金融庁局長: 国内金融機関のCLO投資に強い関心、集中リスク警戒
谷口崇子、中道敬-
日銀と連携し海外市場動向を的確に把握し個別行との対話で注意喚起
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国内の保険や証券会社のCLO投資残高は心配するような水準でない
金融庁は格付けの低い企業への融資を束ねて証券化したローン担保証券(CLO)などの海外クレジット商品への邦銀による投資について警戒を強めている。
インタビューに答える森田局長
Photographer: Takako Taniguchi/Bloomberg
日本銀行は10月に公表した金融システムリポートで、リーマン危機級のストレスが生じても信用リスク面での頑健性が高いと結論付ける一方、CLO投資のリスク分散効果が見た目ほど高くない可能性にも言及した。金融庁でも個別行でリスク分散されていても、市場全体で見た場合に偏った投資となっている可能性などを注視している。
森田宗男総合政策局長はブルームバーグとのインタビューで「日銀の分析は非常に参考にしている」とした上で、「個別行では分散が効いていると考えても、市場全体では同一セクターや債務者に集中していれば、何かイベントが起きた時に市場に大きな影響が出る」と指摘。こうした事態を防ぐ必要があるとの認識を示した。日銀によると、グローバルなCLO市場での邦銀の保有比率は約15%に達した。
日銀と金融庁は9月、CLOなどへの投資で共同調査を実施。日銀のリポートにはこの調査の分析結果が反映されている。森田局長は「一緒にやるといっても、同じ視点では意味がない。日銀はマクロ経済やグローバル市場への知見があるし、われわれは個別金融機関の状況や(日銀の考査対象でない)保険などの得意分野がある」と説明。金融庁としてリーマン危機の教訓を生かし、調査結果を詳細に分析していく。
具体的には、CLOの裏付け資産となる海外のローンについて、マクロ経済動向に詳しい日銀と連携することで市場動向をより的確に把握し、調査の回答を照会しながら個別金融機関との対話で注意喚起していく。特に「裏付け資産となるローンが知らないうちに劣化していないか、財務健全性などの発行条件を緩和したローンになっていないか」などに留意するという。 国内低金利の長期化受けて、海外クレジット商品への投資を加速 出所:日銀急拡大した邦銀によるCLO投資残高
金融庁は、大手行が実施するストレステストの結果も共同で検証するなど、日銀との連携を強めている。森田局長は両者の連携により「金融システムをミクロ、マクロの両面から見ることでシステミックリスクを予見する力が強まる」と説明した。ストレステストの共同検証は定例化も前向きに検討する。
また、今後連携強化が考えられる分野として、国内金融機関の外貨流動性リスクの調査やグローバルな企業債務の積み上がりがストレス下で市場に与える影響などを挙げた。
CLOなどの証券化商品の急速な市場拡大については、世界の金融規制当局が警戒を強めている。金融安定理事会(FSB)は19日のリポートで、CLO投資家の14%、その裏付け資産となるレバレッジド・ローン投資家の21%が特定できないことが分かったとし、潜在的なシステミックリスクの可能性を予測するのは難しいと警告した。
同リポートではグローバルで見ると保険会社は銀行に次ぐ大きなCLO投資家だとし、低格付けのトランシェ(区分)にも投資をしていると言及。これに対し、森田局長は日本の保険会社や証券会社のCLO投資について「あまり心配するような水準ではない」との認識を示した。