女剣闘士見参!   作:dokkakuhei

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この話は時系列でいうと原作3巻と4巻の間ぐらいです。






第11話 胡椒か何かだ!

 王国の首都、王都リ・エステリーゼは名実共に王国の中心地である。

 

 なんといっても人の数が多い。王国の人口900万のうち、およそ10分の1がこの王都圏に集中しているのだ。

 

 商人や冒険者の出入りが盛んで、車道や上下水道といった社会基盤(インフラストラクチャー)も王国の他の都市と比較すれば良く整備されている方だ。中央通りでは他の王国の都市にあるように馬車があぜ道に足を取られるということはなく、排水溝に汚物が溢れているということもない。

 

 ただしそれも雨が降らなければという条件付きではあるのだが。

 

 王都の通りは一度雨が降ると至るところで水が溜まり、泥濘のせいで歩くのもままならなくなってしまう。これは都市の構造が古い設計技術の上に成り立っているからで、水はけの悪さという面でその弊害が垣間見えているのだ。おまけにそんな設計技術のせいか街並みもどこか古臭く、見る者に寂寥感を覚えさせた。

 

 そういった時代に取り残されつつある景観をした王都の最奥、差し渡し500メートル程の敷地内に、王の住居であるロ・レンテ城が聳え立っている。古臭い都市の中にあれどその超然と城下を睥睨する姿は十分な威厳を備えていた。

 

「おおー、すげー。」

 

「やめなよみっともない。口開けて上を見上げて、おのぼりさん丸出しじゃん。」

 

 威風堂々たる城壁の側に7人の女性。そのうち2人は王国国境にある城塞都市エ・ランテルから来たリカオンとクレマンティーヌだ。リカオンは初めて見る王城の伝統的な威圧感に口を開けたり閉めたりしている。さながら水面で肺呼吸する金魚のようだ。

 

 いい歳した大人がする表情では無いが、或いは仕方のないことかもしれない。リカオンは石造りの城など歴史の授業教材の3D投射映像でしか見た事がなかった。実物として存在する城に触れる機会など人生で一回も無かったのだ。

 

 クレマンティーヌはリカオンの姿をなんだか恥ずかしく思い、服の裾を引いて窘める。

 

「フフ、ガガーランから凄腕の戦士だって聞いてたからもっと威厳のある人かと思っていたけど、とても愉快な人みたいね。」

 

「いやー、てへへ。」

 

 話しかけて来たのはラキュースという冒険者。王国の誇るアダマンタイト級冒険者蒼の薔薇のリーダーである。ここにはラキュースを始め、蒼の薔薇のそうそうたるメンバーが勢ぞろいしている。

 

 王国に2組しかないアダマンタイト級冒険者チームの1つ、蒼の薔薇は5人全て女性で構成されている。攻撃と回復を同時に担う神官戦士でチームの要であるラキュース、王国屈指の実力を持つ戦士で切り込み役のガガーラン、忍術で味方のサポートをする暗殺者ティアとティナ、謎多き仮面の土属性水晶系特化の魔力系魔法詠唱者(エレメンタリスト)イビルアイ。

 

 1人は顔が見えないが、皆それぞれ整った顔立をしている。特にラキュースなんかは貴族の出ということもあって、すれ違う人みんながみんな振り向きそうな美しい顔をしている。

 

 ラキュースとリカオン達が話していると、その隣からティナがひょっこりと顔を出し口を挟んできた。

 

「愉快といえば、さっきのは本当に面白かった。」

 

 ティナの言うさっきのとは、リカオン達と蒼の薔薇が待ち合わせた宿での一件だ。リカオンが高貴な者然としたラキュースの事をラナーだと勘違いして、「あなたがお姫さま(プリンセス)ね!」と宿中に響く声で言ったのだ。その行動は少しの間の沈黙と周りの客の失笑を買った。ティアとティナの2人だけは腹を抱えて笑い転げていたが。

 

「もてはやされてるのは慣れてるけど、流石に姫と呼ばれるのは恥ずかしかったわ…。」

 

 ラキュースは先のことを思い出して苦笑いをしている。

 

「今日から鬼リーダーは鬼姫リーダー…いたたたた! 折れるから! 折れるから!」

 

 茶化して来たティナに容赦無くアームロックをかけるラキュース。肩関節が完全にキマっている。

 

「お前達、いい加減にしろよ。こんなところで油を売れるほど暇じゃないだろう。」

 

 イビルアイがイライラしたように注意する。

 

「そうだったわ。面会出来る時間が限られてるんだった。」

 

 イビルアイの言葉にダブルリストロックから腕ひしぎ逆十字までを流れるようにキメていたラキュースも冷静になってティナを解放する。肘の靱帯は辛うじて助かっていた。

 

 そんな乱痴気騒ぎを起こしている一団に近づいてくる人がいる。王国兵統一デザインの甲冑に身を包んだ城の衛兵だ。

 

「あ…あのー、一応審査通りましたが…。」

 

 この衛兵はパナソレイから預かった親書の審査をしていた者だ。城の出入りは厳しく規制され、王侯貴族又は賓客以外の人間が入城するには城壁外周に一ヶ所だけあるこの検査場で審査を受けなければならない。

 

 親書は偽造防止のために公印と呼ばれる特別な封蝋がなされ、その審査に大半の時間が割かれる。予定に無いものなら尚更だ。それが漸く終わり衛兵が結果を伝えにきたのだ。

 

 仕事場を荒らされた衛兵は心底迷惑そうで、早くどこかへ行ってくれと言いたげな表情であった。

 

「ああすまんな、すぐ行く。」

 

 ガガーランが衛兵に詫びを入れる。ラキュース達は少し申し訳なく思ったのか、そそくさと衛兵の誘導に従った。

 

 一行が促されるまま中に入ると、道のすぐ脇に白い甲冑を着た若い兵士が直立不動で立っているのが見えた。着ている甲冑は先程の衛兵とうってかわって豪奢なつくりをしていて機能性と芸術性を兼ね備えたデザインである。

 

 若い兵士は蒼の薔薇一行を認めると、少し嗄れているが大きく気持ちのいい声で挨拶をしてきた。

 

「お待ちしておりました皆様! ラナー様から客人を居室まで案内するようにと仰せつかっております!」

 

 兵士は深く礼をした。その姿を見たラキュースはにこりと微笑んで、兵士の肩に手を置き頭を上げさせる。

 

「や、クライム君、元気してた? そんなに堅くならなくても大丈夫よ。」

 

「おっす久しぶり。」

 

「オッスオッス。」

 

「ふん、やかましいことだ。」

 

 蒼の薔薇のメンバーは代わる代わるクライムと呼ばれた兵士に声を掛ける。どうやら顔見知りのようだ。

 

「いえ、そういう訳には。して、失礼ですがそちらがこの度の?」

 

 クライムはリカオン達の方に向き直る。リカオンは小さく手をひらひらと振ってやった。

 

「本日はよくぞおいで下さいましたリカオン様、クレマンティーヌ様。主人が是非お会いしたいと話しておりました。」

 

 クライムが再度礼をする。

 

「おおー。なんか絵に描いたような姫を守る騎士って感じ。」

 

 リカオンが率直な感想を言うとその言葉が相当嬉しかったらしく、クライムは一瞬年相応の嬉しそうな照れ顔を見せた。しかしそれも一瞬のことで、すぐに顔を引き締めて、では、と短く応えるとくるりと向きを変え先導を始めた。クライムは窪地になっている中庭を大きく迂回し、正面に向かって右側の道に入る。

 

 その行き先を見てリカオンは気になることを尋ねた。

 

「正面に見えている建物じゃないの?」

 

 敷地内では正面に見える高さ25メートル程の塔部を備えた宮殿が1番大きい。王女なのだからてっきりそこにいるものだと思ったのだ。

 

「ああ、いいえ、ラナー様のお部屋は離宮にあります。」

 

 クライムはやや奥歯に物が挟まったように答えた。ラナーの居室は他の王族の部屋とは隔絶したところにあるとはっきり伝えてしまうと自分の主人が王宮内で弱い立場にあると明言する事に他ならず、主人が客人に侮られてしまうやもしれぬと思ったのだ。

 

 しかしそんな不安は杞憂だったらしく、リカオンはそういうものかと納得した顔をしていた。どうやら悪い人ではなさそうだとクライムは思った。

 

 兵士寮の裏側を通り、一団は和やかな雑談をしながら離宮を目指す。リカオンだけは落ち着きなくきょろきょろと辺りを見回している。傍目から見れば少し不審だ。

 

「今日は珍しいですね。チーム全員でお見えになるなんて。」

 

「ん、ちょっとね。」

 

 クライムがラキュースに話し掛けるが、ラキュースは声を落として含みのある声で曖昧に返事をする。場の和やかな雰囲気にうってかわって表情は険しい。

 

 蒼の薔薇が全員で来ている理由、1つはガガーランが認めたリカオンという実力者に会ってみたかったというのがある。しかしそれ以上に謎の二人組に対する監視という意味もある。ラナーは快く面会すると言ったのだが、出自の分からないこの二人を完全に信用することはまだ出来ない。

 

 もし二人が賊か何かで、国の宝である「黄金」に何かあっては一大事である。話によると相当な実力者らしく、少しでも敵に回る可能性を考えると蒼の薔薇全員が居た方が安心だと踏んだのだ。

 

 ラキュースはちらりとリカオンを見やるが、当の本人はまだ忙しなく辺りを気にしている。露骨に怪しい。

 

「おい、さっきから何をしている。」

 

 リカオンが警戒している姿を見て列の後ろで歩いていたイビルアイが痺れを切らしてリカオンを問い詰める。そのリカオンはぼそりと呟いた。

 

「…なんかチリチリするんだよね。敵意を感じるというか。」

 

 その言葉に蒼の薔薇のメンバーはびくりと身体を硬くした。自然体を装っていたが、自分たちの僅かな緊張が伝わってしまったか。

 

「ねえ、あれ何?」

 

 周りの焦りなどお構いなしにリカオンはある方向を指差す。どうやら警戒しているのは蒼の薔薇ではなかったようだ。指の先には一人の男と巨大な樽が見えた。

 

「あれは兵士寮用の水ですよ。あれがどうかしましたか?」

 

 クライムが然もありなんと答える。

 

「隣にいる人は?」

 

「あれは水質鑑定士(ウォーター・アプレイザー)だ。」

 

 イビルアイがそんなことも知らないのかとバカにしたように言った。

 

 水質鑑定士(ウォーター・アプレイザー)とは魔法を使って水の毒性を調べる職業のことだ。一般的には川や井戸といった公共の水場で人体に害のある物質が水に溶け込んでいないかを調査する為に雇われる。有力貴族なんかは一家に一人お抱えで雇ったりもする。

 

 王都では昔、原因不明の集団食中毒が発生し王族にも重篤者が出た経験がある。調査の結果、ある井戸の周辺に被害が集中していることが分かった。更に調べるとその井戸の中から腐って死んでいるモンスターが見つかり、それが食中毒の原因だろうと結論付けられた。

 

 モンスターが井戸に入った経緯は不明のまま終わったが、それ以来王国では主要な水場に水質鑑定士(ウォーター・アプレイザー)を定期的に巡回させるようになった。

 

 ロ・レンテ城内でも水質鑑定は特に念入りに行われている。王族が口にする酒類はもちろん、兵士寮の貯蔵水もそうだ。いざという時に兵士が水に中って動けないという事態は全く笑えないからだ。

 

 そしてその定期鑑定が今まさにリカオン達の前で行われているということである。

 

「…ふーん。」

 

 イビルアイの歴史知識披露(スノビズム)を聞き流しながら、リカオンは樽の横にいる男に近づいていく。

 

「ちょっと! リカオン様! 勝手に歩き回られては困ります!」

 

 クライムの制止も聞かず、リカオンはつかつかと男の隣まで歩き、大きな声で話し掛ける。

 

「こんにちは! お仕事ご苦労様です!」

 

「うわっ。えっ、こ、こんにちは。」

 

 男はやにわに現れたリカオンに驚き、目を白黒させている。どこか落ち着きがなく、心ここに在らずといった面持ちだ。

 

「ここの作業はもう終わったんですか?」

 

「は?」

 

「おにいさん水質鑑定士(ウォーター・アプレイザー)なんですよね?」

 

「あ、ああ、そうだよ。」

 

 リカオンの矢継ぎ早の質問にたじたじになる男。心なしか目が泳いでいる。リカオンは男の回答を聞くや否や、側にあった樽の栓を抜き、溢れる水を手で掬って飲み始めた。

 

「あっ!」

 

 突然の節操のない振る舞いに場にいる全員が驚いたが、中でも男が一番取り乱していた。態度が一変し、声を張り上げて騒ぎ出した。

 

「何をしているんだ! やめろ!」

 

 男はリカオンが水を飲むのをやめさせようと飛びかかる。しかし100レベル戦士に通用するはずがなく、片手で払うと軽くいなされてしまう。この時点でリカオンの圧倒的強さは伝わったはずだが、それでも驚くべきことに男は諦めず再度突進を試みようとした。

 

「落ち着いてください!」

 

 クライムが慌てて2人の間に入り男を抑える。クライムに邪魔されても男はリカオンを凝視したまま息を荒くしている。ただならぬ雰囲気に蒼の薔薇のメンバーも争いを止めようと間に割って入る。

 

「おいおい、いきなりどうしたってんだ? 水飲んだぐらいでそんなに怒ることはないじゃねぇか。リカオンも一応謝っとけ。」

 

 ガガーランが仲裁しても男は取り乱したまま、顔をまっ青にして、やめろ、やめろ、とうわ言のように繰り返している。明らかに常軌を逸した様子だ。リカオンは満足したのか水を飲むのをやめて、樽に栓をし直した。

 

「もう一度聞くけどおにいさん水質鑑定士(ウォーター・アプレイザー)なんですよね?」

 

「…。」

 

 やや力のこもった問いに男は答えない。リカオンは待たずに二の句を告げる。

 

「私体質(スキル)上毒効かないんですよね。抵抗(レジスト)したかどうかもわかるんですよ。私が言ってる意味わかりますか?」

 

 男はびくりと肩を震わせた。目は見開かれ、額を汗が伝っている。

 

「鑑定し終えていたのに何で毒だって言ってくれなかったんですか? 普通手が出るより先に口で言いますよね。それとも何か言えない理由があったんですか?」

 

 男は肩で息をしている。目が血走り、襟元は色が変わるほど汗を吸い込んでいた。

 

「ティア、そいつを抑えておけ。<毒探知(ディテクト・ポイズン)>。」

 

 男の狼狽に何かを察知したイビルアイが水樽に魔法を発動する。それを見た男がより一層焦り出した。

 

「やっ、やめっ。」

 

「動かないで。暴れたら折る。」

 

 ティアが目にも留まらぬ速さで男の背後に回り、後ろ手に男の利き腕である右手の自由を奪った。

 

「む。弱いが確かに毒性がある。<成分鑑定(アプレーザル・コンポーネント)>。」

 

 男がゴクリと息を飲んだ。そして祈るようにぎゅっと目を閉じる。

 

「…おいおい。まさか…。」

 

「どうしたのよイビルアイ。」

 

 神妙な声色になったイビルアイにラキュースが詰め寄る。

 

「どうしたもこうしたもない。水の中に麻薬、それもライラの粉末が混ざってる。」

 

 ライラの粉末。その言葉に蒼の薔薇とクライムは驚愕する。王都の裏で秘密裏に流通する麻薬であり、巨大犯罪組織八本指の資金源になっていると言われている。短時間で強烈な多幸感をもたらし、依存性が高いこの麻薬は市井のみならず、役人、貴族の間でも出回っており、多数の常用者が八本指に食い物にされている。

 

 事態を重く見たラナーが対策に乗り出し、蒼の薔薇にライラの粉末の流通ルートの捜索と生産拠点の殲滅を依頼しており、今まさに情報集めに奔走していた所だ。

 

 驚きなのは国王のお膝元であるこのロ・レンテ城で八本指が堂々と魔の手を伸ばしていることだ。全員の視線が男に集まる。

 

「知らない! 俺は何もしてなっアガアアァ!」

 

 ティアが容赦無く男の肩を外した。男の右腕が力無く垂れ下がる。次にティアは左腕を手に取った。

 

「暴れたら折る。」

 

 ティアの無慈悲な対応は容易く男の心の臓を鷲掴みにし、膝を屈させて地面に這いつくばらせるのに十分であった。男はもう動こうとしない。

 

「おいお前、何でこの樽に黒粉が入っているんだ?」

 

 イビルアイが痛みで蹲る男に尋ねる。男は苦痛に顔を歪めるばかりで何も答えない。

 

「答えなければ耳を落とす。」

 

 ティナが短刀を突きつけて、静かに冷酷に告げた。男は震え上がるがそれでも沈黙を守ったままだ。

 

「よし分かった。」

 

 ティナはひたと男の横顔に短刀を当てる。男は恐怖で顔を強張らせ、自分の命運を神に祈った。

 

「待ってください、城内で刃傷沙汰は困ります!」

 

 クライムが慌てて止めに入る。

 

「私には関係ない。」

 

 ティナは譲らない。

 

「ティナやめなさい。ここはクライム君の顔を立てましょう。あとでラナーに怒られるの私だし。」

 

 ラキュースが割って入った。クライムが付いていながら問題が起きたとなれば、ただでさえ悪い平民出のクライムの立場がもっと悪くなる。その原因が蒼の薔薇だというのならラナーはすごく機嫌を悪くするだろう。

 

「リーダー、それは命令?」

 

「そうよ。」

 

 ティナは仕方ないという風に両手を広げて男から離れる。

 

「ティアも放してやりなさい。」

 

「甘い事だ。もう少しで吐いてたぞこいつ。」

 

「イビルアイもそう言わない。さて、これからどうするか。」

 

 ラキュースは解放されて地面に転がる男を見下ろす。男は逃げる素振りもせず頭を抱えている。こいつは十中八九八本指の手先のものだろう。恐らく麻薬中毒者を増やすための工作の一環か何かだ。たまたま巻き込まれた不運な人かもしれないとも思ったが、先ほどまでの態度を見る限りはそういうこともなさそうだ。

 

 怯えているのは、ティアとティナの尋問にあったからか、はたまた将来起こるであろう組織からの口封じを恐れているのか。まあ悪の組織の手足となって働いていたのだ同情する余地はない。

 

「こいつはどうする? 衛兵に引き渡そうか?」

 

 ガガーランが尋ねてきた。ラキュースは逡巡した後口を開く。

 

「いや、蒼の薔薇で身柄を抑えた方が良いわ。私達にとってもこいつにとってもね。」

 

 想像したくないが王宮内のどこまで八本指の手が回っているかわからないのだ。いつ口封じが行われるか分からない。それに何より貴重な情報源であるし、出来るだけ手元に置いておきたい。

 

「だがいきなり手掛かりが見つかってラッキーだったな。これから忙しくなるぞ。」

 

「こいつが何処まで知ってるかにもよるけどな。」

 

 喧喧諤諤と議論をする蒼の薔薇。リカオンがその中にひょっこり顔を出す。

 

「解決した? じゃあ気を取り直して王女様のとこに行こー!」

 

「はぁ?」

 

 出会ってから度々思っていたがこいつは自由奔放というかマイペースおばけというか。状況を分かって物を言っているのか。こっちは要注意人物を連れているんだぞ。

 

「まあ、そうね。そうしましょうか。」

 

「まじかラキュース。」

 

「八本指の件の依頼主はラナーだし経過説明をしなきゃならないわ。パナソレイ都市長の頼みもついでにやっちゃいましょう。」

 

「そういうもんか…?」

 

「そういうもんよ。」

 

 予想外のハプニングはあったものの一行は再度当初の目的を遂行することにした。

 

「ほいじゃ、れっつごー!」

 

 リカオンが先ほど感じていたチリチリとした敵意は消えていた。この男の害意に反応していたのだろう。モンガと遭遇した森の件でも分かっていたが、不特定多数に向けられた敵意も感知するとは()()()()()()()()()()スキル『禅師峰』の効果はかなり変化しているようだ。特段に便利になっている。

 

 リカオンは上機嫌で第三王女の離宮を目指す。

 

 

 

 




アニメ二期楽しみですね。

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