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3000文字で終わらすつもりが何故か倍以上になりました。はるかえ最近流行ってきた...

島袋彬

真似事から始まる。

島袋彬

2/24/2019 00:59
3000文字で終わらすつもりが何故か倍以上になりました。
はるかえ最近流行ってきたみたいで嬉しいです。
「狂人の真似とて大路を走らば、即ち狂人なり」

要するに狂った人の真似事をしている人も狂っているということだ。

真似をしたから狂人なのか、はたまた元から狂人の素質があったのか。そんなことは俺にはわからない。



「晴翔くん、今度の日曜日あいてる?」

「一応あいてますけど……、なにをするのですか?」

「よし、決定。ちょっと付き合って欲しいの」

「はい、なにに付き合うのですか?」


ゲーム部部員は部長の突拍子のないお願いには慣れている。もちろん俺もだ。

一応身構えておくが、部長の言動で動揺することなどない。


「いや、私と付き合って欲しいの」

「俺の認識が間違っているのかもしれないので確認したいのですが、付き合うというのは交際するということであってますか?」

「うん、そうだよ」


……頭が痛い。

いや、部長の言動に驚かされるのはいつものことだ。

なんかしら理由があるのだろう。が、しかしその理由を抜いて最初に目的から話すから驚かされるだけだ。

考えを聞けば納得するかもしれない。そうであってくれ。


「部長、考えを順を追って説明してもらえませんか?」

「ああ、ごめんね。先走っちゃった。まずね、私は陰キャ呼ばわりに納得していないの」

「よく言われてますね」

「そうだよ、失礼しちゃう。私はちょっとコミュニケーションとかが苦手なところはあるけど陰キャじゃないんだよ!」


急に立ち上がって熱弁してくる。そのまま距離をつめてくる。いや、近い近い。

色々と言いたいことはあるが話がまとまらなくなりそうなので話の修正に努めよう。


「部長、落ち着いてください。それがどう繋がってくるんですか?」

「私はね、陰キャ脱却のためにはリア充になるべきではないかと考えたの。でもいきなりリア充になることは難しいからとりあえず真似事からと思って」

「……すごい回りくどいことしますね」


ポケモンでは構築からプレイングまで感心させられることが多々あるのに……、その使っている頭を一割でも他のことにまわせていたら。

それとも逆に考えすぎて空回っているのだろうか。


「申し訳ないのですが日曜日は予定が入っていまして……」

「こう言ったら逃げられるとわかってるから先に予定が入ってないことを確認したんだよ」


本当にこの人は……、無駄に頭が回る。負け筋を潰し勝ち筋を通すのはゲーマーの鉄則だろう。

この俺はまんまとしてやられたというわけだ。

いや、まだだ。薄い勝ち筋でも掴み取ってみせる。だって俺もゲーマーなのだから!


「涼のやつを誘うのはどうでしょうか?」

「涼くんは妹だから」

「はっ?」

「涼くんは妹だから。この前妹になってもらったとき僕でよろしければいつでもって言ってくれたし」


言葉の意味を脳が理解することを拒んでいる。

俺の親友がと尊敬する部長がそんなことになっていたとは。衝撃的な発言だった。今日はもう帰って寝よう。


「体調悪いので今日はもう帰りますね」

「逃がさないよ」


腕をがっしりとつかまれる。逃げそこねた。


「そもそもリア充の定義からしなおすべきじゃないですか?」

「デートしただけではリア充ではないと」

「そもそもデートだったんですね……。リアルが充実していることが条件のはずです。それならばポケモンやってても毎日が充実していればリア充です」

「晴翔くんはわかってないなぁ。まあ晴翔くんは陰キャだから仕方ないね!」

「……それは聞き捨てならないですね。いいでしょう、日曜日にデートしましょう!」

「決定ね!誘っといて悪いのだけどコースとかは晴翔くんに任せていいかな?私そういうのに憧れてるの!」


はっ!熱くなってしまった。しかし、デートか……。

それなりにモテる(はず)である俺であるがデートはしたことがない。

コースを含めて、ここは誰かに相談するべきだろう。

涼……、は部長がらみのためダメだ。みりあは下手に追求されるとまずい。ならばここあしかないだろう。


「ここあ、ちょっと相談があるのだがいいか」

「なにお兄ちゃん?」

「もしデートとか連れて行ってもらうならどこが嬉しいとかあるか?」

「え……、お兄ちゃんデートするの?」

「いや、そういうわけではないが。もしの話だ!」

「……ちょっとまって、確認することがある」


そう言って部屋に戻るここあ。「みりあ先輩、楓先輩」と声が聞こえる。

ここあもあの二人と仲良くなったようだな。兄として誇らしくも、どこか寂しい気持ちだ。

そうこうしているうちに確認という名の会議が終わったらしい。


「みりあ先輩はすぐに反応してくれたけど楓先輩は既読スルーだった……。これは黒だね……」

「どうしたんだ?」

「こっちの話、やっぱりデートコースはお兄ちゃんが決めたほうがいいよ。だけど確認のために完成したら私にも教えてね」

「ああ、わかった。頼むよ」


うーむ、やっぱり俺が考えなくてはいけないか。でも最後にここあが見てくれるなら安心だな。

でもここあが部屋に戻るとき「みりあ先輩……ビコウ……」と呟いていたのが気になった。

深く聞きすぎて「お兄ちゃんなんか嫌い」と言われても嫌だし追求はしなかった。


決戦は日曜日。待ちに待った、というよりは来て欲しくなかったデート当日。

天気は雲ひとつなく、気温はちょうど良く、風もあまりない、絶好のデート日和だろう。

なぜ俺の心に暗雲が立ち込めているかというと単純にデートというものがわからないからである。

二人で出かけることも多々あるがデートといわれると意識せざるを得なくなる。

女性を待たせるわけにはいかないと早めに出てしまい、手持ち無沙汰になっているのも不の意識を加速させる原因の一つだろう。


「ごめんね、お待たせ」

「いえ、俺も今来たところですよ」


部長の今日の洋服は疎い俺から見ても気合が入っているのがわかる。

こうして見ると普段忘れがちだが、いいところのお嬢様なのだと再認識させられる。

俺はいつも通りの服でよかったのだろうか……。

と、とりあえず褒めなければ。デートでの鉄則だ。


「部長、かわいいですね」

「えっ、ああ。ありがとう……」


照れた様子の部長、焦りすぎて間違った気がしないでもない。


「それよりさ、デートなんだよ。部長は禁止でお願いね!」

「うっ……、わかりました楓さん」

「ダメだよ、晴翔!」

「部長、じゃなくて楓も変えるんですか」

「私もやらなきゃなって、それと手を繋いで欲しいな」

「……わかりました、いやわかったよ楓」


想像していた以上に本格的なデートにすでに疲労困憊だった。

握った部長の手は柔らかくて、小さい。……これじゃ俺はなんか変態みたいじゃないか?

ここあ、お兄ちゃんを助けてくれ。その当のここあは今日はみりあと出かけると言っていたな。


「とりあえず映画なんてどうですか?」

「あ、見たかったやつ!いいね!」


駅から然程離れていない映画館に来た。


「カップル割りが使えたね。店員さんからカップルに見えたのかな?」

「ちょっと照れるがお得になるならいいだろう」


デートを抜きにしてもこの映画は俺と部長が見たかったものだ。

二人ともテンションが上がるのを感じる。


「みりあ先輩、この映画見ませんか?」

「ダメだよ、ここあちゃん。見失っちゃうよ」

「えー、でも……」


なにか聞きなれた声が聞こえた気がする。

いや、気のせいだろうか。


「ここあの声聞こえなかったか?」

「晴翔、いくらここあちゃんが好きだからって私といるのに他の女の子の名前出すのは嫌だよ」

「ああ、ごめんごめん」


わざとらしく頬を膨らませた部長、ぷんぷんと擬音が聞こえてきそうだ。かわいい。

思わず魔が差した。空気を押し出すように片手で頬を押す。


「なにするの」

「つい、やってみたくなって。おっとそろそろ映画が始まる時間だ」

「もうっ」


映画の出来は100点満点だった。

長年のファンである俺の期待を裏切らなかった。

興奮が冷めないうちに喫茶店へ移動して感想戦の流れとなった。


「最高だった!」

「うん、面白かったね!」


このままずっと浸っていたいがまずはなにか頼むべきだろう。俺はブラックコーヒーでいいかな。

メニューを見ていた部長の目がきらりと光るのを俺は見逃さなかった。


「晴翔って甘いもの大丈夫だよね?」

「大丈夫だぞ」

「じゃあさ、これ頼まない?」


見せられたのはジャンボパフェ、下に大きくカップル限定と書いてある。

この店にあるどのパフェよりも豪華で大きかった。


「いいぞ」

「ありがとう、これ興味はあったんだけど頼めなくて……。晴翔がいてくれて助かったよ」

「それじゃあ頼むか」


もうカップル扱いされるのを完璧に受け入れている自分がいる。

部長とそう思われるのも悪い気はしないからな。

今日一日だけだが楽しませてもらうよ。


「こちらカップル限定ジャンボパフェになります」

「ああ!美味しそう!」

「思ってたより大きいな」

「大丈夫、甘いものは別腹だからいくらでも入るよ!」


女子という生き物は普段少食なくせになぜ甘いものを見ると男子より多く食べられるのだろうか。長年の疑問である。

涼に限って言えばあいつも少食だがメロンパンだけはいくらでも詰め込める。


「晴翔、食べないの?」

「いや、ちょっと考え事をしていてな」

「それじゃあ……、あ、あーん!」


部長がパフェの乗ったスプーンを差し出してくる。

いや、ダメだろ。甘美な誘惑に後一歩のところで踏みとどまる。

これは多分越えたらいけない一線だろう、もし越えたら俺は戻れなくなる。

肝心の部長にその気がないのが悔しいが、ここは丁重にお断りするべきだろう。


「もう、また考え事しちゃって……。えいっ!」

「むぐっ、なにを!」


こちらが呆けている隙にスプーンを口に突っ込まれた。

こ、これは間接キスというものではないだろうか。正直に言って部活中に似たような場面になることはある。

だけど、今日はデートなのだ。デートだからこそ、この行動が問題なのだ。

俺が過剰に意識をしてしまっているだけなのだろうか。

ならば俺がとるべき行動は一つ、努めて冷静に、いつも通りにだ。


「どう、美味しい?」

「……美味しいです」

「晴翔、敬語に戻ってるぞ!」

「ああ、すまん。美味しいぞ」


嘘だ、味なんてわからない。

無邪気な部長の笑顔に罪悪感を覚える。

こんなに楽しそうなのは多分リア充っぽい行動を出来ていることが嬉しいのだろう。


「みりあ先輩、私もあれ食べたいです!」

「みりあたちはカップルじゃないから食べられないぽよ。ってかばれちゃうから頭出さないで!」


「ねえ、晴翔。なんかよく知っている声が聞こえなかった?」

「そうか、俺は特に聞こえなかったが」


俺はそれどころではなかったため気がつかなかったのかもしれない。


「そういえばここあが今日はみりあと遊びに行くって言ってたぞ」

「嘘……」


急に顔が青くなる部長。ああ、この光景が見られたら恥ずかしいのか。

にしても、この喫茶店にいるかもしれないとは凄い偶然だな。挨拶だけでもしておくか。


「大丈夫ですよ、部長。ただ遊びに来ているだけだし、このパフェも食べたかっただけだと説明しますから」

「ありがとう、でも私が危惧しているのはそうじゃないくて……。ううん、なんでもない……」

「さあ、そんな顔していたらパフェも美味しくなくなりますよ」

「……うん、そうだよな。いっそのこと見せ付ける気持ちで。晴翔、このあともよろしくね」

「……わかったよ、楓」

「それじゃ景気付けにあーんして」

「……は?」


満面の笑みだと思ったら顔が青くなって、次は悪戯っぽい笑みを浮かべる。

見ていて飽きないな。ただ、悪戯の対象が俺でなければ。


「ほらほら、はやく。あーん!」

「……はい、どうぞ」

「うーん、美味しい!」


そんな顔されたら何も言えなくなってしまうよ。

結局大きなパフェは部長7、俺3の割合で食べた。よく部長あんなに食べられるよな。

喫茶店を出て次の目的地を決める。


「次は、行きたいところがあるんがいいか?」

「晴翔が行きたいところならどこでもいいよ」

「あまりデートらしくないところだが……、ゲーセンに行きたいな」

「私達、やっぱりゲーム部だもんね!」


部長が乗ってくれてよかった。

なぜか言いたげな部長。ああ、わかってますよ。

俺は手を差し出す。ちゃんとエスコートしろってことですよね。

部長は少し戸惑った後、「えい」と手を握ってきた。


「よし、じゃあいきますよ」

「うん!」


ゲーセン、それはゲーム部に所属している俺達にとっては魅力的な場所だった。

所狭しと並べられた筐体が自分をプレイしてくれと主張している。


「どれからやるか」

「ゲームもいいんだけどさ、ちょっと私やりたいものがあって」


指差したのはプリクラ、リア充に憧れる部長にとっては垂涎の品なのかもしれない。

いや、この前みりあと一緒に撮っていた筈。自慢されたことが記憶に新しい、ならばどうして?


「……今日のデートの記念にさ、こういうのを残しておくのも悪くないかなぁって」

「よろこんで」


部長は女子高生らしくプリクラの操作に慣れていて、逆に俺にとっては未知の体験だった。

プリントされたシールを大事そうに眺める部長がとても愛おしかった。


「みりあ先輩、私達もプリクラ撮りましょう!」

「もうここあちゃん尾行とかそっちのけで遊びたいだけだよね……」

「お前らも来ていたのか」

「お、お兄ちゃん!」

「あーあ、ばれちゃったよ……」


偶然にも我が愛しの妹とアホピンクもゲーセンに来ていたらしい。

部長が気まずそうな顔している。まあ、休日に男二人でいるところを見られたんだ、そうもなるだろう。

シャツの裾をぎゅっと握られる。さて、どうしたものか。


「や、やっほー。みりあちゃん、ここあちゃん、奇遇だねー」

「そ、そうだねー」

「どうするお兄ちゃん、せっかくだし一緒に周る?」


ここあもいるし非常に魅力的な提案だ。

だがしかし、今日は別問題だ。……実際、部長とのデートを楽しんでいる俺がいる。

ならば俺がとるべき行動は一つだろう。


「すまんな、今日は部長との約束でな。二人で周らせてもらう。また今度一緒に遊ぼう」

「えっと……、晴翔くん。いいの、ここあちゃんだよ?」

「その聞かれ方はなかなか悪意がある気がしますが……」

「お二人の邪魔しちゃ悪いし、みりあ達は退散するぽよ~」

「最初から邪魔してたじゃないですか」

「ちょっと、ここあちゃん!」

「それじゃあ、またな」


ここあ達と別れた。しかし、俺の独断で決めてしまった。よかったのだろうか。


「すみません」

「どうして謝るの?」

「俺が勝手に決めてしまって」

「いいの、私も二人でいたかったから」


部長のこの言動はわざとなのか?これはどう捉えるべきなのだろうか?

俺はこの言葉を素直に受け取っていいのだろうか、少しは自惚れてもいいのだろうか。


「ありがとうございます」

「もう、また敬語に戻ってるよ!それより晴翔はこれでよかったの?」

「すまない。ああ、俺も楓と二人が良かった」

「ふふ、これってまさに相思相愛だね」


部長は、どれだけ、俺を惑わせれば気が済むのか!

いいんだよな、俺だって男だ。ここまでお膳立てされたら思うところがあるぞ。

その後のデートも楽しいものだった。楽しすぎて終わりたくないみたい。

今日が終わればまた関係性は同じ部活の部長と副部長。

……本当にそれでいいのか?本当にこのままでいいのか?

俺は嫌だ。


「今日は私のわがままに付き合ってもらってありがとう」

「いや、俺も楽しかった」

「……やっぱり、晴翔くんは優しいね」

「どうしてだ?」

「だって晴翔くんに迷惑かけちゃったし、ここあちゃん達に見られて恥ずかしかったでしょ」

「別にあの二人は関係ない」

「やっぱりいくらリア充の真似してもさ、陰キャは陰キャのままなのかなーなんて。あはは、ごめんね」


違う、違うぞ。俺が心から楽しかったんだ。

部長と、いや楓といられて楽しかったんだ。

言え、言え、今こそ言うぞ。


「楓、それは違う。まず、少なくとも俺にとっては迷惑ではなかった」

「本当に、私が傷つかないための嘘じゃなくて?」

「本当だ。次に、陰キャでも楽しければいいじゃないか、自分らしくあれば。楓は陽キャじゃなきゃ楽しめないのか?」

「違うけどさ……、少し憧れる」

「たまたま今の自分にないから憧れるだけさ。案外相手もこっちのことを羨ましがっているかもしれないぞ」

「そんなことあるかな」

「そして最後に、もし楓さえよければまたデートしてくれないか?」


言った、言ってやったぞ!

楓は大きく息を吸い、答える。


「……本当にいいの?」

「さっきから疑ってばかりだな」

「……だってこんなことってあるとは思わなかったから」

「俺がしたいようにしているだけさ」

「また迷惑かけるかもしれないよ」

「楓には迷惑かけられ慣れている」

「……いじわる、晴翔のいじわる!」


ぽかぽかと俺の胸を叩く楓、そのまま抱き寄せる。

もうここまできたら行けるところまで行くべきだろう。


「もしよければ俺と付き合ってください」

「順番おかしくない?」

「……そうかもしれない」

「まあ、断るわけないじゃん。晴翔、よろしくお願いします」


カップルの真似事をしていた俺達は今、カップルになった。

楓が愛おしくて、強く、強く抱きしめた。




「お兄ちゃん、おかえり」

「ああ、ただいま」

「それで、デートはどうだった?」

「知ってたのか……、楓と付き合うことになったぞ」

「え……?」

「楓と付き合うことになった」

「……ちょっとまって、確認することがある」


そう言って部屋に戻るここあ。「みりあ先輩」と声が聞こえる。

さて、俺はこれからどうなるやら。こちらも楓と作戦会議でもするかな。

俺と楓は恋人なのだから。





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