線路と道路両用「DMV」、ようやく四国で実用化

四国の阿佐海岸鉄道で2020年度から運行へ

阿佐海岸鉄道に導入されるDMVは3台。10月5日に3台展示イベントが開催された(筆者撮影)

徳島県と高知県の県境を走る阿佐海岸鉄道で、2020年度からDMV(デュアル・モード・ビークル)が運行予定だ。

DMVは鉄道線路と道路の両方を走行できる旅客車両で、マイクロバスを改造して造られるため、鉄道車両より安価で保守コストも低い。車体が軽く線路の保守コストも下がる。駅を離れ道路区間を巡回すれば、住宅や商業施設、病院へ客を送迎できる。閑散路線には最適な乗りものとして期待を集めた。

しかし、DMVの開発元のJR北海道では試験営業のみで実用化されなかった。その後、前述の利点に期待して各地のローカル鉄道が導入を試み、そのうちのいくつかの路線で試験運行も実施された。しかし、実用化には至らなかった。

その理由は主に2つ。「少ない定員」「信号設備」だった。

DMVの弱点とは?

地方の閑散としたローカル線といえども、通学生の利用は多い。廃止されず残されている路線のほとんどで同時に50人以上の乗車がある。むしろこれ以下の輸送量では鉄道システムを維持できず、バス転換や廃止になっている。

DMV(左)は阿佐海岸鉄道の現行車両(右)より小さい(特別な許可を得て筆者撮影)

DMVは座席が18、ポールをつかんで立つ場所は4人分ほど。50人を同時に運ぶとすれば、立ち客をぎゅっと詰めて2台続行運転となる。そうなると、1台の鉄道車両と2台分のDMV車両でコストが均衡するか、DMVが割高となる。2台運行するなら人件費は2倍だ。

「信号設備」はDMVのメリット「車体の軽さ」が逆効果になった。鉄道の主な信号保安設備は、2本のレールに微弱の信号電流を流して車両の通過を検知する。車両が通過すると、車輪と車軸を介して、2本のレールが通電するという仕組みだ。DMVは車体が軽いため検知の確実性が下がる。したがって、新たなDMV専用の保安システムが必要だ。

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  • しろうさぎf18e390e691a
    輸送力は小さくコストも高いようですし、「BRT転換しない」というメリットしか感じられませんでした。
    up5
    down0
    2019/12/22 10:57
  • phj by PC0dff3981b61a
    子供の頃から鉄道ファンなので、昔からDMVは知っていたし、ある意味憧れだった

    しかし、このサイトでDMVの課題を読むにつれ「DMVの必要性」に疑問を持つようになった

    阿佐海岸鉄道の場合は、条件がそろっているようだが、それでも単に「国道55号の補償ルート」という考え方ならガイドウェイ(DMB)やBRTのほうが、コストも少なくまた災害時にはトラックなどにルートを解放できるというメリットもある

    特にBRTは2両連結バスなどもあるので、DMVよりもコストは低いのになぜ導入が進まないのだろうか?
    またDMBなら、専用軌道部分は自動運転も可能だし、途中駅で運転手が乗って一般道で集客もできるだろう

    現在は廃線になった地域も線路の地盤がそのまま放置されている場所がたくさんある
    これら自動運転化したDMBなどで復活させるほうがDMVよりもよいのではないか
    up6
    down2
    2019/12/22 09:47
  • y-mk50500e25cea2
    既存の鉄道と共存しない前提で有れば、DMVで運行する必要は無いのではないか
    up0
    down1
    2019/12/22 11:41
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