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富山県発!人情が街を生かす。ドラマのような、ある若者と商店街の話。

画像:笑顔の清水さんの写真

富山市中心部の少し横に位置する千石町。富山市民の生活を何十年も支えてきた場所です。商店街のアーケードを入ってすぐの場所にある居酒屋は午後6時頃に営業を始め、閉店時間はまちまち。まれに朝方まで明かりが灯ります。「ユニークな人が集まる場所」と話す店主の清水智紀さんに話を伺いました。

現在どのような活動をされていますか?

「何をしているか」と一言で説明するのは、難しいですね。僕自身、ただの居酒屋の店主だと思っていたんです。だけど、気づいたらクラフトビールのイベントをしたり、映画を商店街で作ったり。まあ、ここはユニークな人たちが集まるお店ですから、その人たちと盛り上がって「やろう!」となったことをしていただけの気もします。

商店街でお店を出店された時は、この通りはどんな雰囲気でしたか?

これは今でも地方によくあることかもしれないのですが、外から来た人を良く思わないような閉鎖的な空気感もありました。僕がお店を出した時は、本当に苦労しました。今では、こうやって一緒に地元のお祭りをしたり、自分達の組合で自主企画としてクラフトビールのイベントをしたり、映画を作ったりと、千石町としてみんなが団結しています。しかし、出店当初はあまり話もしなかったです。

会話が少ない中、違う場所に移ることを考えなかったのでしょうか?

そうですね。それは、僕自身が負けず嫌いだからかもしれないです。確かに、周りからの目は冷たいし、大げさに聞こえるかもしれないけれど「よそ者が商店街に急にお店を出すなんて許せない」という空気感はありました。しかし、商店街の人にとっては、自分たちの親の世代から守ってきたお店が並んでいるところ。そこに突然、一人の若者がお店を出すってなかなか気が進まないものなのかもしれません。実際私は逃げずに、内心見返したいと思っていました。

いつからこの商店街のために活動を始められたんですか?

最初は、この商店街のことは深く考えていませんでした。お店自体、たまたま出店しなければならなかったから始めたというのがきっかけで、自分自身の出身も別の地域でした。しかし、お店を出してみて商店街の人と話すうちに「この場所ではこのままだとやっていけない」と思いました。そこから、あまり話をしていなかった商店街の人たちに「こうしましょう」と提案をすることが増えていきました。ちょっとした正義感なんですかね。ただ、その時はよそ者の話をなかなか聞いてもらえるわけではありませんでした。そんな風向きが変わったのが、2013年に商店街の有志を集めて映画を作った時でした。

画像:お店の外観の写真

では商店街で映画を作ったのは何がきっかけだったんでしょうか?

お店に来る常連との会話から生まれたのですが、「この通りで何かできることはないかな」と考えて出てきたのが、プロモーションを兼ねた映像製作でした。その案を基に、自治体が公募していた政策提案の企画に映画製作として応募したところ案が通ったのです。「いざ作るぞ!」という時に、地元のメディアにも取り上げられて、そこから商店街の雰囲気も変わった気がします。

自分たちが育った商店街にスポットが当てられるのは嬉しいことなんだと思います。メディアに掲載されてから、商店街のお店に映画製作の協力を仰ぐと、快くご協力していただきました。主役や配役も商店街の方々に出演いただき、商店街が一致団結して製作することができました。その映画を富山市以外の人にも広くご覧いただきました。

清水さんが今こうして商店街に人を受け入れる側となって、この街に残していきたいと思うのは何でしょうか?

それは、やっぱり日本人の人情ですね。僕は、経営ってそもそも物だけじゃなくて、人のつながりで成り立っていると思っています。なので、それぞれの商店が営業を続けていくには、古き良き日本にあった「人とのつながり」の部分を残していかないと、この先、お店としても街としても残っていけないんじゃないかなと思うんです。それに、ここはそもそも人情という部分がこれまでも守られてきていたからこそ、残ってきた地域です。それは、これからも残していきたいと思いますし、他の地域と違うことをしていたとしても誇りを持ち続けていたいです。

清水さん、ありがとうございました。

希望の光プロフィール

画像:清水さんのアップの写真

清水 智紀(37)

居酒屋せからしや 店主 / 一般社団法人MAYムーヴメント 代表理事
千石町通り商店街振興組合/理事長

千石町商店街にて居酒屋を経営。13年に全国初の商店街製作長編映画「がんこもん」を製作。2018年には製作費用約600万円を募り、二作目「まちむすび」の製作を行った。

取材を通して...

商店街。僕は清水さんと話すまで、それは「ただのお店が連なった地域を指す言葉」だと思っていました。ですが、清水さんと話しているうちに、商店街というのはお店が集まっているだけでなく、そこに集う人と人とをつなぐ場所であり、また周囲の人たちの生活を支えるための集合体なのだと感じました。

これから何を残していくか。地方都市も少子高齢化が進み、人口が著しく減少する中で、どのように人々の生活を維持し、支え合っていくか。私はそのヒントを、今回の取材を通して見つけられた気がしています。商店街には不思議な力があります。それは人が集い、互いに交流を図ることで起こるものに違いありません。そうやって人が人を変え、街をも変えていってしまう。清水さんは、きっとこれからも多くの人と関わり合い、街だけでなく富山県、日本全国の人にも良い影響を与えていくのだろうと感じました。

中央大学4年 伊藤 大樹