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静岡県発!次世代への文化の継承~若き7代目の熱き思い~

画像:お茶屋で座る白鳥さんの写真

静岡市清水区吉原で、お茶の栽培から販売までを自分たちで行いながら、吉原の景観や暮らしについて発信。さらに、ペットボトルの普及もあって最近減少傾向にある「急須で飲むお茶」を再度広める活動に取り組む白鳥文也さん。その活動内容や思いなどを伺ってきました。

静岡県はお茶の製造が盛んですが、吉原でお茶を作ることの利点はなんですか?

吉原は静岡・庵原地区の中のほんの一部で、お茶農家が集まっている場所です。急傾斜地が多く、お茶の栽培に非常に良い条件ではないのですが、富士山や清水港を望むことができる特別な場所ということもあり様々なメディアで取り上げられています。景色が良いため、メディアのみならず土日になると写真を撮影する方が他の地域からも多く訪れます。茶畑に到着するまでに現代の社会と比較すると非日常的な昔ながらで素朴な吉原での暮らしを見ることが出来るため「お茶のこと」、「吉原のこと」を知っていただきやすいことが利点かなと思っています。

また、新鮮なお茶は美味しいので私たちはここで栽培したお茶を喫茶室で提供することもしています。さらに、お茶の美味しさだけではなく、この環境で飲むお茶は別格です。味には雰囲気も付いてくるのかなと思いますね。

現在は、どのような活動をされていますか?

お茶の栽培から販売まではもちろんですが、吉原の環境保全活動を行っています。良い景観を求めたカメラマンが集まる撮影スポットがあるのですが、その周辺で、所定の場所以外にごみを捨てる方が多発し、マナーが守られていないことが多く見受けられました。そのため、同じ吉原ファンとして責任感を持って頂けると思い、吉原の環境を守る「友の会」を作り、カメラマンの入会を促しました。友の会に入ることで、農園の者もお客さまもカメラマン同士も顔見知りになり、ゴミを捨てる方も減少して環境の保全にもつながっています。また、写真撮影後に喫茶室に寄って頂くことが増加し、「良い環境で写真が撮れる」という情報も他の地域のお客さまやカメラマンにも拡大していきました。

画像:急須で入れたお茶の写真

急須で入れるお茶が減少しているようですが、この飲み方を楽しんでいただくためにどのような活動をされていますか?

私たちの喫茶室では急須をセットで提供し、自分でお茶を入れて頂いています。これは日本の方でも、海外の方でも同じです。意外と使い方を知らない方が多いので、まずは知ってもらおうという感じですね。私は農家をしながら、全国を回りケータリングという形でお茶を提供していて、その際も急須を使っています。コーヒーを自分で入れることってこだわっている感じが格好良いじゃないですか。これを急須でも感じてほしくて。人がやることには、格好良さ、魅力がないとやらないと思うので、「急須は良いものだ」、「味がこんなにも違うんだ」と感じてほしいです。

「味の違い」以外にも、急須の魅力はあります。それは「禅」です。簡単に言えば心です。入れるときに無心になれるかどうか。お茶に対して、海外の方は所作や禅に強い魅力を感じているんじゃないかなと私は思っています。また、ここに来てもらえたら、お茶を淹れている時や飲んでいる時のみならず、景観や喫茶室の雰囲気からもほっとする感情を覚え、「禅」を感じてもらえると思います。これはペットボトルなどのお茶では味わうのは難しいと思います。

急須でいれるお茶の良さを感じて頂くために、味のみならず提供する時の見た目、見映えも重視しています。また、お茶を販売するときもお客さまに合わせて試飲方法を変えるようにしています。特に若い人向けに行うときは、試飲の際にも急須で入れるようにしていて、雰囲気を味わってもらうのを意識しています。

これらの活動はどんな思いを持ってされていますか?

私が作っているお茶を通して、日本の大事なものを伝えたいですね。時代が変わっていくにつれて、簡易的なペットボトルなどが増えてきていますが、便利さだけではない伝統的な部分、大事にしなくてはならない部分は多くあると思っています。いろいろなものが発展していく中でも「忘れてはいけないものを、なくさないようにしたい」と強く思って活動しています。急須は、生活の中で「なくてはならないもの」ではないと思います。しかし文化が途絶えないようにしたいですね。それは皆さんにも思っていてもらいたいことです。そこで「なくてもいいものを、なくさないようにする」。その魅力を伝え、世代や地域を超えて、様々な人をつないでいくことが私たちの使命だと思っています。特にお茶は静岡の名産なので私たちの役目だと思ってます。

画像:急須でお茶を入れる白鳥さんの写真

代々続く茶園から広めていきたいことは何ですか?

メディアで最近取り上げられて気づいたのですが、この土地や住民の人柄、生活が世間では当たり前でないということを知り、改めて良さを感じました。景観やここでの暮らし、ここで採れたお茶、自分たちが行っているお茶の栽培から販売までという経営方法を幅広い世代の人に知ってもらいたいです。あえて対象者を絞るのではなく、興味を持ってくれる人全員に知っていただきたいですね。

今後の展望を教えてください。

お茶に関しては、生産を放棄される畑が多いことが課題の一つです。私たちが、生産者になったときの魅力などを発信して、「将来お茶を生産してみようかな」と思ってくれる人がいてくれたらいいなと思っています。放棄された畑を改善するのは大変だけれど、魅力ももちろんあります。いろんなイベントに参加し、喫茶室での交流を通じて魅力を伝えていこうと思っています。景観に関しては、随時、保全を行い、いつでもきれいな景色が楽しめるようにしておきたいなと考えています。

白鳥さん、ありがとうございました。

希望の光プロフィール

画像:白鳥さんのアップの写真

白鳥 文也(25)

おかかえ茶園 かねぶん 7代目
園内に喫茶室を併設し、お茶や急須の魅力だけではなく、吉原の暮らしなどをお客さまに伝えている。また全国各地へケータリングを行い、急須で入れるお茶の提供も行なっている。

取材を通して...

東京から戻りお茶農家をやる中で、自分の生活が世間で当たり前でないことを知り、活動を開始された白鳥さん。時代の流れの中で失われつつある文化をなくさないようにすること、伝えていくことが重要だと考えていることが取材中に強く感じられました。

昔に比べて時間の流れが早く感じられるようになり、かつ、簡便さを求められる時代になりました。そういった中で、あえて「少し手間をかける」ということは重要に感じられます。世間の流れは無駄なことを省く方向に向かっていますが、それでは日本人が大事に引き継いできた和の文化や考え方が失われてしまう危険性が伴うと思います。「あえて」をすることで、私たちの先祖が大切にしてきた考えを体感することができるのではないでしょうか。若い世代こそ、古き良き日本の文化を真剣に体験し、考え方に触れる機会を持つ必要があると感じました、そして「非日常」に感じていることを、いつか「日常」に感じられるようにしたいです。

静岡県立大学4年 小林 琢磨