女剣闘士見参!   作:dokkakuhei

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14話越しのフラグを回収する狂気の回。


前回の女剣闘士見参!

ツアー「くらえー(^ ^)」

ザイトルクワなんとかさん「ぐわー!」

アインズ・漆黒聖典「えっ。」

ハムスケ(就職先間違えた)

主人公「もう少しで歴史の闇に葬り去られるところだった。」






第23話 盲目の智者達

 漆黒聖典が急ぎ足で平野を駆ける。彼らは王国に入った時よりも速度を上げて、法国へととんぼ返りをしている最中である。

 

「なんだか王国に入る度にすぐさま追い返されてるよなぁ俺達。いや、普通はそうなんだけどさ。」

 

「次は不法侵入でなく正式なルートで入る事になりそうだな。あの仮面の男が我々の事を上に報告せず、かつ協力的であればの話だが。」

 

 隊員達は口々に今後の展望について話し合う。彼らは愚痴でも言っていなければ不安で押しつぶされてしまいそうになっていた。最近は強者としての自負を叩き潰されるようなイベントが立て続けに起こっている。

 

「よろしかったのですか?あの男、血を覚醒させた者だったのでは。…もしやするとぷれいやーなのでは?」

 

 クワイエッセが隊長に向かって話しかけた。クワイエッセはすぐにでも仮面の魔導師を法国にスカウトするべきだと考えていた。

 

「ああ、そうだな。ただ今は一刻を争う状況だ。あの場を穏便に済ませられただけで重畳だろう。対立だけは避けたかったからな。」

 

 隊長はクワイエッセと同じ考えを持っていたようだが、慎重に事を進めるべきだと判断したらしい。下手に勧誘して拗れてはまずいことになる。あの魔導師の力は来るべき竜達との戦いに必要不可欠だからだ。

 

「ていうかあの人だれ?」

 

 第七席次が小首を傾げて尋ねた。

 

「アインズ・ウール・ゴウンでしょう。この前の会議の資料を読まなかったんですか?」

 

 第二席次が呆れた風に両手を広げて言った。第七席次は優等生ぶる彼の嫌味に、んべぇ、と舌を出して応戦する。割といつもの光景だ。周りはそういった小競り合いを余所に会話を続ける。

 

「ガゼフ暗殺計画を阻止した張本人とこんなところで会うとはね。うちの仕業だってバレてなきゃいいけど。」

 

 ガゼフ暗殺計画はあの時、内通していた貴族派閥の連中から実は法国が画策したものだと情報が漏れていてもおかしくは無かったし、もしそうであれば、法国は裏切ると思われていても不思議ではない。

 

「あの男は陽光聖典の失踪に関わってる疑いがあるんでしょう?ニグンとあの男が戦ってたら、法国は敵だと認識されてるんじゃないかしら?」

 

「どうだろうな。それでも法国と組みするのを避けるとは思えん。王国だけではあの竜どもに対抗するすべがないのだから。」

 

「法国もうかうかしてられんぞ。評議国と戦うには各地に派遣している部隊を集結させねばならん。」

 

 隊員たちの言葉に隊長は深くため息を吐く。

 

「それより問題は上を通さずに勝手な約束をしてしまったことだ。主戦場が王国と評議国の国境線になり、共同戦線を張るのだから当然物資の援助をするという話になる。いったいどれだけになるのやら。交渉ごとを押し付ける形になった。」

 

「王国への使者の件ですか。まあ状況が状況ですし、事後承諾もやむなしでしょう。上も動いてくれますよ。」

 

「レイモン様にまた借り1つだ。」

 

 隊長に対するクワイエッセの慰めも、ここではむなしく響いた。

 

 

 ーーー

 

 

 ナザリック地下大墳墓、その中にある守護者統括のために用意された執務室。そこではアルベドが粛々と日々の業務をこなしている最中である。この日の作業は既に大詰めを迎えており、机の上にある書類は概ね"雑件"と"アインズ様稟伺"に仕分けされていた。仕分けが終わればその書類を自らアインズの元へ持って行けるので、彼女は上機嫌であった。

 

 本来、そのような雑事はメイドなりに任せれば良いのだが、アルベドが誰にも咎められることなくアインズに近づける機会を手放すはずがなく、何かと理由をつけてアインズの私室に出入りしていた。

 

 アルベドがこの後行われるであろうアインズとの書面を見ながらの今後のナザリック運用計画(愛の共同作業)を思い描きながら、気持ち悪い笑みを浮かべていると、不意に執務室のドアが開かれた。妄想を邪魔されたアルベドは少し不機嫌になって、いきなり入ってきた不届者を見ると、それはデミウルゴスだった。

 

 彼は息を切らせながら膝に両手をつき、とても興奮した様子だった。何もかも投げ出して、一も二もなく全力でここまで来たといった有様で、事実その通りであった。

 

「何かしら。」

 

 アルベドは冷たく聞こえないぎりぎりの平坦な声で疑問符を投げた。それは彼女がデミウルゴスの用件について予想がついていたからで、丁度、彼女も()()について彼と話し合いたいと思っており、彼が突然執務室のドアを開けたことも不問にしていた。

 

 アルベドに会話を促されたデミウルゴスは呼吸を整えることもせず興奮冷めやらぬままに話し出す。

 

「今、トブの大森林で、進行中の、アインズ様の計画が、いや、計画の、話なのですが。」

 

「ええ、評議国の竜が来て巨大樹を消滅させ、そして一ヶ月後に人の国を占領すると言ったそうね。」

 

 まだ考えが纏まっていないのか、ぶつ切りの言葉を発するデミウルゴス。アルベドは要点を示して会話に指向性を持たせてやる。アルベドにたしなめられる形になったデミウルゴスは気恥ずかしさから苦笑いを漏らした。

 

「失礼、少し取り乱しているようです。」

 

「わかるわ。私も報告を聞いた時そうだったもの。」

 

 デミウルゴスは一つ大げさに咳払いをする。

 

「気を取り直して。これで元々の計画だった巨大樹を移動させて、アインズ様の王国内での地位向上を図ること及び巨大樹を法国と戦わせ、保有武力の威力偵察をすることは出来なくなった。」

 

「そして評議国と国境を接する王国は否応にでも戦火に巻き込まれる事になったわ。」

 

 2人はお互いの理解を確かめるように一つずつ現状確認をしていく。

 

「現在、ナザリックとして優先して行うべきなのは竜が大墳墓近くまで来た時に備えて最適な編成を組むこと。これはデミウルゴス、あなたに近々正式な指令が下るわ。私の権限で第二警戒体制発令文書を作成中よ。」

 

 デミウルゴスは防衛時におけるNPC指揮官を務める。外敵がナザリック地下大墳墓に侵入してきた場合は警戒レベルに基づき、1から7階層の防衛線を管理監督する立場にあるのだ。

 

「第二ですか。それで今はアウラから上がっている敵の情報を精査中というところですね?」

 

 アルベドはデミウルゴスの言葉に首肯で答える。2人の表情は深刻そのもの。デミウルゴスはゴクリと唾を飲み込んでアルベドを見る。

 

「それにしても、何というか、アインズ様は…。」

 

「ええ、そうね…。」

 

 

 

 

 

「「本当に素晴らしい!」わ!」

 

 

 

 

 彼らは揃えて声を上げる。歓喜のあまり声は少しばかり上ずって震えていた。

 

「まさかこんな形で世界征服を考えられていたとは。本当に素晴らしい!」

 

 アルベド達が考えた展望はこうだ。

 

 王国と評議国で戦端が開かれるが、戦争の主役は評議国と法国。現在判明しているこの世界での強者達が潰し合う形になる。周りの有象無象の国も戦火に巻き込まれどんどん疲弊していくだろう。

 

 王国はもちろん、地理的に次に狙われる帝国も黙って見ているはずがない。人間陣営側で参戦するはずだ。ナザリックにとって脅威になりそうな国や地理的に隣接している国は軒並み被害を受ける。

 

 後は弱ったところをまとめて征服する。仮想敵に囲まれた地理的不利をものともしない完璧な戦略である。特に素晴らしいのはナザリックにほとんど危険が及ばないことだ。ナザリックの存在を隠匿したまま、相手が弱るのをただ待つだけでどんどん有利になる。

 

「アインズ様はいつから考えてらっしゃったのだろうね。まったく、人が悪いというか。」

 

 やはりパンドラズ・アクターの言ったとおりだった。慈悲深いアインズ様はシモベ達を危機から遠ざけ、最も安全でコストのかからない世界征服を実現させようとしている。

 

 我々に何の被害を及ぼさないようなところで、邪魔者の排除を行う。何と効率的な方法だろうか。これだけの事をお一人だけの力で達成してしまうとは。

 

「ねえデミウルゴス。これは私もさっき聞いたのだけれど、竜は去り際に漆黒聖典の槍持ちに対して、"あの時の礼をしなければならん"と言ったそうよ。ふ、ふふ。」

 

「それがどうかしたのですか。」

 

 口元がにやけそうになるのを我慢するように話すアルベド。話の見えないデミウルゴスは不機嫌を滲ませた疑問を口に出す。

 

「竜の言う"あの時"っていうのはアインズ様がいきなりモモンに扮して出かけた時のことよ。ほら、シャルティア達と漆黒聖典が鉢合わせになった時があったでしょ?実はあの森に竜も居たのよ。そして槍持ちと戦闘になった。」

 

 デミウルゴスに電流走る。

 

 アインズ様は一番初めから世界大戦を起こす機会を伺っていたに違いない。少し前にモモンとして王国内に侵入していた漆黒聖典と接触したのも各国の緊張を高めるためにしたものだ。しかも、その時漆黒聖典とツァインドルクスが小競り合いをしていたというのだ。

 

 これが偶然なわけがない。紛れもなくアインズ様が誘導している。

 

 あの時アインズ様が突然、モモンとして外に出られたと聞いた時は首を傾げたものだ。たとえシモベを守るためにといってもシャルティア達と漆黒聖典の間にいきなり割って入るのは短慮に過ぎると思っていたのだ。アインズ様が安易にそんなことをするとは到底考えられず不思議に思っていたがやっと謎が解けた。

 

「モモンとして活動していたのも全てはこのためだったのか。いや、アインズ様のことだから別の意味もあるに違いない。」

 

 どの陣営にも所属していないモモンは戦況のバランサーを担うことが出来る。戦争が始まった後、竜か人の優勢な方を襲うことによって戦争の長期化を狙える。既にこの状況を見越して初めからモモンというモンスター像を作っていたのだ。

 

「私達の考えていた計画も修正が必要ね。」

 

 今回の作戦は戦争を引き起こす決め手となった。巨大樹はいわば強者達をおびき寄せるための餌だった。巨大樹移動作戦は戦争開始までのタイムリミットを格段に縮めさせて、世界征服完了までの所要ステップを三段階は飛ばしてハイペースで進行している。デミウルゴスとアルベドが考えていた計画も大幅に()()修正が必要だ。

 

 それにしても意外なのは竜があれほどの力を保有していた事だ。あれと前情報なしで正面からやり合えば、負けはせずとも無視できない被害があっただろう。しかしアインズ様はその竜の力でさえも予見していた。

 

 それは建前の巨大樹移動作戦の動員を見れば納得できる。大量の集眼の屍(アイボール・コープス)や幻術に長けた者を用意していたのは竜をおびき寄せ、能力値を正確に測るためだ。

 

 アインズ様はいつ竜の力を知ったのだろうか。いや、知ったのではない。この世界の情勢から読み取ったのだ。

 

 王国という斜陽の国があり、隆盛する帝国、法国があり、聖王国、竜王国、それに異形種国家の評議国がある中で、その立地、行動の一端から世界のパワーバランスを読み取った。そうでなければ説明がつかない。

 

 少し考えれば、人間至上主義を掲げる法国が周辺国家に比べて武力的に圧倒的優位に立っているにもかかわらず、あえて評議国を放置している事は不自然だったのだ。同じ人間国家の王国に気を使っているのかと思っても見たが、その実、単純に評議国が強かっただけの事。王国はつまるところ緩衝材で、直接評議国との戦端が開かれるのを避けるための意味合いに過ぎなかったのだ。

 

 アインズ様は漆黒聖典の強さを見て、評議国にもそれと同等かあるいはそれ以上の力を持った何者かがいる事を看破したのか。ということはモモンとして森に行ったのは直接漆黒聖典の強さを測る目的もあったのかもしれない。

 

「本当に素晴らしい、それしか言葉が見つからない。アインズ様の真なる叡智も、それに触れる事が出来る幸運も。」

 

 いつの間にかアルベドも興奮のあまり立ち上がって、口々にアインズを礼賛する言葉を唱える。2人でサルサでも踊り出しそうな勢いだった。無論、アインズに命令でもされない限り彼らはそのような事はしないが。

 

「全く、アインズ様には事象がどう見えているのだろうか。我々には想像もつかない環世界を持っているのでしょうね。」

 

環世界(ウンヴェルト)?ああ、ユクスキュル。そうねぇ、アインズ様の聡明さはただ思慮深いであったり、演算が速いといった次元の話ではないわ。私達には見えないものが見えているのだとしたら納得がいくわね。もしかすると思考のプロセスそのものが私達と違うのかも。」

 

「確かにそうです。脳で考えていないのですから。いや、そもそも考える器官を必要としていないのか。」

 

「きっと魔法で物事を知覚しているのではないかしら。」

 

「いつか機会があればその神秘について尋ねてみたいものです。」

 

 早口で話していたアルベド達はここでようやく一息つくことにした。デミウルゴスは<伝言(メッセージ)>を使って突然飛び出してきた本来の持ち場にいる部下に向かって連絡を取る。アルベドは書類作業を手早く済ませた。そこでアルベドは書類の山から一つの束を取り出してデミウルゴスに渡す。

 

「これ、アウラから上がってきた竜の能力値の第一報よ。先に貴方に渡して置くわ。」

 

 デミウルゴスは2秒ほど書面を眺め、思案する。

 

「ふむ、中々厄介ですね。ここのMP欄が空欄なのは?」

 

「判明しなかったらしいわ。原因究明中よ。」

 

「そうですか。私はそろそろ今の持ち場に戻らせてもらいます。今から忙しくなりますからいつでも後任に引き継げる準備をしておかないと。」

 

「デミウルゴス、あなたのする事は分かっているわね?」

 

「はい、八本指の情報ネットワークを使い、今回の巨大樹騒ぎを解決したのはアインズ様であり、評議国はアインズ様の力に恐れをなして宣戦布告したという噂を流します。」

 

 いずれ法国からアインズ様宛に使者が来る。王国内で対評議国作戦の中心になる宮廷魔術師アインズの地位は否応無く上がる。アインズ様を抱える第一王子派の勢力は増し、そしてそのパワーバランスをアインズ様に依存している以上、アインズ様の発言力が絶大なものとなる。当初からの目的だった傀儡化が更に進むのだ。

 

「よろしい。」

 

「では。」

 

 恭しく礼をするデミウルゴス。アルベドはいつものように口元に薄い笑みを浮かべて、彼を送り出した。

 

 足早にアルベドの執務室を出たデミウルゴスは頭の中でこれから仕事の手順を繰り返しシミュレートする。今の今までアインズ様に任せきりだったのだ。命令に先んじて行動できるように考えを巡らせておかねばならない。それにここまでお膳立てして頂いた後は我々シモベだけでもやれる。そろそろ自分にお声が掛かってもいい頃だ。

 

 そんなことを考えていると<伝言(メッセージ)>が入った。送り主はアインズだった。

 

『あ、デミウルゴスか?ち、ちょっと今後のことについて話したいことがあるんだが、』

 

『はっ!すぐに参ります!』

 

『い、いや、す、すまん。時間と場所はこちらから後で指定する。とりあえず仕事を続けてくれ。』

 

『承知いたしました!』

 

 デミウルゴスの気合の入った返事の後、アインズはすぐ<伝言(メッセージ)>を切った。主は心なしかいつもの威厳のある口調ではなく、何やら気圧されたような、焦った口調だった。

 

 今までは緻密な計画を遂行するためにどうしてもアインズ様主導で行わなければならなかった。それは我々が力不足である故の致し方ない事であるのに、我々が仕事を欲しているにも関わらず、与えられない事に負い目を感じていらっしゃったのかもしれない。なんとお優しい方だろう。

 

 しかしそれも昔の話、今からある話とは十中八九、我々に働く機会を与える為の打ち合わせだろう。示し合わせたかのような<伝言(メッセージ)>のタイミングに、デミウルゴスは自分と主の考えがシンクロしたかのような気分を覚えて無性に嬉しくなった。

 

「面白くなってきましたね。」

 

 感情の高ぶりに、つい思った事を口に出してしまう。デミウルゴスは来たる世界大戦で繰り広げられるであろう地獄絵図を想像し、愉悦に口を歪めた。

 

 

 ーーー

 

 

 アインズは漆黒聖典達と別れた後、エ・ランテルへと馬でとぼとぼと来た道を引き返していた。飛んで帰れば早いのだが、いろいろ1人で考える時間も欲しかったし、帰れば厄介ごとが大量にあるのが目に見えていたので出来るだけ時間をかけて帰っていた。現実逃避というやつだ。

 

「全然計画通りに行かない。もう俺主導でやるよりデミウルゴス達に任せてもいい気がして来た。」

 

 なんか俺が行動する度に法国とか強そうな竜とかがヤブヘビ的に出てくるし、巨大樹移動作戦の顚末の説明とかどうすればいいか全然わからん。このままじゃ王子に宮廷から追い出されるかもしれない。

 

 さっさと出来る人に任せる。これが丸投げの構図です。

 

 そうと決まれば、デミウルゴスに相談しよう。いや、その前にごめんなさいしよう。流石にここまでめちゃくちゃに荒らされた案件をそのままぽんと渡されたら聖人でもブチギレるだろう。その上相手は聖人ではなくカルマ値極悪の悪魔なのだ。

 

 そそくさとデミウルゴスに<伝言(メッセージ)>を送ると、びっくりするほどすぐに繋がった。

 

『あ、デミウルゴスか?ち、ちょっと今後のことについて話したいことがあるんだが。』

 

 緊張のせいか、声がどもってしまう。

 

『はっ!すぐに参ります!』

 

(あっ、これすごい怒ってるわ。すごく語気が荒いもの。)

 

 アインズの脳内ではデミウルゴスの言葉は「ハッ!(嘲笑)すぐに参ります(から首を洗ってまってろ)」と翻訳されていた。

 

『い、いや、すみま、すまん。時間と場所はこちらから後で指定する。とりあえず仕事を続けてくれ。』

 

 思わず敬語で謝りそうになるのをなけなしの見栄でなんとか堪えて、一旦形勢を立て直すために逃げ口上を唱える。

 

『承知いたしました!』

 

 アインズはデミウルゴスの皮肉めいた謙譲語に気圧されつつ、<伝言(メッセージ)>を切った。

 

「…。」

 

 

(流石デミウルゴス。計画が上手く行かなくて泣きついて来たって一瞬でバレた。)

 

 ひょっとするとアウラから既に巨大樹移動作戦の一部始終の報告があったのかも知れないな。ともすれば今俺が置かれているのは糾弾待った無しの状況なのでは。俺の威厳が光の速さで失墜する一歩手前なのでは?

 

 

  <第10位階査問会召喚(サモン・さもんかい・10th)>!

 

 被告人アインズ!検察側デミウルゴス!

 

 開廷!有罪!閉廷!

 

 待って!誤解だ!いや誤解じゃないけど待って!

 うわー!

 

 ……

 

 

 一瞬、脳裏でアインズの異端審問が繰り広げられた。いや、バカな事を考えている暇ではない。このままNPC達に失望されてはギルドメンバーに申し訳が立たない。それにアウラやマーレにゴミを見るような目で見られたら立ち直れる気がしない。シャルティアにそんな目を向けられたら、…そういうプレイかな?

 

「はぁー。」

 

 アインズは大きくうなだれてため息をつく真似事をする。これは鈴木悟がうまく行かなかった時、気持ちを切り替えるための癖で、つまりは人間時代の名残だ。

 

 こうなってしまっては俺も腹を括らねばならん。元はと言えばここまで無能がバレなかったことの方が不思議だったのだ。ここは潔く謝って、後はNPC達の判断に任せよう。

 

 アインズは来たるデミウルゴスの吊るし上げにより繰り広げられるであろう地獄絵図に気が滅入りそうになった。表情アイコンがあれば、口をへの字に曲げた顔が浮かんでいただろう。

 

「アルベドやパンドラズ・アクターは味方してくれるかな…。」

 

 ガクリと肩を落とすアインズ。そんなアインズに同情するように動物の像(スタチュー・オブ・アニマル:)戦闘馬(ウォー・ホース)がヒヒンと鳴いた。

 

 

 

 

 




よくわかるこれからの世界情勢

評議国「お前ら最近調子乗りすぎちゃう?文明とか捨てて一緒に原始時代に戻ろうや」

法国「なんだァ?てめェ…。おい、王国!帝国!こいつやっちまうぞ!」

王国「うちの庭で喧嘩すんのマジやめて」

帝国「えっ、俺も戦うの?」

ナザリック「漁夫の利クルー!?」

竜王国(ひっそりと息を引き取る)

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