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世界で唯一、木工用ボンドを使って作品を描いている冨永ボンドさん。画家としての活動にとどまらず、アートを通して障がいのある方々に寄り添い続ける背景には、どんな思いが込められているのでしょうか。
この場所にアトリエを構えたきっかけは、結婚と転職です。私が移住を考えていた時、この地域には老朽化している空き物件がとても多かったんです。現在の物件も「家賃を安くする代わりに、修繕や改造は自己負担」という、クリエイターにとってはこの上なく嬉しい条件だったので、すぐに契約して、絵や画材を置くための倉庫として利用していました。
当初はライブペインターとして作家活動をしていたため、個展開催歴はなし。私の過去の作品を見られるのはこのアトリエだけだったんです。このとき、市外県外から集客することは、この地域の活性化のためにも有意義であると考えたので、毎月第4日曜日にアトリエを開放したり、バーカウンターを自作して毎週金曜日にはBARをオープンすることにしました。以来5年間、毎週欠かさず店を開けていて、今のアトリエは自然発生的に出来ていきました。
作業療法士である妻の影響で「ボンドアートの段階的な創作工程がアートセラピーとして有効なのではないか」という話になったんです。それがきっかけで、障がい者に向けたワークショップや研究などに、地元の大学の先生や学生と一緒になって取り組むようになりました。
ボンドアートは、まず好きな色を使って自由に絵を描き、次に色と色の間を黒いボンドでつなぐ。つなぎ終えたら完成で、それ以上はありません。どこまでも描ける画法ではなく、創作の手順と完成の時期が明確にあるところが、アートに対しての取り組みやすさを生んでます。また、自由度の高さも特徴のひとつです。描き始める前に簡単な説明はしますが、下絵や見本は用意しません。自由度の高さは、同じ絵を二つと作らない。つまり、作品に優劣を付けることが出来ないのです。ボンドアートには失敗も正解もないので、誰が描いてもすべて良い作品として、褒めることができるのです。
障がいをお持ちの方は、自信を失っている方々が多いので、創作活動を通して自信を取り戻して欲しい。そんな思いで、日々ボンドアート創作ワークショップを開催しています。
私の創作テーマは「つなぐ(接着する)」。アート・医療・地域・世界、4つの柱をつなぐ(接着する)活動を通して、アートの社会的役割や絵を描く作業の大切さをより多くの人に伝えることが作家活動の目的です。
ワークショップの時、参加者の創った作品に対して「上手いですね、上手ですね」という言葉は使わないようにしています。ひとりに「上手い」と言ってしまうと、隣の人が「自分は上手くないのか」と思ってしまうかもしれないからです。そもそも、アートは学問ではないので、美術のように上手い下手が重要ではありません。技術ではなく、その人にしかない感性や特異性を具体的に褒めるということが大切なのです。
アートの良いところは、いつ・誰と・どこで・どんな話をしながら創ったものなのか、思い出がそのままの形でずっと残っていくことです。
絵心は本来、誰もが持っているものだからこそ、ボンドアートのワークショップを通して、皆さんの失われた絵心を取り戻したい、と思っています。
“アート”と言うとどうしても敷居が高いイメージがありますが、アートは決して難しいものではありません。食べ物や洋服、音楽や漫画など同じ。好きか嫌いかで良いのです。買い物だって、興味のない店には入らないですよね。それと同じで、アートも好きな作品だけ見たらいいし、本当に気に入ったら買えばいいんです。ただ一つ、アートの特異性をあげるとすれば「実用性がない」ということ。確かに、アートがなくても生活には困らないかもしれないけれど、あった方が良いことはたくさんある。つまり、アートそのものが豊かさなのだと言っても過言ではありませんね。
ただそうは言っても、美術館やギャラリーは、大衆にとって敷居が高いです。だからもう、アートの方から大衆へ歩み寄る必要があると思って、商業施設や百貨店などでライブペイントを始めたんです。そうすることで、少しは日常にアートを感じてもらうことができるし、目の前に作家がいて、絵を描いていて、私が大事にしているプロセス(画を描く作業)を見せることができます。さらにボンドで描いているという意外性。通常は白いボンドが黒い。そこでまた“何で?”となります。
ライブと意外性をきっかけに、アートに入ってきてくれたら、あとは私が直接、言葉の力でお伝えします。ボンドアートを通して、人と人、人とアート、アートと医療、アートと地域、様々な分野をつなぎ、絵を描く作業の大切さやアートの社会的役割を伝える。そしてその一連の行動が、最終的には医療の分野を支援する力につながる。アートを通して、この一連のプロセスを実現できるようにしています。
ライブペイントやワークショップは今後も続けていきますが、人と人とのつながりを大事にしながら、新しいことに挑戦していきたいです。
『つなぐ』をキーワードにデザインやアート、医療や地域などについて語っている冠ラジオ番組は、今年で5年目になります。作品の本質であるコンセプトやテーマを伝えるためには、言葉の力は非常に重要なんです。こういうやり方もあるんだよ、というのを若い世代に伝えていきたいと思っています。
現在は、アトリエのそばのウォールアートプロジェクトも順調ですが、目指すは壁画100箇所。日本一のアートの町にしたいですね。そして、私は世界一影響力のある画家になって、アートの力で地域や日本の医療福祉の分野を支援していきます。
夢は生き甲斐、アートは手段です。アートに失敗はないんです。
冨永 ボンド(36)
ボンドグラフィックス代表
「アートに失敗はない」という理念のもと、世界を舞台に独自のボンドアートを展開している。
世界で活躍する冨永さんから、夢や目標に忠実であることの大切さを学ぶことができました。アートの力で、みんなが笑顔でつながれる。そんな社会をこれからも体現してほしいと感じました。
佐賀大学3年 佐藤 薫平