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 トランプ米大統領の求めに呼応するかのように、米国製の高額な最新鋭兵器を買いまくることが、防衛予算のあり方をゆがめはしないか。厳しい財政事情の下、その費用対効果が厳しく吟味されなければならない。

 安倍政権が決めた2020年度の当初予算案で、防衛費が今年度当初に比べ、1・1%増の5兆3133億円となり、6年連続で過去最大を更新した。

 文教・科学振興費(5兆5055億円)に匹敵し、公共事業費(6兆8571億円)に近づく規模である。社会保障費の自然増などで財政の硬直化が進むなか、防衛予算を聖域化することなく、国民生活全体に目配りした配分が必要だ。

 専守防衛からの逸脱だとして、朝日新聞の社説が一貫して反対してきた護衛艦の空母への改修に31億円が計上された。そこで運用される米国製の最新鋭ステルス戦闘機F35Bは、まず6機を793億円で購入する。

 陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」には、配備先がまだ決まっていないというのに、米国からの発射装置の取得などに129億円を投じる。最終的には東西2基で5千億円を超える巨額の事業である。国会の予算審議では、導入の是非から議論するよう、改めて強く求める。

 安倍首相は1月の施政方針演説で、安全保障環境の激変に対応した防衛力の構築に向け、「従来とは抜本的に異なる速度で変革を推し進める」と語った。その帰結が米国製兵器の大量購入だとすれば、トランプ氏への政治的配慮が優先され、妥当性の分析がおろそかになっていると言わざるを得ない。

 安倍政権下ではすでに、米政府から直接兵器を買う有償軍事援助(FMS)が急増している。11年度の432億円が、19年度は7013億円に。20年度も4713億円と高い水準だ。

 高額な兵器は複数年の分割払いとなるため、「後年度負担」が将来の予算を圧迫する。20年度の契約に基づき、21年度以降に支払われる額は2兆5633億円にのぼり、訓練など本来必要な予算にしわ寄せが及ぶことが懸念される。

 昨年末に改定された「防衛計画の大綱」「中期防衛力整備計画」は、陸海空にとどまらず、宇宙やサイバー空間といった新たな領域への対応を掲げた。ただ、今回の予算案全体を見渡しても、さまざまな課題への優先順位は明確でない。

 徹底した取捨選択を進め、効率的な防衛力のあり方を主体的に考え抜かねばならない。近隣外交による緊張緩和を地道に進めながら、日本の安全保障を確かなものとすべきだ。

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