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「良いものを作れば売れる!」、そのことにだけ尽力していた農家の方々に売り方などマーケティングや業務改善などを取り入れることで、作り手にも買い手にもよりハッピーになって欲しいと思い活動している佐川友彦さんにお話をお伺いしました。
2015年から梨園の従業員という立場で、畑に出る従業員ではなく農家の皆さんが作ったおいしい梨の販売や経営管理を行っております。生産以外の全部をやっているので「農家の何でも屋さん」です。もともとインターンとして関わることから始めたのですが、当時の梨園は「美味しい梨は作れるが、経営をどうすればいいか分からない」という状態でした。そこで、「一緒に業務改善をしよう」ということで、今まで必要ではあったものの、手が回らなかったことを行い、経営をどんどん良くしていくという業務に毎年取り組んできました。
3年ほど取り組んできて、経営状況がだいぶ改善しました。そこでの経験を踏まえ、他の農家の皆さんがどこを見直し、どこを改善すれば良いのか参考になるのではないかと思い、プロジェクトをWeb上で始めました。無料で見ることができ、誰でも活用できる小さな改善案を300くらい公開しています。資金に関しては、クラウドファンディングで支援を募り、業界でも認知してもらえるようになりました。
個人経営の農家さんは、ビジネスをあまり意識してこなかったので、経営管理をどうしたら良いのか、人の声をどうすれば良いのだろうかということに意識が向いていませんでしたので、このサイトを無料で公開しました。そのことによって、経営改善に取り組んでくれるようになった農家さんがたくさんいて、ちょっとしたムーブメントを作れるようになったのではないでしょうか。今年から、プロジェクトのサイトを広めることを私個人のビジネスとして、もっと広く展開できるように取り組んでいます。
農家の皆さんは、形になるものにはお金を払ってくださるのですが、情報や形がないものに対して、お金を払うことには慣れていないので、無償化されていないと広がらなかっただろうと思います。もちろん、金額をつける価値はあると思います。しかし、それではもったいないので、赤字にならないことを前提に無償化することにし、そうすることでより業界にインパクトを与えられるのではないかと考えました。
農家の皆さん側、生産者さん側の立場に立つということが一番大切で、一番難しいのではないかと思います。外からアドバイスをしたり、月に1回少し手伝ったり、というのはどうしても踏み込みきれませんし、全部を網羅することはできません。実際に自分が梨園でフルタイム勤務し、多くのことを知ることができ、農家さんと同じ気持ちになることができたというのが、今回のプロジェクトを支援してもらえた理由なのではないかなと思います。なので、あくまで生産者側に立つという思いを大切にしています。当たり前に聞こえますが、なかなかできないのではないかなと思います。
また、問題解決をきちんと取り組んでいくということも意識しています。当初、梨園の人たちはパソコン操作における入力が苦手で、「パソコンを使って作業をしてください」と言っても時間がかかりすぎてしまうようでした。なので、ブラインドタッチの練習を始めることから行いました。そうすることで苦手意識を取り除くことができ、その結果、月間や年間の計画に反映されるようになりました。これは、やはり毎日一緒にいたから見えてきたことだと思います。
農家さんと企業、行政、消費者をつなぎたいですね。企業側は農家さんたちの気持ちを読み取れない。農家さんも企業のロジック、ビジネス、サービスの良さを読み取りきれない。それが、農家さんと企業とのマッチングに距離を感じる理由です。自分はありがたいことに農家側、企業側を理解できる立場です。農家側の現状を言語化し、企業側との間に入ることで、お互いが理解して必要なところで協力し合う、win-winなポイントをつかむ手伝いをしていきたいです。
行政は、足元の農家さんがどういう事情で何に困っているか、どう意思決定しているのか、ヒアリングや視察だけでなくもっと踏み込めるのではないかと思っています。そしてその2つができたとしても結局買ってもらわなければ意味がない、だからこそ消費者が作る側を理解し評価できるようにしたいです。
地方で農家さんがハッピーな状態で農業を続けられるようにしたいですね。ここでいう「ハッピーな状態」とは、農家さんが農業に対する夢が実現できるということと、経済的にビジネスとして成立する状態のことです。対して私は大規模農業、植物工場のような工業的な未来は望んでいません。今まで通り家族経営、手作業をやっていくことが農村、そして地域を守っていくことにつながるのではないかと思います。
農業系の学生団体やサークル、イベントに積極的に参加して講演をしています。また、梨園として、小学生の社会科見学、中高生の職場体験の受け入れをしています。
佐川 友彦(34)
東京大学農学部地域環境工学専修
東京大学大学院農学生命科学研究科修士
FARMSIDE works 代表
インターンで入った阿部梨園でそのままマネージャーとなり、Webサイト「阿部梨園の知恵袋」で業務改善事例を公開し、他の農家の方々に情報を提供している。
佐川さんは、家族経営の農家が抱える管理面の課題を言語化し、それらから得た改善実例を知恵袋として発信、農家とそれ以外の関係者の間を取り持つ、いわばメッセンジャーとしての役割が私たちには見えてきました。それらは情報のオープン化が進んでいる世の中において必要不可欠な存在です。しかし、誰もが手を付けていない領域で未知な部分も多い中、なぜそれでも挑戦したいと思えるのか疑問を持ちました。
それに対して佐川さんは「学生時代から自分は社会課題を解決することが無性に好きなんだ」とおっしゃっていました。その情熱が30代になっても忘れられなかったといいます。これらのことから私たち若い世代が活躍していくためには「無性に熱中できること」が重要であると感じました。「今湧き上がる情熱を保ち続けること」、そして「それを実現させるためにはアクションを起こすこと」。佐川さんへの取材を通して学んだことでした。
専修大学4年 Oha Yohey 獨協大学3年 岡 直毅