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青森県発!親が子に継がせたい、稼げる農業を目指す!

画像:農園でりんごを片手に笑顔の森山さんの写真

リンゴで有名な弘前市で100年以上続くリンゴ農家を受け継いだ森山聡彦さん。通年稼げる農業を目指し、アプリを利用した作業時間の可視化や、摘果を利用したシードル作りなどさまざまな挑戦を行っている森山さんに話をお伺いしました。

現在の活動について教えてください。

現在は、本業のリンゴ作りのほか、大手の会社と組んで開発したソフトウエア事業、摘果(良質のものを得るために未熟な果実を間引くこと)を利用したシードル(リンゴを発酵させて造るアルコール飲料)や干しリンゴ作りを行っています。おかげさまで、シードルは今年注文がひっきりなしで在庫がない状態です。しかし、始めた当初は売り上げが芳しくありませんでした。シードルは瓶に入っているため、最初はビールと勘違いされるケースもありました。日本では昼間からビールを飲む習慣がなく、シードルをたくさん飲む人も少数派。認知度の低さもあって、赤字でした。現在は、当初の計画通りいくらか軌道に乗り始めているので、ここから設備投資をし生産量を拡大します。また、テレビやラジオなどでPRして私たちのブランドを築き、広めることで、さらに多くの人に私たちの農園と関わりを持っていただくようにしたいと考えています。

画像:記者にりんごの木を紹介する森山さんの写真

リンゴ農家を継ぐだけでなく、シードル開発やアプリ開発などのさまざまなことに挑戦する理由を教えてください。

根底には、「地域を守りたい」という思いがあります。日本の農業は、労働生産性が低く、時給に換算すると1時間1,400円です。その収入から人件費・光熱費など諸経費を引くと赤字になっている状況です。さらに、リンゴ農家の多くは家族経営が多いです。外から労働者を雇うほどの利益がないため、そもそも人を雇うという考えがないからです。しかも今は親が倒れた場合、その跡継ぎの息子のみならず、妻や子どももリンゴ園の経営に縛り付けになる状況が「普通」になってしまっているのです。

このような状況では、リンゴ園は親が子どもに継がせたい産業ではなくなり、「りんごの町・弘前」を残せなくなってしまいます。私は、これを変えるために農家を法人化し、アプリやシードル作りといった先進的な取り組みで成功することが大切だと考えています。「今のままでは周囲の農家に置いていかれる」「このままではダメだ」という危機感を持っていただくことで、リンゴ産業を変えていきたいです。リンゴ作りを面白くして、自然と人々が弘前に集まってくるようにすることで地域を守りたいと考えています。

父から農園を受け継いだ時、取引先は農協のみ。秋に少し入った収入は暮らしていくなかで消えてしまう。どうにかして通年稼げる物を作りたかった。その中で、摘果する未熟な果実に注目し、開発を行ってきました。

どのような改善を目指してアプリを開発されたのでしょうか?

私が開発したアプリケーションは木の情報を知るためのものとよく勘違いされるのですがそうではなく、作業を可視化するものです。日本の労働生産性は、主要先進7カ国の中で最下位です。農業はその中でも最下位に位置しています。これを私は変えようと思い、「誰がどれだけ働いているか」「あるいはその作業にどれだけのコストがかかっているか」「どれだけの時間を使っているか」を可視化しようとしました。そうすることで「何が価値を生み出していて」「何が報われていないのか」を理解し時間の使い方を変えることを目的としています。

画像:りんごを味見する森山さんの写真

10年後、20年後の人たちに何を、つないでいきたいですか?

現在、三次産業が多くのお金を稼いでいます。しかし、本当は産業ピラミッドで最下位となる一次産業でものづくりに従事している人が報われる仕組みが必要なのです。そういった報われる社会を作り、つないでいきたいです。私は現在の活動を発展させていくことで、思いをつなげる仕組みを残し、弘前をより良い場所にしていきます。また、私と同じように「地域を守りたい」という思いを抱いている若い一次産業経営者を増やすことで、地方都市に活気を取り戻し、一次産業がさらに盛り上がる時代につないでいきたいです。

今後の展望を教えて下さい。

まずはシードルを大きな流通網にのせ、販路を拡大することで生産量を増やしていきたいです。そうすることで、多くの人に私たちの農園と関わりを持っていただきたいです。当面は、売り上げ1億円を達成するのが目標です。少しずつ目標を達成していくことで、農家が一般企業並みに稼げることを証明し、将来的には経営者が現場にいなくても経営が回る仕組みを普及させ、経営者が、商品開発と営業に専念出来るようにしたいと考えています。

森山さん、ありがとうございました。

希望の光プロフィール

画像:森山さんのアップの写真

森山 聡彦(47)

もりやま園株式会社 代表取締役
自らが成功例となることで、他の一次産業従事者にとっての指針となり、ものづくりに関わっている人が報われるような仕組みを、自身の活動を通し示していきたいと考えている。

取材を通して...

森山さんは、「リンゴの町・弘前」を後の世代に残すために自らが成功例となろうとしています。成功することにより、周囲の農家に刺激を与え、地域を守る。やがて、こういった取り組みが「地域を守りたい」といった思いを持つ若い一次産業経営者を増やし、日本の地方都市が活気を取り戻す。このような取り組みで一次産業が輝く時代を作りたいと考えている方でした。

取材を通して、青森県のリンゴ産業が、衰退の危機に瀕していることを知りました。青森県は1次産業が多くを占めている県ですが、若者の中で「農業を受け継ぎたい」「つないでいきたい」と思っている人は少数派だと思います。なぜなら、農業は泥臭くて稼げないというイメージがあるためです。森山さんは、この現実を自分が成功していく中で変えようとしています。農業は、「お金を稼げる産業なんだ」と。自らが成功例となることで、多くの人を巻き込み、やがては農業を稼げる産業にしていく。この考え方は、やがて産業の根幹を変えるのではないかと思いました。

青森中央学院大学3年 太田 寛人