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晴翔くんと部長にイヤホン半分こをしてほしくて書きました。いつもより甘めです。

島袋彬

共有したい、共感したい。

島袋彬

5/14/2019 00:34
晴翔くんと部長にイヤホン半分こをしてほしくて書きました。
いつもより甘めです。

「お兄ちゃんはラノベ主人公でも目指しているのかな?」


ここあが呆れながら俺にそう告げてきた。

ここでのラノベ主人公とは所謂「難聴系主人公」や「鈍感系主人公」のことだろう。

失礼な、強く否定したかったが出来なかった。実際問題そうとられてもおかしくないような言動を繰り返している。

聞こえないわけじゃない、気付かないわけじゃない。聞こえたくない、気付きたくないだけなんだ。

あからさまに向けられる好意に対しての俺の答えは保留、関係性は現状維持。

あからさまに向けている好意に対しての彼女の答えは保留、関係性は現状維持。

今はまだ答えを出したくない、そう思ってしまうのだ。

それは些細な意地の張り合いだった。

俺達は、まだ、付き合っていない。



それはある日のこと、部長がいつものようにソファーに座っていた。

それ自体はなんにもおかしな所はない、ソファーはポケモンをやるときの定位置のようなものだし、ポケモン中に話しかけるのもあれだし、挨拶はあとでいいか。

俺もあんまり気にせず自分の定位置、PCの前に座った。

さて、なにから始めるかな。やることは山のようにあるぞ。そうだな、昨日撮った動画の編集でもするかな。


「こほん」


やることが決まってまさに作業に取りかかろうとしていた所に、わざとらしい咳払いが聞こえてくる。

……無視でいいだろう。今はかかり始めた俺のエンジンを止めたくない。さて、作業作業。


「おっほん」


二回目の咳払い、気のせいかさっきよりも刺々しさが増しているような気がする。咳払い一つで様々な感情を表現できるなんて流石部長だ。さて、作業作業。


「うぉっほん!」


三回目の咳払い、いや、これはもはや咳払いと言えるのだろうか?最終警告だとばかりに響いた部長の咳払いらしきなにか。

あ、こっちのことめっちゃ睨んでいる。……仕方がない、作業の手を一旦止めて話でも聞くとしよう。あまり長くならなければよいのだが。


「なんですか部長」

「あ、晴翔くん。来てたんだ、気がつかなかったなー」

「ポケモン中かと思って話しかけられませんでした。改めて、こんにちは、部長」

「こんにちは、晴翔くん」

「それじゃあ編集に戻りますね」

「うぉっほん!」


……誤魔化せなかったようだ。正しい答えを選ぶまでループするゲームの会話のようだった。

そういえば昔GCのカスタムロボというゲームで重要な会話でいいえを選び続けると何度も引き留められた挙げ句最後にゲームオーバーになることがあったな。

カスタムロボ懐かしいな、DSで最後に出たきりだし、最新作が出たらやってみようかな。身体が闘争を求めている。


「うぉっほん!」


はいはい、部長のことも忘れていませんよ。忘れたかったけど……。

そう思うとこの咳払いも俺のゲームオーバーへのカウントダウンのように感じてきた。

俺が選ぶべき行動は……。仕方がない、相手をしよう。

決して部長の放つ謎の迫力に屈したわけではない。俺からの慈悲だということをここに記しておこう。本当だぞ?


「なんでしょうか、なにかご用でしょうか?」

「あれ、晴翔くん。どうしたの?」

「いや、部長が呼んだんでしょ」

「私は特に呼んではいないよ」


はい、そうですか。

にこーっと、いい笑顔で答える部長。これっぽっちも胸がときめないな。

ならば別にいいだろう。作業に戻るとしよう。


「うぉっほん!」


……勘弁してください。


「部長」

「なになに?晴翔くん」

「少し静かにしてもらっていいですか?」

「えっ?やだ」


嘘だろ?殴り込みにいったはすがノータイムでカウンターしてきた。今日の部長は強いぞ。

普通、あそこまで言われたら「ごめんね」みたいな返しが来ると思うだろ?これがうちの部長だぜ、流石だな。

いや、衝撃的すぎて俺のキャラがぶれている。


「……わかりました」

「わくわく」

「それは口に出さないでください。ええと……、部長……」

「なになに?」

「今日は……いい天気ですね……」


……絞り出した解答がこれだった。いや、もうなにも言わないでくれ、俺だってわかっているさ。

気の利いたことがいえる性格ではないのは百も承知だ。でも、もう少しぐらいなにかあるだろ……。


「そうだね、今日は暑いくらいだもんね」

「最近一気に暖かくなったり、かと思ったら寒くなったりしますもんね」

「今日みたいな暑い日は編集なんか出来ないよ!」

「……いえ、そんなことはありませんが」

「出来ないよ!」

「いえ、そんなことありませんが」

「出来ないよ!」


どうやら今日はそういう日らしい。かまってくれというオーラが目で見えるぐらいだ。遊びたい盛りの子犬でもここまでではあるまい。

確かに暑くてやる気が出ないというのは正しい。だけど認めてやるのは癪だ。

部長が言うから仕方なく、そういうスタンスが取りたい。

……それって今部長がやっていることと同じではないのか?

咳払いで俺に話しかさせたのも自分からは言いたくなかったからで、編集が出来ないというのも自分に興味を向かせるため。

些細な意地の張り合い、傍から見たら意味のない行動に思えるかもしれない。

だけど俺らにとってはこれが大事だった


「はぁ、部長命令なら仕方がないですね。それでなにをすればいいんですか?」

「晴翔くんが自主的に私にかまってくれるとはいい心がけだね。そうだな、ここに座ってよ」


自分の座っているソファーの隣をぽんぽんと叩く。

そこである違和感に気が付く、3DSがない。ポケモンをやっていなかったな。

完全に今日はかまってもらいに来てたな。……厄日だと諦めるか。


「スマホ持ってますけど新たなアプリでも入れたんですか?」

「今日はアプリじゃなくてね、音楽聴いてたの」

「おや、珍しいこともあるものですね」

「なに聴いてたと思う?」

「けっせん!ディアルガ!」

「え?」

「知りません?ポケダンの曲ですよ」


ポケモンダンジョンのラスボスのBGM最初の笛から引き込まれ、緊張感を保ちつつ、激情のサビへ移行する。

敵対している相手の格を認識させられる、まさに名曲と呼ぶにふさわしい一曲だろう。


「いや、知ってはいるけど。どうしてその曲だと思ったの?」

「俺がポケモン関連で一番好きな曲なので」

「私情に走っちゃったか。残念、外れです!」


まあそうだろう。そもそもヒントがない状態で当てろと言う方が酷だろう。

俺は超能力者でも心理学者でもない、どちらかと言えば鈍感と言われる類いの人間だからな。


「それじゃ答え合わせをしようか」

「なんですか?」

「はい、これつけて」


差し出されたのはイヤホンの片方、当然コードの先にはスマホと、片耳着けたままの部長がいる。

これは俗に言うイヤホン半分こというやつではないのだろうか?あのカップルがよくやってるやつ。

俺から言わせるとナンセンス、音楽は考えられて左右に振り分けてあるのにそれを乱すなんて考えられない。

……ほんの少しだけ嫉妬が入っているのは認めよう。


「嫌ですよ」

「なんで?!」

「なんでもです」

「間違えたから罰ゲームとして」

「あんなノーヒントなのゲームにもなりませんよ」

「じゃあヒントがあったらいいのね」


にやっと部長の口角が上がる。絶対的な自信があるのだろう。

……この勝負多分負ける。だが、負けるからといって挑まないのは俺の王としてのプライドが拒む。

売られた喧嘩を買ってみせよう。負けを譲受するのではない、か細い勝利の糸を掴むのだ。


「それじゃあヒントください」

「お、やる気だね!まず男性ボーカルだよ」

「大体半分ぐらいに、と言っても気休めですね」

「今これを聴いている理由は歌詞に共感するからだね、泣いちゃうくらい」

「部長が共感できる……、クラブミュージックとかではないと」

「なんか失礼じゃない?それとこの曲は晴翔くんも知っています」

「そうじゃないと勝負になりませんからね」

「さあ、当ててみて!」

「えっ、これだけですか?」

「うん、それぐらいあれば大丈夫でしょ?」


大丈夫なはずがない。あまりにも判断材料が少なすぎるだろ。

しかし、これ以上質問したところで有益な情報をもらえるわけでもないだろう。

ならばあてずっぽうでいいだろう。最初の答えからなにも進歩していない。


「バンプのオンリーロンリーグローリー」

「違います!ていうかロンリーから私を連想したでしょ!」

「……違います」

「そういうことは目を見て言ってくれるかな?」


いや、そんなところもあることは否定しません。それでもほんの少しだけです、本当ですよ?

部長ならいつか栄光を掴み取れるだろうという俺からの願いを込めた選曲ですよ。


「これで晴翔くんも文句ないでしょ?」

「はいはい、わかりましたよ。片方貸してください」

「本当は最初からしたかったくせに。晴翔くんを素直にさせてあげるのも楽じゃないな」


部長の中では俺がやりたかったけど恥ずかしくて出来なかったと変換されているらしい。

俺は部長が意地悪なゲームではめてきたから仕方なくやるだけだというのに。

差し出されるイヤホンの片方、コードの届く長さには限界がある。

つまりは肩が触れあうか触れあわないか、二人の距離はそんなしかなくなる。

横を見るとご満悦な部長に胸がドキドキする。ふわっと部長のいい香りがして脳がクラクラする。

これだから嫌だったんだ。

少しでも意識を紛らわせようとイヤホンから流れてくる音楽に集中すると、それは疎い俺でも知っているくらいには流行っているラブソングだった。


「ね、歌詞に共感できるでしょ?」

「泣けるくらい出来ませんね」

「むっ、わざわざ晴翔くんのために男性ボーカルにしたのに」

「俺は流行りの曲のようなテンプレ的な男ではありませんよ」

「相変わらずひねくれものだなぁ。じゃあ次は私の心情を表した曲」


そう言って新しい曲を流し始めた。いや、間違いない。これは何度も聴いたことある曲だ。


「ここあのメルトですか。いいセンスしてますね」

「それはどうも」


ここあのかわいらしい歌声にしばし癒された。

部長が行動を起こしたのはサビに差し掛かるときだった。

元々近かった距離を更に詰める、俺の肩に頭を乗せてきた。

文句を言おうと首だけそちらに向けると、上目遣いの部長と目があった。


「メルト 溶けてしまいそう 好きだなんて絶対に言えない♪」


そんなに楽しそうに、ニコニコしながら歌うだなんて。

部長は今、歌詞に共感しているのですか?

それなら……。


「目も合わせられないんじゃないんですか?」

「なんのことかな、私はただ歌っているだけだよ」


だからコロコロと笑わないでください。惚れ直してしまいます。

だって、君のことが好きだから。


「……なんてね」

「どうしたの?」

「いや、少し歌っただけですよ」

「次はなにを聴きたい?」

「そうですね、ここあの君の知らない物語なんてどうでしょうか?」

「却下!私泣くよ!今すぐ大声で泣くよ!」

「冗談です。だからそんな顔しないでください」

「……晴翔くんの意地悪」

「はいはい、じゃあ愛を込めて花束をなんてどうでしょうか?」

「いいね!晴翔くんは私に花束を送ってくれる?」

「今だとカーネーションとか安いでしょうか?」

「完全に売れ残りじゃん!もっとバラとかさ」

「15本とか送りますか?」

「……意味は?」

「ごめんなさいでしたっけ」

「もー!無駄に知識豊富な癖にひねくれものなんだから!」


そういうあなたか素直なだけです。ころころと変わる表情がいとおしくていつまでも見ていたいです。

ひねくれものだから絶対に言葉には出さないけど。


「ふっ」

「あ、なんで今笑ったの!?」

「いえ、なんでもないです。それより早く聴きましょう」


いつか、花束を渡したら彼女は喜んでくれるだろうか。そんなことを考えてしまう。

そんなことはわからない。ただいまは彼女の手に俺の手を重ねることぐらいなら許されるだろう。

そのとき部長がどう反応するのか、楽しみで仕方がない。

この時間が永遠に続けばと祈った。







「え、まだ付き合ってないの?!」



ここあが呆れながら俺にそう告げてきた。


「私の曲をだしにいちゃついていたのに?」

「……なんで知っているんだ?」

「楓先輩から全部聞いた」

「うぐぐ……」

「もう、二人ともなにやっているの。早く付き合っちゃいなよ」

「そうは言っても、今の関係が心地いいんだよ」

「わからない、お兄ちゃんも楓先輩もなんにもわからない!」


あからさまに向けられる好意に対しての俺の答えは保留、関係性は現状維持。

あからさまに向けている好意に対しての彼女の答えは保留、関係性は現状維持。

今はまだ答えを出したくない、そう思ってしまうのだ。

それは些細な意地の張り合いだった。

俺達は、まだ、付き合っていない。


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