アニメ見てきりしらにはまりました。が供給が少ないので自分で書くことにしました。
夏の初めに書き始めたのに夏の終わりに完成しました。
「待ちに待った夏休みデース!」
いつも高い切ちゃんのテンションが更に三割増しで高くなっている。それも仕方がないことだろう、今日からは夏休みなのだから。
そういう私も頬の緩みを抑えることが出来ていないと思う。
「調、早速遊ぶデス。夏は待ってくれないデスよ!」
「もう……、切ちゃん。浮かれすぎはダメだってクリス先輩も言ってたでしょ」
「試験だって頑張ってきたんですから、少しぐらいは課題も忘れて遊んでもバチは当たらないはずデス」
「うーん、そうかもしれないけど……」
思い出すのも辛い試験勉強の日々、クリス先輩にみっちりしごかれた……。その結果もあってか私も切ちゃんも思ってた以上に結果はよかった。
二人して先輩に見せに行ったら「すごいじゃないか」と誉めてくれたけど、ちらりと見えた先輩の成績は私たちの遥か上だった。
あんなにも私たちの勉強を見てくれていたのに……、いつの間に自分の勉強をしていたのだろうか。
そんな先輩に夏休みの課題をしっかりやるように申し付けられた。だから気合いを入れてやらなければ。
「どこまで進んでるか、ちょくちょく確認に来るかンな」と言っていたので、夏休みになったからといって気を抜いた生活をしていてはダメだろう。
ここは心を鬼にして切ちゃんに告げるべき、それが今の私の役目だ。
「切ちゃん、クリス先輩との約束忘れちゃったの?」
「今日ぐらい大丈夫デース!クリス先輩も鬼じゃないです」
「勉強は重ねていくことが大事なんだよ」
「うぐ……、でもでも、お祭り、流し素麺、プール、スイカ割り、肝だめし、かき氷!どれもこれもやってみたいデス!楽しみデース!」
「ちょくちょく食べ物が入ってなかったかな。うーん、でも私もやってみたいかも」
「デスデス、調と一緒だったら絶対楽しいデス!」
切ちゃんの笑顔が本当に楽しそうで私まで心が傾きかけてしまう。私は切ちゃんの笑顔には滅法弱いのだ。
そしてなにより私と一緒と言ってくれたのが嬉しかった。
今日くらい……いいよね。
「なんと、今日は近所でお祭りをやるみたいデス。調、一緒に行くデス!」
お祭り……、なんて魅惑的な響きなんだろうか。伝聞でしか知らない出来事に胸が踊る。
「でも……私たち浴衣持ってないよ」
「ふっふっふっ……、常識人の私に抜かりはないのデス。近所のお祭りは規模が小さくて、逆に浴衣を着ないのが正解なんデス」
「そうなの?さすが切ちゃん」
「善は急げデス。調、早速準備するデス」
ウキウキの切ちゃんに手を引かれてやってきた公園では、すでに楽しげな音が響いていた。
切ちゃんの言った通り浴衣姿の人たちは殆どおらず、的屋のおじさんたちが法被を来ているくらいだった。
小中学生が多く見られるがちらほらと学校で見かけたことがあるような人も存在する。
「いやー、盛り上がってますなー」
「そうだね。まずはうまいものマップを作るの?」
「うーん、それもいいデスが。長い夏休み、どこまで資金が持つか不安なところもあるデス。今日は少し狙いを絞ってまわるデス」
「その考えはいいと思うよ。どこ行くの?」
「うーん、イカ焼きも美味しそうだし焼きそばも捨てがたいデス。なんにしても予算が……」
「じゃあ、あれなんてどうかな?」
私の指差した先には公園の中央に配置された矢倉、楽しげな音の主な発信源。
今まさにカラオケ大会がやっていた。
飛び入り参加大歓迎とのことだ。優勝者にはこの大会で使える商品券、これを逃すすべはないだろう。
大丈夫、切ちゃんと一緒なら優勝だって出来るはず。
「おお、流石調デス。調と一緒だったら優勝もなんのそのデス!」
切ちゃんも同じ気持ちだったんだ、よかった。
「じゃあ曲はアレでいくデス」
「そうだね、アレだね」
『ますます盛り上げを見せるカラオケ大会。さてさて、次の挑戦者に名乗りですものはいないでしょうか?』
「はいデス!」
『おお!元気のいいそこのお嬢さん、お願いします!』
「調、行くデス」
「うん」
曲はいつぞや披露したツヴァイウィングのORBITAL BEAT、あのあと翼さんにもお墨付きをもらえた一曲だ。
装者としてではなく、戦うためじゃなく、自分達のために歌う。それは今が平和だから出来ることで……。
切ちゃんが隣にいて、歌っているだけでこんなに幸せになれる。
「いやー、優勝できてよかったデスなー」
「2000円分なんて太っ腹だね」
「大金デス!」
軍資金も手に入れた私たちは満を持して屋台を巡り始める。
焼きそばもイカ焼きもかき氷も、二人でわけあえば二倍楽しめることを私は知っていた。
「切ちゃん、その焼きそば美味しい?」
「美味しいデスよ」
「あーん」
「どうしたんデスか?」
「あーん」
「いやいや、調。ここではちょっと恥ずかしいデスよ」
「あーん」
「なかなかに強情デス。ううむ、あーん」
「あーん」
「……どうデスか?」
「うん、切ちゃんが食べさせてくれたから美味しいよ」
「……それはよかったデス」
少し納得いってない顔してるね。だけどこういう時私が引かないのをわかってるから折れるのもはやかった。
切ちゃんの赤面も見れて美味しいものも食べられて一石二鳥。クリス先輩がいたら絶対に怒ってるだろうな。
「そんなに笑顔ってことはすごく好みの味だったんデスね」
「それだけじゃないけど」
「それよりもあっちに人が集まってるみたいデス。あたしたちも行くデス!」
「ちょっと待ってよ、切ちゃん」
私の手を取って人だかりに向かおうとしている切ちゃん。気持ちがはやりすぎて私を引っ張る形になっている。
もう、切ちゃんは強引だ。……だけど嫌いではない。
「なにが始まるんデスかね?」
「たくさん紐にぶら下がってるね」
『これからナイアガラ花火を始めます』
「花火?花火ってあの花火デスか?!」
「こんなに近くで見て大丈夫なのかな?」
花火は空に打ちあがって爆発するもの、それは私達の知識にもある。だけどみんな逃げたりしないで楽しそうにしているってことはこれでも大丈夫なのかな。
切ちゃんが握って手を少しだけ強めてきて、緊張しているのが伝わってくる。
そうしているうちに点火されたナイアガラ花火、私達の前に光の壁が出現した。
流れる火の粉が滝のようで、名前の由来をようやく理解することが出来た。
ちらっと横を確認すると切ちゃんの顔が花火の光に照らされて、幼い少女のように顔を輝かせていた。多分私もそんな顔をしているのだろう。
知っていた……つもりではあった、だけど知らなかった。花火がこんなにも綺麗なんて。
「綺麗デス……」
「……そうだね」
願わくば、ずっと花火が続いてくれたらいいのに。だけどそうでないことも知っていた。
だからこそ綺麗だって、知っていた。
……ふとあることに気が付いた。切ちゃんがいつもより強く私の手を握っている。
どうしてだろうと隣を見てみると口を真一文字に結び真剣な顔をしていた。
目線だけは花火から離さないで、なにかを祈るように。
これは気が付かない振りをすべきなのだろうか。多分そうだろう。
切ちゃんのことだったらなんでもわかるつもりだ。そして今、なにを思っているのかも。
この気持ちが私の自惚れでなかったのなら、嬉しい。そうさせてよね、切ちゃん。
「いやー、今日は楽しかったデス!」
「私も楽しかった」
「綺麗だったデス」
「綺麗だったね」
満足な顔が二つ、帰り道。熱がさめやらない私達は同じことを繰り返しながら帰っていた。
「でも、夏はまだ始まったばかりなのデス。明日も明後日も明々後日も、楽しいことがいっぱい待ってるのデス」
「夏休みの課題もいっぱい待ってるいるよ」
「それは言わないで欲しいデス……」
「明日あたりクリス先輩にお願いして勉強見てもらおうね」
「うう、せっかく試験終わったと思ったのデスが」
「楽しいことはその後ね」
まだまだ楽しいことはたくさんあるだろう。そのためにもやることは終わらせなければ。
まだ夏は始まったばかりなのだから。