スピン経済の歩き方:日本郵政の元凶は「多すぎる郵便局」と考える、これだけの理由 (1/6)

» 2019年12月24日 08時17分 公開
[窪田順生ITmedia]

 高齢者を言葉巧みにだまし、詐欺のような契約を結ばせた者は褒めたてられ、その一線を越えられぬ者は「お前は寄生虫」などイビり倒される――。

 どこぞの振込詐欺グループの話ではない。かんぽ生命の営業現場の日常風景である。おじいちゃん、おばあちゃんが絶大な信頼を寄せる「郵便屋さん」がなぜオラつく半グレのようになってしまうのかといえば、トップのコワモテぶりが影響している。

 日大、ボクシング協会、JOCなど、風通しの悪い組織を恐怖とパワーで束ねる「ドン」という人種が、実は日本郵政にも存在している。この人は「影の社長」なんて呼ばれるほどの権力を有し、天下のNHKにカチ込んで、放送を差し止めたなんて武勇伝もまことしやかにささやかれているが、何よりもすごいのは、監督官庁である総務省のトップからこっそりと行政処分案を聞き出してきたこと。表の世界のトップが、影のフィクサーが裏ではポン友だった、という漫画『サンクチュアリ』(小学館)を彷彿させるようなことが現実に起きていたというわけだ。

かんぽ生命を扱う日本郵政グループが揺れている(出典:ゲッティイメージズ)

 では、トップから現場まで脱法・違法行為が当たり前となっているこの組織を、どうすればカタギへ更正させることができるのか。民営化が失敗なのでやはり国営化すべきと、崩壊寸前の社会主義国家のような主張をされる方もいらっしゃるが、立派な大新聞の社説などを見ると、経営体制の総入れ替えなどをして、組織のあり方を根本から変えるべきという意見が多い。

「経営体制の刷新と企業統治の改善がすべての前提になる」(朝日新聞12月19日)

「リーダーシップのある新たな経営陣を起用し、体制を立て直す」(日本経済新聞12月21日)

「顧客本位の営業姿勢を徹底するには、一から出直す覚悟が必要だ」(読売新聞12月19日)

 ただ、これはぶっちゃけあまりピンとこない。立派なジャーナリストのみなさんがおっしゃることにケチをつける気はサラサラないが、その程度のことで変われるのなら、そもそもこんなハチャメチャな組織になっていないはずだ。事実、住友銀行、三井住友銀行でリーダーシップを発揮して、「ラストバンカー」などとうたわれた西川善文氏でさえ、周囲が情報を上げないなど”裸の王様”と化して失意のまま日本郵政を去っている。

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