政府が過去最大規模の来年度予算案を閣議決定した。消費税率引き上げで税収増が見込まれる中、大盤振る舞いが目立つ。借金体質も変わっておらず、財政規律の緩みに強い監視の目が必要だ。
麻生財務相は予算案について「経済再生と財政健全化の両立を図る」と述べた。しかし、健全化の道筋については不透明と言わざるを得ない。
確かに新規国債の発行額は十年連続で減っている。だが国の財布である一般会計の歳入の三割を国債に頼っている状態は依然、続いている。
さらに国債の引受先の多くは、銀行を経由しているものの日銀である。日銀の国債保有残高はすでに国内総生産(GDP)に匹敵する五百兆円に達している。国内外の経済専門家からは、日本の中央銀行の財務状況を不安視する指摘さえ出ている。
今回、歳出規模が一段と膨張したのは社会保障費の増大に加え、消費税増税後の景気の落ち込みに配慮した経済対策の一部を、「臨時・特別の措置」として本年度に引き続き盛り込んだためだ。
経済対策には約四兆三千億円が本年度ベースの一般会計からも補正予算として支出される。これに特別会計や地方自治体が負担する分なども合わせれば計約十三兆二千億円の公費投入だ。
消費税増税は将来の社会保障に備え、次世代の借金を少しでも減らすために踏み切ったはずだ。政府は足元の景気について「緩やかな回復」との見方を維持している。景気に不安がないのなら、これほど大規模な新たな財政負担は必要ないのではないか。
一方、政府は税制面で企業に手厚い政策を続けてきた。来年度の税制改正大綱にも大手携帯電話会社などが対象となる優遇措置を盛り込んだ。一部の大手企業やIT関連企業が財務上のテクニックを駆使して節税を続けているのも否定しがたい事実だ。
こうした中、政府は「全世代に公平に負担してもらう」として消費税増税を実施した。もっとも税を取りやすい上、収入格差も横たわる国民に負担を求めた形だ。その判断をした以上、極限まで歳出削減に努めるのは最低限の義務であろう。
増税で新たな財源が確保されれば、これまで以上に歳出圧力が高まることは容易に想像がつく。財政当局には、その圧力をはねのけ国民のための長期ビジョンを描く胆力を求めたい。
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