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~ユーザ企業・ITベンダ間の共通理解と対話を促す~

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社会基盤センター

改正民法に対応した「情報システム・モデル取引・契約書」を公開
~ユーザ企業・ITベンダ間の共通理解と対話を促す~

2019年12月24日公開
独立行政法人情報処理推進機構
社会基盤センター

背景

デジタル技術を活用して企業のビジネスを変革し、自社の競争力を高めていく「デジタルトランスフォーメーション(DX)」が注目を集めています。経済産業省が2018年9月に公開した「DXレポート」は、DXを円滑に進めるには、ユーザ企業、ITベンダが双方の間で新たな関係を構築していく必要があると提言しています。そのために、DXの進展によるユーザ企業とITベンダのそれぞれの役割の変化等を踏まえたモデル契約の見直しの必要性が指摘されました。

こうした状況を踏まえ、IPAでは、経済産業省が2007年に公開した「情報システム・モデル取引・契約書」、およびIPAが2011年に公開した「非ウォーターフォール型開発用モデル契約書」についての見直しの検討を2019年5月から行っています。まず、この検討全体を取りまとめる「モデル取引・契約書見直し検討部会」を設置し、民法改正に対応した「情報システム・モデル取引・契約書」の見直しについては、同部会の下で、ユーザ企業、ITベンダおよび法律専門家から成る「民法改正対応モデル契約見直し検討WG」において検討してきました。

概要

IPAはこれまでの検討を取りまとめ、2020年4月に施行される改正民法に直接関係する論点を見直した、「情報システム・モデル取引・契約書」の民法改正を踏まえた見直し整理反映版(以下、「民法改正整理反映版」)を、2019年12月24日に公開しました。なお、「情報システム・モデル取引・契約書」には第一版と追補版がありましたが、今回、そのそれぞれについて見直しを行い、更新版を公開しました。

「民法改正整理反映版」は、ユーザ企業、ITベンダ、関連業界団体、および法律専門家の参画を得て議論を重ね、中立的な立場でユーザ企業・ITベンダいずれかにメリットが偏らない契約書作成を目指しているところが特長です。後述のように、民法改正がITシステム開発の業務委託契約に及ぼす影響について論点を絞り、現行のモデル契約条項と解説の修正版、および見直しについての解説を整理しています。

IPAはユーザ企業・ITベンダ双方が「民法改正整理反映版」を参照することで、契約のタイミングで双方がシステムの仕様や検収方法などについて共通理解のもと対話を深め、よりよい関係のもとITシステム開発が行われることを期待しています。

「民法改正整理反映版」は、下記よりダウンロード可能です。

なお、DX時代に求められるアジャイル開発への対応や、民法改正に直接かかわらない論点については引き続き検討を重ね、2020年中に改訂版を公開する予定です。

見直しのポイント

「民法改正整理反映版」では、民法改正の全ての項目に対応しましたが、ここではそのうち影響の大きい論点について説明します。

影響の大きな改正項目と論点

1. 請負契約における「契約不適合責任」
  1. (1) 「瑕疵担保責任」から「契約不適合責任」への変更
  2. (2) 「修補」請求権から「追完」請求権への変更
  3. (3) 救済方法として「報酬減額請求権」の追加
  4. (4) 「損害賠償」と「解除」の変更
  5. (5) 契約不適合に関する「権利行使の期間制限」の変更
2. 請負契約・準委任契約における「報酬請求権」
  1. (1) 請負契約における「報酬請求権」の明文化
  2. (2) 準委任契約における「報酬請求権」の明文化

一例:「権利行使の期間制限」(上記1.(5))に関する見直しの概説

(a) 民法改正の概要 請負契約における瑕疵担保責任が契約不適合責任へ再構成され、責任の存続期間が最長10年間に延長された。改正前の瑕疵担保責任の存続期間は目的物の引渡時/仕事の終了時から1年であったが、改正後の契約不適合責任では契約不適合を知った時から1年以内に通知をすればよいことになり、注文者(ユーザ企業)が契約不適合を「知る」までの間は消滅時効一般の規定に基づき、10年間権利の行使がされ得ることとなった。
(b) モデル契約見直し検討における主な議論
  • ユーザ企業には期間の伸長がメリットである
  • ITベンダには長期間にわたる対応要員の維持といったコストの増加が見込まれる
  • コストの増加がシステム開発費の増加につながることで、ユーザ企業にはかえって不経済となる可能性がある
(c) 「民法改正整理反映版」での見直し結果 ユーザ企業とITベンダの公平な責任分担の観点からどのような見直しを行う必要かあるかについての活発な議論を踏まえ、次のようにモデル契約条項および解説に反映した。
  • 期間制限は検収完了時という客観的な起算点は維持する
  • ITベンダの落ち度に起因する場合等を適用除外にする
  • 期間が1年以上になることもあり得ることから、契約上の期間は「〇ヶ月/〇年」とし、契約当事者間の話し合いで決めることとする
また、見直しについての解説では、ユーザ企業とITベンダの間で期間制限を決定するための対話に必要となるポイントもあわせて紹介している。

「民法改正整理反映版」の構成とダウンロード

※(修正履歴)とあるものは、前版からの修正履歴を残しています。
※(ひな型)とあるものは、解説文は無く、条文のみとしています。
※ Word形式の文書は、自由にカスタマイズしてご利用いただけます。

本件の内容に関するお問い合わせ

IPA 社会基盤センター 上田/山下
Tel : 03-5978-7543 E-mail : メールアドレス