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宮城県発!住民の憩いの場を求めて広げる地域の輪!

画像:空き家の前に立っている田中さんの写真

東日本大震災の被災地である宮城県気仙沼市に移住して、空き家の改修事業を行う田中惇敏さん。ボランティア支援や社会課題に立ち向かう田中さんに今後の展望や地域への思いを伺いました。

現在の活動について教えてください。

私たちは、震災でボロボロになった空き家や放置されていた空き家を改修し、ゲストハウスやシェアハウス、地元の方が交流する場所やボランティア活動の方の宿として提供しています。私の体験ですが、被災地のボランティアに来た時に宿泊できる場所が見つからず、NPOの事務所で寝たことや、道端で夜を明かしたことがありました。それを「何とかしたい」と思い、空き家を借りたのが活動の原点です。

他にも、単純な宿として使うことだけではなく、何か面白い可能性がないかを考えています。空き家の改修を通じてさまざまな方に支援していただきました。その恩返しとして、全国の社会課題を解決するモデルや新たなビジネスモデルをこの気仙沼から見つけ、広めていきたいという思いがあります。

社会課題や新たなビジネスモデルとはどういうものでしょうか。

全国で起きていることですが、待機児童を含めて子育てを取り巻く環境全体の問題があります。私たちはこのような問題について、何か力になれるのではないかと考えています。託児所とは文字通り子どもを預かる場所なのですが、これが全国的に足りておらず、気仙沼には一箇所もありません。行政の制度としてはあるけれど、運営が成り立ちません。「ちょっと買い物に行くから子どもを1時間見てほしい」という場所がないのです。

実際に子育てをする女性スタッフの話を聞くと、「生活の中で一瞬も息をつく暇がない」と言っています。もっと踏み込んで聞くと、親子の関係だけでなく、おじいちゃんおばあちゃんとの関係などで忙しく、ママの時間的余裕がありません。そういった現状を変えなくてはいけないということで、私たちは一時的に預かる託児所をメインの活動としてやろうとしています。

託児所では子育てママをスタッフにして、0~2歳の子どもと一緒に出勤してもらっています。1人のママがいろんな子どもの面倒を見ながら、別のママがお茶を出したりできます。また、この託児所はカフェと宿を合体したようなもので、昼は「託児所」と「ママがゆっくりできるスペースを兼ねたカフェ」として、夜は「子育てママのための宿泊場所」として使っています。これは、ママたちの意見から着想を得て、ホテルのビジネスモデルに手を加えたものです。全国から「真似したい」という声も届いており、新しいビジネスモデルとして、また子育てママの問題を解決するモデルとして成功しました。

画像:室内の左官工事をする田中さんの写真

大切にしている思いは何でしょうか?

私は「やっぱり気仙沼が好きだ」という思いが前提にあります。気仙沼は被災地として有名になりました。東日本大震災で東北各地が大変だったと思います。しかし、そんな中でも、ボランティアとしてやってきた私に温かく接してくれる地域であり、チャレンジ精神に溢れていて、若い人たちが互いに助け合っている最高に素敵な場所だと思います。だから、私たちは気仙沼を盛り上げていきたいし、気仙沼から日本を変えていきたいと思っています。こういったチャレンジは震災があったからこそ可能になったことだと思います。

活動で何を”つないで”いるのですか?

まず1つ目は”恩”をつないでいると思っています。震災の時に、全国の皆さんから自分たちの活動に対して、クラウドファンディングなどで支援していただきました。それで今の活動も成り立っています。皆さんから受けた恩を、気仙沼で生み出した「空き家を改修して昼夜運営するビジネスモデル」などの社会課題の解決方法を、全国に広げていくことが恩返しになると思います。

そして2つ目は”時”をつないでいると思います。2020年は、震災が起きてから9年になりますが、私はいまだに、被災地にやってきて、荒涼たる風景を見て心を痛ませ、地域の人の温かさに触れて感動した時の大学生の気持ちです。仕事で福岡や東京に行くと、震災という言葉を聞くことは少なくなってきましたし、それは仕方ない。風化だと騒ぐつもりもないのですが、私たちの精神は恩を返すことでつながっていると感じています。例えば、鹿児島の錦江町という町が気仙沼のモデルを真似したいと言ってくれたり、今回は空き家のコーディネートを任せてくれたりと、「震災の被害にあった気仙沼から生まれたビジネスモデルが全国に広がっていっているな」と。東日本大震災が発生した2011年3月11日という時間を今につないでいると感じています。

画像:きれいに塗られた室内の壁の写真

今後どの様な事をしていきたいですか?

私たちの改修活動によって作り変えたゲストハウスなどは、ここ3年で全国で順調に増えていて、1年目が5軒、2年目が7軒、3年目が13軒となりました。最終的には全国100軒までに増やしたいと考えていて、私たちのこのモデルが広がっていくことで、恩返しの精神を引き継いでいきたいと思っています。

私たちの感覚では気仙沼はもう被災地ではないし、これから1つの地方として生き残っていくことになります。今、出生率も下がっていて、消滅可能性都市などの議論があり、子育て状況が厳しくなっています。そういった中で、私たちの活動を通して、気仙沼という街を盛り上げていき、観光や宿といったことではなく、子育て事業を地域に根付かせていきたいとも考えています。

あとは代表個人としてですが、農業漁業などの第一次産業が好きなので、子どもたちへのアクティビティのような形で会社の中に取り入れていきたいなと思っています。地域の活性化につながるのではないかと思っています。

田中さん、ありがとうございました。

希望の光プロフィール

画像:田中さんのアップの写真

田中 惇敏(26)

株式会社おかえり 代表取締役社長
NPO法人Cloud JAPAN 代表理事
一般社団法人Omusubi 代表理事
気仙沼で空き家を改修。その際に培った仕組みを全国へ広めようと尽力している。

取材を通して...

今回の取材を通して、私は「取材をする」という経験や、気仙沼にこういった活動をしている人がいること、そこでは地域住民と空き家を改修する人とがつながって温かな場所を作り出していることなどさまざまななことについて学びました。全国100軒、応援しています!

東北工業大学3年 渡邊 雄大