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大学入試共通テストの記述式問題、AIやPCが使えないことも断念の理由に (1/3)

» 2019年12月23日 07時00分 公開
[産経新聞]
産経新聞

 〈大学入学共通テストにおける英語民間試験活用の「延期」発表から約1カ月半。萩生田光一文部科学相は17日、国語・数学の記述式問題導入の見送りを発表した。大学入試や高校・大学教育改革の先駆けとして2021年1月に実施される共通テストの在り方そのものが問われる事態となっている〉

photo 大学での教育のあり方について語る南風原朝和・東大名誉教授=東京・南麻布(酒巻俊介撮影)

人海戦術の破綻

 「私が、『大学入試改革のかたち』を議論する高大接続システム改革会議(文科省設置、15年春~16年春)の委員をしていた当時、国語をはじめ、記述式問題についてはまず答案を機械に読み取らせてクラスタ(集団)に分けた後、人間が採点する――といった手法も検討されていました。これならば、共通テストの受験生の総数である約50万種類ではなく、クラスタごとにみればよいから採点がかなり効率化される、という話でした。

 ところが、いざ機械に読ませてクラスタリングしてみると、『あれ? なんでこの答案はこの答案と同じに分類されるのだ』というケースが続出し、また、それ以前に、読み取れない文字が多くて、計画は結局頓挫しました。いかに人間の手書きを判読するのが難しいか、ということです。このため、一切人工知能(AI)やPCを使うことなく、約50万の答案を一つ一つ採点するという古典的な人海戦術を取らざるをえなくなりました。このあたりは記述式問題の導入に積極的だった方々には想定外だったでしょう。

 さて、そうなると当然持ち上がるのは、『この膨大な答案を誰が採点するのか』という問題です。文科省からの委託を受けた民間企業は、優秀な人材を選抜して研修させる、としていました。ところが、50万人を採点するには、8千人から1万人の採点者が必要といいます。この人たち全てが『優秀』という絶対評価の基準を満たしているのか。大きな疑問符がつきます。

 教員としての経験からいえば、記述式の答案はかなりの難物です。それを正確に採点できるほど優秀で、20日間にわたって専従する時間がある。そんな方は日本にいったい何人いるのか。そう考えると、『優秀な採点者の確保』だけですでに破綻しかけていると言わざるをえません」

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