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東京都発!都市部と地域で、心と心をつなぎ、風土をつくりだす。

画像:笑顔の𠮷山さんの写真

30年以上「街」に関わり続け、「人と人」、「人と地域」をつなぐ活動を支援をしてきた𠮷山日出樹さん。現在の活動に至るまでの思いや、未来に向けてつないでいきたい思いを伺いました。

現在の活動を教えてください。

近代化と経済成長の引き換えに失ってしまった、「人と人」、「人と地域」とのつながりがもたらす「価値の再発見」を目指して、街の個性とそこに暮らす人々の魅力を発信できるようなWEBメディアを運営しています。2006年から住みたい街を見つけるためのエリアガイドとして、地図付地域情報ブログサービスを運営するとともに、東日本大震災をきっかけに地方と都市をつなぐ・伝えるWEBマガジンを作りました。現在はそれに加え、地域でメディア編集に携わる人のためのコミュニティや、房総半島で風土をつくり出すプロジェクトなど人と地域に焦点をあてたプラットフォームづくりを行っています。

どうして街や地域に興味を持ったのですか?

私は15歳まで兵庫県の黒田庄という田舎に住んでいました。そこは合併になり、自治体としては最近消滅してしまいました。15歳の時に街から出ると、そこでは誰も自分の街のことを知らなかったんです。それまで自分の世界の全てだった街を誰も知らないことに、とても複雑な気持ちになりました。明確に地域を意識したのはその時です。
大学時代は都市計画について学び、その後求人広告や人材紹介を行う大手の会社に入社しました。その会社では、地元の企業を地元の学生や出身学生に紹介するローカル版の求人広告媒体を担当していましたが、廃刊になり全国版に吸収されてしまいました。そうした経験を受けてどうしても「街や土地」に携わる仕事がしたくて、住宅情報を扱う部署に異動し、首都圏に住む人の移動や移住、地域のプロモーションを行ってきました。

画像:𠮷山さん主催のイベント風景の写真

現在のサービスを立ち上げるまでにはどのような経緯があったのですか?

新しい部署で仕事をしている中で、阪神淡路大震災が起こりました。街がなくなり、生活が壊れていくのを目の当たりにして、何かしなければという思いが溢れ、会社を辞めて起業しました。当時は情報発信に多額の費用がかかることもありましたが、ホームページやインターネットを介して低コストで発信できる媒体の可能性に感銘を受けました。その後は街・地域の公式ホームページを作成し、地域のことを外に発信する事業を行ってきました。ここで、「小さい単位の地域での情報発信を地域の人が行う重要性」に気が付いたことが、今のサービスの立ち上げにつながっています。そのプロジェクトの延長で地域の不動産会社にスポンサーになっていただき、地域の情報を発信するという仕組みを立案しました。既に街に住んでいる人や、これから住みたいと考えている人向けの情報を掲載した地図付地域情報ブログサービスを始め、現在では戸建住宅向け、仲介向けのサービスも行い、導入エリアは2,500を超えています。取材スタッフは地元の方も多く、全国で100名以上が携わっています。このサービスは、プラットフォームづくりのために人がたくさんいる都市部でまず展開し、「より多くの街の、より多くの魅力を、より多くの人に伝える」をモットーに活動してきました。

𠮷山さんはなぜ地域と都市、人の心をつないでいるのですか?

2011年の東日本大震災で、自然の力で破壊されてしまった街、原発問題で帰宅困難となった街を見て、またここに被災者の方が戻るまでは、暮らしを取り戻すための移住の仕事に携わり続けようと決心しました。それまでは活動をしていた地域のことに集中してしまいがちでしたが、東日本震災をきっかけに、いろいろな地域と自分の生活はつながっていることを実感しました。また石巻で出会ったボランティアの方と話している中で、お互いにできることをやるお互いさまの精神、助け合い、分かち合い、支え合いといった価値観があることにも気が付きました。人はつながりの中に生きており、「心と心がつながる」ことや「人と人がつながること」が、「地域と地域がつながる」ことに通じている。そのことを形にするために、地方と都市をつなぐ・伝えるWEBマガジンを始めました。このWEBマガジンは、各地方で体験できることや暮らしぶりを記事化して、各地方の魅力を感じてもらえるように情報発信をしています。

画像:イベントで来場者に語りかける𠮷山さんの写真

大事にしている思いを教えてください。

自分の身は授かりもので、社会や自然も授かりものです。人は連続性の中に生き、その中で自分は何を次にバトンタッチできるのか、常に考えて活動しています。次の世代につなげていくための究極の媒体は、人、自分だと思います。自分の考えも昔からこの土地で生活してきた人たちの流れやつながりの中に生まれたものであり、これからもそのつながりは続いていく。地域、日本という風土は昔も今もこの先もあり続け、風土が人と心のつながりを生み出していくと考えると、心をつなぎ風土をつくりだすことをこれからも大事にしていきたいです。

未来に取り組んでいきたい活動、レガシーとして残していきたい活動はありますか?

震災や原発事故を経験した私たち日本人は「助け合う」ということを誰しもが考えたと思います。助け合い、地域がつながり、人と心がつながることが日本から世界に広がっていったら、世界平和につながるのではないかと。そのために、地域内にとどまらず他の地域とも共通視点をもったプロモーションを行うために、東京から近い房総半島を起点にした事業を行っています。

また、場所や土地という風土はかけがえのないもので、風土が起点となってつないだ人のコミュニティは価値あるものだという考え方も広がったらいいと思います。例えば、余った土地に新しいビルを建てるのではなく、100年200年単位で風土を生み出すことを考え、畑にするといったことなどです。現在では本来暮らしの中で大切にされてきたものの意味が失われがちなので、不動産を「風土産」と捉え、食(FOOD)とも絡めた活動を準備しています。

𠮷山さん、ありがとうございました。

希望の光プロフィール

画像:𠮷山さんのアップの写真

𠮷山 日出樹(56)

株式会社ココロマチ 代表取締役
住みたい街を見つけるためのエリアガイドとして地図付地域情報ブログサービス「itot」、地方と都市をつなぐ・伝えるWEBマガジン「ココロココ」を中心にサービスを展開。「半島暮らし学会」でも活動し、東京から近い房総半島を軸にした様々なプロジェクトを準備中。

取材を通して...

様々なお話を聞いて、「人間も自然の一部であり、連続性の中に生きている。その中で自分が後世にバトンタッチできることは何なのか常に考えています」という言葉と、「風土を守るのではなく、どうやったら生み出せるのか、その風土やそこから生まれた人のつながりが日本のアイデンティティとなる」という言葉が印象に残りました。
私は獣医学生で、日頃から自然科学や倫理感、命について悩み考える機会に直面しています。𠮷山さんの視座の高い考えと、その考えに基づいた活動を伺って、私の考えが深まり、風土を生み出していくという視点を持つことの重要性を知りました。
風土をつくりだし、人と人、心と心をつなぎ、未来に残す。信念と哲学を持つ𠮷山さんのような気骨を持つ獣医師になりたいと思います。

日本獣医生命科学大学5年 河内 ひかり