かえはるがてぇてぇため書きました。公式がどうとか関係ない。俺はかえはるが好きなんだ!
三年生がいなくなった学校は活気の三分の一を失っていた。
しかし、一年の俺らには関係なく、いつもと同じような学校生活を送っていた。
放課後、俺はいつもと同じようにゲーム部の部室に来ていた。
それまでは全部いつも通りだったのだ。いつもと違うところをあげるとすれば……。
「今日は二人はいないんですね」
「今日はみりあちゃんも涼くんも予定があるみたい」
「それならば仕方ないですね。俺は編集作業でもしています」
「私はポケモンのレート上げをやらなきゃ」
穏やかな時間だった、俺の作業も順調だったし、部長も負けが少ないみたいで奇声をあげていない。
あまりに優雅だったため脳内BGMにジャズを流す。あとはコーヒー(ブラック)があれば完璧だな。
うるさいアホピンクもいないし、今日の放課後は平和に過ぎ去っていく、はずだった……。
「うーん、今日は調子いいみたい」
「部長、休憩ですか」
「うん、晴翔くんの進捗はどう?」
「いい感じです」
「お、頼もしいね」
「もちろんです。だって俺はあの道明寺晴翔なんですから!」
ビシっと俺はポーズをとる。決まった……!
「ねえ、晴翔くん。ちょっとお願いがあるんだけどいいかな?」
しばし自分の世界に浸っていた俺は部長の声で戻ってきた。
しかし、これはまずいことになったな。
部長のお願いには二種類ある。一つは本当に純粋なお願い、こちらだった場合なら俺は副部長として全力で部長の期待にこたえよう。
問題はもう一つ。部長の思いつきのお願いだ。突拍子のないものが多い、涼がいつも被害にあっているが。
今日は圧倒的に後者。くそっ、逃げる術はないのか。
「あー、サムネ作らないとなー。少し忙しいなー」
「いいかな?」
「はい、大丈夫です……」
ダメ、オレ、コトワレナイ。
どうしても部長には弱い。ここがアホピンクなら無理やり押し切れるのだが。
「それで、なんですか?」
「私をお姫様抱っこして欲しいの!」
「……いやです」
「なんで!どうして!」
「逆にどうしてやってもらえると思ったんですか!」
「ロメオのときさ、みりあちゃんをお姫様抱っこしてたじゃん」
「あれは、撮影だからですよ」
「ちょっとうらやましいと思ってさ、涼くんが私より身長高かったら私も名乗りを上げたのに」
「それは涼に言ってくださいよ……。いや、言わないであげてください」
「だ、か、ら。はい!」
両手を広げてこちらに近づいてくる。もちろん俺は断固拒否の構え。
少しずつ迫りくる部長と少しずつ後ずさる俺。とうとう壁に追い詰められてしまった。
「もう逃げられないねっ!」
「あぁ、わかりました。わかりましたよ、やればいいんですよね!」
「ちゃんとお姫様扱いしてよね」
「はいはい、わかりましたわかりました」
こうなりゃやけだ!
部長に首の後ろに手を回してもらう。俺は腰と膝の裏に手をいれそのまま持ち上げる。
「おおー、晴翔くんって力持ちなんだね」
「部長は軽いですからねっと。もうちょっと強く掴まって、体重俺に預けてください」
「あっ、はい」
ぐっと力を入れて引き寄せると急に部長がしおらしくなった。
胸の中で小さくなっている、足がつかないと不安なのだろうか。
「えへへ、なんか変な感じだね」
「部長がやれって言ったんでしょ」
「あ、今の私はお姫様なんだから部長呼びは禁止だよっ!」
「えぇー」
「そこ、嫌そうな顔をしない」
罰ゲームではあるまいし、全力で拒否したいところだが。ここまできたら関係ないだろう、やるとこまでやろう。
いっそのこと、芝居に入ったほうが恥ずかしくないのでは?俺は王子、王ではなく今だけは王子。
「楓さん、大人しくしてください」
「えへへー、さん付けも新鮮でいいねっ!」
「どうも、お気に召したようで」
「こうしてるとさ、やっぱり晴翔くんは男の子なんだね……。少し照れちゃうな」
「やっとわかってくれましたか……。下ろしますよ」
「ああ、もうちょっと待って」
部長は俺から手を離さず首からぶら下がった。
「部長、重いですって」
「女の子に重いって言ったらダメでしょ!それに呼び方も戻ってる!」
仕方がないので再度お姫様抱っこの体制に入る。もう勘弁してくれ。
当の部長は満足気に微笑んでいる。
本当に、俺の気も知らないで……。
「私のことを重いって言ったし、名前も戻ってたしこれは罰ゲームが必要だね」
「これ以上の罰ゲームなんてあるんですか……」
「あ、今の発言もアウトだよ!三つ罰ゲームだね」
「えぇー」
文句は色々と言いたかったが、そうすると罰ゲームが無限に増えていきそうなので自重する。
繰り返すが俺は部長に弱い。
「まず一つ目は私の呼び方でしょ。楓さんもいいけど楓ちゃんもいいな、楓って呼び捨てにするのもいいかも。うーん、みりあちゃんが呼び捨てにされてるからやっぱり呼び捨てかな」
「はいはい、楓。次はなんですか?」
「次は敬語禁止!期間は両方とも今日これから一日ね」
「わかった。最後はなんだ?」
「えっとね……」
急にもじもじとし始めた。しかし今はお姫様抱っこ中。顔を逸らすので精一杯だろう。
「マフラーをね。一緒に買いに行って欲しいの」
「わかった。でも、どうして急に?」
「みりあちゃんがね。羨ましかったの……」
みりあが新しいマフラーをしているのがそんなに羨ましかったのか。
「うーん、なんか勘違いしている気がするなぁ……」
「そうか?まあ、買いに行くし下ろすぞ」
「えー、もうちょっとだけ」
「お姫様抱っことマフラー、どっちを優先するんだ?」
「両方っ!」
「それは出来ないぞ」
しぶしぶといった様子だがやっと下りてくれた。
部長がいくら軽いとはいえ、流石にきつかったな。
「じゃあ、楓。行こうか」
「うんっ」
眩しい笑顔を見せてくる。ああ、そうか。だから俺は部長に弱いのか。
三年生がいなくなった学校は活気の三分の一を失っていた。
しかし、一年の俺らには関係なく、いつもと同じような学校生活を送っていた。
放課後、俺はいつもと同じようにゲーム部の部室に来ていた。
昨日の静寂はどこに行ったのか、今日は涼とアホピンクも来ていてにぎやかな部室だった。
「楓ちゃん、そのマフラーかわいいー」
「えへへー、そうでしょー」
ちらっとこちらにアイコンタクトを送ってくる。
ええい、やめろ。こっちを見るな。
「なんで楓ちゃん、ハルカスのことちらちら見てるの?」
「いや、なんでもないよね。晴翔くん」
こっちに話を振るな。
「ああ、なんでもないぞ。楓……あっ」
隣の涼の温度がどんどん下がっていく。ぜったいれいどはいちげきひっさつだ。
「ねえ、ハルくん……、どういうこと?」
「いや、なんでもないぞ。涼」
「楓ちゃん、どういうことー?」
「なんでもないよ。みりあちゃん」
ああ、今日も喧騒に飲まれていく。
これこそがゲーム部だ。だが、もし叶うのなら誰か俺を助けてください。