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長野発!東京行きのボランティア

画像:ソファーに座る丸田さんの写真

ボランティアとは。その問いを胸に、長野1998冬季オリンピックのボランティアでコーディネーターとして活躍し、今なお数々のボランティアに進んで携わる丸田藤子さんにお話を伺いました。

現在力を入れている活動と内容を教えてください。

女性を中心としたボランティア活動を2018年に立ち上げました。長野1998冬季オリンピックでのボランティア経験や20年間にわたるボランティア活動を発展させ、未来へとつないでいくための団体です。またコーディネーターの育成にも力を入れています。ボランティアをコーディネートする側には多くのことが求められます。人と人をつなぎ、夢をつなぐ人材が大事だと考えています。それぞれの夢の実現をサポートするコーディネート能力を磨くため、長野1998冬季オリンピックにまつわる行事に参加していただいています。

長野1998冬季オリンピックでのボランティアから得たものは何ですか?

長野1998冬季オリンピックでは、新しいボランティアの文化ができたと思っています。それは、従来の「奉仕活動」とは異なる、「やりたいからやる」といった自発的なボランティア文化です。この時、ボランティアに必要とされたのは「創造力」で、新しいボランティア文化を作るために必要なことでした。そして、現在のボランティアには「想像力」も必要です。「自分だったらどうなのだろう」と、瞬時に相手の立場に立って考えられる「想像力」を磨くことはボランティア活動には欠かせない要素です。

画像:外を見つめる丸田さんの写真

ボランティア活動で大事にしている思いは何ですか?

米国ホワイトハウスのボランティアをまとめているボランティアコーディネーターの方が長野にいらした時に、「3万2000人のコーディネーターをする際に何を一番大事にしたらいいのか」と聞いてみました。すると、その方は「ボランティアとスタッフのトラブルです」だと教えて下さりました。双方のトラブルはボランティア同士より多いのです。理由は、ボランティアは横並びの関係にあり、様々な役職や考えの方が自分発の想いで参加することを決めて活動に関わります。対して、組織委員会は会社で仕事をしている方々の縦の繋がりで出来ており、上層部の指示に従わなければなりません。こういった背景を持つ両者の考え方の摩擦が、結果的にボランティアとスタッフのトラブルに発展してしまうのです。この問題を解決するためにはどうするかを考えました。そしてその答えがスタッフの研修です。ボランティアに参加する方々の多用なニーズに応えるために、東京や大阪のボランティアのリーダーを講師として迎え、行いました。これにより、スタッフとボランティアの方々が対等な関係に近づけることができたと思います。ここでの経験は今でも生きています。

ボランティアを通じて、何をつないでいますか?

ボランティアは人と人をつなぎ、幸せにするツールだと考えています。ボランティア活動を通じて、参加した人と募集した人の心の間には、「やってもらってありがとう、やらせてもらってありがとう」というお互いの世界が広がります。そして互いに共感し、感動することによって、ボランティア精神は色々な人につながっていきます。私はこれを「共感のネットワーク」と名付けています。そういう意味でボランティアはツールだと思っています。平和運動のひとつとしてボランティアをつないでいくことで、「共感のネットワーク」はどこの国、誰であってもつながって行き、広がっていくと考えています。

画像:長野の景色の写真

これからの展望を教えてください。

イベントは一過性で、オリンピックも同じです。終わってみたらお金が入って、「東京が住みやすい街になった」と実感するようにならないとやった意味がないと思うのです。では、後世に残すためには何をするべきか。私はレガシーとなるものに着目することだと考えます。私が考えるレガシーとは、お互いが幸せになる関係づくりです。具体的にはスポーツを仲立ちにして、その場を観戦した全員が「文化」として共有することです。大きな感動を共有し、それを持ち続ける形をレガシーとして定着させることで、オリンピックを一過性ではないものにします。長野1998冬季オリンピックで明らかになったこの課題を、今度はその経験を次の担い手に手渡し、レガシーを人から人へつなぎ、感動を継承していってほしい。そして、それが日本から世界に広がっていって欲しい。これは長野1998冬季オリンピックから東京につなぎたい想いと願いです。

長野1998冬季オリンピックを経て、人々の大きな躍動を肌で感じ、心の中に感動が生まれ、「お互いさま、おかげさま」という文化が生まれました。これはこの大会があったからこそ生まれたものです。まずは、この長野1998冬季オリンピック発のボランティア精神を、東京2020オリンピックに受け渡し、発信していただきたいというのが私の思いです。そして、これからのオリンピックでも受け継いでいき、平和運動の1つとして、ユネスコの教育文化にも登録したいという大きな夢があります。

丸田さん、ありがとうございました。

希望の光プロフィール

画像:丸田さんのアップの写真

丸田 藤子(80)

21世紀ボランティア研究センター代表
長野1998冬季オリンピックをボランティアとして支え、現在も長野を拠点にボランティア活動を行っている。

取材を通して...

ボランティアとは「奉仕」とよく言われますが、僕がこの取材の中では一切その言葉を感じませんでした。丸田さんのモチベーションは「やりたいからやっている」という極めて自発的な精神から来るものでした。その心から紡がれる活動はどれも美しく、それでいて丸田さんのほっとけないという暖かい気持ち溢れるものばかりで、本当のボランティアの姿を見せられた気がします。ボランティアとはなんなのだろう。今一度問い直すきっかけになりました。

長野大学4年 山岸 勇太