ついにゲーム部の動画投稿が再開されますね。
私は素直に嬉しいです。
今回は晴翔くんと楓ちゃんが心理テストをする話です。
タイトルは晴翔くんと楓ちゃんそれぞれ当てはまるダブルミーニングです。
前にここあから怒られたことがある、「お兄ちゃんは乙女心というものを理解できていない」と。
乙女心、男子諸君の永遠の課題にして未だ理解できぬもの。その圧倒的難解さはおおよそ学業というもので困ったことのない俺でも露ほども解明できていない。
男で理解できる奴なんて涼以外いるのだろうか?少なくとも俺にはさっぱりだ。
そうここあに告げたら理解できなくても理解する努力ぐらい見せてほしいと言われた、もっともだ、ぐうの音も出ない。
それでも、それでもだ。俺は今いる状況について物申したい、声を大にして言わせてほしい。
乙女心など理解できてたまるか!
しかし、俺の熱い叫びは心のうちにと押し込められた。理由は簡単、今そんなことができる状況ではないから。
ではどんな状況だろうか。
目の前には不機嫌な部長が一人、3DSではなくスマホを持っている。しかもゲームをやるためではない、珍しい。
不機嫌なのだ。今回こそは俺は何もしていない、と言ったら嘘になるが心当たりこそないのだ。
そう、そのスマホの画面に映し出されるものこそ俺の頭痛の原因だった。
心理テスト、何に影響されたのか部長がやりたいと言い出した。
俺も小学生の時によくやったなと遠い記憶が思い出される。
懐かしい気持ちで、和気藹々とやることになった、はずだったのに……。
この惨状である。俺が質問に答えていくたびに不機嫌になっていく部長。何故だ!わからない。助けてくれ……涼、ここあ、ついでにみりあ。
「はい次の質問です。晴翔くんは自分が漫才コンビで言うならボケかツッコミかどっち?」
「そうですね、部活でのいつもの状態を鑑みるに自他共に認めるツッコミでしょう」
「ええと、そんなあなたは異性とは距離を置きがちなタイプ。はぁー、これだから奥手の陰キャは……」
「ひどい言われようですね」
「あなたが「砂漠」と聞いて思い浮かぶものは、次の4つのアイテムの中のどれでしょうか?1.オアシス、2.ラクダ、3.月、4.ストールなど、顔を覆う衣服」
「その中ではオアシスですかね」
「オアシスを選んだあなたは相手を期待させてしまうホスト系。晴翔くんはそうだね、そうだよね」
より一層不機嫌になった部長が、不機嫌そうにため息をつく。どうしろって言うのだ。
ため息をつきたいのは俺のほうだというのに。しかし万が一俺がため息でもついたものなら何をされるか分かったものじゃない。
最悪のケースだと部長から飛び火してここあ、みりあの自称乙女同盟にもぼこぼこにされる気がする。
俺の中の生存本能がため息だけはつくなと告げてくる。それならば本能よ、心理テストの正解も教えてくれよ。
「ため息をつくと幸せが逃げますよ」
「ため息つかせているのは晴翔くんだからね」
「俺はそのつもりはないのですが……」
「鈍感、ニブチン、ラノベ主人公」
「そ、そろそろゲームでもしませんか!」
「次いくよ」
ゲーム部の趣旨に乗っ取った健全な部活動を明るく提案したが一考の価値もなく却下された。
仕方がない、こうなったら部長が喜ぶ答えを考えよう。心理テストで自分の深層意識を明かすという本来の目的はどこかに消えていった。
それも仕方がないと思う、なによりも優先されるのは俺の安全であり、平穏な部活動だからである。
「すぐに思い浮かぶ異性を3人あげてください」
「ま、まず浮かぶのは部長!あなたです」
「次は?」
「み、みりあですかね」
「最後は?」
「ここあが浮かびました!」
薄氷の上を歩くが如き慎重さ。これは完璧な回答だろう。
まずは部長、次にゲーム部つながりでみりあ、ここあを異性というより愛すべき妹だが浮かんでしまったので仕方がないだろう。
そもそも俺の交友関係が少なすぎて異性といわれて他に浮かばなかったのが原因だろう。
ふ、孤高の王である俺だがその高潔さゆえに近寄りがたい雰囲気を出してしまっているのだろう。
さあ、部長。これで満足でしょう、この勝負俺の勝ちです。
「どんな結果ですか?」
「……3番目にあげた人があなたが本当に好きな人です」
ほう、当たっているではないか。心理テストとは眉唾なものだとは思っていたがそうでもないものもあるらしいな。
あくまでここあは妹だから素晴らしいのであって、いやここあは他人から見ても十二分に素晴らしいが、異性というカテゴリには入らない気もするが。
大好きであることに間違いはないから問題ないな。
これで部長の機嫌も良くなってくれるとありがたいのだが。
「すごいですね、当たってますよそれ。さあ、部活動に戻りましょう」
「……晴翔くんはさ」
「なんですか?」
「狙ってやってるの?それとも素なの?」
俺の華麗なる予想とは裏腹に底冷えのするような部長の声。正直かなり怖い、それまでのホラゲの比にならない。
ホラゲとはあくまでゲームの中、画面の中の出来事であって実際に俺には危害は加わらないからな。
さっきまでの不機嫌な顔とは違い一周回って笑みを浮かべている部長、そこにいつもの慈愛などは見られずただただに迫力となって俺に圧し掛かる。
まずい、次の発言を間違えると確実に殺られる!
俺の灰色の脳細胞をフル稼働させる。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん!」
脳内ここあが呼びかけてくる。どうした?
「今こそ乙女心を理解すべきときだよ」
それがわかったら苦労はしないのだが……。
「もう、これだからお兄ちゃんは……。ヒントは今までの心理テストの傾向だよ」
……全部恋愛関係だったな。
「そこまでわかれば大丈夫だね」
……自惚れじゃないか?
「いつも厨二発言しているくせに今はそんなこと気にするの?」
ありがとう、脳内ここあ。今日帰ったらここあになにかお土産を買って帰ろう。甘いものとか喜ぶかな。
覚悟は決まった。
「部長は3番目にあげられたかったんですか? 」
あ、これはないな。
ごめん、ここあ。甘いものを買って帰ろうと思ったけど、お兄ちゃんまず生きて帰れないみたいだよ。
あぁ、最後にここあの歌声を聞いてからお別れしたかった。
不甲斐ない兄で許しておくれ。最後まで乙女心を理解することは出来なかった。
じゃあ、そろそろかな。怖いから目を瞑っておこう。
……
…………
………………
……………………あれ?なかなかお迎えは来ないようだ。
気になって目を開けると真っ赤になっている部長が見えた。
……まじか。これが正解か。いや、無理だって、わからないって普通。
「ぶ、部長?」
「ひゃいっ!」
「落ち着いてください……」
「う、うん!大丈夫だよ。私は落ち着いてる!」
「そうには見えないですが」
「で、だよ。晴翔くん、やっと理解してくれたね」
「はい、俺もようやくわかりました」
俺にも乙女心がわかった。だがこれを言葉にするのはどうも気恥ずかしい。
しかし、部長を見てみると大いに期待をしているみたいで顔を真っ赤にしながらチラチラとこちらを見てくる。
……正直破壊力が高い。
「部長、一度しか言わないのでちゃんと聞いてくださいね」
「はい」
「俺は……」
「俺は?」
「俺は……部長が好きですよ」
「うん、嬉しい!」
「もちろんみりあも、異性ではないけど涼も」
「はぁ!?」
「いや、恥ずかしいですけど言葉にしないとダメですよね」
広義の意味で好きには部長もいつもいがみ合ってるみりあも、異性だが涼も入るだろう。
部長の顔がより真っ赤になっている。小刻みにプルプル震えてる。
そんなに嬉しかったか。俺のキャラじゃないがこういうのも悪くはないな。
「……オアシスを選んだあなたは相手を期待させてしまうホスト系」
「どうしたんですか?」
「晴翔くんの……、ばかぁ!!!」
「えぇ……」
「このことはみりあちゃんとここあちゃんにも報告させてもらうからね!」
部長の感情は喜びではなく怒りだった。何故?
あぁ、これからの会議という名の晒し上げを考えると胃が痛い。
とりあえずここあには賄賂のための甘いものでも買って帰ろう。
やはり乙女心はわからない。