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和歌山県発!絵本が人の心をつなぐ!和歌山県有田川町のまちづくり

画像:図書館の本を背景に笑顔の杉本さんの写真

図書館の司書として働きながら、絵本を通じて人の心をつなぎ、まちづくりに貢献する杉本和子さん。その杉本さんが原動力となり、人々をつないで、和歌山県有田川町が「絵本のまち」として注目されるようになった理由を伺ってきました。

普段はどんなお仕事をされていますか?

普段は有田川町内にある地域交流センターの図書館で、司書として働いています。本の発注や、本のイベントの企画提案などが主な業務です。他にも、駅で絵本の原画展を開いているのですが、一か月に一回、展示物の入れ替えを行うために絵本作家さんとメールや直接会って打ち合わせをしています。季節を見ながら、絵本作家さんのアドバイスや、スタッフの意見を聞きながら決めています。

この原画展に関しては、学芸員のような仕事をしています。今でこそ慣れて、他の業務と並行しながらこなせていますが、2011年5月に始めた時は全くの素人だったので、何をしていいか全然分かりませんでした。絵本作家さんに「マット(絵を固定する台紙)どうするの?」と聞かれ、最初は体育の時に使うマットのことかと思ったりしていました。こちらから頼んでいるのに、絵本作家さんにたくさんのことを教えていただきながら原画展を開催し、勉強する毎日でした。

今ではだいぶ慣れましたので、一年先の原画展のやり取りまでこなせるようになりました。イベント関係でいえば、図書館で人気のカフェを呼び、絵本の世界を楽しむという企画を催したり、絵本作家さんを招いて学校でお化け屋敷をしたりしています。

画像:図書館のカウンター前に立つ杉本さんの写真

絵本のまちづくりをする上で大事にしていることは?

特別に何かを意識していた訳ではありません。先ほど出てきたお化け屋敷にしても、最初はここまで大掛かりにするつもりはなかったんです。初めは小学校高学年向けの読書支援のイベントをする予定でした。

しかし、読書離れしている子ども達はなかなか参加してくれません。そこで、ブックカフェみたいな雰囲気にしたのですが、その夏休み特別バージョンとして、絵本作家さんを招き、清水地区の古民家でイベントを行いました。その打ち上げの時に「学校でお化け屋敷やったら面白いよね」という話になりました。あるスタッフが「すぐ近くの小学校が休校になりますよ」って教えてくれて、「これはやってみるしかない」と。絵本をモチーフにしたお化け屋敷を作ることになったのです。絵本作家さんに協力いただき、絵本に出てくるお化けを描いたり、作ったりしました。その甲斐あって、大阪など遠方から3,800人ほどの方に足を運んでいただけました。

駅前の原画展の時も、たまたま空き部屋があって、そこを使わせていただくことができた、という経緯で始めました。振り返ってみると、最初から絵本のまちにしようとは思っていませんでした。絵本作家さんの絵本の読み聞かせの講演会に行き、自分たちで絵本の読み聞かせを始めて、駅に空き部屋があったのでそこを借り、絵本の原画展を始めた。小学校が休校になっていたから絵本の世界観でお化け屋敷を開いた。そういうことなのです。それに本気で取り組んでいくうちに、絵本作家さんから手を上げてくれる人が現れて、自分の思いが分かる人が周りに集まって、絵本のまちづくりが進んだっていう感じです。

これからどういう町づくりをしていきたいですか?

これから絵本のまちづくりを継続できるシステムを作っていきたいです。今は、ボランティアの人たちがイベントを実行したり、本の読み聞かせを開いたりしているので、これからも行政ではなく、その方たちにまちづくりを主導していただけたらと思っています。そうなれば役場が異動しても、絵本のまちづくりがずっと続いていくのではないかと思います。

まちは、やはり「まちの人たちのもの」ですから。まちの人に絵本のことをやってもらいたいです。そう考えると、「人をつくらないと、まちづくりはできない」と思います。例えば、有田川町で開催している絵本コンクールは今年で9回目なのですが、まだ、有田川町から受賞者が出ていません。まずは有田川町から受賞者が出るなど、そういうことから始めることで絵本のまちとして継続できるのではないか、未来につないでいけるのではないかと思います。

画像:図書館の写真

最後に、杉本さんにとって絵本とは?

難しいですね。一般的には想像力を養うためとか、言葉を覚えるため、感性を豊かにするため、そんなふうに言われています。それは間違いではないし、その通りだと思います。でも、私はもうひとつ「絵本」は「共に居る」ことだと思っています。ある日息子が、「試験が出来なかった」と連絡をしてきました。「『頑張って』と言ってもしょうがない」と思って、ある絵本の表紙の写真を送ったんです。それは、目指していた職業にことごとくなれなかったけれど、まあ、ぼちぼちいこか、というお話。幼いときに読み聞かせた絵本なので、当然息子も知っている。だから絵本の表紙を見せただけで、こちらの言いたいことが伝わったんです。

それは言葉のない会話だと思います。昔の時間を繰り返してるって言うんですかね。私が子どもに読み聞かせるときに意識していたことは、「その時間を純粋に子どもたちと楽しむこと」でした。そこには、この絵本について何かを教えようとか、学校の授業のように感想を聞くとかは一切ありません。子どもが自由に思ってくれたらいいと。

親と子どもそれぞれ思うところがあって、その思いが昔の時間と今の時間をつないで、時間を共有できているのではないかなと。それぞれが別々の思いを持っているけれど、読んだ時間はしっかりと共有されているもの。絵本とはそういうものだと思います。

ある絵本作家さんは、「僕は子どもに絵本を書いているんじゃない。人に向かって書いている」とおっしゃっていました。子どもだけではなく、大人も読んで、選りすぐられた絵本の言葉や優しい日本語を感じることで、誰もが心優しくなれる力を絵本は持っていると思います。その心が優しくなった人たちが、ここ有田川町で育つことで、まちの未来が決まるのではないかと思います。

杉本さん、ありがとうございました。

希望の光プロフィール

画像:杉本さんのアップの写真

杉本 和子(50)

有田川町役場教育部・社会教育課・文化情報班 副班長
有田川町唯一の司書として有田川町役場に勤め、絵本作家などとのつながりを活かし、絵本にまつわる活動にまち全体で力を注いでいる。

取材を通して...

お話しを聞いている中で、杉本さん自身はまちづくりを意識しているわけではなく、杉本さん自身絵本が大好きで、絵本をもっと知ってもらいたいと思い、一生懸命目の前のことに取り組んだ結果、まちづくりにつながったのではないかと。そして、周りに理解してくれる人が現れ、まちづくりが加速したのだと思います。

有田川町が絵本のまちとして周知されるようになった鍵は、取材中に杉本さんが何度もおっしゃっていた「本当に、たまたま運が良かった」 「周りの人に助けていただいてばっかり」という言葉にあると思います。絵本を読み聞かせるように謙虚な心で人と接することで周りに人がついてきて、まちづくりが発展しました。まちづくりとは、「人づくり」であり、「人との関わり合い」なのだから。

和歌山大学 梅本 卓弥