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中日春秋(朝刊コラム)

中日春秋

 「上を向いて歩こう」「夢であいましょう」などの作詞・永六輔、作曲・中村八大の「六・八」コンビに水原弘さんの「黄昏のビギン」(一九五九年)という歌がある。<雨に濡(ぬ)れてた たそがれの街>。ちあきなおみさんの艶っぽいバージョンが人気か

▼作詞者に永六輔とあるが、実は作詞も中村さんだそうだ。永さんが語っている。「僕じゃないんです。でも八大さんが『君にしておくね』って。八大さんとは大学の先輩後輩の関係でしょ。だから反対できないんです。全部はいって」

▼後輩に花を持たせる先輩の心配りの「指示」なら、まだほほ笑ましいが、世間を騒がせる総務省の先輩後輩の関係にはため息しかない。かんぽ不正をめぐる処分情報を日本郵政の幹部に対し、総務省の次官が漏らしていた不祥事である

▼情報を聞いていた日本郵政幹部も同じ総務省の元次官。日本郵政を叱るべき総務省の最高幹部が大臣室で聞いた話を先輩に「耳打ち」とは紛れもない癒着であり、国民への裏切りである

▼その動機は先輩への義理立てや情ばかりではないだろう。自分もいずれはどこかへ天下って後輩からの情報が必要になるかもしれぬ。次官が守りたかったのは天下りを背景にした先輩後輩のあしき伝統と仕組みそのものではなかったか

▼根は深い。<天(下り)に濡れてた たそがれの…>。戯(ざ)れ歌までが怒りで震える。

 

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