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(喜美子)はい。(陽子)あっ 喜美ちゃん?
今 ちょっとええ?
あんな 窯業研究所にお勤めの橘さんいう人が来やってなええ話 持ってきてくれたんよ。
はい…?℡(陽子)ほな 代わるな。
どうぞ。
(橘)もしもし 橘と申します。 初めまして。お電話で失礼します。
川原さんのお作りになったコーヒーカップ中にお花の絵が描いてあってとても気に入りました。
ありがとうございますぅ。
℡(橘)そこで折り入ってお願いがあります。
川原さんにコーヒーカップを作って頂きたいんです。
ええ~! え… あの どういうことです?
♪~
♪「涙が降れば きっと消えてしまう」
♪「揺らぐ残り火 どうかここにいて」
♪「私を創る 出会いもサヨナラも」
♪~
♪「日々 恋をして 胸を焦がしたい」
♪「いたずらな空にも悔やんでいられない」
♪「ほら 笑うのよ赤い太陽のように」
♪「いつの日も雨に負けるもんか」
♪「今日の日も涙に負けるもんか」
はい! ほな 今から すぐ行きます!
いや もう もちろんです!はい あの お待ち下さい。
はい。
今から行ってくるわ!(八郎)はっ?
うちに コーヒー茶わん…うちにコーヒー茶わんの注文が来ました!えっ。行ってくる!
いやいや その格好で行くんか?あっ…。
ああ…!(マツ)なんも 今 行かんでも…。
今すぐ行く言うてしもてん。後にしとき。
写真館の中村さん もう来はるで。すぐ戻ってくる!
(常治)後にせえ 言うとんねん もう。(八郎)喜美子。
今から行く言うてしもた。(いつ子)どういうこと…?
うちのコーヒー茶わんを気に入ってくれた方がいはるんです。
ほら あのお花の絵が描いてあったやつ。
(百合子)知ってる。(直子)何 それ?
ああ あの喫茶店のコーヒーカップ?
喜美子が作ってん。えっ そうやったん!
喜美子姉ちゃんも陶芸家として認められたってことやん!
あっ でも お仕事は絵付けや言うてたやん。
僕が教えて 今 陶芸も始めてる。あ~ そう…!
どないしよ…。
どないもこないもあるかもう ほんまに!
すんません もう…。ああ いいえ。電話して 断れ ほら。
何で 断るん。今 行かれへんやろ 後にせえ! もう。
後にして 逃げへんやろか?ええ話は すぐつかまえんと…。
なにがええ話や…。
一個400円で買い取る言うてくれた。
そら ええ話や お前!
10個作ったら 今日の写真代 払えるで!(八郎)10個 頼まれたん?
それを今から話するんや。あ… いや せやけど…。行ってもええ?
行け! 行け行け もう!ええ ええ! ええ話には すぐ乗っかれ!写真は?
(荒い息遣い)だあ!
(荒い息遣い)
何で 声かけへんねん!
(信作)ハッハハハハ… ほやけど お前…えっ 何してん?
ホットケーキ始めたんか?それも悠長すぎるわ。 行くで!
何や 何や?
今回の件は 私の叔父が経営するレストランです。はい。
新しく開店するのでそこにコーヒーカップを 80個。
80個…!団体客も見込んでますし。
信楽に 女性陶芸家いうのがいらっしゃるなんて所長も 「へえ~」なんて驚いてはりました。
あの うちは 女性陶芸家やありません…。
じゃあ これ…。
それは…この人がいてくれたからできたんです。
うち一人で作ったわけやありません。
じゃあ… これは奥さんの作品やないいうことですか?
作品やなんて…うちは まだそんな…。
80個 作れませんか?
8個仕上げるのが精いっぱいでした。
ええっ…。自分の電気窯も持ってませんし。
ああ…。すみません。
10個くらいの話やと…。
うちには まだ そんな力はありません。
そうですか…。せっかく頂いたお話やのに すみません。
そっか…。
あっ ほな この コーヒーカップの中にお花描くいうのん使わせてもろてもよろしいですか?
気に入ったんで こういうの作って下さいって よそで頼んでみます。
はい…。
どうぞ よそにお願いして下さい。
あの…。
はい。
いつか…いつか2人で独立しよう言うてるんです。
すぐいうわけにはいきませんから…予定で言うと 1年後か 2年後?
2人で独立して 2人の電気窯入れて作業場を持とう言うてるんです。
もし もし機会があったらまたお声かけて下さい。
そのころには 80個も 100個も一人で上手に作れるような力を身につけてます。
はい…。 はい。
また そのころに是非 よろしゅうお願いします。
お願いします。
またええ話がそのころ あればええんですけど。
心に留めておきます。頑張って下さいね。はい!
一個400円の…お前なあ 80個で なんぼや これ…3万2,000円やで!どぶに捨ててく
るかなあ…。
もう うるさいなあ。
お前が手伝うたら ええ話や!僕に来た話 ちゃいますから…。
ほんだら 一個5万の湯飲みはよ作れ お前は…!
あ…。はよ撮ろうや 東京帰んでえ!
何 5万て?あ… ええ ええ…。
あっ あっ!マリリン・モンロー分かったで。
何?ヒュ~!
ちゃうわ こうやで。 ウヒュ~。
(常治)何をしとんねん ほら もう!(3人)ウヒュ~。
何やってんねんお母ちゃんもやらんでええねん!
もう はよ並んで並んで。ちゃっちゃと… もう 何や その頭は…。
はよ はよ はよ。(マツ)はい。ありがとう。
(常治)よっしゃ。ほんまに ここか? 大丈夫?
八郎さんも ほら。(いつ子)ええやろ。(常治)集中。
(中村)はい 撮ります。
今 八郎さんて…。(シャッター音)
あっ! ああ もう!ごめんなさい!もっかい もっかい!
すいません もう一回 お願いします。ごめんなさい。 すいません。
もう 何で そんなん 今 気付くん!?(八郎)ごめんなさい。
もう 間ぁ悪い!(八郎)はい もっかいお願いします。
ごめんなさい。(中村)じゃあ もう一度 撮ります。
(シャッター音)
そしてめおとノートに書いた予定どおりに喜美子の人生は進んでいきました。
丸熊から独立し2人の作業場を作りました。
2人の電気窯も入れました。
♪~
八郎の作品は 一個5万などという高値には まだ至りません。
喜美子は 大量の注文品を請け負って八郎を支えています。
あっついな… 喜美子も飲む?飲むぅ。
はい。飲まして。どうやって。
口移しせえ。ハハッ。どすのきいた声で やらしいこと言うな。
(笑い声)そこ 置いといて。
口移ししたる。
やめえ。やめえって。 あかん。
アハハハ…。 あっ 飲み込んだ。
子どもも生まれました。
予定とは違って男の子1人です。
更に 予定外だったのは長距離運転の仕事で無理をしたことがたたって父の調子がすぐれな
いことです。
増築にかかった借金も まだ残っていて相変わらず貧乏な川原家です。
(百合子)ありがとうございますぅ。
百合子は 短大を諦め 食品を卸す会社で納品の仕事をしています。
(大野)それと お砂糖2つやな。
はい ご苦労さん。ありがとうございます。
コーヒー飲んでいき。待ってました~!
信作は 相変わらずです。
ええ加減 ほんまのこと言うて下さい。
好きか嫌いで言うたら 8:2いや 9:1で好きや。
うそや!
♪~
(ちや子)琵琶湖大橋関連の取材も今日で終わりや。
もう こっちに来ることもなくなるなあ。寂しくなるなあ…。
次は 何を取材されるんですか?あ~ まだ これからや…八郎さんの密着取材 ええな。
陶芸家 川原八郎を丸裸にするぅ。えっ。
冗談や。(笑い声)
見て~!
おっ! な… 何や これ。
イチゴケーキ!おお すごいなあ。
そしたら お父ちゃんみたいに飾ったらええやん。
「たけしのさくひん」いうて。
おう そら ええな。(笑い声)
よし ほな 飾りに行くか?あっ ええよ ええよ。 やるやる。
はい 行っといで。
1年で 随分しっかりするもんやなあ。え~ そうですかあ…。
喜美ちゃんもそろそろ 作品作りできるんちゃう?
自分の作品作ろう思わへんの?うちは そんな暇ないんで。
前 来た時も そう言うてお皿100枚 作ってたやん。
あっ! あの100皿のおかげで洗濯機が買えましたあ。
おほほ~ すごいなあ。(笑い声)
いや ちゃうねん。 女性陶芸家として世に出てったらええやん。
うちは陶芸家を目指してるわけやないんで。
女性陶芸家なんて 信楽にはおらんし。
せやから 喜美ちゃんがその1人目になったらええやん。
「信楽初の女性絵付け師」いわれたみたいに。
ほやけど うちは今の仕事にやりがいを感じてるし十分満足してます。
才能あるのになあ?うん? ええ ええ。
適当に合わすな。作品作ったらどうや いうのは僕も言うたことあるんですけど…。
もしかしたら 八郎さんよりすごいもん作るかも分からん。
もう やめて下さい。
まあなあ男には負けん才能があってほしいいう同性としての希望やな。
ほな そろそろ行くわ。あっ はい。
ええよ ええよ ここで。また連絡するわ。
はい お元気で。喜美ちゃんもな。 八郎さん また。
はい またいつでも いらして下さい。
あっ 琵琶湖大橋 渡ってや? まだやろ。
あ… はい。 アッハハッ。武志 さいならは?
さいなら!はい さいなら。
さいなら。(八郎)気ぃ付けて。
よし 武志も おてて拭きやもうしまいやで。
待っててなあ今 片づけて 武志お風呂入れるわ。
ええよ ええよ。 僕がやる。ええよ。 昨日もやってもろた。
今日もやるよ。 喜美子は仕事しとき。
武志。お父ちゃんと一緒にお風呂入ろうな。
うん! 先 行ってるで。は~い。 ちょ ちょ ちょ…。
走って こけなや? 持ってくわ。ありがとう。
武志~!
♪~
男やったら 約束 果たせ!
(2人)「自由は不自由や!」。
好きなように描け~!
温泉? 2人で行きたい言いだしたん?
おお~。何や 何や やめえ もう!
こういうことなんで…。ウ~!
おじさん 検査したあと 泣いてはった。
一緒に また笑おうな。