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現代の、特に都会の方には馴染みの少ない「ローカル線」。そんなローカル線の可能性を信じ、それを活用して地方を盛り上げようとしている人がいます。「ローカル線」と「地域活性化」をつなぎ、その活動を千葉だけでなく全国的に展開しようとしている鳥塚亮さんにお話を聞いてきました。
約40年前、交通の整備によりバスで各地を移動出来るようになったため、ローカル線は赤字になりやすく、不要だと、廃止を命じられたところがあります。一部地域では住民の反対により第三セクター鉄道*として現代に残っていますが、廃線になってしまった路線も多くあります。私は地域住民が守ってきた第三セクター鉄道のローカル線にこそ、地方を盛り上げる力があるのだと考えたんです。
*第三セクター鉄道…国から廃止が命じられた際に、廃止せずに経営を当時の国鉄から切り離して、自治体と企業の共同出資によって運営されている鉄道会社。
日本の田舎は段々と衰えているように感じています。鉄道が衰退する歴史と一緒に、田舎も衰退してきている。だから鉄道が元気になれば、田舎も元気にできると考えました。ローカル線の存在は、直接的な利益だけではない、さまざまな恩恵をもたらすことができるんです。
その鉄道にわざわざ乗りに来るような仕組みを作れば、その地域に用がない人も来るだろうと。例えばSLが走れば、地域に関係なくても人は行くじゃないですか。そうすれば、その地域の風景や名物が都会に伝わるし、鉄道運賃収入以外に、食事や宿泊で地域にお金が落ちます。トータルで考えてその地域が良くなっていく仕組みを、鉄道を核として作れるんじゃないか、と私は考えました。
鉄道を広告塔として有名にすれば、その地域のことを知らない人も訪れるようになります。
だから私は社長に就任した時に、「この鉄道を全国区にします」と宣言しました。そのために、マスコミにキャッチされるように工夫して「キャラクターを使った列車」や「レストラン列車」などを走らせたのです。
もちろんマスコミは大切です。ですが、それよりも大切なのは、鉄道に対する思いと地域に対する思いを持つこと。人に「行ってみたいなあ」と思わせる仕組み作りには、こういう思いが必須なんです。
そうですね。しょっちゅうテレビや雑誌で鉄道を取り上げるのはなぜだと思いますか?
視聴率が取れるからです。それは、都会人が田舎の鉄道に憧れているから。ローカル線が雑誌の表紙に載っていて、誰かがその雑誌を見て、そこへ足を運ぶ動機付けになるなら、鉄道はその地域にとって広告塔になります。そのためには鉄道は走っていなくてはならないんです。
現在私がやっているのは、講演や、都道府県が開催する会議への参加などです。今後は全国の様々な場所で、業務を請け負って活動をしていきたいと思っています。例えば、どこかの鉄道で人を呼ぶために観光列車を走らせたり、独自の駅弁を販売したり。
北海道と九州では観光シーズンにズレがあります。全国のローカル線をつなぐことによって、例えば、北海道がオフシーズンのときは、繁忙期になっている他の地域にスタッフを派遣するといった融通が利くでしょう。
もっと言えば、SLなどの車両を期間限定で貸し合うこともできると思っています。1年に1回、2週間だけSLがその路線で走るとなれば人は集まってきます。いわば、商品の初期需要だけ使い回す形ですね。こんなふうに全国の各ローカル線が結びついて協力すれば、もっと地域を盛り上げることが出来ます。
これは皆さんの時代の話になると思いますが、情報です。ビッグデータです。ローカル線というのは地域情報が全部入ってくるんですよ。その地域にはどういう不動産があって、どういう商店街があって、どういう旅館があって、全国各地のこういった情報が全部ローカル線に入ってくるんです。
今の鉄道会社は、各担当地域の情報しか持っていません。それが私たちのNPOがつながれば、全国区なんですよ。そして、全国レベルで多くのローカル線沿線の情報を集めれば、「うちはローカル線がないんだけど、うちにも頼むよ」と絶対相談がくるようになる。
これをどう使うかを、次の世代にも考えてほしいです。これに大企業が目をつけて、私たちのNPOに支援などしてくれれば、もっと自由にできるのにと思います(笑)。
大切にしたいのは、その鉄道を守ってきた人がいるということ。どんな駅でも、その駅を故郷に思う人がいること。そういうことをないがしろにしないで、きちんと評価するべきだということです。地方にはローカル線と密接に結びついて、それを守り続けてきた地元の人が、必ず存在します。そういった人たちの思いをしっかりと評価して、ローカル線が彼らに恩恵を与えられるような仕組みを作りたいんです。
鳥塚 亮(59)
元いすみ鉄道社長 / NPO法人「おいしいローカル線をつくる会」理事長
経営赤字だったいすみ鉄道の社長に就任し、「ムーミン列車」「レストラン列車」などのさまざまな取り組みにより、観光客増加を実現し、いすみ鉄道を全国的に有名にした。
現在は全国各地のローカル線に関わる活動をNPOで行っている。
鳥塚さんは「ローカル線」と「地域活性化」をつなぎ、ローカル線からいすみ市を盛り上げることに成功し、次は全国のローカル線をつなごうと考えていました。
ローカル線はただの赤字事業と切り捨てられるべきではなく、その地域と密接に結びつき、広告塔としてあらゆる方面から地域の活性化に役立つことができます。かつて地域の人が廃線から守ったローカル線が、今度は地域の人に恩恵をもたらす番になったのです。これからローカル線によって地域を盛り上げられていくのが楽しみで仕方がありません。次の休日にでも、どこかのローカル線とその地域を守ってきた人たちの様子を見に行きたくなりました。
筑波大学4年 佐竹 篤紀