3割7分1厘。鈴木博志が残したこの数字が語るのは、彼の現在地と克服すべき課題である。鈴木博の名を聞いて、誰もが思い浮かべるのがストレートだろう。最速155キロ、平均でも150キロ。球速は絶対ではないが、打者をねじ伏せる大きな武器となるはずだが…。
冒頭の数字はストレートの被打率だ。62打数23安打。今季トータルが29安打だから、ほとんどがストレートということになる。今季の総投球数は443。うちストレートは254球(57.34%)を占める。打者が振ったのが123球(48.43%)で、コンタクト数は108(87.8%)。空振り率(全ストレートに占める割合)は5.91%だから、鈴木博がストレートを100球投げたら奪える空振りは約6つということだ。
被OPS(長打率+出塁率)は9割4分2厘。右打者、左打者の差はほとんどなく、球種別で最も打たれているのがストレートである。ちなみに彼が最も得意とする変化球であるカットボール(30.02%)は、被打率2割、空振り率13.53%。特に右打者は1割4分3厘と圧倒している。
衝撃的ともいえるこのデータは今季に限ったことではなく、昨季も鈴木博はカットボールで抑え、ストレートは明らかに狙われていた。速い。しかし打たれる。自己分析はこうだ。
「自分では真っすぐのコースだと思います。打たれている球は全体的に甘いし、その前がボール球だったりすることで、打者は絞りやすく、打ちやすい球になっているのかなと」
思い描いていたであろう理想とは違う現実。それでも彼にはチーム最多の14セーブを挙げた能力がある。少々の制球ミスを平均150キロの球速が補うはずだが、補えていない。球質かフォームに改善点があるという推論が成り立つ。その答えを導き出す分析システムが、今の野球界にはある。155キロの才能をくすぶらせてはいけない。これは組織に与えられた命題でもある。