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奈良県発!「自然栽培のお茶づくり」サスティナブル農業で耕作放棄地、温暖化問題解決へ!

画像:茶畑で笑顔の伊川さんの写真

「自然栽培」という農業方式をご存知でしょうか。これは、農薬や肥料を全く使わず、自然の力をふんだんに引きだして農業を行う方式です。奈良県奈良市の東部にある都祁(つげ)という地で、自然栽培で大和茶づくりを行う伊川健一さんに、現在の活動に対する思いや、活動を通じて創りたい世界について話を伺いました。

現在の活動を教えてください。

農薬や肥料を使わない自然栽培という方法でお茶を栽培・加工し、販売を行うのが私の農園の主な事業です。このほか、教育関係者と連携して子ども向けに茶摘み体験を提供したり、ものづくり関係者と連携して農園の茶葉をオーガニック化粧品の原料に使っていただいたりしています。障がい者の方の雇用や、お茶による健康維持・メンタルケアなど福祉、医療分野にも力を入れています。奈良ではこのようなことに取り組んできましたが、ここ2~3年は、「さまざまな取り組みの中で見つかったノウハウを地方に伝えていく」ということも行なっています。各方面の企業とのコラボレーションによって、企業の力を借りながら新しい価値・社会をつくっていくことにも取り組んでいます。

多岐にわたる活動をされていますが、どういう思いでそれらの事業に取り組んでいますか?

最終的には「砂漠の緑化」に取り組みたいという思いがあります。小学生の頃は難民問題、中学生の頃はいじめ問題に取り組みたいと思っていましたが、根底にあるのはどれも同じで、「不調和」を解決したかったのです。その中でも、地球規模で進んでいる砂漠化が最も深刻だと感じていました。難民問題やいじめ問題も大きな問題ですが、健やかな地球環境がなくては、すべて成り立たない。だから自分は砂漠の緑化に取り組もうと決めたんです。

この思いを強めたキッカケは、日本人で砂漠の緑化に取り組んでいる方をテレビで見たことです。首尾貫徹した思想を持って尽力されている方で、感銘を受けました。個人としてもとても印象的で、そんな彼の意思を継ぎたいと思ったんです。

画像:茶畑でお茶を摘む伊川さんの写真

「砂漠化」を解決したいという思いが、どのように農業とつながったのですか?

砂漠化の最大の原因は、私たちの「食」にあると考えています。世界では熱帯雨林を切り崩して農地にして、人間の食べる野菜を育てたり牛や馬を育てるために必要な大量の穀物を育てたりしています。しかし、二酸化炭素(CO2)を吸ってくれる熱帯雨林などの森を切り崩してしまうと砂漠化が一気に進んでしまいます。とはいえ、経済も大きく関係している地球環境問題に真っ向から立ち向かっていくことは非常に難しい。まずは日本の農業をサスティナブルなものに変革していく位置からアプローチしようと考えたのです。

例えば、「汚染されて生き物もいない沢と、湧き水を飲める美しい沢。どちらの側で住みたいか?」と質問すれば、きっと誰もが「美しい沢」を選びますよね。このように、どんな立場の人でも「良いな」と思うことに対して反対する人はほとんど出てきません。みんなが良いと思うことをさまざまな分野と連携していけば、みんなでより良い未来を作れると信じています。それぞれの人がそれぞれの立場で、より良い未来を作るために行動すれば信じられないほどの未来を変える力が生まれます。だから自分は現在、自然栽培という視点からそれに向けて取り組んでいます。

伊川さんは活動を通じて、何をつないでいますか?

拠点を置く地域は離れていても、同じような意識を持つ人同士をつないでいます。かつて、ムーブメントを起こすには東京が起点となる必要がありましたが、今では同じような将来を描く人同士がつながるコミュニティを作れば、あらゆるところでムーブメントの渦が発生します。その渦に合わせて自分にできる提案をすることで、何かが動き出す気配を自分から仕掛けていけると信じています。

農業に関わる人には、「農地を継ぐことで国土を継いできた」という意識があります。そういう意味で、血のつながりはなくても先人たちの思いや夢を託されているという感覚がありますし、背中を押してくれます。時を超えて、そういった先人たちの思いもつないでいるのかもしれませんね。

画像:茶畑を背景に立つ伊川さんの写真

今後はどのようなことをしていきたいと考えていますか?

今後は、日本に約43万ヘクタールあると言われている「耕作放棄地」のうち、1万ヘクタールを茶畑として再生させたいと考えています。農地は約5年で生物分解され、農薬が流れ検知されなくなります。すると土や微生物が増えていきます。このような土地を「自然農法準備農地」という名前に変えれば、それは宝物になります。

自然農法準備農地は整備すればすぐに茶畑として活用できるので、日本に散らばる1万ヘクタールの土地を活用して自然栽培のお茶のコミュニティを作っていきたいです。まさに、自分が20歳の頃に、そんな連携があれば良いのにと考えていました。現在、ノウハウを持っている自分がそれを作り、ゆくゆくは国内やアジアで農業やまちづくりの分野で連携し合える「幸せな地域」を増やすことに貢献していきたいと思っています。

伊川さん、ありがとうございました。

希望の光プロフィール

画像:伊川さんのアップの写真

伊川 健一(37)

健一自然農園 代表
自然茶師
奈良県北東部の大和高原を中心に、農薬・肥料を一切使用しない自然栽培のお茶づくりを通して、人と自然が調和した世界の実現を目指し活動中。

取材を通して...

お話を伺っていて、伊川さんには「バランス感覚に優れた優しい方だな」という印象を持ちました。自分の活動に対して熱い思いを持って走りながらも、冷静に自分や周囲の状況を観察して、「今できること」「すべきこと」に取り組んでいく。そんな伊川さんだからこそ、さまざまな分野の人とコラボレーションし、より良い未来を作っていけるのだと感じました。貴重な話を聞かせていただき、本当にありがとうございました!

神戸市外国語大学4年 西井 孝輔