々の理解があったからだと思います。しかし、プロジェクト自体は僕自身が主体となって動かす企画だったので、10年間という期間やり続けてきたのは実は意地だった、という部分もありました。ここまで拘る理由は、10という数字をすごく大切にしていて、最初に何かするときは「10回やろう」と決めているからです。「始めたんだったら最低10回はやろう」と思っていたので、プロジェクトも10年間つないでくることができました。
これから新しく始める10回は吹上浜でのゴミ拾いです。ゴミ拾いもまた10回つなげるためには、まず1回目を成功させなければなりません。今の時点では10年間くらいか10回くらいかは分かりませんが、期間をかけて吹上浜のゴミの魅力を追求していきたいと思います。僕はアートを通して、「何をしたら楽しんでもらえるかな?」、「この地域をどのように活用していけるかな?」ということを考えていて、アーティストとしての1番の強みである「ここでしかできないこと」というのを推していきたいと思っています。
もっと作家として吹上町と関わっていきたいです。 今社会から評価されているのは、アーティストというよりプロデューサーのようなことです。県外に呼ばれる時は講師として呼ばれることの方が多く、作家として呼ばれたことがないくらいなので、今後はアーティストとしての評価を高めていきたいという想いがあります。
それに加えて吹上町を生かす活動も行うことで、僕自身のアーティストの評価を高めるということと、吹上町の魅力をより発信していきたいという考えがあります。また、最初に吹上町の住人のみなさんが、受け入れてくれて評価してくれたということが大きく、僕も吹上町のために活動したいと思っています。
2019年11月には吹上浜で拾ったゴミを使って制作したドレスを用いて、吹上浜で行うショーを企画しています。吹上浜で拾ったものを使うので、吹上浜でショーを行うというのがやっぱり面白いかなと思って。一般的にゴミは場の魅力を下げてしまうものですが、そんなマイナスになるものをプラスに変換して扱うということは、地域振興にとって重要なことだと思っています。
博多 和宏(39)
KAZUHIRO HAKATAアトリエ・ギャラリー
アーティスト 情熱家
鹿児島県日置市吹上町を拠点に、衣装デザイン・制作、広告デザイン、素敵に奇妙なショー(パフォーマンス)「パッションショー」、芸術による地域振興・地域つくりを実践する企画「ワンダーマッププロジェクト」を手がける。
博多さんは、アートを通してご自分の内面だけを表現するのではなく、楽しんで笑ってもらえることを大切にしているとおっしゃっていましたが、実際の作品を見せて紹介してくださったときも、制作中の想いや、ショーでの様子などわかりやすく説明して下さいました。そのようなところからも、普段から見る側の立場になって作品制作をされているということがよく伝わってきました。今後も博多さんの素敵で奇妙な世界観に見せられて、笑顔になる人が増えていくといいなと思います。
鹿児島国際大学3年 増留 汐里