東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社会 > 紙面から > 12月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【社会】

野田・小4虐待死 学校、昨年9月に異変察知

写真

 今年一月、千葉県野田市立小四年の栗原心愛(みあ)さん=当時(10)=が父親から虐待を受け死亡した事件で、通っていた小学校が昨年九月、登校した心愛さんの視線や姿勢がおかしいことに気付いていたことが、県などへの取材で分かった。登校の直前に休んだ一週間について「沖縄に行っていた」と事実と違う説明をしたが、その真偽も確認していなかった。異変の報告を受けた児童相談所も、家庭訪問などによる確認をしなかった。

 父親の勇一郎被告(42)=傷害致死罪などで起訴=がそれ以前、沖縄にいると虚偽の内容を学校へ伝えており、心愛さんは同じことを言わされていたか、自ら追従した可能性が高い。

 県の検証委員会は、昨年九月に事実確認を怠ったことが、今年一月の事件前の長期欠席に対する危機感の欠如につながったと指摘している。

 県の報告書によると、心愛さんは二〇一七年八月に沖縄県糸満市から野田市へ転入。同十一月に学校のアンケートで虐待を訴え、児相に一時保護された。心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断されたが、同十二月には一時保護が解除され、翌一八年一月に野田市がアンケート内容を父親に渡した。

 心愛さんはその後、野田市内の別の小学校に転校。夏休み明けの同九月三日、父親は学校へ「家族で沖縄の母の実家にいる。今週いっぱい休む」と連絡した。学校側はその際、実家と関係が悪いと聞いていたため、不自然と感じたという。

 心愛さんが登校したのは同九月十日で、「沖縄は楽しかった」「おばあちゃんは体調が悪いけど、入院はしていない」などと説明。教員は、心愛さんの姿勢がだらしなく、体調も悪そうだったほか、視線が外れがちで内履きを脱ぐなど普段と様子が違うことに気付いたが、体にあざなどがなかったことから、話の真偽を確認しなかった。

 傷害ほう助罪で有罪判決を受けた母親の公判などによると、心愛さんはこの時期に父からの暴力を父方の祖母に訴えていた。

 父親は、心愛さんの冬休みが明けた今年一月、学校に「沖縄にいる。二月から登校させる」と連絡。学校側は夏休み明けの例を踏まえて再び事実確認をせず、心愛さんは同一月二十四日に死亡した。

◆SOS出している 姿勢、におい…言葉でない「声」聞いて

<子どもの意見を代弁する「アドボケイト」制度を研究する大分大の栄留(えいどめ)里美助教の話> 子どもの「声」とは言葉に限らない。特に虐待を受けている子どもたちは、自分が悪いと思わされていたり、親を守ろうとしたりするため助けを求めにくい。そのため表情、服装、におい、発達状況など非言語的なSOSに気付く必要がある。

 千葉県の検証では、心愛さんは最後まで表情や姿勢でSOSを出し続けていた。学校から連絡を受けた児童相談所はなぜ、沖縄に本当にいたのかを調べたり、家庭訪問したりするなどの対応ができなかったのか非常に疑問だ。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報