ソニー常務、CMOS生産「まだ足らない」-21年春の新工場稼働でも
古川有希、Pavel Alpeyev-
作り切れない需要、年末年始も24時間フル稼働-5Gスマホ向け
-
長期的には自動運転や遠隔医療向け需要も、関西で初の設計開発拠点
ソニー常務で半導体子会社社長の清水照士氏は、主力製品のCMOSイメージセンサーの生産について、2021年4月以降に長崎県の新工場を稼働するなど「これだけ投資してキャパを作っても、まだ足らないかもしれない」と述べた。
清水氏は20日のインタビューで、次世代通信規格(5G)対応のスマートフォン向け中心に「作り切れないくらい需要があり、顧客に謝りながらやっている」と説明。1年前と同様、年末年始も24時間体制のフル稼働で臨むことを明らかにした。
3眼カメラ搭載のiPhone 11
ソニーは10月、半導体事業の好調で、2020年3月期の営業利益見通しを8400億円(従来8100億円)に上方修正した。CMOSセンサー向けの設備投資は、21年3月期までの3年間で7000億円とする計画を数百億円上積みする可能性を示している。
スマホではカメラの多眼化や大型化が活発で、米アップルや韓国サムスン電子、中国の華為技術(ファーウェイ)が背面に3眼カメラを搭載している。清水氏は、顧客からはカメラの感度や視野角のほか、動画性能を上げたセンサー開発の要望が来ており、スマホの進化は「何年も先までまだまだいく」との見通しを示した。
CMOSセンサーはスマホ向けのほか、自動運転や遠隔医療向けに長期的な需要拡大が見込まれている。ソニーは23日、同社として関西で初の設計開発拠点を20年4月に設置すると発表した。
ブルームバーグ・インテリジェンスの若杉政寛アナリストは、スマホではカメラが主な差別化要因になっていると指摘。SNS(会員制交流サイト)で静止画だけでなく、動画でもより高画質が求められる中、ソニーは「技術力も生かして、うまく需要の波に乗っている」と分析する。 ToF方式・3Dカメラのモジュール
ソニーの18年のCMOSセンサーの世界シェアは51%でトップ。ソニーは、26年3月期でシェア60%を目標としている。
また清水氏は、対象物に光を照射し、到達速度で距離を測定するToF方式の距離画像センサーについて、アプリの開発が進めば「スマホを買う動機になる」とし、今後数年で高価格帯スマホから採用が進むとみている。ソニーは拡張現実(AR)や顔認証技術向け用途に期待し、今年から量産を開始した。
清水氏はソニーのToFセンサーが中国の複数のメーカーのスマホに採用されたとし、今年を「ToF元年」と位置付ける。関係者によると、ソニーは、20年にも発売される3Dカメラを搭載したiPhone(アイフォーン)のセンサーを巡り、米アップルと協議している。