Conversation

Replying to
結論だけ書くと、(1)アイデンティティとシティズンシップを単純な二項対立だと捉えてしまうと、(2)とくに同化主義の弊害に無頓着な人ほど、この種の誤謬を抱え込みやすい、ということ。(だから、日本でアイデンティティポリティクスの話題はいつもこういうノリになる。正直、聞き飽きた。)
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また今度というか、すでにこれまでに何度も論じてきたことではあるのだけど、日本の論者がアイデンティティポリティクスなり多文化主義なりを論じるときって、非常に高い確率で、同じ間違いを犯しがちなんだよね。
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間違いとは、第一に、多文化主義の弊害を乗り越える方策として同化主義(つまり日本で一般的な価値観)を称揚しようとすること、第二に、欧米と日本とでは多文化主義をめぐる状況が根本的に異なるのに、欧米の議論をそのまま日本に持ち込もうとすること。
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第一の点について、なぜ「何も分かっちゃいない」とまで断言しているかというと、欧米の多文化主義の議論においては、「同化主義というのは実質的には人種主義とかわるところがないので、いかに多文化主義に弊害があるといえども、同化主義に戻ろうという主張は許されない」というのが大前提だから。
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ところが、大前提というのは「みんなが当然わかっていること」だから、案外、言葉に出しては語られなかったりするんだよね。つまり、多文化主義なりアイデンティティポリティクスなりについて書かれた論文や本を読んでも、いちいち「同化主義には戻っちゃいけない」なんて書かれてはいないことが多い。
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そうすると、同化主義の問題性に無頓着な日本の学者さんなんかは、《書かれていない大前提》に気づかなかったりするんだよ。そして、「大前提」抜きの知識の上に構築された議論は、おのずと「空論」としか呼びようがないシロモノになってしまう。
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どうして「空論」とまで断言しているかというと、それは前述した第二の間違いを引き起こしてしまうから。欧米諸国は1960年代半ば以降のアイデンティティポリティクスの高まりを受けて、アイデンティティポリティクスを尊重する理念、すなわち多文化主義を国家統合の重要な要素として採用していった。
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そこから数十年に及ぶ多文化主義政策の実践の中で、多文化主義の弊害も明らかになったし、したがって多文化主義への反発も生じてきたのだけど、少なくともその数十年の間に、同化主義に起因する人権侵害は大幅に減少したんだよ。ここ大事。
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ところが日本では、1960年代にアイデンティティポリティクスは生じたというのに、その価値を承認する理念は普及しなかった。そして、現在に至るまで、一度たりとも、多文化主義が日本の支配的な理念になったことはない。したがって、同化主義に起因する人権侵害は放置されたままだ。
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そんな状況で「多文化主義には限界があります」なんて日本語で書き散らすのは、同化主義に起因する人権侵害に加担するようなものなんだよ。同化主義の否定が大前提となった国・地域の議論を、同化主義を理念として抱え込んだままの国・地域の状況に適用しちゃいけないというのは、そういうこと。
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例えば「ポリコレ疲れ」という言葉ね。日本では米英並みの「ポリコレ」なんて一度も行動規範として普及したことがない。だからレイシャルハラスメントが横行している。そんな状況で「いきすぎたポリコレは反発を生みます」とか知識人が言い散らかすのは、横行するレイハラを正当化するようなものなの。
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ということで、前述した二つの間違いを犯す人たちは、アイデンティティポリティクスなり多文化主義について何も分かっちゃいないし、同化主義がいかに悪辣な理念・制度なのか理解していない。したがって、日本の差別問題については何も分かっていないということ。
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以上を前提として件の記事を読むと、1ページ目に表が載ってるでしょ。「シティズンシップ」の「他集団との関係」に注目すると、「同化」とあるんだよね。端的に言って、間違ってる。このテーマの議論を知っている人なら、ここで「同化」という言葉は絶対に使わない。ふつうは「統合」と表現する。
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ちょっとした言葉の違いのように感じられるかもしれないけど、これは、決定的に重要な用語法なんだよ。だって、大前提として同化はダメなんだもの。くどいけど、専門家はここで大前提を理解していないと誤解されかねない「同化」という言葉はまず使わない。
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また、その直前に「差別を批判する論理は、アイデンティティからシティズンシップへ、と変わりつつある」と記述されているけど、これは「第二の間違い」そのもの。たしかに、欧米で多文化主義の支配力は揺るぎつつあるけれども、だからといって同化主義に戻れとまで主張するのは極右だけだ。
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つまり、従来の多文化主義政策に代わって支持を集めつつあるのは、あくまで同化主義に陥らない社会統合の新しい理念であって、同化主義ではない。同化主義を称揚する勢力も強くなってきているけど、それは「ファシスト」と呼ばれている。著者は両者の区別がついてないように見える。
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いや、この著者だけじゃなくて、多文化主義を扱う日本の論者がしばしば二つの間違いを犯すと書いた通り、日本では多くの人が、両者の区別をつけていない。この両者の違いがわからないところが、ぼくには、日本社会の病理のように思えてならない。
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あと、この連投の主題とはちょっとズレるけど、「マジョリティによるアイデンティティ・ポリティクスにエビデンスが悪用されている」(p.4)という記述には、強い違和感がある。というのも、アイデンティティポリティクスとか関係なく、差別を正当化するのに科学は悪用されてきたんだよ。もともと。
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同化主義よりさらにたちが悪いのは人種主義なのだけど、人種主義は科学の発達とともに普及したといっても過言ではなくてね。科学を装った人種主義には「科学的レイシズム」という名前が付いているというくらい、レイシズムは自己を正当化するためのエビデンスを無理やり作り出してきたんだよ。
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どこにでもある悪徳を、あたかもアイデンティティポリティクスだけが抱え込んでいる問題であるかのように論じるのは牽強付会といわざるをえない。無理やりアイデンティティポリティクスを否定したいんだなぁ、としか。
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P.5には人種と知能指数の相関について言及してあるのだけど、これには分厚い論争があってね。比較的最近だと「ベルカーブ論争」とか。論争の結論をはっきり言えば、「人種によって知能に差がある」という主張を裏付けるエビデンスなんて、ない。
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それ以前の問題として、「人種によって知能に差がある」というのは科学的レイシズムの基本的な言説なので、レイシズムを補強したくないのであれば、安易に「人種によって知能に差があるのではないか」みたいな放言を書き散らすのはやめたほうがいい。ましてやそれを「エビデンスがある」などとは。
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P.6の結論部分では、生得的な知能による支配を危惧しつつ「なにが差別なのか、なにが平等なのか」わからない、みたいな相対主義で話が終わってしまっているのだけど、いや、これってメリトクラシーの話だよね。マイケル・ヤングが『Rise of the Meritocracy』を書いたのは1958年だよ。
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ヤングが揶揄的に危惧したメリトクラシーの世の中は到来しなかった。その代わりに、より巧妙なハイパーメリトクラシーの時代がとっくに到来している。古くさい机上の空論でもって「なにが差別なのか」を相対化するのは、やめてほしい。
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